『MARI & REDSTRIPES』からうかがう
日本のポップス職人、杉真理の求心力
活き活きとしたバンドアンサンブル
デビューシングルでもあったM3「思い出の渦」では、そのバンドアンサンブルはさらに本領発揮。リズムギターが淡々と楽曲を引っ張る一方で、ベースラインはやはり独特の動きを示し、リードギターはそれとはまた違った旋律を重ねていく。弦楽器の絡み合いがとても面白い。さらに、コーラスが本性を露わにしていると言ってよかろう。少し牧歌的な印象もありつつ、どこか切な気な雰囲気もある歌の主旋律を、ハーモニーによってふくよかにしているというか、コーラスを重ねることによって単純に終わらせない味付けが成されているのは間違いない。間奏においても重要なポジションを取っている。また、この曲は間奏のサウンドが興味深い。あれは何らかしらエフェクトのかかったエレキギターではないかと思って聴いたのだが、鍵盤のようでもあり、ウインドシンセのようでもあり、何とも不思議な音色が、やや不思議な歌詞世界にもマッチしているようで、これもまた聴きどころだと思う。
M4「トゥナイト」、M5「表通りで」、M6「はやく君を抱きたい」は、それぞれにタイプは異なるものの、いずれもギターがカッコ良い。ブルージーに歌メロに絡んでくるM4。キレのいいカッティングを見せるM5。そのM4とM5の中間とも言えるニュアンスで、時に滑るように、時にしっかりとリズムを意識しながら弦をかき鳴らすM6。共通点としては、どれもこれもロックを感じさせながらも、粗野でなく、お洒落な感じに仕上げているのがポイントではあろうか。もちろん、ギターだけが優秀というわけではなく、M4であればストリングスを配してドリーミーかつドラマチックにしている点や、M5はソウルフルなコーラスワーク、M6では間奏でしっかりと存在感を見せるピアノなど、各パートのプレイも決して無視できないのが、MARI & RED STRIPESらしさと言えるだろう。