島田歌穂がミュージカル愛をたっぷり
詰め込んだコンサート 『島田歌穂
Musical, Musical, Musical!! vol.2
』レポート

島田歌穂がミュージカル楽曲を歌うコンサート『島田歌穂 Musical, Musical, Musical!! vol.2』が2021年6月17日(木)、東京・Bunkamuraオーチャードホールで開催された。(構成・演出:下山啓/音楽監督:島健/振付・ステージング:広崎うらん)

本来ならば、昨年7月5日に開催予定であったが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を鑑み、延期されていた。
スペシャル・ゲストとして山崎育三郎を招き、ミュージカルへの愛をぎゅっと詰め込んだステージを写真と共にレポートする。
島田歌穂

Overtureとともに、幕が開く。赤いスパンコールのドレスを着た、島田歌穂が登場する。最初に歌ったのは『Hello Dolly』より「ハロー・ミュージカル」。曲の中に「この日が来るのを信じていた」という歌詞があった。まずはコンサートの開催ができたことを感謝し、喜び、楽しみましょうという、島田の思いが代弁されたような1曲だった。
1幕は、ミュージカルに登場する世界の女性たちをテーマにした選曲。さまざまな国や社会情勢を背景につくられるミュージカル。それぞれの立場で強くたくましく生きる女性を紹介していった。

例えば、『ウエスト・サイド・ストーリー』から「I Feel Pretty」。マリアという女性が、デートに胸を膨らませるという、なんとも可愛らしい曲だ。島田自身2004年にマリアを演じており、「大好きな作品」と語っていた。

例えば、『メリー・ポピンズ』から「2ペンスを鳩に」。大聖堂の前で鳩の餌を売っているおばあさんが歌う、作中の隠れた名曲だが、彼女の本当の名前や彼女のこれまでは語られていない。島田は、優しく、しかしどこか物悲しさも感じる歌い口で、おばあさんの人生をにじませた。
島田歌穂

そしてその他にも、ダンスも含めて『シカゴ』から「All That Jazz」、『ライオン・キング』から「Circle of Life」などを熱唱。ちなみに「Circle of Life」はシャーマンのラフィキが歌う1曲だが、アニメ版とは異なり、ブロードウェイのミュージカルでは演出家の意図で、女性の設定になったことなどを解説していた。2019年に始まったこの『Musical,Musical,Musical!!』が「聴く」だけではなく、「学ぶ」「歌う」をもテーマにしたコンサートだということを強く思わせるコーナーだった。
続いては、サポートメンバーとともに、『サウンド・オブ・ミュージック』の「ドレミのうた」に乗せて、ミュージカルをコミカルに紹介する替え歌メドレー。ミュージカル好きにはたまらない、楽しいメドレーだった。この日のサポートメンバーは、島田が2003年から歌の指導をしている大阪芸術大学舞台芸術学科ミュージカルコースの卒業生8人。各地で活躍している“教え子”たちとの共演については、島田も「幸せを噛み締めています」と話していた。
1幕の終盤、スペシャル・ゲストである山崎育三郎が登場した。山崎は自らを「島田歌穂世代です」と語る。というのも、1994年の『レ・ミゼラブル』のCD(いわゆる“赤版”)を子どもの頃に「聞き込んでいた」そう。島田はエポニーヌ役で当時出演しており、何度も島田の声を聞いていたため、「僕にとっては伝説のエポニーヌ」と感慨深そうだった。
山崎育三郎
このコンサートの2日前にも、山崎は、自身のコンサート『billboard classics 山崎育三郎 Premium Symphonic Concert Tour 2021 -SFIDA-』で、オーチャード・ホールに立ったため「まさか2日後に来るとは」と笑っていたが、「歌穂さんのためなら飛んでいく」と話していた。
(左から)島田歌穂、山崎育三郎
山崎は『モーツァルト!』から「僕こそ音楽」をソロで披露したのち、島田とともに、同じく『モーツァルト!』から「愛していれば分かり合える」をデュエットした。コンスタンツェのパートを歌うことに「ずうずうしいかな」などと照れていた島田だが、息ぴったりの歌唱で、「幸せです」と自身も満足そうだった。
1幕の終わりには、「It's All Right with Me」に乗せて、音楽監督・作、編曲の島健ら演奏メンバーの紹介があった。
島田歌穂
20分の休憩を挟み、2幕が始まる。冒頭は、サポートメンバーと島田らによる、15分ほどのオリジナルミニミュージカル『リハーサル』。バレエのバーや机が置かれ、そこが「稽古場」であることが分かる。『コーラスライン』のような作品かしらと勝手に想像していたが、ソーシャルディスタンスや消毒の徹底など、このコロナ禍における舞台芸術の創作の難しさをコメディタッチで描く。苦しさもあるけれど、最後には希望が持てる作品だった。
そして、再び山崎育三郎を招き、『レ・ミゼラブル」より「民衆の歌」を歌う。本来ならば観客も一緒に熱唱したいところだが(なにせこのコンサートのテーマの一つは「歌う」だから!)、昨今の感染状況を鑑みて、足踏みや手拍子で参加することに。曲の高揚感もあって、舞台と客席との距離がまた一段と近くなり、一体感を感じた瞬間だった。
MCパートでは、「レミゼオタク」と自ら称する山崎育三郎が初めて『レ・ミゼラブル』のオーディションを受けた時の裏話が明かされた。島田の歌声も収録されている“赤版”を一人で全曲歌えるほどに聴き込んだ山崎は、オーディションで楽曲を堂々と披露することができ、演出家のジョン・ケアードを驚かせたという。
(左から)山崎育三郎、島田歌穂
その流れで、島田エポニーヌと山崎マリウスのデュエット「恵みの雨」、そして島田ソロの「On My Own」が立て続けに披露され、会場の熱気は最高潮に。レミゼファンにとっては、なんとも特別なギフトになったことだろう。
島田歌穂
(左から)島健、島田歌穂
本編の最後に披露されたのは、『I Love a Piano』より「I Love Musical」。そして、アンコール曲は『キャッツ』より「Memory」。すーっと心に染み渡るような、優しい歌声で、幕を下ろした。
ミュージカルの愛がたくさん感じられたし、もっともっとミュージカルのことを知りたいと思ったおよそ2時間半のコンサート。島田がこれからどんな世界を私たちにまた見せてくれるのか、ずっとこれからも期待していたい。
取材・文=五月女菜穂  撮影=iwa

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