春猿火が語るバーチャル・アーティス
トとしてのスタンス。「聴く人それぞ
れに寄り添う音楽でありたい」|BIG
UP! Stars #59
「背中を押してあげるような曲を歌いた
い」
私が最近思ってる事をたかやんさんとリリックにしてラップしたよ。春猿火自由律 #01「初見さんラップ」(Prod. Kiyoto)Lyrics: たかやん・春猿火
“共感”にバーチャルもリアルも関係な
い
―この曲はバーチャル・アーティストとして活動していくスタート地点を切り取ったかのような楽曲ですよね。
今までの私、これからの私。色々な気持ち、感情が反映されたような楽曲になっています。自分で言うのも何ですが、私は暗い性格なのでこれまでの人生ではネガティブな記憶の方が多かったんです。そういう暗い要素も確かにあるけど、でも、同じような気持ちの人を応援するような、そんな前向きな感情も詰まった曲になりました。
―《怒りも悲しみも全て愛せるような世界へ》というラインには、今おっしゃったような気持ちが特に反映されているのかなと思いました。綺麗事を言うのではなく、ネガティブな感情も認めた上で、前に進んでいく姿勢が表現されているのかなと。
読み取ってくれて嬉しいです。この曲は私にフォーカスした曲ですけど、そうやって多くの人に共感してもらいたいなと考えていて。音楽に共感するという体験って、バーチャルもリアルも関係ないじゃないですか。世の中ではまだバーチャルとリアルの世界が上手く混じり合ってないなと感じることが多いのですが、バーチャル・アーティストである私の曲に、多くの方が共感してくれる。それってバーチャルとリアルの壁をなくすことに繋がるんじゃないかなって思っています。
―続いて、今年1月には第2弾配信シングル「居場所」を発表しました。この曲についても、どのようにして作られたのか、そしてどのような感情が込められているのか、教えてもらえますか?
この曲はバーチャルとリアルを繋ぐ架け橋のようなイメージで。歌詞にも《ずっと独りでさ 心細かったんだよ》とあるように、私自身、歌うことでしか自分の居場所を感じることができなかったんです。そういう自分の居場所がないと感じる人たちへ向けて、手を差し伸べるというか、言葉を投げかける。私の曲がみんなの居場所になればいいなっていう思いを込めた作品になっています。
―「台風の眼」も「居場所」も疾走感溢れるロック・ナンバーですよね。これまで動画などで発表されてきた曲のなかにはハードなトラップやメロウなヒップホップ調の曲もあります。こういった様々なタイプの楽曲に挑戦することに対してはどうお考えですか?
最初にもお話しした通り、私はこれまでラップをしたことがなかったので、例えば「Lift Up」みたいなトラップ調の曲なんかは、自分でも聴いたことのない自分の声、歌い方を引き出されたという感覚で。自分の知らなかった自分に出会えて、とても勉強になりました。
もちろん、実際にレコーディングするときは上手くいかないことも多くて、大変なこと、辛いこともあります。でも、今は難しいからこそ楽しいんだと思えるようになりました。
―この1年半の間、様々な楽曲にも挑戦していくなかで、ラップ・シンガーとしてのアイデンティティが固まってきたと思いますか?
最初は右も左もわからなかったのですが、最近では自分から歌やラップに関してもアイディアや意見を言えるようになってきて。それは自分でもアイデンティティが確立されてきたからなのかなって思います。
―そんななか、3rd配信シングルとなる「覚醒 feat. さなり」がリリースされました。これまでの2曲とは雰囲気もガラリと変わり、リアル・アーティストであるさなりさんがフィーチャーされています。
この曲は、私と同世代の10代~20代の若い人たちが抱えているであろう世の中への不安や葛藤を歌った作品です。リリックに出てくる《Stay woke》という言葉は、「世の中や社会で起きている物事に対して意識的であれ」という意味のスラングなのですが、この曲を聴いて、世間に対して、もしくは自分に対してでも何か意識が変わったら嬉しいです。
振り落とされないように、自分を見失わないように
―先日、初の有観客ライブ、そして初のワンマン・ライブ<シャーマニズム>をヒューリックホール東京にて8月に開催することがアナウンスされました。
去年の10月にカバー・ライブ<シュークリームライブ>をYouTube Liveで行ったんですけど、それとは全く別の環境だと思うので、とても緊張しています。会場にみなさんがいて、舞台に私が立つ。これまで動画や音楽で共感してくれていた感覚とはまた別の、アツい体験をしてもらえるのではないかなと。
―<シャーマニズム>というタイトルにはどのような意味、思いが込められているのでしょうか?
私は歌うことで本当の自分になれているという感覚があって。きっと、みんなの中にも大なり小なり自分の知らない自分が存在していると思うんです。そういったいつもと違う、うちに秘めた自分を開放して、憑依することができるようなライブにしたい。そういう意味を込めて<シャーマニズム>というタイトルにしました。
できるだけ有観客で観てほしいという気持ちもありつつ、こんな状況下なので、配信にも力を入れているんです。会場で観るのとはまた違った魅力をお届けできるんじゃないかなと考えています。
―なるほど。では、今後の活動についても教えてください。今年はどのような動きを計画していますか?
ソロでの活動を頑張っていきたいのはもちろんなんですが、V.W.P(※)というグループも結成したので、そちらでの動きにも期待していてほしいです。
※KAMITSUBAKI STUDIO所属の花譜、理芽、春猿火、ヰ世界情緒、幸祜の5人で結成されたバーチャル・アーティスト・グループ。
―音楽的に今後挑戦したいことなどはありますか?
うーん、どうだろう……。どんな曲でも機会があれば挑戦してみたいです。自分で制限などは設けず、1曲1曲誠実に向き合っていきたいですね。
―では、アーティストとしての大きな夢や目標を挙げるとするならば?
それも自分では考えないようにしています。春猿火として活動を始めてからのこの1年半は、私にとっては本当に未知の体験の連続で。ものすごいスピードで活動している感覚なので、そこから振り落とされないように、自分を見失わないように活動していきたいですね。数年後、もしくは数十年後の春猿火がどんなアーティストになっているのか、私自身も楽しみにしています。
―2021年の元日に公開された動画では、「脱・引きこもり」を今年の目標に掲げていました。すでに半分が過ぎましたが、進捗はいかがでしょう?
……悪化しているような気もします(笑)。お仕事以外での大きな出来事は水族館に行ったこととピクニックをしたことくらいで、まだ去年の方が外に出ていたかもしれません。ここから挽回していきたいです……(笑)!
BIG UP!のアーティストをセレクトしたプレイリスト
『DIG UP! – J-Indie -』
EVENT INFORMATION 春猿火 1st ONE-MAN LIVE『シャーマニズム』 開催日:2021年08月27日(金) 会場:ヒューリックホール東京 詳細はこちら
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