あらき “希望”と“決意”を届けた
久しぶりの有観客ライブ、TSUTAYA O
-EAST・夜公演をレポート

ARAKI LIVE ARK -UNPARADOXA-

2021.6.12(sat) TSUTAYA O-EAST
歌声や音像のすみずみまで熱情がほとばしり、そこに集う人々が自分を解き放ち、響き合う場所。ステージとオーディエンスのいるフロアが一体となって作り上げるライブには、やはり格別の喜びや感動がある。
そんな再確認ができたのは、ロック魂に貫かれたシンガー・あらきが『ARAKI LIVE ARK -UNPARADOXA-』と題し、6月12日にTSUTAYA O-EASTにて開催した単独公演。コロナ禍にあって2度の無観客配信ライブを行ってきた彼の、久々の有観客ライブだ。
ソファやサイドテーブルが置かれ、オリエンタル柄のラグが敷かれたステージ。のちのMCであらきが言ったように、「日常っぽいと見せかけてこの世にないような空間」が、まさに演出されている。そこにまず現れたのは、ギター&キーボード&プログラミング・K.F.J、ギター・鳴風、ベース・Ryosuke、ドラム・裕木レオン。あらきをがっちりと支えるバンドメンバーだ。4人が生み出す音の渦の正体は、6月16日リリースの全曲オリジナルアルバム『UNKNOWN PARADOX』の幕開けを飾る「DOXA」。なんてドラマティックなんだ。
あらき
いよいよあらきが登場、「ぶっとばしていきましょう!」と気合いたっぷりに、『UNKNOWN PARADOX』のリード曲「UNKNOWN PARADOX」へ。満ち満ちている突破力や高揚感、<散々聞いてきた 言葉がこれからは 僕を加速させるだけ>という反骨精神顕著なフレーズは、どうしたってオーディエンスの心を突き動かす。声は出せなくても、拳を振り上げたり、頭を振ったり。あらきのイメージカラーである赤を灯したペンライトが数多揺れる光景を目にするのも久々で、ぐっときてしまう。
あらき
レーザー光線が派手に乱れ飛んだ「サイレーション」では、スタンドマイクからハンドマイクに切り替え、フロアに近づいたり、モニターに足をかけたりしながら歌う場面も。躍動する姿を目で追って、高音もロングトーンもすさまじく力強い歌声、轟音を全身で浴びる幸せがそこにある。
「っしゃー! みなさん、お久しぶりです。会えて嬉しいです。今日はなんでもできそうな気がしています。いろいろ規制はあるけど、ライブは楽しく安全なものである、ということを一緒に証明しましょう!」と晴れやかな顔で挨拶し、「1曲目の「DOXA」というタイトルには、“意見”という意味があって。僕は歌で物申していくので、みなさんも手を叩くなり、ジャンプするなり、ペンライトを振るなり、意見をぶつけてきてください!」と呼びかけたあらき。
あらき
「コロナ禍にあって、つながっているみなさんと作り上げた曲です。近い将来、一緒に歌えるようになってやっと完成する曲ですけれども、ひとまず聴いてください」と言って、ギターを手に歌ったのは「Ark -strings arrange ver.-」だ。<どうかしてるくらいが丁度いい ふざけてる命なんかない>という、あらきならではの感性が生んだ言葉は、はみ出すことにおびえなくたっていいんだよ、と背中を押してくれるようだ。
カラフルなライトの下で、伸び伸びとした歌声で圧倒してくる「テレキャスタービーボーイ」。音に身を任せ軽やかにステップを踏みながら歌う「スロウダウナー」。ボカロ曲も独自の色で染め上げていく。
あらき
気心知れた頼もしいメンバーを紹介したあとは、『UNKNOWN PARADOX』から2曲を続けて披露。「トーロン」は怒濤のたたみかけナンバーで、熱量高い“討論”を想起させるあらきの歌の洪水は、もはや快感だ。再びあらきがギターを手にした「拡声ノイジー」では、感情むき出しの歌声でオーディエンスを巻き込みつつ、鳴風と隣り合って演奏を楽しむ姿も。
引き続きギターを弾きながらエモーショナルな歌声でぐいぐい引き込む「KING」。カオスな異界感とあらきの歌声が刺激的な化学反応を生む「旧約汎化街」。沼はどんどん深くなるばかりだ。

あらき
あらき
「普段はあまりMCをしないんですけど、久々の有観客ライブができた今日はめでたい日なので、少しお話しします」と言うと、“未知なる矛盾”を意味する『UNKNOWN PARADOX』にちなみ、“矛盾やモヤモヤを感じていること”をテーマにしたメンバーとのトークタイムへ。メンバーとの軽妙なやりとりもまた、耳に心地いい。
かと思うと、美しいファルセットが響いたのは、オーディエンスが大きくクラップした「逆夢ランデヴー」。「シニカルナイトプラン」ではしなやかなフェイクも映えて、あらきの表現の豊かさにはいつものことながら驚かされる。
「久々に有観客ライブができて、本当に嬉しく思います。カラーコピーのように、みなさんの顔やこの光景を鮮明に記憶に刻みます」
そう前置きして、「カラーコピー(acoustic ver.)」へ。あらきが奏でるアコースティックギターの鮮やかな音色、そこに重ねたていねいな歌声と、ありったけの想い。この日のことをオーディエンスもきっと忘れないだろう。
あらき
鳴り止まない拍手に、ステージへと呼び戻されたあらき。アンコール1曲目は、『UNKNOWN PARADOX』に収録、すでに動画公開されている「イスカノサイ」だ。とんでもなく中毒性の高いナンバーは、ライブでますますその力を発揮する。
バンドメンバー、スタッフ、そして会場に足を運んでくれたオーディエンスへの感謝をあらためて口にしてのち、ソファに腰掛けたまま余裕で歌い始めたのは「コールボーイ」。ほぼ全編英詞の「About me」では、ハンドマイクで歌いながらステージを右に左に動き、オーディエンスひとりひとりの姿を目に焼き付けようとする姿も印象的だった。
あらき
最後に届けてくれたのは、『UNKNOWN PARADOX』を締めくくる「Relight」。あらきが、「再び火をつけるぞ、ここからだぞ、という希望を込めた」ナンバーだ。穏やかな中にも明確な、“その先”を目指して歩いていくという決意は、オーディエンスの胸に決して消えない火を灯してくれたに違いない。
『UNKNOWN PARADOX』という作品で、表現者として新たな扉を開けたあらき。次にステージに立つ彼は、きっとさらなる進化をとげているはずだ。その場に居合わせたいと心から願う。

文=杉江優花 撮影=小松陽祐[ODD JOB]

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