リーガルリリー恒例の企画ライブ『海
の日』、今年のテーマ「東京」に込め
た想いや新しいアプローチとは

外に向けて徐々に開かれた表現を見せるようになってきたリーガルリリー。1stEP『the World』の東京ファイナル公演が完売したことを受け、追加公演も兼ね、バンドの記念日である7月5日の『海の日』にコンセプトライブ『“東京”-リーガルリリー「the World Tour」追加公演&「海の日」3rd Anniversary-』を開催する。ベースの海が正式加入した2018年7月5日から3周年。今回は『the World』のリード曲でもある「東京」と同名のタイトルを設定。そこに込められた意味や、当日の会場の空間づくりなど、様々な企画を計画中だという3人に、現在のバンドのムードも含めてインタビューを実施した。
ーー絶賛ツアー中ですね(取材は6月上旬)。
ゆきやま:はい。でも今回はツアーと言っても、いつもより間隔を開けてのツアーなんです。ライブを1〜2回やって、その間に曲も作ったりしていて。
海:これまでは毎回ツアーのセットリストを変えていたんですよ。でも今回は、あまり大きく変えずにやっているので、ツアーとツアーの間に色々と確認したり、気付けることが多くて。軌道修正ができているツアーだと思います。
ーーバンドとしてツアーをやってると調子はどうですか?
ゆきやま:やっぱり生き生きしてきますね。
海:すごく変わるよね。曲作りだけに集中するんじゃなくて、ツアーがあると意識できるところも違うというか。それがいい感じに反映されているのかなと思います。あと単純に、いつもより楽器に触ってる時間が長いので、ちょっとだけ上手いっていう(笑)。
ーー単純に体調が良くなるなどはありますか?
たかはし:精神的には良くなりますね。ストレスが発散される気がします。
ゆきやま:社会とつながってる感も出ますし、人とつながってるなと感じます。
海:今まで内向きのライブをしてたというか……3人でライブをしているところをみなさんに見てもらう感じだったんです。それが今回、ちゃんと外に向いたというイメージですね。曲もそうなんですけど、それがあるから対話する感じがすごく出ている気がします。
リーガルリリー
ーーそして、『the World Tour』の追加公演も兼ねて『海の日』が開催されます。毎年この時期に開催されていますが、今年の『海の日』はコンセプチュアルな内容になりそうですか?
たかはし:そうですね、色々と練っています。元々考えてライブをやるのはあまり好きじゃなかったんです。どこでも自然体でやりたいと思っていて。だからその場でできる楽器を使って、3ピースでバンドをやってきたんですけど、でもなにか他にもできることをやってみようと思いまして。音楽以外のことを考える余裕ができたのかな、と。
海:ライブ本編自体はいろんなこともやりたいなと思ってるんですけど、3人が自然体でやるっていうことは変わらず、空間作りーーライブが始まるまでや終わった後など、そういう一日全体に目を向けたライブにしたいな、とは思ってます。
ゆきやま:いつもライブとなると、持っている曲でいかに綺麗な波を作るかっていうところを考えるんですけど、ちょっとコンセプトが入るだけで波の作り方が変わってくるんですよ。そういうのって今までやったことなかったので、いつもできない曲とかも入れられるし、私たちも新しい気持ちでライブができるなっていう気持ちはあります。
ーーちなみにそのコンセプトは言葉にできる何かはありますか?
海:まぁでも……“東京”です(笑)。やっぱり「東京」っていう曲も出したし、リーガルリリーが思っている東京をしっかり可視化というか、形にする一日なのかなとは思っていて。
ーー皆さんにとっての東京は、生きている場所だということは曲で理解したのですが、今回コンセプトに掲げたのは、楽曲が示していたものより大きなテーマになったということですか?
ゆきやま:ほのかが作ってきた曲って自然と東京に触れてることが多いんですよ。それで今回、「東京」っていう曲を出したことによって、改めて気づいたところがあって。
たかはし:確かに。
ゆきやま:そういう目線で見て、セトリを組んでみようよって。ほのかが過ごしてきた時間軸に伴って東京の見方が少しずつ変わってきているので、そんな部分にフィーチャーしました。
海:ほんとに“歩み”って感じだよね。リーガルリリーと東京の歩み。
たかはし:東京の中に自然を見つけるのが好きで。子供の時から自然が好きだったので、やっぱり楽曲制作にも自然は結びついているんだと思います。
ーー人が決める東京ではなく、たかはしさん個人にとっての東京?
たかはし:そうです。個人的な。
ーーそして、前回のZepp Tokyoのライブの時は皆さんの小さい頃の写真を掲出していて。今回はリキッドルーム自体をどのように構成されるんですか?
海:今回のアーティスト写真を写真家の池野詩織さんに撮ってもらったんです。その方とのコラボという形で、東京にまつわる写真展をして、より深く「東京」を見てもらいたいなと思っています。
ゆきやま:会場の入口から世界を作ろうってね。
ーー池野さんはバンドなどの日常的な素敵な写真を撮られていて。
ゆきやま:ですよね。今回撮ってくださったアーティスト写真も素晴らしすぎます。
ーー出来上がったものを見たらそうだなと思うんですけど、なかなかすごいカットですね。
たかはし:この時、私、本当に何も考えてないんです。
ゆきやま:私も考えてない。「寒いなぁ」ぐらいで。
海:何も考えてないのに何か考えてる顔をしてる(笑)。
たかはし:そうそう。それで、何も考えなくていいんだ、意味がなくていいんだと思って。そういう自然、花みたいな写真だなと思ったんです。
海:でも池野さんの写真って、日常ではあるけど、一瞬輝く瞬間が切り取られている感じがするんです。そういうものをたくさん集めさせてもらって(笑)。
ーーいいですね。
ゆきやま:ちなみに今回のインタビューの写真も、池野詩織さんにさっき撮っていただいて。
ーー「海の日」につながって行くわけですね(笑)。
海:全てはこの日のために!(笑)
リーガルリリー
ーーところで、テーマ性をもったライブをやろうと思ったきっかけってなんだったんですか?
たかはし:最近よくいろんな人の展示などを見に行くんですけど、その人の肉声をBGMで流していたりするんですよ。そうすると、絵だけじゃなくてその絵を描いた人の肉声も表現なんだなと思えて。そういうことをリキッドルームで表現したいと思いました。
海:例えば、写真であったり、絵であったり、そういうものを表現する人って、写真・絵・音楽だけではなくて、全てがつながっているというか……芸術は何も境目がないなって最近気づいたんです。頑なに“音楽だけ”って拘らなくていいのかなって。いろんなものを通して、よりリーガルリリーを知ってもらうじゃないですけど、そういう日が年に1日ぐらいあってもいいのかなという思いです。音楽だけじゃなくて、いろんなものを通して見て欲しいなと思います。
たかはし:その音楽に関わったものたちを集めたいというか。
ーーじゃあ会場に入ったところから世界観があると。今回、池野さんの写真以外に計画していることはありますか?
海:それこそ、BGMとかその空間を感じられるものがあればいいなと思う。
ゆきやま:あと、いつもはやらないんですけど、今回来場者向けのパンフレットを作ってみようと。そこにメンバーそれぞれの文章を載せて、それもライブと合わせて楽しめるようにしようよって。
たかはし:最近3人でブログを書いてて……私は全然更新してないんですけど(笑)。
ゆきやま:ほのかは歌詞書いてるからね(笑)。
たかはし:そうだね(笑)。
海:去年の7月5日はコロナ禍というのもあって、『海の日』のライブができなくなって。だからというわけじゃないですけど、メンバー3人それぞれの個人のブログ=リーガルリリーの部屋を開設した日なんです。「たかはしほのかの部屋」「ゆきやまの部屋」「海の部屋」の3部屋があって、まるでメンバーの頭の中が覗き込めるような場所にしています。その意味も込めて3人それぞれをちゃんと知ってもらおうと……そういうお土産じゃないけど(笑)。
たかはし:お土産(笑)。
海:というのも、ちょっと考えてます。
ーーそういえば海さんのブログの文体はクールですね。
ゆきやま:クールだね。
海:(笑)。
ゆきやま:私すごく好き。
ーー文章で書くとまた違うキャラクターが出てくるといいますか。
たかはし:文章っていくらでも自分のいいところを出せるじゃないですか。作れるというか、その人のこだわりやセンスがすごく出るというか。だからすごく好きですね。
リーガルリリー
ーーなるほど。そういえば、『海の日』は最初の2018年の渋谷クアトロから見ているんですけど。
たかはし:海ちゃんが加入したときですかね。
ーー覚えてますか?
ゆきやま:急に発表したんじゃなかったっけ? アンコールかなにかで急に発表しようってなって、でもマネージャーがその場にいなくて。それで、近くにいたイベンターの方に許可を。
たかはし:そのイベンターさんいつもニヤニヤしてる人なんですけど、でも一応大人に許可取ろうと思って。
ゆきやま:ダメとは言わない人に言っておこうってね(笑)。
たかはし:二十歳の強い力で。
ゆきやま:で、突然発表してマネージャーびっくり!みたいな(笑)。
――たかはしさんが「この人だっていう人を見つけた」ってMCで言ってましたね。
たかはし:そうですね。確かに。
ーーこの3人で動き始めてからの日々は濃いんじゃないですか?
ゆきやま:そうですね。今年、4年目か……。
ーー夏なのにリーガルリリーのライブは一瞬、ひんやりする空気があったことも覚えていて。
海:毎年同じ日にライブをしているからこそ、「今年のリーガルリリーってこんな感じなんだ」っていうことをこれまでと比べて分かってもらえる日なのかなと思ってて。昨日急に思い出したんですけど、私今までコーラスをしながらベースを弾くっていう行為をやったことがなかったんですよ。それこそ3年前とか、どうやってマイクに向かって弾けばいいのか分からなくて。家の電気を点ける部分あるじゃないですか、あれをマイクの代わりに(笑)、歌いながら弾く練習をしてたんです。それを昨日ふと、「あ、自然にできるようになってる」と思って。やっぱ「長いんだな」と思っています、最近。
リーガルリリー
リーガルリリー
ーー2019年のWWWも覚えてますね。うみのてとの2マンで。笹口さんが「うみのてってバンド名だから呼ばれたわけじゃないんですけどね」と言っていた記憶が。
海:よく覚えてらっしゃる(笑)。でもそんなこともまるで考えてなかったよね?
たかはし:うん。うみのては絶対に対バンしたいと思っていたんです。
ーー面白い対バンでした。
ゆきやま:またいつかやりたいですね。最近、対バンを全然やってないので。
たかはし:そうだね。対バンって難しいですよね。
海:それこそコンセプトがあったりする時は映えるんですけど。
たかはし:なんか『ハム太郎』の後に『ゴジラ』じゃなくて。あ、映画での例えなんですけど(笑)。
海:でも『ハム太郎』と『ゴジラ』じゃなくて(笑)、『ゴジラ対モスラ』をやりたい。
たかはし:ああ! そうだね。バンドを始めたての頃は女子高生だったので、結構ゴジラ枠みたいなかっこいいバンドと一緒にやりたかったんですよ。「私たちハム太郎やるので」みたいな。でもちょっと年齢も年齢なので、私たちもゴジラをやろうかといいますか。
海:ちゃんとぶつかっていける。
ーーこれまでも全然『ハム太郎』じゃなかったですよ。
一同:あはははは(笑)。
ーー最近の状況だと、2マンって転換の時も人が動かないし、お酒も出してないですよね。
たかはし:なるほど。ドリンクカウンターに行かない……じゃあ会場BGMを凝ったりできますね。
ゆきやま:お酒に頼らない生活ってあまり想像できない。
ーーライブ会場は今、お酒で盛り上がる感じじゃないのは確かですね。あと、ライブの時の演出は考えてらっしゃるんですか?
たかはし:さっきの話に繋がるんですけど、ライブハウスはお酒を飲む環境が難しくなってしまったので、演出等をしっかりやろうかなと思ったのかもしれない。私は、ライブハウスという場所は、お酒を飲んで、その合間にライブを見るイメージがあったので。もちろんこれまでも演出は疎かにしていないですけど(笑)、そこまでしっかりと考えていなかったのかも。でも、そういうお酒を飲みに行く場所ではなくなったので、舞台みたいな感じにしようと思って。その中でのアドリブとかもかっこいいんじゃないかなと。作り込んだ上での奇跡というか。
リーガルリリー
ーー距離をおかないといけないからか、むしろお客さんの反応は自然になった気もします。
たかはし:やっぱりかっこ悪さとか、ダサさって可愛いじゃないですか。そういうのが人間味で、実際目の当たりにして安心するのもライブだと思います。みんなほっとするんじゃないかなと思って。どれだけ無理をしないか?というところで、無理をすると失敗するので(笑)。コロナ禍でも無理をしない。
海:こういう時だからこそ、無理をしなくても許されるというか。それをすごく楽しんではいます。
たかはし:うん。無理をしない努力はしてます。だからたくさん考えていて。
ーー言わばリーガルリリーというメディアを使って、皆さんが共感しているものを広げていく場所?
海:そうですね。本当に可視化するとするならば、円が何個かあって、重なってる部分を共有して作って、出していく日という。
ーーすごく楽しみです。もちろん演奏が一番楽しみではあるのですが。
たかはし:良い意味でライブをBGMとしても聴いてほしいというか。自信を持って、BGMとしての音楽もやってみようと思いました。人は“誰かのためになりたい”って思って生きていると思うんですけど、コロナになってその気持ちがより強くなりました。世界の構造とかが変わってしまったので、この変わった中で、どう人の役に立てるかとか、そういう気持ちで考えなければいけなくなったので、音楽も変わるかもしれない。
ーーたかはしさんが考える世界の構造の変化ってなんですか?
たかはし:“モノをみんながどう思うか”ということが、多分変わったと思うんですよね。今まではモノを見て“こう思う”っていうのは習慣化していて。例えばマスクにしても、当たり前がウイルスによって世界規模で変わったと思うので、人間の心理的な変化を感じます。だから音楽も変わります、というか……どうすればそういう変化をして行った人たちのためになれるかな、と思っていますね。

文=石角友香 撮影=池野詩織

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