市原隼人(メーク:大森裕行(VANITES)/スタイリスト:小野和美)

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【インタビュー】映画『リカ ~自称
28歳の純愛モンスター~』市原隼人「
リカが夢に出てきそうです(笑)」

 第2回ホラーサスペンス大賞を受賞した『リカ』シリーズが、ドラマ化を経て、ついに映画化。『リカ ~自称28歳の純愛モンスター~』として6月18日から公開される。本作は、幼い頃から愛に恵まれなかった雨宮リカ(高岡早紀)が、運命の男性を手に入れるために、最恐の“純愛モンスター”と化していくさまを描いたラブサイコスリラー。殺人犯となったリカを追いながら、次第にその怪しい魅力に引かれていく警視庁捜査一課の奥山次郎を演じた市原隼人が、映画の見どころなどを語った。
-オファーを受けたときの感想を教えてください。
 長く愛されてきた作品ですので、映画で参加できることをうれしく思いました。リカは一見、偏った感情を持った人間に見えますが、普遍的な存在でもあり…。つまり、誰もが一瞬の選択肢を誤ることよって、リカのような人間になってしまう可能性があるのではないかと思います。
-市原さんは、狂気の愛を描いたこの作品をどのように捉えましたか。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                             
 僕らは社会で生きる中で、ルールや規則、秩序、価値観などを植え付けられていくのですが、リカという人間は常に1人で育ってきたような人間で、自制心がない。ある意味、ありのままの人間の私利私欲を見ていただける作品だと思います。この作品を見て、悲鳴を上げるのか、声高らかに笑うのか、あるいは自身の代弁者と捉え、リカの行為を見て気持ち良くなるのか…。お客さまが自分で自分を試せるような作品になっています。
-リカを演じた高岡早紀さんとは初共演でしたが、印象はいかがでしたか。
 すごい女優さんだと思いました。芝居で、ちょうどいいところで、一筋の涙をパッと流すシーンがありまして、素晴らしいなと。しかもカメラに近い方の目から流すんです。すごく柔軟で、透き通ったイメージ。どこにいても違和感がないような方です。そんな自然な方がリカを演じるからこそ、恐ろしくなるのだな…と感じました。
-婚約者で同僚の孝子役を演じた内田理央さんとの共演はいかがでしたか。
 理央ちゃんも自然体でいてくださったので、演じやすかったです。印象的だったのは、給湯室のシーン。結構せりふも多く、これは時間が掛かるな…と思ったシーンの撮影が、すごく早く終わったんです。テストもあまりせず、段取りもそこまでせず、一気にバーンと撮って「OK!」みたいな。それを一緒にやり遂げたぞ、ということで同志みたいな気持ちが芽生えました(笑)。
-そんな次郎ですが、劇中ではリカに魅了されるような描写もありました。
 次郎には孝子という大切な存在がいるのに、なぜリカにそこまで引かれてしまったのか。そこは慎重に演じました。高岡さんとは、初日がキスシーンだったので、恥ずかしかったです。それはすごく覚えています。自分でも、何という世界観なんだ、と思っていました。まさか『リカ』でキスシーンがあるとは思わなかったので(笑)。
-次郎がなぜリカに引かれてしまったのか、その答えは出ましたか。
 人間、誰しも弱い部分があって、どこかにトラウマを抱えていると思うんです。どんなに気丈に振る舞っている人でも、手を伸ばして助けてもらいたい一面があるはずで、次郎は、それがちょうど、リカという存在と重なってしまいました。最初、刑事役ということで、肉体的なアクションシーンをイメージしていたのですが、実際に演じたのは間違いなく、精神的な内面の深いところでの心理戦でした。
-結局、次郎はリカを本当に好きになったのでしょうか。
 すごく難しい。答えがないのが次郎なんです。警察官、公務員であり、いろんなものを背負いながらも、常に中立の立場で人間を見る次郎が、基準が分からなくなる瞬間が出てくる。そこから、迷子になって、怒濤(どとう)のように、リカに転がされてしまう。僕自身、リカは自分の犯した罪を償うべきだと思うのですが、リカ自身を責めることが、途中で、できなくなってしまいました。
-責めることができないとは?
 今回、リカの人格形成に関わる幼い頃の話なども少し出てきます。善と悪は紙一重であって、それぞれに正義がある。誠実でまっとうな人間に正義があるように、悪人にも正義はある。よく母に「人の罪は恨んでも人は恨むな」と言われたのですが、確かにその通りで、自分がそうなるつもりがなくても、リカは必然的にそういう人間になってしまった。僕は、奥山がリカを何かしらの形で、助けることができるのではないかと思ってしまいました。
-リカは、「愛しているから」という理由で、相手を壊してしまうような女性ですが、理解できる部分もあったということですか。
 共感する部分はたくさんあると思います。人は瞬発的に何かを思っても、その感情を抑え込んで生きているわけで、僕もその1人だと思うので…。ただ、リカが誰かを好きだからといっても、自分の私利私欲を相手に押し付けてはいけないですよね。見終わった後に、感想を話し合ってもらいたいです。それが夫婦であっても、カップルであっても、友達同士でも、笑ってキャッキャ言いながら、話が止まらなくなると思います。あなたはリカを許せるか、許せないか。理解できるのか、理解できないのか。周りにリカのような人はいるのか。あるいは、自分自身がリカなのではないかとか…。
-自由に楽しんでもらいたいと。
 お客さまの好きなように見ていただくのが映画ですから。これはもうお客さまの特権です。この猟奇的な行き過ぎた愛を持った女性を、非現実的なコメディーとして楽しんでいただいても構いません。僕は、生々しい人間の本質をくり抜いた衝撃的な作品だと思いました。
-リカの超人的なアクションも見どころですね。
 今回、刑事役なのにアクションシーンがないことを少し残念に思っていたのですが、リカが終盤で披露したアクションを見て「あ、これには勝てないな…」と思い納得しました(笑)。リカって何なんでしょうね。もしかしたら、現実には存在しない、人が心に抱えている感情そのものなのかもしれません。そう考えると、超人的な、理解不能な描写が出てきても、つじつまが合う気がします。恐ろしくもあり、なかなか忘れられないような作品です。リカが夢に出てきそうです(笑)。
-リカは「自称28歳」ですが、高岡さんが演じるリカにそう言われてもあまり違和感を覚えませんでした。
 そうなんです。「あっ、28歳なんだな…」と。リカに概念を持ったらいけないですよ(笑)。映画を見てもらえたら、分かります。皆さんにも、早くリカの世界に入っていただきたいです!
(取材・文・写真/山中京子)

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