YuNi VSingerとしてメジャーデビュー
アルバムを語った「3Dという見た目
の垣根を超えていきたい」という思い

YuNiが6月16日にメジャーデビュー初のアルバム『eternal journey』をリリースする。VSinger(バーチャルシンガー)としてパイオニア的存在の彼女が八王子PやGiga、YUCʼe等、様々なクリエイターたちと制作に挑んだ楽曲を収録。さらにダンスや作詞にも新たな挑戦として活動を広げるYuNi。今回のインタビューでは、代表曲「透明声彩」に続く楽曲に込められた思いや、メジャーデビューの心境の変化について語ってくれた。巻末には貴重なサインプレゼントの応募方法も記載しているので、最後まで是非目を通してもらいたい。

――メジャーデビュー初のアルバム『eternal journey』のリリースおめでとうございます。アルバムリリースに対して今どのような気持ちでしょうか?
まず、メジャーデビューすることで、ずっと応援してくださっているファンの方が「YuNiちゃん変わっちゃった」と置いていかれてしまったという気持ちにさせたくないと思いました。でも"新しいYuNiも出したい”という気持ちもあり、「ポジティブな気持ちで(メジャーに)いくよ!」という思いは伝えたくて。あとは、メジャーになってから環境が変わった部分も多くて、周りのスタッフがとても頼もしくて自分の事や音楽に集中できるようになったんです。不安やプレッシャーもありましたが今は楽しみだという気持ちに変わってきています。
――メジャーデビュー後パフォーマンスに対しての意識が変わった部分はありますか?
今までは歌うことだけを重視していたんですけど、バーチャルの表現がもっと映える形にしていきたいと思いました。例えば「DAYZ」のMVでは、自分が持っている3Dという特性や強みを生かしたいと思って。今までダンスは踊ってこなかったのですが、踊りをいれてみました。
――「DAYZ」はYuNiさんの様々な表情を見ることが出来る作品でとても素敵でした! できあがったMVを最初に見たときはどう感じましたか?
ファンの方には”パリピYuNiちゃん”と言われちゃったんですけど(笑)。 今までは決まったイメージの中で作ることが多かったのですが、今回はすごい豪華で派手で、テレビの中やパンケーキ、南の島とかどんどん場面が切り替わって、歌い方に合わせた表現のバリエーションが詰まったMVになっています。
――「DAYZ」のダンスはどのような経緯で作成されたのでしょうか?
MVとTikTokで動画を公開しているのですが、サビの部分のダンスを変えています。TikTokから新しい音楽を知ることが多くて、流行りに乗る……っていっても結構遅いかもしれないんですけど(笑)、YuNiのダンスを一緒に踊って、頭から離れないようにさせたいと思って難しすぎない挑戦したくなるようなダンスにしてもらいました。
――今回はダンスだけでなくラップにも挑戦されていますが実際に歌ってみていかがでしたか?
普段はふざけて「まあラップでもできたらいいですね!」とか言っていたんですが、本当にやることになり焦りました。というのも昔からカラオケでラップを歌うと笑われていたんですよ。
――え?それはまた何故?
かっちょ悪いからですね(笑)。 しかもGigaさんにもらった仮歌がすごいかっこよくて「やばい!」と思いました。そこからラップに向き合って、練習して家で録音してみたんですがダサいラップになってしまったんです。その後はGigaさんのラップを大音量で聞いて、どこでアタックや抑揚をつけているのか研究……というか完コピしました。実際ご本人の前で歌った時に「うちのイントネーション完コピやん」って言われてしまいました(笑)。できたラップはそこに普段の自分の喋り声を足してYuNiっぽい感じを出したものです。
――Gigaさんはラップの師匠ですね。
師匠ですね!「Giga姉」って呼ばせていただいてます(笑)。
――5月14日に放送していた『「DAYZ」MV公開直前生放送!』の配信の中で「「DAYZ」は新しいYuNiにぴったりの曲」と仰っていましたが、どのようなところがぴったりの楽曲なのでしょうか?
「DAYZ」は今までのYuNiの印象と違う楽曲だと思っています。今回、アルバムのリード曲を考えた時に、メジャーというタイミングで新しいものに挑戦していく、かつ新しい自分も出していける楽曲が良いなと思ったんです。「DAYZ」はひとつの声色じゃなく、かっこいいYuNiや可愛いYuNiを出すことができるので、初めて聴いてくださった方には「こんなに歌声やキャラクターの種類があるんだ」と思ってもらえると思うし、これまでも応援してくださった方には「あの時のYuNiちゃんの声だ」と思ってもらいたいっていう意味も詰まってるんです。しかもアルバムのタイトルが『eternal journey』で「終わりなき旅」という意味なので、メジャーデビューの出発を華々しくポジティブでハッピーに迎えたかったという思いが詰まっているんです。
――新たな挑戦といえば「ユニークアビリティ」で初めて作詞を担当されています。こちらはどのような想いで制作されたのでしょうか?
「普段YuNiちゃんがどういうことを思っているか歌詞にしてみてほしい」という声は以前からいただいていたんですよ。普段から思っている事と、ストーリーをなぞるだけじゃなく、宝箱を全部開けてレベルもMAXにして、という自分の完全攻略型のゲームスタイルを掛け合わせた歌詞にしようと思いました。
――なるほど。
私は応援ソングより人間の内側を描いた歌詞が好きなので、曲調はとてもポップなのですが、それに合わせて明るい曲は書けないし、綺麗なことだけ言っている自分を見せたくないと思って歌だからこそ言えることを歌詞にしました。
――歌詞も印象的な部分多かったですね、結構スパイシーな言葉の選び方をされているな、と。
世の中を砂鉄に例えてしまったのですが「これが流行ですよ」と出されたら何かもわからずに飛びついていく、本当に自分が良いと思ったものなのか、それともただ人気な物に飛びついて満足しているだけなの? という気持ちを歌詞に入れました。人気に左右されないで好きなものを好きと言える自分でありたいということをテーマにしてます。
――直接的な言葉じゃなく歌だから言える言葉もありますよね。
そうですね。批判したいとか自分の考えを押し付けたいわけじゃなく、気持ちを表す手段として歌で表現しています。
――今回、アルバム制作に参加されている方々もとても豪華です。印象に残っているレコーディングはありますか?
どのレコーディングも新鮮で印象的だったのですが、特に「透明声彩」の続編の曲として制作していただいたYUC'e氏との「光風声月」が印象的でした。
「透明声彩」は初めてレコーディングをした曲だったんですけど、YUC'e氏も初めてディレクションを担当した楽曲でお互い初めての経験だったので、そこから比べてお互い成長していたことも印象的でしたね。そのレコーディングからYUC'e氏とはプライベートでもお付き合いがあってお互いの辛いことも話し合ってきたんです。
――おお、そこから繋がった縁なんですね。
私の内部事情もたくさん知っていてくれていたので、レコーディングの時に「私はYuNi氏の今までを全部知ってるから、そういった思いを込めてこのフレーズを歌って欲しい」「ここはYuNi氏のあの大変な時期を思って書いたよ」と<複雑なしがらみを断ってここに立ってたんだ>という歌詞に込めた想いを教えてくれて、言われた瞬間に涙じわって出てきちゃいました。
――それは凄い嬉しいですよね。
はい、それを聞いたあとに録ったフレーズは全然違いました。アルバムの中で1番うるっときたレコーディングです。今でもその歌詞を聞くとうるっときてしまいます。この楽曲はYUC'e氏にしか書けないし、「透明声彩」からの3年間のいろんな思い出が明確に頭の中に浮かび上がる曲です。
――すごく想いが込められた楽曲なのですね、アルバムの最後に選ばれた理由がわかります。他にも印象的な楽曲はありますか?
4曲目の「キライ」ですね。今まで綺麗目な曲が多かったので、ドロドロとした暗い気持ちの歌詞を歌いたかったので、最初の<「キライ、キライ」>っていうフレーズを聞いた時に待ってました! って思いました(笑)。言葉に出さなくても心の中で嫌いとか居なくなって欲しいという思う気持ちは誰にでもあると思うんです。<色彩が奪われるようだ>というフレーズが好きなのですが、ショックだったり憎いとか負の感情になった時って無になったりするじゃないですか。
――わかります、血の気が引くと言うか。
そうですそうです、その明るく景色が見えなる経験を思い出しました。これまで「透明声彩」など色にまつわることを歌うことが多かったので、そういう色彩が無くなるということに関連付けて書いてくださったことをゆよゆっぺさんが教えてくれて、ちゃんと見てくれているんだと感動しました。
――メロディー部分でも印象に残っている楽曲はありますか?
メロディーでも「キライ」の入りかたが今までのYuNiの曲には無かった楽曲だったので最初から掴まれました。あとは八王子Pさんが「ポップな曲を久々に書いた」と仰っていたのも印象的でした。
――ここからはYuNiさんについても聞かせてください。VSinger(バーチャルシンガー)として活動を初めて約3年経ち、心情の変化はありますか?
今になって初めてストレスフリーかもしれません。餅は餅屋というか、専門に徹していた人たちが得意分野をやってくださっているので不安が無くなりました。今までの環境だと、全て初めてで何が正解かもわからず、歌だけに集中することができなかったんです。そういう環境のおかげで様々なことに触れることができ、YuNiというものを作り上げることは出来たんですけど、正直、色んなことが気になり出して集中力が分散してしまっていたと思います。メジャーになってからは関わってくださるみなさんを頼りにしているので、自分は音楽に対して向き合えて、スキルアップに集中でき、心が軽くなりました。
――最近はメジャーとインディーズの境目が無くなってきているようにも思います。全てのことに自分も関わりたいというアーティストもいますが、そのように思うことは無いのでしょうか?
3年間やって、自分は1本集中型だということがわかりました。専門分野は専門の方にお任せするのが安心というか、その方が自分も1番ぐっすり眠れています(笑)。
――YuNiさんは歌を中心に活動されていて、いわゆるVTuber的な活動はされていません。他の方の動画を見て目移りすることはありませんか?
うーん……最初は揺らぎましたよ。でも何かをやるにはパイオニアになりたいという願望があって。投稿し始めの頃は批判じゃないですが「ゲーム実況とかトークが見たい」「なんで他の子みたいに動画出さないの?」という声もありましたが、VSingerとしてアーティストになりたいという思いはぶらさずに活動しようと決めました。何か違うものに出たり、トークをするにしても歌に繋げるためという軸を中心に考えています。
――そこまでYuNiさんが音楽に思い入れるのはなぜでしょうか?
いちアーティストになりたいという思いが強くあるからだと思います。色物に見られてしまうこともありますが、インターネット発のアーティストとして今回のアルバムでもボカロPさんやインターネット上で活躍されているクリエイターさん達と組ませていただいています。3Dという見た目に抵抗がある方もいると思うのですが、そういう垣根を超えたいですし、今回のアルバムも自分のアーティストとしての物語や旅を凝縮させた作品だと思うので純粋な気持ちで聴いていただきたいです。
――アルバムリリースを経て今後やりたいことはありますか?
このタイミングで自分の世界を広げたいと思っています。これまでバーチャルだからこそできることを頑張ってきましたが、人とバーチャルの垣根を超え、フィールドを広げていきたいです。音楽を通して認知も可能性も広げていきたいし色んな方に見ていただけたら嬉しいです。
――それでは、SPICEには初登場ということで、記事を読んだ方にぜひ一言お願いいたします。
応援してくださった皆さんがこれからもYuNiについていきたいと絶対思ってくださるアルバムになっております。初めましての方もYuNiが詰まったアルバムになっておりますので、ぜひ1曲1曲噛み締めていただければと思います、そしてこれからも新しい挑戦をしていきたいと思っておりますし、損はさせませんので、広い景色を一緒に見ていきたいと思っております。YuNiをこれからもよろしくお願いいたします。
インタビュー=波多野彩花 加東岳史 文=波多野彩花

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