なぜUVERworldのライブがこんなにも
支持されているのか、その理由を知っ
た横浜アリーナ公演をレポート

UVERworld Premium Live 2021 at Yokohama Arena

2021.6.12 横浜アリーナ【14:00開演公演】
UVERworldが6月12日と13日の2日間、それぞれ昼と夜の2公演ずつ計4公演を行った『UVERworld Premium Live 2021 at Yokohama Arena』のレポートだから、本当ならば、筆者が観ることができた12日の昼公演の見どころを伝えるべきだし、伝えなきゃいけないのだと思う。“Premium”と謳っていただけあって、最後の最後にTAKUYA∞(Vo)自ら「びっくりするところいっぱいあったでしょ?」と言ったように見どころ満載の2時間だったのだ。
もちろん、公演ごとに趣向を変えたセットリストも含め、それこそ“Premium”な演出も存分に楽しませてもらった。しかし、筆者が何よりも胸を打たれたのは、実はそこではなくTAKUYA∞をはじめ、この日、UVERworldが我々に見せてくれたバンドの心意気そのものだった。
TAKUYA∞
それは開演早々、いきなりパイロが炸裂し、火柱が上がった1曲目の「Touch off」から、アプリで募集したファンのシンガロングの声を、「これ、みんなの声でしょ? 一緒に歌おう。心の奥で!」(TAKUYA∞)と重ねた「RANGE」、「ODD FUTURE」、そして再びシンガロングの声を重ねた「PRAYING RUN」とテンポよく繋げたところでTAKUYA∞が語った、こんな言葉に如実に表れていた。
「今年初めてのアリーナ公演を楽しみにしてきました。来ることを選んでくれて本当にありがとう。いろいろな事情がある中、(アリーナ公演を)やりたかった理由は、たった一つ。俺たちの音楽の下に集まって、何かを感じて、学んで、成長して、ここからまたスタートすることは不要不急じゃないから! これから音楽がどうなっていくのかわからない。だけど、どこのどいつが俺たちの未来に絶望を感じたとしても俺たちが感じることはない!」
この日、TAKUYA∞は終盤でももう1度、「ここからスタートすることは大切だ。不要不急じゃない。音楽の下で素晴らしい人生を送れるよう後悔しないように生きましょう」と語りかけた。その「不要不急じゃない!」という力強い一言はコロナ禍の中、ライブという生き甲斐を取り上げられてしまったバンドやファンの悔しい思いを代弁しているという意味で、誰もが共感したに違いないと思うのだが、この状況下で横アリ2デイズ計4公演を開催したのにはもう一つ、大きな力に抗うバンドの姿を見てもらいたいという理由もあったからなんじゃないか――。
「普段から不満を言う奴は不満を言う。かっこいい奴らは自分たちにできる範囲の中でできることを見つけて、最高の世界にするんだ!」
「俺たちにはまだ、なくしていないものもたくさんある!」
「じりじり匍匐前進だけど、UVERworldはやり続けるよ!」
そんな言葉を挟みながら、この日、2時間にわたってバンドが披露した全18曲が、どれだけここからまたスタートしようと思っているファンの気持ちを鼓舞したことだろう。ほぼ全曲でTAKUYA∞が語る曲に込めたメッセージや、その曲を作った時の思いを受け止めた上で6人が演奏する曲を聴きながら、我々はバンドの歩みを追体験する。なぜなら、UVERworldの曲は彼らの人生そのものから生まれてきたものだから! その歩みが決して平坦なものではなかったことは、TAKUYA∞のMCや1曲1曲の歌詞からも明らかだが、だからこそファンに語りかける言葉にも説得力が生まれる。
克哉
なぜUVERworldのライブがこんなにも支持されているのか。この日、筆者は改めてその理由を知った。それは、彼らはどんな状況においてもブレることなく戦いつづける姿をファンに見せているからだ。
序盤のブロックが終わったところで、「予想だにしないことが起こる」と真太郎(Dr)が言った“予想だにしないこと”とは、その直後のサプライズのことだったのか、それとも中盤のセットリストのことだったのか。
「計4公演の1回目を最高にしたい。変なふうに聞こえるかもしれないけど、ボトムアップした上で、そこを超えたい」
真太郎からMCをバトンタッチされたTAKUYA∞が語った、そんな言葉からも並々ならぬ意気込みが感じられたが、その直後、「一滴の影響」を挟んで、「本邦初公開! これが完成形!」と披露した「来鳥江」では、ゲストボーカルに20年来の付き合いだというミュージシャン、愛笑む from 徳川eq.に加え、なんと俳優の山田孝之(!)を迎え、TAKUYA∞を含めた3人でボーカルをリレー。まさに“Premium”と謳うにふさわしいサプライズが観客を歓喜させる。
そして、サプライズはもう一つ。パーティー感を演出したその「来鳥江」から「誰が言った」を挟んでからの中盤のブロックでは、「こんな時だからこそ歌いたい。聴いて欲しい」とTAKUYA∞が語りかけながら、「白昼夢」「美影意志」「THE OVER」「終焉」というバラードナンバーの数々を久しぶりに、しかもステージの中央に突き出したギリギリ6人が収まるスペースで真太郎も含め、肩を寄せ合いながら披露した。
「ゆっくりした曲を続けてやるなんてこと滅多にないけど、ちゃんと聴かせたいという気持ちが募ってきた」というTAKUYA∞の言葉が、その“Premium”感をぐっと上げる。
信人
そして、そこから一転、ドラムを打ち鳴らす真太郎の前に彰(Gt)、誠果(Sax/Manipulator)、信人(Ba)、克哉(Gt)が一列に並んで演奏したダンサブルなインストチューン「Massive」から始まった後半戦。「アガッていこうぜ! 最高のUVERworld見せます!」とTAKUYA∞が客席を煽ってから、「Q.E.D.」、そしてEDMをラウドロックなバンドサウンドに落とし込んだ「IMPACT」に繋げると、観客が全員、手拍子しながらジャンプ。一瞬でダンスフロアと化した会場を眩いライトが照らす中、「RANGE」同様、観客のシンガロングが響き渡った。
「最高だな。これだよ! みんながアプリに入れた声がこの空間で鳴っている。できないことばかり探すのではなく、俺たちは納得できるライブをやっているんだ!」(TAKUYA∞)
昨年、UVERworldがさまざまな規制がある中、有観客ライブを再開した当初はもしかしたら、手探りだったのかもしれない。しかし、回数こそ以前に比べれば少ないながらもライブを重ねてきた今現在、彼らが掴んできた手応えは確信に変わった。
誠果
「流星群からはぐれ、彗星になった自分たちを見つけてくれてありがとう」とファンに感謝を伝えたリズミカルな「AFTER LIFE」、前進し続ける決意を歌ったバラードの「7日目の決意」とタイプの異なる2曲を繋げたあと、「自分たちの大好きな曲を大好きに人に届けられて幸せでした!」(TAKUYA∞)と最後を飾ったのは未発売の新曲「EN」。
「どんなに悲しいことも希望に変える力がある。そんな誓いの曲です」(TAKUYA∞)
「生きるんだ!」というメッセージを込めながら、「音楽は遊びじゃない。ビジネスじゃない。人生の全てだ」と考えるUVERworldの信条を、TAKUYA∞がエモーショナルに歌い上げるスポークンワード・ナンバーは、昨年12月の5日間10公演(横浜アリーナ・日本武道館・福岡マリンメッセ)で披露した時とはまた形を変えていたという。
真太郎
ライブで披露しながら徐々に完成に持っていこうということなのか。それとも、音源化することよりも何よりもまずライブを通して観客に届けることにこそ意味があるということなのか。いずれにせよ、ライブの最後を飾るという意味でUVERworldの神髄と言えるこの曲はぴったりだったと思うし、いずれ音源化するまでに、まだまだ進化していきそうな曲を最後に持ってきたことには、自分たち次第でここからどんなふうにでもできる、という無限の可能性が込められていたようにも思えたのだった。
TAKUYA∞
「(こんなご時世だけに)またいつ会えるかわからないから、メンバー一人ひとりに喋ってもらって終わりたいと思います。また会いましょう」とTAKUYA∞に促され、メンバーたちがそれぞれに語った言葉を記して、このレポートも終わりたいと思う。
「めちゃめちゃうれしいです。感謝の気持ちでいっぱいです。幸せでした」(信人)
「こうやって会える時間が楽しいし、いい時間を共有できました。その回数を増やしていきます」(克哉)
「こんなに集まってくれてすごく幸せです。フルキャパで、声を出してできることを祈りながらがんばっていきます」(誠果)
「(記念撮影をして)ありがとうございました!」(彰)
「6月6日に結成21周年を迎えました。22年、23年、30年を目指してバンドを続けていくので、みなさん、応援よろしくお願いします。大きな拍手、ありがたく思ってます」(真太郎)
その一言一言がライブ中は黙々と演奏することに全力を注いでいる彼らもまた、エネルギッシュなフロントマンに負けないくらい熱い思いを持っていることを物語っていた。
取材・文=山口智男 撮影=森好弘

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