【vivid undress インタビュー】
地獄から愛の歌を
歌えるようになるまでのひとつの物語
自分らしく生きていくことの
大切さを歌いたい
「オリジナルカラー」のサウンド面に目を転じるとサビメロには開放感があって、いわゆるJ-POPと呼んでいい親しみやすいナンバーではあるものの、サイケなイントロ、チャイナっぽいギターと小技が効いてて、実は結構凝ってますよね。
yu-ya
凝ったように聴こえないように凝ったというか(笑)、“凝ってますよ”というところは出ないけど、ちゃんと聴き手がイメージできるように意識はしました。
あと、歌詞は今日的なテーマとリンクしていますよね。人種のことやLGBTのことなど、その辺のピュアさも感じるところですし、オープニングに相応しいと思います。
kiila
曲が出揃った時、これがアルバムのオープニングで間違いないとサウンドだけで思ったんです。私からすれば誰もがマイノリティーなんですよ。みんなに個性があって…例えば、口にはしないけど抱えている病気があったりとか、表に出さない家庭環境があったりとか。そんな中、他人の目を気にして生きることは苦しくてしょうがないから、自分らしく生きていくことの大切さを歌いたくて、こういう歌詞にしました。
エンタメに身を置いていると余計に敏感に感じるところかもしれませんね。“いい齢なんだから、そろそろ将来を考えて”みたいな話は出がちだし。
kiila
“普通は〜”とか“常識的には〜”とかですよね? そこに乗っかるだけが幸せじゃないし、各々にとっての幸せってきっとあるから、“好きに生きればいいよ! どうせいつかは死ぬんだし!”みたいな。なので、これもぜひたくさんの人に届いてほしい曲ですね。
「R-15 〜愛のゲイン〜」はどうですか? 先ほど、kiilaさんは“ラブソングは一概には恋愛だけじゃない”とおっしゃいましたが、《あぁ 君とキスしたいんだ/キスしたいんだ 早く》というドキッとさせる歌詞で、こちらはストレートに恋愛を綴ったものなのかなと。
kiila
愛のかたちをさまざまに表現したくて、その中のひとつですね。愛には欲望的なものがあるから、そういうセクシュアルなことも表現したくて。欲求みたいなものが一番高い時って、私は中高生くらいだと思っているんですけど、その時の気持ちってダイレクトにできないものもあるじゃないですか。“まだ若いし”とか“恥ずかしいし”とか、そういうものを代弁した曲を作りたくて。でも、私は大人なので“15歳以下には聴いてほしくない”という意味も込めて“R-15”にしたんですけど(笑)。
衝動ですかね。相手を好きになってしまって、何も考えずにキスしたいと思う気持ちという。
kiila
そうですね。言ってしまえば、性欲っていうことだと思います。そういうものを表現したいし、それはきれいなものじゃないというか。愛とか恋とかってきれいなだけじゃないし、そういう部分を表現する人があんまりいないから、汚い部分も愛の一部として表現したいというところがありましたね。
“汚い部分”とおっしゃられたものの、サウンドはファンタジックというか。
kiila
そうですね。みんなにサウンドアレンジをしてもらう時に“ダークファンタジーな感じで”と伝えていて、ちょっと現実離れしたような感じにしたかったんです。目に見えているものだけが世界の全てじゃないし、そういう人間の内側の部分って私の中ではファンタジーなんですね(笑)。例えば、普通に会話していても“何なん、こいつ!?”って思っているかもしれないし、逆に“この人、めっちゃ好き”って思っていたり、何を考えているか分からないのがファンタジーという。その感じを表現したかったんですよね。
そうですか。こうしてお話を伺うまでストレートにファンタジーだと感じ、キスにしても“チュッ♡”くらいにとらえてましたので(苦笑)、今、話を聞いてて少しドキッとしたところではあります。
kiila
結構、暴走寸前のヤバい奴という感じなんですよ、私の中では(笑)。
でも、それも分かります。中盤でもアウトロでも結構バンドサウンドが暴れているところはヤバい感じですもんね。そうした歌詞で描こうとしたことと、サウンドとのフィット感というのは、今回の作品で目指したところだったりしますか?
kiila
めちゃくちゃ目指したところです。フォルム的に言うと、めちゃくちゃ清純な女の子がめちゃくちゃ性欲強いとか、めちゃくちゃメンヘラとか、そういうイメージなんです(笑)。だから、リズムはあんまり難しいことをしないでほしいと言ってて…4つ打ちでずっとビートを刻むような感じで、グチャグチャになるところだけ、めっちゃグチャグチャにしてほしいと言って、緩急をつけてやってもらって、ギターはギターで“破滅してほしい”とお願いしましたね。アウトロは“長いよ”って言われたんですけど、最後にかけて崩壊していく感じを表したかったんで、“最後にかけてぶっ壊れてくれ”って言ったら、ちゃんと理解してやってくれました。
確かにアウトロのギターは半端ないですね。
yu-ya
ちょっと気持ちがおかしくなってる雰囲気で作りました(笑)。コード感にしても何にしても。
yu-ya
僕の中では『AKIRA』だったんですよ。歌詞がまだ全部なかった時に、ちょっと頭のネジが飛んでるんだけど、ちょっと暗い感じというのは、僕の中では『AKIRA』の世界観で作りました。