井上芳雄が「王子役の集大成」として
臨む!? 新作舞台『首切り王子と愚か
な女』取材会&ゲネプロレポート
初日を前に行われた取材会とゲネプロ(総通し舞台稽古)の様子を写真と共にお伝えする。
井上:初日を迎えるのはいつもドキドキするのですが、こういう中で、とにかく今日まで漕ぎ着けたというか、一人も欠けることなく初日を迎えられたことが一番嬉しいですね。完全な新作なので、ちょっとまだ想像つかないんですけど、早く見てほしいと思っています。
伊藤:舞台は4年ぶりなので、シンプルに吐きそうなんですけど(笑)、でもすごくこの作品はとても大切だし、大好きなので、たくさんの方々に見ていただきたいです。今、このご時世で、この時代だからこそ、届いて欲しいなと思うので、精一杯頑張ります。
若村:ファンタジー初出演です。ファンタジーというのはあまりにも深くて、今の時代を反映しているなと感じています。蓬莱さんの世界観を楽しんでいただきたいなと思います。
蓬莱:初日を迎えられない公演があまりにも多いこの時代。初日を迎えられるという喜びと、今演劇をやることを許されている以上、最大限に遊んで、一生懸命、1日1日を楽しみたいと思っています。
蓬莱竜太
蓬莱:芳雄くんと沙莉ちゃんというキャラクターが最初にあって。今はこういう時代なので、あまり現代劇というよりは、お客さんをフィクションの世界に誘って、せめてこの時間は、異世界を味わって欲しいなという気持ちがありました。
この二人が一番格闘しあえるようなシュチュエーションを描きたいなと思って。2人が出会うところからラストまで楽しんでもらえるような舞台を作りたいなと思い、結果、こういう悲惨な話になりました(笑)。
井上芳雄「これが王子役の集大成」?!
井上:はい。蓬莱さんとのタッグは、PARCO劇場で、全部演出を手掛けているわけではないですけど、関わる作品としては4作品目です。自分の中で、PARCO=蓬莱さんみたいなイメージですね。1年前ぐらいに、来年どうしようかという話をしたんです。その時は上演できるかも分からないし、1年後どうなっているんだろうという感じだったんですけど、こういう時だからこそ楽しいものがいいよね、と。
ファンタジーはファンタジーなんですけど、やっぱり蓬莱さんなので、ただ楽しいものにはなっていない。ミュージカルや他のお芝居では体験できない世界をいつも見せてくれる人ですし、蓬莱さん的には僕のフィールドに寄せてくれたというんですけど、全然そんなことないです(笑)。
……まぁ設定が王子ってことぐらいかな(笑)。でも、やっていくうちに、これこそ王子なんじゃないかなと思って、今、やっています。僕の王子役の集大成というぐらいの気持ちでやりたいです。
ーー確かに久しぶりの王子役ですね。
井上:そうですね。オファーが最近来ないので(笑)、王子としては、久しぶりですね。
井上:沙莉ちゃんは小さい身体で、本当によく走っていますね。走る姿が印象的な女優さんで、なんとも形容詞難い……走っているなって(笑)。走るだけで、エネルギーをもらえるし、お芝居をしていて、たくさんのものをくれる素敵な女優さんです。若村さんももちろん素敵な女優さん。みんなと一緒に、目を見ながらお芝居をすれば、最後までいけるという確信があるカンパニーです。
伊藤:芳雄さんは、私がこの舞台に関する取材を受けている時に、わざわざ来てくださって、挨拶してくださって。本当に王子様だなと思いました。見た目も中身も王子様だなと思うんですけど、この世界の王子をやるのも、違和感はない。それは別に傍若無人といっているわけではなくて、切ない顔が似合う人だなと。笑顔も素敵ですけど、そういうところにも注目して欲しいなと思います。麻由美さんは、稽古が始まってから、日に日に元気になっていった感じがする。
井上:いいことですよね!
伊藤:最初はすごく静かだったけど、どんどん私たちが迷っていたところに入ってくださって、アドバイスしてくださって。どんどん生き生きとして……!
若村:人見知りだから(笑)。
井上:みんなそうですよね、このメンバー。
若村:王子は、王子です。首切りだろうがなんだろうが、王子は王子。蓬莱さんがおっしゃっていた「いい奴」というものが滲み出ています。普段から品行方正な方ですし、劇場に来てから一気に“スーパースターパワー”を出しています。沙莉ちゃんは、生きているエネルギーを感じさせてくれる。生命体が舞台の上を走っている。本当にチャーミングです。私は沙莉ちゃんの声が好きなんですけど、誠実にストレートに生きていく彼女にぴったりのヒロイン。毎日、側でみていて、ほのぼのしています。
井上:ありますね。首切るところはアレですけど……なぜそこに至ったかという背景もありますし、最後、2人が選択する結末は、共感もする。今の自分の年齢だからこそ、重ねられるところがあるなと思います。
自分だけが頑張らなきゃということだけではなくて、当たり前ですけど、演劇ってみんなでやっているし、自分も年齢が上がってくると、下の世代やもっと若い人に託したり、つないだりしていかないといけないんだなと思うような結末です。僕が、上の世代にしてもらったように。ファンタジーではあるし、架空の国で、今とは違う時代設定ではあるんですけど、きっと見ている人それぞれに刺さる部分がたくさんある作品だと思います。
ーー癇癪もちで傍若無人という設定だそうですが。
井上:実際の僕には全然ないですけど、願望はあるんだなと思います。すごく気持ちいい。舞台上でそれをやっているので、普段はより優しくなれるかと思います(笑)。役者って、つくづく面白いなと思います。
伊藤:ヴィリの言っていることや、やっていることは全体的に違和感がないので、全体的に投影できている部分があると思います。かなり口が悪い役ですが、すごくセリフは言いやすい(笑)。それから、ヴィリは姉に対する執着がある役ですが、家族に対しての感覚は、共感する部分ではありますね。どういう状況にあっても、家族の前では、子どもというか、素の部分が出てしまう点には、共感しました。
ーーちなみに、伊藤さんの素とは?
井上:あんまり変わらないよね。
伊藤:自分ではあまり分からないですけど、変わりません(笑)。
ーー若村さんは役への共感はされますか?
若村:これは王国の話ですけど、家族の話でもあって。いろいろなセリフに刺さると思うんです。私は子どもを愛するあまりに、大切なものを失っていく、悲しい母親の役。(自分自身は)母親ではないので、共感というとアレですけど、想像力で、どんなにそれが辛かろうというのは分かります。
今、こういう時代で、いろいろな人とお別れする機会も多いので、この作品を通じて、命や、生きていくということを考えさせられています。
蓬莱:ファンタジーを見に来た人には、いきなりこういうセットから始まると衝撃的だと思うんですけど、演劇の想像力の豊かさをそのまま舞台にあげたいなと思ったとき、一番いいのは、稽古場をそのまま再現するということなんですよね。稽古場からスタートして、このシンプルなセットが、どういう風にファンタジーの世界に見えていくのか。そういう演出をしたいと思っています。もちろん帝国劇場とかでは絶対ありえない……。
井上:うん、見たことない(笑)。
ーー役者の皆さんも、なかなか経験ないですよね。
若村:役としてずっと舞台上にいるということはありますけど、こういう経験はないです。
井上:開演5分前からいるんですよね。
蓬莱:芝居の準備を始めていく5分でもあります。
若村:間に合うように会場に来たのに、他のお客さんに「あの人、遅れてきた」と思わないであげてほしいなと思います(笑)
井上:こういう状況ではあるんですけど、そういうことを考えなくても、とても刺激的な作品が生まれていると思います。セットのアイデアも含めて、いろいろなチャレンジングがあって、それがどうお客様に届くのか。どう受け取ってもらえるのか。もちろん緊張もするんですけど、すごく楽しみだなと思っています。
そこで何が生まれるかなと言うのは、お客さんが入ってみないと分からない。決して長い公演期間でもないですし、「みなさん、来てください!」と大声で言える状況ではないんですけど、「来てください」と普通の声ぐらいで言いたい作品です。
ぜひ見てもらいたいですし、演劇というのは、劇場で体験してもらわないと伝わらないと思うので。僕たちは今日から力いっぱいこの劇場でやっておりますので、みなさんと会えるのを楽しみにしています!
『首切り王子と愚かな女』舞台写真
上演時間は、1幕約1時間15分、20分の休憩を挟んで、2幕約1時間10分。人間の真実に迫る「現代の寓話」、ぜひお見逃しなく。
『首切り王子と愚かな女』舞台写真
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