ROTTENGRAFFTYはなぜいまアコーステ
ィック作品をリリースするのか? ミ
ニアルバムの構想とツアーへの想い

ROTTENGRAFFTYが初のアコースティック作品となるミニアルバム『Goodbye to Romance』を6月9日にリリースした。結成20周年を経たバンドがなぜいまアコースティック作品をリリースするのか? その構想から、表題曲「Goodbye to Romance」誕生のきっかけ、そして間もなく始まるアコースティックツアーへの想いをKAZUOMI(Gt)に訊いた。
――新作『Goodbye to Romance』は、エレキギターを使わずに制作したアコースティック作品とお聞きしましたが、構想が浮かんだのはいつぐらいですか?
色々なアーティストの方々も試行錯誤して、今、この時代にライブをされていると思います。去年、呼んでいただいたイベントやライブで思っていたことがあって、ステージ上の僕たちと観てくれているお客さんたちとの、ルールの違いというか。コロナ禍の状況なので仕方ないんですが、ステージ上では歌ってもいいし動いてもいい。でもお客さん側はマスクをして、なるべく声を発しないでください、と。そういうルールがあるライブでは、やっぱり心苦しさを感じていました。その制限の中でも楽しめるライブやツアーをしたいという考えで、アコースティックツアーをやろうと決めました。ツアーをするなら、既存曲をただアコースティックに持ち替えライブをするだけじゃなく、新曲も作ろうと思い、去年10~11月ごろから練り始めました。
――1990年代や2000年代、洋楽のアーティストがMTVなどで“アンプラグドライブ”をよく披露していました。当時、リアルタイムで観ていた世代ですか?
ニルヴァーナだったり、その他にもいろいろなアーティストがアンプラグドライブをしていたのを、僕は若いころによく観たり聴いたりしていました。アコースティックライブは特別新しいことではないけど、ROTTENGRAFFTYはアコースティックライブをやったことがなくて。感染対策をする世界の中で、お客さんと同じ温度感で楽しめるライブをしたくて、それにはアコースティックというのは良いなぁと。そう思ったと同時に、僕たちにとっては新しい試みでもあった。まぁ、新曲を聴いていただけたら分かると思いますが、ガッツリとロックもしているんで(笑)。
ROTTENGRAFFTY/KAZUOMI
――まず最初に取り掛かったのは新曲制作ですか、それともリテイクする曲の選曲ですか?
新曲制作ですね。去年の暮れぐらいから新曲に取り掛かって、最初に作ったものが3曲ぐらいあったんですが、その中の1曲をリード曲にしようと思っていました。けど時間が経つにつれ、僕の中でこれじゃないなと思い始めて。もっと違うアプローチがないかなと考え、アコースティックでありながらロックサウンドも、という楽曲を書こうと。だから「Goodbye to Romance」を作ったのは今年に入ってからですかね。
――最初に作った3曲は、もっとアコースティックな方向に振り切ったものだったんですか?
そうですね。アコースティックサウンドということだけじゃなくて、アコースティックの温度感やテンポ感など、そっち寄りの曲を3曲作っていました。「It's Alright(instrumental)」は、最初に作ったうちの1曲です。
――アコースティックに振り切るのは違うと感じたのは、ご自身の中でのROTTENGRAFFTY像が顔を上げたようなところも?
それもありますね。もともと作っていた3曲に対して、“これがリード曲で良いのか!?”と思い始めて。アコースティックでもロックしたいなぁ、と僕自身どこかで思ったんでしょうね。でもROTTENGRAFFTYを知っている人だけに向けているわけではない。今回のサウンドや作品を通じて、新しく出会ってくれる人にも、僕は希望を見ています。リード曲「Goodbye to Romance」が1曲目にあるということが、アルバム『Goodbye to Romance』で大きな意味を持っています。

――「Goodbye to Romance」は、楽曲が持っているエネルギー自体、熱いけど優しい。歌詞に向かうとき、どんなことを思いながら書かれたのですか?
自分にとって大事な人だったり、共に住んでいる家族だったり、犬や猫だったり、恋人だったり、そういう大切な存在との別れというのはいつかはやって来るでしょう?そしてその悲しさにただただ傍観するしか出来ない時もある。そんな別れはあるけれど、それでも人生は続いていく。生きてく中での出会いも、別れも、離れ離れになってしまった存在も、自分の中ではずっと存在し続けるもので。そういった悲しい気持ちになっている人やそんな感情自体を、優しく包み込めるような歌詞を書けたらなぁと。僕自身40数年間生きて、そんな別れも人並みに経験してきて。大好きだった人との別れ。事務所の社長との別れ。馬場さん(IKUZONE/Dragon Ash)との別れ。飼っていた犬との別れ。そういうものが必然的に起こった時に抱いた心情や感情を、今回の「Goodbye to Romance」の歌詞にしました。悲しくてどうしようもないけど、でも生きているっていう……。
――悲しさと辛さも経験するけど、それでも生きていかなければいけないわけですからね。
そうですね。この曲に出会ってくれた人の中で、今まさに、そういう境遇に置かれている方もいるかもしれない。でも、それを変えることはできないし。悲しい別れ=その人が存在していた、自分の中にその存在があった事実。それが人生なのかな、という。歌詞には実際に僕にあった出来事を綴っていて。《爪弾くリズムに 優しさも乗せて》も、僕がギターを弾いているときに隣で笑ってくれたり、その曲良いねと言ってくれる存在がいた。自分の経験を詩にしました。
――ライブで「Goodbye to Romance」と対峙するとき、いろんなことが蘇って、渦巻く感情になりそうですが?
そうですね。でもそれぐらい感情移入できる楽曲が作れたので、表現者として嬉しく思っています。
――曲を聴く方の人生の様々な局面で響く曲になりそうです。
別れというのはイヤだけど、いつかは直面するわけで。その悲しさから逃れることはできないしするつもりもない。それでも生きていくんだなっていう。“生きていけ!”じゃなくて、そういう別れや悲しさもあって、人生というのは続いていくんだな、ということを歌にしています。
――だから、人によっては勇気づけられるもするし、優しく抱いてくれるバラードに響くこともあるでしょうね。
聴いてもらう人との出会い方だと思います。曲を耳にしてくれたときのタイミングだったり、心情だったり、どんな巡り合わせでもこの「Goodbye to Romance」を好きになってもらえたら嬉しいです。ROTTENGRAFFTYを応援してくれる人たちにも、まだ出会えていない方たちにも。
2021.6.10
――ところでアコースティックアレンジに関して、挑戦という意味合いはやはり強かったですか?
挑戦というほどたいしたものではないんですけど、いわゆるエレキ・バンドサウンドということじゃないので。音色や楽器のチョイスは刺激的ではありました。とくに歌ですね。アコースティックになると歌の表情がまた違って見えてきますから。「Goodbye to Romance」はロックサウンドに仕上げましたが、リテイクした既存曲に関しては、アコースティックサウンドでの歌という感じで、歌の表現にこだわって作りました。例えばAメロからサビに向かっての歌の感情表現だったり、息遣いだったり、そういう繊細な部分にこそこだわりました。「「70cm四方の窓辺」~君のいない空~」は、歌詞の一部を変更しサブタイトルも付け加えたり。ひとつのワードに対しても、この声色ではないなって、一文字だけ録り直したり。全体を録り終えても、もう一度見直して、また録り直してというのを、何度か繰り返しました。
――既存曲のセレクションはどういう観点で?
アコギを持って、自分の頭の中で具体化できた順みたいな感じはありますね(笑)。それでも、これは入れたいなって最初から決めていた曲もあります。「Walk」と「「70cm四方の窓辺」~君のいない空~」は入れたいなと。もともとこの2曲は、アコースティックギターで作った楽曲でもあったので。
――生まれたままとは言わないまでも、生まれたときの形に近いんですか?
そうですね。とくに「Walk」は、その前に作った「マンダーラ」「I BELIEVE」と、あと「アイオイ」と合わせて、僕の中ではテーマがつながっている楽曲たちで。この4曲はアコギ1本から生まれた。「70cm四方の窓辺」も、もともと「「70cm四方の窓辺」~君のいない空~」のような温度感で作った曲。シングルを出したとき、ロックチューンに改造したんです。今回は改造する前の形で入れられるなと、この曲を選びました。「相殺微量サイレンス」は、音の面でオリジナル曲にある歌謡な旋律と、アコースティックによるジャズテイストなグルーヴが合うと思って、仕上げていった感じですね。
――「アンスキニー・バップ」は他曲とまた違ったカラーを持った曲ですが、ROTTENGRAFFTYはいろんなルーツを実は持っているんですね?
なんちゃってですけどね(笑)。なんちゃってで、僕はいいと思っているんですよ。音楽を遊ぶって、そういうことかなと思っているので。これまでの人生で様々な音楽に出会ってきたわけで、その記憶からも音楽は構築できる。例えばジャズといっても、本物のジャズプレイヤーみたいなことはできないけど、そんな匂いを出せたらいいなと思ってますね。それに“本物”という言葉、僕あんまり好きじゃないんですよね。
――今まで知らなかったROTTENGRAFFTYの引き出しを、見せつけられた思いです。
ただただアコースティックギターに持ち替えただけの楽曲に仕上げたくなかった。そんな簡易的な作品にもしたくなかったし。それは聴いてくれる人に失礼だから。
2021.6.10
――ファンの思いを考えていることは、「Goodbye to Romance」の歌詞からも、そしてラストを締めくくる「It's Alright(instrumental)」からも伝わってきます。
ROTTENGRAFFTYのライブ中、うちのボーカルが曲の間でしゃべっているとき、僕がよく弾いているコードがあって。そのコードから曲に起こしたのが「It's Alright(instrumental)」。ROTTENGRAFFTYのライブをよく観てくれている方は、そのコード感や響きが記憶に残っているんじゃないかな。ライブが遠のいた今の時代に、ちょっとでもROTTENGRAFFTYのライブが蘇れば、と言う思いが、多分、自分自身の中であったのかな。実は、最初はこれをリード曲にしようかなって、思っていたんですよ。
――「It's Alright(instrumental)」というタイトルの意味合いは?
自己暗示じゃないですけど、僕自身、大丈夫って言葉に救われたことが多々あって。「It's Alright」って言葉を思いながら聴いてもらえたら、きっと大丈夫になるんじゃないかな、と。大丈夫になれば良いな。この曲も、歌詞はあるんですよ。スケジュール上、どう考えても間に合わなくてインストにしたという経緯ですが(笑)。
――歌詞の続きは、レコーディング後も書いたんですか?
そうですね。今、ある程度はできています。いずれ発表できたらいいなと思ってます。
――何かの機会じゃなくて、アコースティックツアーの機会に聴かせて!
そうですよね(笑)。それができたらいいんですけどね。
――こうした作品を作ったことで、最初に考えていたアコースティックツアーとは捉え方やイメージも変わっていますか?
変わってると思います。音を具体化するまでは想像でしかなかった事も、アルバムが完成したことによりアコースティックツアーでやりたいことが見えてきた。今の世界でROTTENGRAFFTYを表現するなら他に何があるかな、と探りながらやっています。今回のアルバム曲だけじゃなく、その他の楽曲もアコースティックアレンジにし、ひとつのライブを構成させる。アコースティックだからといって、しっとりなだけのライブにはならないと思っています。結局、ROTTENGRAFFTYならではのライブができればと。
――曲の聴かせ方だけでなく、ステージ上のROTTENGRAFFTYのたたずまいも新鮮なライブになるでしょうね。
お客さんとの温度感が合うというのは、僕らのエゴなのかもしれないんですけど、なるべく観てくれる人と音を出している側が、同じ空気や温度感、同じルールで、ツアーができたらいいなと思っています。まだライブはやっていないので未知なところはありますけど。
――話を聞いていると、アコースティックだからといって物足りなさを感じてしまうライブにはならない。そんな感じが伝わってきますよ。
そうですね、楽しみにしていてください。にゃ。
取材・文=長谷川幸信

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