岡田将生「力を入れずに舞台に立つこ
とが今回のチャレンジ」 舞台『物語
なき、この世界。』インタビュー

2021年7月11日(日)~8月3日(火)Bunkamura シアターコクーンにて COCOON PRODUCTION 2021『物語なき、この世界。』が上演される。
舞台のみならず、映画監督としても活躍の場を広げ注目される三浦大輔による、3年ぶりの書き下ろしとなる今作は、新宿歌舞伎町で売れない俳優と売れないミュージシャンが10年ぶりに再会し、偶然起こった「事件」をきっかけに展開する。人生にドラマを求める人の多い現代において、キレイごとやメッセージなしでこの世界の矛盾を暴くことを試みたい、と三浦は今作にコメントを寄せている。
売れない俳優・菅原裕一役は2019年にシアターコクーンで『ハムレット』に主演するなど舞台でのキャリアも着実に積み上げている岡田将生、売れないミュージシャン・今井伸二役はミュージシャンとしても俳優としても活躍の場を広げている峯田和伸がそれぞれ演じる。共演者には柄本時生、内田理央、宮崎吐夢、米村亮太朗、星田英利、寺島しのぶといった個性と実力を兼ね備えたメンバーが揃い、作品を彩る。
今作に挑む思いを、2019年の舞台『ブラッケン・ムーア ~荒地の亡霊~』以来約2年ぶりの舞台出演となる岡田に聞いた。
三浦さんとならばどんなジャンルの作品でもやりたい
ーーまずは今作のお話が来たときの、最初のお気持ちを教えてください。
作・演出の三浦大輔さんとは、三浦さんが監督された映画『何者』でご一緒させていただきましたが、そのときに三浦さんの演出を受けて非常に信頼できるものを感じて、もっと長く三浦さんの演出を受けたい、と思いました。それがもう5、6年前のことなんですが、その気持ちがずっと忘れられなくて、そうしたらこの舞台のお話が来て、三浦さんとならばどんなジャンルの作品でもやらせていただきたいと思っていたので、まだタイトルも内容も決まる前でしたが喜んでお受けしました。今まで舞台をやるときは大抵、脚本を読んでからお話を進めさせてもらっていたんですけど、今作は現時点でまだ大まかなストーリーしか決まっていなくて、ラストもどうなるかわかっていません。こういう状況が初めてなので少し恐怖も感じつつ(笑)、ドキドキしています。タイトルで「物語なき」と言ってしまっているこの作品を、どのようにエンタメにして、楽しく面白く考えさせられる舞台としてお客様にお届けするかということを、稽古から三浦さんと一緒に濃密にやっていけるのが楽しみです。
岡田将生
ーー三浦さんの演出に信頼できるものを感じたというのは、どういった点でそうお感じになったのでしょうか。
しっかり僕の芝居を見てくれますし、作品全体のことも含めて、僕と感覚がすごく似ている気がして。口数が少なくても、お互いなんとなくわかりあえる部分があって、だから信頼できたというか。そのときに「信頼できる」と思えた感覚を僕は大切にしてきたので、もう一回三浦さんとご一緒したいな、とずっと思っていました。
舞台は自分自身と見つめ合う時間が増える
ーー舞台へのご出演は約2年ぶりです。
去年は世界的に大変な状況になってしまって、舞台が中止になったり延期になったり、といったニュースを見るたびに心を痛めていました。僕自身は去年舞台出演がなかった分、たぶん舞台に対してまた違う感情がわいてくるというか、舞台に立てることに今まで以上に感謝しますし、1公演ずつをさらに大切にしなければいけないということを、去年一年通して身に沁みて感じていました。今までは単純に舞台が好きで、舞台に立ってお芝居することで生きている実感があったんですが、今はちゃんと届けたいという気持ちが強くなりましたし、その気持ちを忘れずにやっていきたいなというのがあります。7月時点でどういう状況になるかまだわからないですが、しっかり対策をして、安全・安心にお客様に見てもらえる舞台にしなきゃいけないな、と思っています。
ーー舞台作品に出演することの魅力や映像との違いなどをどのように感じていますか。
舞台の魅力を語れるほどはまだやってないんですけど……実は舞台で現代劇をやるのは今回初めてなので、そこも楽しみです。舞台の場合、映像だとなかなかできないような役であったりセリフであったり、いろんな事にチャレンジができるんです。舞台は言葉で遊べる部分もあったりして、でも、いざ舞台に立ってみたら、一か月稽古したものがすべて出せるかというと、やはりなかなか出ないもので。「なんのために稽古をしていたのか」と自問自答して「なんてダメな人間なんだ」となってしまうこともあるけれど、次の日には自分の持っている最大限のパフォーマンスができるときもあったりして、舞台をやるとすごく自分自身と見つめ合う時間が増えるんですよね。僕はそれがすごく好きで、今までやってきたことがリセットされるというか、新たにお芝居とちゃんと向き合えてる時間が好きですね。一緒にやるカンパニーも含めて毎回変わるので、それも僕にとって魅力的に感じている部分なのかもしれません。
チームとして、お互いに支えたいし支えられたい
ーー今回演じるのが“売れない俳優”ということですが、岡田さんご自身が俳優の仕事をやってよかったな、と思うのはどんな時でしょう。
いっぱいセリフを覚えなきゃいけないし、つらいこともありますけど、一緒にお芝居している共演者や監督も含めて「届いてるな」と感じるときは、この仕事をやっててよかったと思います。台本をいただいたときは、何を伝えたいのか、どういうメッセージ性があるのか、というところを大切に読ませてもらっているので、それが見てくださる方々に届いてるなと実感できたときは、作品の一部になれたことが嬉しいなと感じます。
岡田将生
ーー今作で岡田さんが演じる菅原は「主人公にあこがれる気持ち」を抱いています。岡田さんご自身は主演にとどまらずご活躍で、演じる役の幅が広がっていらっしゃるという印象ですが、菅原の気持ちには共感する部分ありますか。
僕自身は、作品を一緒に作っているチームとして、お互いに支えたいし支えられたいと思っているので、立ち位置に関してはあまりこだわりはないです。でも、未だに売れたいという気持ちはあります。それってたぶん、俳優なら誰でも思っていると思いますし、やっぱりいろんな人にもっと知ってもらいたいっていう気持ちもあるので。菅原という役に関しては、無防備さであったり、脱力感であったり、力を入れずに舞台に立つことが今回の僕のチャレンジなので、また違う一面を舞台上で見せられたらいいな、と三浦さんともお話ししています。
ーー三浦さんの作品はスキャンダラスだったりセミドキュメントの手法を取ったりとかなり特徴的なものが多い印象です。
そういったジャンルにはこれまで飛び込んだことがなかったのですが憧れがあったので、三浦さんには「誘っていただいて本当にありがとうございます」という気持ちです。こんなチャンス滅多にないですし、僕にとってチャレンジになります。
ーー人生に物語があるかどうかを問う作品ですが、岡田さん自身が人生について考えてしまう時はどんな時でしょうか。
台本をいただいたときですかね。毎回台本を読むたびに、どこか自分の人生と照らし合わせている自分がいて、そこから役について発見する部分が意外にあったりします。台本を読みながら、これまでの自分のことを振り返ってみて、あんなことやってたな、ちょっと生意気なことを監督に言っちゃってたな、とか思い返して「自分の人生ダメだー!」って思ったりして(笑)。そんな感じで、お仕事のタイミングでいろいろ人生のことを考えることが多いかもしれないです。
ーー個性豊かな共演者たちについておうかがいします。峯田和伸さんのことは中学生の時からお好きだったそうですね。
僕は峯田さんの音楽もお芝居もすごく好きなので、お会いできるだけでも嬉しいのに、そのうえ一緒にお芝居が出来るなんて、という思いです。同級生役であることを峯田さんはすごく心配されてましたけど(笑)、そういうところも楽しんでお芝居ができるんじゃないかな、と感じたので、一緒に空気感を作っていけたらいいなと思っています。
寺島さんとは以前共演させていただきました。大先輩でひっぱってくださる方で、すごく尊敬していますし、安心感も抱いているので、今回一緒にこの舞台で戦えることは嬉しいことです。時生は同い年で10代からお互い知っていて、初めて舞台で一緒にお芝居ができるので、「やったね」「やっとだね」という話をしました。時生がいてくれることは僕にとって、いろいろな面で安心できるというか、本当にいい人で、すごく客観的にお芝居を見ている人なので相談もできるし、一緒にやれて本当に嬉しいです。内田さんは以前ドラマで共演していて、僕も人のことを言えないのですが、すごく天然なイメージがあります(笑)。映像作品でよく拝見していたので、舞台でまさか共演できるとは思っていませんでした。僕の方が年上で引っ張っていく立場なので、一緒にいい舞台にしたいなと思っています。
岡田将生
忘れられない転換期、そして忘れられない場所
ーーデビューされて15年目、その中で俳優という仕事への意識の変化もあったと思います。
責任を持つことは年々増してきていて、この舞台も含めて真ん中に立たせてもらう以上、しっかり示していかなくてはいけないというのは意識的にも変わってきてる部分ではあります。逆にそこにとらわれすぎて見失っているときもあったので、あまり意識せずに、力を抜いてお芝居を楽しもう、となってきたのが変わってきたところかなと思います。自分の中でハッキリと変わったことを意識したのは、ドラマ「ゆとりですがなにか」(NTV)をやっていたときです。お芝居が本当に楽しいなと思えたドラマで、僕にとって転換期でした。皆さんと自然に呼吸するように芝居をしていたあの空間が未だに忘れられなくて、あの呼吸を自分の体が覚えているから、それを思い出すために必死に芝居をしている部分もありますね。あのときにいい仲間、いいチームに出会ったので、その時のような空気感に出会いたいなという気持ちで今も続けているんじゃないかな、と思います。
ーー岡田さんは2014年の初舞台以来、常連と言ってもいいくらいシアターコクーンへのご出演が続いています。そのことについてご自身はどう思われているのか、また2019年からは松尾スズキさんが芸術監督に就任されたシアターコクーンへの印象など教えてください。
初舞台をコクーンで踏ませていただいて、そこから何度も立たせていただいたことに感謝しています。松尾さんの作品にも、2016年と18年と2回出演させてもらっているので、19年に松尾さんが芸術監督になられたときは「やった!」って思いました(笑)。また松尾さんともお仕事をご一緒できたら嬉しいです。本当に素敵な劇場なので、テレビ・映画などで僕という俳優を見てくれた方にも足を運んでもらって、舞台に興味を持ってくれたらいいなと思います。
今後も舞台をやっていきたいという気持ちはたくさんあるので、それはもちろんシアターコクーンだけに限らずやってみたいと思っていますが、やはり一番最初に僕と一緒にやりたいと言ってくれたプロデューサーさん含めて、そこの繋がりは本当に大切にしています。「次はこういう役がやりたいです」というお話しもさせていただいたりして、『ハムレット』もそれで実現しました。やっぱり僕にとって忘れられない場所で、忘れたくない場所ですね。
ーーでは、この舞台を楽しみにしているお客様へ向けてのメッセージをお願いいたします。
今はこういう時期で、舞台が好きだけど様々な事情で見に行けない人もいると聞きますし、今後もいつどうなるかわからない状況ではありますが、舞台の生々しいパワーやエネルギーを、この時期だからこそ感じてほしいなという思いはあります。一発本番の一公演にかけるキャスト・スタッフの思いは、見てくださる方々に確実に届くんじゃないかなと思っていて、僕自身、去年を含めて落ち込む時期もありましたが、そういう気持ちをお芝居で返していきたいというか、プラスにしていきたいなという気持ちが今すごくあります。エンタメは不可欠なものだし、皆様の心に届けられる自信もあるので、来て欲しいな、観て欲しいな、と思っています。
岡田将生
■ヘアメイク:中西樹里
■スタイリスト:大石裕介
衣裳:シャツ Scye ¥32000(税抜)、パンツ Scye ¥48000(税抜) 他 スタイリスト私物
■問い合わせ:東京都渋谷区千駄ヶ谷3‐54‐13(03‐5414‐3531)
取材・文=久田絢子  撮影=安西美樹

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