重厚に描かれる、少年たちの運命と絆
~『「BANANA FISH」The Stage -前編
-』ゲネプロレポート

『「BANANA FISH」The Stage -前編-』が2021年6月10日(木)、東京・天王洲 銀河劇場にて開幕した。1980年代のニューヨークを舞台に、謎のキーワード「バナナフィッシュ」を追い求める物語。吉田秋生の漫画「BANANA FISH」を原作とし、前後編二部作で舞台化される。開幕直前に行われたゲネプロの模様をお届けしよう。
ニューヨーク・ダウンタウンでストリートキッズたちのボスに君臨する17歳の少年、アッシュ・リンクス(水江建太)はある日、自身の手下によって銃撃された男からある住所とともに「バナナフィッシュ」という言葉を伝えられる。
(左から)赤星昇一郎、早乙女友貴
「バナナフィッシュ」の謎を調べ始めたアッシュの動きを阻もうとするのが、コルシカ・マフィアのボス、ディノ・F・ゴルツィネ(赤星昇一郎)。アッシュを敵対視するグループのボス、フレデリック・オーサー(早乙女友貴)とともに不穏な動きを見せる。オーサー、ゴルツィネが登場すると、隠しきれない残虐性とその不気味さに気圧されてしまう。
その頃、カメラマンの伊部俊一(冨田昌則)がストリートギャングの取材のためにアッシュのもとを訪れる。助手として同行していた奥村英二(岡宮来夢)と出会い、やがて運命を共にしていくことに。
(左から)冨田昌則、内田朝陽、水江建太、岡宮来夢
コンテナに描かれたストリートアートに、むき出しの鉄階段。無秩序さを表した空間は、常に緊張感を漂わせている。キャラクターたちのファッションは80年代アメリカンスタイル。セットと相まったヴィンテージ感が「BANANA FISH」という作品の息吹を与えてくれていた。プロジェクションマッピングで投影される映像はもちろん、作品を象徴する黄色と黒のテキストにさえ胸が高鳴る。
(左から)岡宮来夢、水江建太、内田朝陽
罠に嵌められたアッシュは殺人の濡れ衣を着せられ、刑務所へ収監されることに。同房となったジャーナリストのマックス・ロボ(内田朝陽)もまた、「バナナフィッシュ」の謎を追う人物。チャイナタウンのギャンググループのボスで親友のショーター・ウォン(川﨑優作)や、英二や伊部と共に真相に近づこうとするが、チャイニーズマフィアの一族である李月龍(佐奈宏紀)や、ショーターの身を案じるシン・スウ・リン(椎名鯛造)らも複雑に絡んでいく。
(左から)佐奈宏紀、椎名鯛造
(左から)水江建太、早乙女友貴
抗争シーンはスリリング。セット内を縦横無尽に駆け回るアクションはスピーディーに繰り広げられていた。密度の濃い構成でストーリーが展開され、見応えは抜群だ。
水江建太
“圧倒的な戦闘能力”“絶大なるカリスマ性”と、究極ともいえるヒーロー像を背負うアッシュ。華のある才能ゆえに併せ持った孤独、儚さを滲ませており、演じる水江の繊細なバランス感覚が光っていた。
岡宮来夢
岡宮が演じる英二は、あどけなさが際立つ無邪気な存在感。大人びたアッシュといると善良な少年らしさがさらに増す。苦難の道を歩んでいく悲痛な展開とは裏腹に、アッシュと英二のシーンだけは穏やかに時間が流れていくようだった。二人が互いに向けて語りかける言葉が、優しく心に落ちていく。
(左から)川﨑優作、水江建太、岡宮来夢
残酷で冷徹な、思い返すだけで胸が締め付けられるシーンからも目が逸らせない。それぞれの痛みがダイレクトに伝わり、心が震えるのを実感する。終幕を迎え、客電が灯ってもしばらく余韻に浸っていた。後編が待ちきれない。
水江建太、岡宮来夢

出演者・演出家 コメント
■アッシュ・リンクス役  水江建太
ずっと目を離さず僕らのことを見てほしい、と自信を持って言えるように、今日まで稽古を積み重ねてきました。
どのシーンもどの台詞も、全てが見どころだと思っていますし、アッシュという存在に僕自身が強く惹かれています。
この作品に出会えた幸せを噛みしめながら、さらに突き詰めて演じていきたいと思いますので、
舞台を観てより一層「BANANA FISH」を好きになっていただけたら嬉しいです︕
■奥村英二役  岡宮来夢
いよいよ幕が開きます︕
約1ヶ月本当に濃密な日々を過ごし、「BANANA FISH」の世界を全員でしっかり向き合って作ってきました。
これまで支えてくださった皆様にたくさんの感謝を。自信を持って胸を張ってお届けします︕
是非、劇場や配信でご覧いただけたらと思います。お楽しみに︕︕
■演出  松崎史也
必然のキャストとスタッフ。カンパニーの面子が決まった時点から大きな手応えがありました。この面子でなければ「BANANA FISH」が演劇に求めるクオリティは出せない。
そんな皆を迎え撃ち中心に立つ二人の才気と未来に溢れる俳優、水江建太と岡宮来夢。二人は初舞台を共にし旧知の間柄でもある。アッシュと英二を担うのにこれほど相応しい二人が今、演劇をやっていることは、奇跡的でさえあると思っています。全員が全員にワクワクしっぱなしの稽古期間でした。瞬きすら惜しく感じる演劇と自負します。劇場で配信で、ご覧いただけますよう。

取材・文・撮影=潮田茗

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