崎山つばさ&松田凌「僕ら、もともと
持っている波長が一緒なのかも」~T
XT vol.2『ID』インタビュー

仮面ライダーシリーズでメインライターを務める高橋悠也と東映が、新たなコラボレーションプロジェクト[TXT]を2019年に発進。2021年6月、いよいよその[TXT]の第二弾作品『ID(アイディー)』の上演が決定した。作品のコンセプトのひとつは「私たちは、本当に自分の意志で生きているのだろうか?」。人類の誕生と進化の仮説を問うこのSFヒューマンサスペンスで生徒会長を演じるのは崎山つばさ。そして、学級委員を演じるのは松田凌。稽古初日に行われた本読みにて初対面を果たしたふたりが、新鮮な気持ちのまま、本作に挑む胸中を語り合ってくれた。
ーーおふたりは今作が初共演。これまで何か交流などは……
崎山:以前、僕が『煉獄に笑う』という舞台をやった時の稽古場に凌くんが来てくれて……。前作の『曇天に笑う』に出演されてたんですよね。
松田:そうなんです。でもちょうど稽古真っ最中のタイミングで、邪魔にならないようホントにご挨拶だけって感じだったので……ちゃんとお話しするのは今日が初めてです。
ーーでは、お会いするまで互いに抱いていた印象というと?
崎山:クールというか、かっこいい人。「俺、役者だし……」って感じのね、いい意味でトガッてて“個”が強い、なんか……ちょっとツンケンしてる感じなの方なのかなって思ってました。
松田:えっ、そんな〜!
崎山:ハハハッ(笑)。でも実際はそんなことまったくなく、すごく親しみやすくて。
松田:よかったぁ……いや僕、初対面で「強めの人だと思った」ってすごく言われるんですよ。なんでだろう……顔?(笑)。実際はもうふにゃふにゃですから。
崎山:嬉しい裏切り(笑)。
松田:僕は、つばさくんが活躍されているのはもちろん存じていましたし、共演経験のある後輩や周囲の俳優仲間からもいい話をたくさん聞いてたし。あと、俳優以外に歌とかマルチに活動されてますよね。それで(黒羽)麻璃央くんとやってるCMが──
崎山:「旅するエスニック」だ〜。
松田:あれがすごく印象に残ってて。もともと僕のつばさくんのイメージが真面目とかちょっと堅い人だったんですけど、CMとかからもうホントに幅広く表現活動されてるなぁってインパクトを受けて、で、今日初めてお話ししてみた印象はそのまんま! いろんな現場でいろんな表現に挑戦し続ける柔軟な感性の方なんだなって、イメージと実態が合致した感じです。
崎山:よかった(笑)。僕ら、メイクルームからここに来るまでも結構エモイ会話をしてたんですよ。「なんて呼ばれてるんですか?」「下の名前で呼びましょうか」って(笑)。
ーーめちゃくちゃ新鮮なやつ!
松田:フフッ(笑)。だから今この取材で初めて「つばさくん」って呼んでるんですけど、ぜひその瞬間を映像で残しておいて欲しかったくらい、フレッシュな感覚です(笑)。
崎山:ハハハッ(笑)。まだ、探り探りのふたりです(笑)。
ーー今日は本読みも行われました。いよいよ作品世界に足を踏み入れた感覚はいかがでしたか?
崎山:そうですねぇ……考える時間が、欲しい(笑)。まずは自分でしっかり噛み砕いて理解しなければ……舞台としてお客様にこの物語を受け取っていただくには、僕自身がそれ以上にしっかりと理解し深めておく必要があるなと、改めて実感しました。
松田:それはホントにそうで、物語の様々なポイントに(作・演出の)高橋さんが散りばめた思いがあるんだろうなぁと。そしてそれは僕ら俳優と創っていく中でどんどん変形していくモノでもあるだろうな、まったくゼロから創っていくお芝居ってこういうモノだよなって、読みながら強く思わせてもらって。具現化していくと、読んだ時の印象とはまた全然違ったモノになっていくでしょうね。稽古はそういうモノを拾い集める作業になると思います。
松田凌
ーー本作は生命や宇宙のシステムを設計する“委員会”と彼らがデザインし生み出された“アバター”が行う、人間の存在意義を問い直す“実験”を描くオリジナルストーリー。稽古場もまさに“実験の場”の様相に……?
崎山:確かにそうなるのかもしれない。
松田:うん。すごく試みの多い作品になると思います。役者それぞれがそれぞれの試みでこの一つひとつを形にしていったんだなってところが、本番からも伝わるんじゃないかな。
ーー8人のキャスト全員が委員会メンバーとアバターの2役を演じるのも見どころです。崎山さんの役は目的のためには手段を選ばない「生徒会長」。委員会のプランナー。
崎山:ビジュアル撮影のときすでに役柄については高橋さんに説明を受けていて、生徒会長とアバターは性格も対極にあるようなキャラクター、振り幅の大きな演じ分けが必要なんだと確認しました。自分が考えていた表現のさらにその多くまで深掘りできるような……アバターのほうは8人それぞれがある「感情」に特化した存在になるんですけど、ひとつの感情を司っていても、その中でも場面場面で陰と陽の側面があって。そこもこれから稽古をやってみないと、というところ……です。ベースはちゃんと持ちつつも、特に初めの段階ではなるべく「この感情はこう」と決めつけず、繊細なグラデーションを捕まえていきたいと考えています。
ーー松田さんは「学級委員」。生徒会長の下、メンバーを動かしていく温厚な現場責任者です。
松田:ディレクターと呼ばれ、物事が円滑に進むように管理していく立場であり、アバターのほうはプランナーとはまた違うひとつの感情を司る存在で……みなさんが抱く僕のイメージをぶち壊せるようなキャラクターを演じたいな、と思ってるんですよね。つばさくんも言ってくれたようにやっぱりひとつの感情にもいろんな側面があって、どこで何を選ぶかで伝わり方もまた全然違ってくると思うから、そこをしっかりと探っていきたいっていうのが自分にとっても一番大きなテーマ。2役あれど演じる人は一人なので……そこで役者として見せなきゃいけないモノ、超えなきゃいけないコトはもう自分に明確に見えている。あとは稽古の中で伝えるべきモノを伝えられるよう、新たな発見を重ねていきたいです。
ーーストーリー運びも非常にスリリング。委員会のプロジェクト内容に追いつくべく、観客も頭をフル回転させながら物語に分け入り、紐解き、驚きと発見を味わえる。不思議な感覚の作品になりそうです。
崎山:稽古を重ねることで僕らが得た深度が、公演を重ねることでさらに磨かれ上書きされていくのがこの物語の魅力でもあって……。
松田:……うん。でも……あ、それ以上はちょっと言えないのか(笑)。
崎山:そうだね。言えないね(笑)。
崎山つばさ
ーー詳しくはぜひ劇場でご確認を(笑)。では委員会が扱う「感情」ですが……例えば役ではなく自分自身の行動の指針、柱になる「感情」を挙げるのなら?
松田:ここに出てこないモノでもいいですか? うーん……。
崎山:なるほど。だったら自分は「ポジティブ」かなぁ。僕はどちらかと言うと楽観主義なので、物事を悲観的に捉えるよりも肯定して考えた方が得じゃない? って思うタイプ。悲観的なところから考えて人間として成長していくという道筋もあると思いますけど、僕はやっぱり明るくいたいので、ポジティブが原動力になって今に至るなって感じ。遺伝ですかね。母親がとにかくポジティブな人なので。「うぜぇな」って思っても(笑)、そのプラスの波動で周りにもいい影響が広がっていくのはいいですよね。
松田:僕は感情とはちょっと違うかもしれないですけど「衝動」、ですかね。自分の想像もしていなかったことが自分の琴線に触れる瞬間ってあるじゃないですか。多分それを頼りに生きてる感じはあるかなぁ。言葉としては破壊的なイメージかもしれないですけど(笑)。
ーーパンク魂の匂いが。
松田:まぁ、そう、とも言いますね(笑)。
崎山:(笑)。
松田:何かの物事が自分の想像の中での最高の結果になったことって、今までの人生でほとんどないと思う。なので、最悪を想定していれば逆に「何かあるかもしれない」という気持ちにもなれるし……って、これ、初舞台の時の自分の台詞にあったんですけど、自分自身とてもハッとさせられた考えでもあって。起こることに対し、線でつなぐ前に点の位置を決めたくないんですよね。なるようになる、生きてさえいればどうにでもなる、と。で、そこで頼りになるのはやっぱり「衝動」なのかな、そこから生まれる何かを求めてるのかなって、今、改めて思いました。
ーー「ポジティブ」と「衝動」。それぞれの前進力で共闘できそうな、いいコンビネーションですね。
崎山:かもね。なんでしょう、僕ら、もともと持っている波長が一緒のような気が……しています。ハハハッ(笑)。
松田:嬉しいっ。ふたり、どこか同じ匂いがありますね。
松田凌
ーー劇中、回変わりのエチュードパートもありますし。
崎山:あー、それはねぇ……。
松田:あれか! 悩みそうだなぁ〜。
崎山:うん。で、「ちゃんと悩まなきゃいけないのそこじゃないじゃん!」ってなっちゃうから、気をつけないとなぁ(笑)。
松田:(笑)。でも他にも演出的にすごくナマモノ感を取り入れてる感じが、新しいですよね。
崎山:そうそう。
ーー高橋さんからはなにか具体的なオーダーなどはありましたか?
松田:今日の段階ではまだないです。でも本読みを終えてみて「一緒に創っていける人なんだな」という空気は非常に感じられていますし、高橋さんの中にはもう明確なイメージがあるんですよね。稽古する中で、共にそこへ向けて作品を形成していくんだろうな、というのが今の段階での手応え……ですかね。
崎山:稽古を進めていく中でおそらく、自分自身が裏切られるような瞬間もあると思うんです。むしろ、早くそこに行きたいなぁって思うし、さらには高橋さんを裏切るということもできたら、いいなぁって思います。
ーー委員会が求めるのは、“科学的に”完璧に美しい世界と人間のデザイン。「美」の基準はいろいろあると思うのですが、おふたりはどんな対象に美しさを感じるのでしょうか。
崎山:僕は神社が好きなんですけど、いろいろ紐解いていくと全てに意味があって。例えばお参りの時になぜ拍手をするのかと言うと、手のひらが柏の葉に似てるから、という説もあるんです。柏は落葉樹なんですけど、新しい芽が出るまでは枯れてても枝から落ちないんですって。新しい芽が生まれたときに自分の役目を終えて落ちることで、命を次に繋ぐ。そこに昔の人は着目して拍手を鳴らすようにしたんじゃないかって。そういう日本人が持っている観点、モノの見方みたいなことに触れたとき、僕はすごく美しさを感じることがあります。日本人なら大切にしていきたいなと思わせてくれる雅な心、何気なくやっていることにも実は意味があったんだと知識を得ることで、また、たくさんの美しさにも出会えるんだと知りました。
崎山つばさ
松田:(頷く)。僕は特に最近、俳優の仕事をしている、言葉と向き合っているという経験が増えるにつれて、日本語の美しさを再確認しています。もちろん他の国の言語にもそれぞれに素敵なところがあると思うんですが……日本で生まれ育ったがゆえ、自分が日常で普通に使っている日本語について、ちゃんと考えたことがなかったんです。でも意識してみると、ひとつの事柄に本当にたくさんの言い回しがあって。桜は「散る」だけど、菊は「舞う」。バラは「枯れる」。椿は「落ちる」と言うこともあり……まとめてみんな同じに「枯れる」とかでもいいんだけど、その花それぞれの散り際の様子に美徳を感じているのか、終わりの瞬間の花の様子をとらえてその有り様によって言葉を変えるっていうことが…うまく言えないけど、そのこと自体の裏付けでもあるというか……。
ーー目の前の事柄への敬意を感じますね。
松田:そういう日本語ならではの言葉の使い方に触れたり、その意味を紐解いていくのが最近とても好きで。漢字の成り立ちとかもすごく面白いですし、台詞もそうですよね。脚本家の方がものすごく熟考して、誰かに向けて……もしくは自分自身に向けて一言一言書いているんだと思うと、それを自分たち俳優はまた自分の解釈で言葉にしていくわけで、その伝わり方ひとつで受け取るほうの人生も変わっていくかもしれないし──
崎山:(頷く)。
松田:日本語ってすごく複雑だし、その人とその人の人格を創っていく上でももっとも重要なんだなって。そこにすごく美しさを感じますね。日本語について、聞くのも学ぶのも好きです。
ーー「美しさ」へのそれぞれの情緒あるまなざし、素敵です。作品で描かれるだろう情緒と科学の凌ぎ合いも楽しみです。
崎山:はい。僕らもまだ舞台としての像は薄っすらと見え始めるのかな、という段階ではあるので……早く輪郭を掴んで実体化させていきたいな。
松田:ここで僕らのクリエイティビティが試されてるのかもって、ちょっと怖くもあります。今この時代に、「密」にし辛い状況下でも、表現力で「密」にしていかなきゃいけないところも多々あるし。
松田凌
崎山:そうだよね。役者に限らず表現をする人って、それぞれ表現を「したい」「やらなければいけない」性分なので状況は状況ですけど、それを言い訳にするってことはあまりしたくないよね。そのときにしかできないこと、気づけないこともたくさんあるので、「今だから」という気持ちはあまりないんですけど、抗っていたい、という気持ちは強いです。
松田:(頷く)。「生業」みたいなものだから、結局のところ信じちゃってるんでしょうね、演劇を。すごくシンプルな舞台があって、板の上があって、演者がいて、お客様がいてくれて、もちろん、スタッフさんもね。それだけで十分。だから今、見えないモノが壁としてあるけれど、でもやろうと思えばできるはずなんです。僕もこれまでと今とはそんなに大差はないはず……と信じてしまっているから、いろんな人の支えもあり、こうして板の上に立たせてもらっている自覚はあります。
ーー高橋さん自身「舞台でしかできない何か」を追求している本作 。改めて本番への意気込みをお願いします。
松田:僕のことを知ってくださっている方に対しては「松田凌、こういう感じでお芝居するだろう」って思ってくださっている概念を、ここでひとつ壊していけたら嬉しいなというのがあって。でもそれは自分のエゴの部分、末端の気持ち(笑)。作品全体としては、高橋さんを含め、今回「初めまして」の方が多いので、役者としてまた知らない世界に行けるのかなって期待しています。自分自身が“自分が持つ固定概念”じゃないところでの表現を探していけたら。みんなでちゃんとまっさらなところからモノ創りできる、そんな感覚なので、早く稽古がしたいです。
崎山:人間と、創り出されたアバター。一人二役への挑戦。オリジナル作品として自分から生み出すものもあるけれど、役によって自分が生み出されていくこともあるはずで、何重にもなっているような「そこ」を目一杯楽しめる時間にとても期待しています。まだわからない自分自身が経験するいろんな瞬間を味わえるんだ! って。僕も早く稽古したいですね。とりあえず、今日から「凌くん」「つばさくん」の仲で──ね(笑)。
松田:フフッ(笑)。ですね。
(左から)崎山つばさ、松田凌
取材・文=横澤由香   撮影=iwa

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