AK-69

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【AK-69 インタビュー】
“自分が作ってて面白いもの”って
意識だった

前作から約10カ月という短いスパンで完成したニューアルバム『The Race』。本作にはレースと人生をかけ合わせてラップする楽曲がずらりと並ぶ。そして、フィーチャリングには、ちゃんみな、SALU、ANARCHY、¥ellow Bucksなど強力な面々が参加。そんなAK-69が新たなアプローチで挑んだ本作について話を訊いていこう。

予定調和なものは徹底して排除して
ワクワクする曲を作っていった

厳しい状況が続いている中、AK-69さんはどのような姿勢で活動されていますか?

必ずしもコロナ禍っていうのはネガティブなことだけじゃなくて、俺的にはポジティブになれる時間だなって思ってるんです。単純に言うと、戦う体制や準備が整えられたってことですね。個人的にも、チームとしても、弱いところを根本的に見つめ直して、チームみんなでミーティングキャンプをやったりしたんです。そこで、6月9日にアルバムを放つとか、渋谷でゲリラライヴを仕かけるとかいろんなアイディアが出たんですよ。ほんと、いろんなことに時間を使ってるんで、マジ忙しいんです(笑)。悲観してる時間なんてないですね。忙しく動いてることで、結果的に自信につながったんです。今回、前作『LIVE:live』から10カ月って短いスパンでアルバムを出すわけですけど、それって俺のアーティスト活動で初めてのことなんです。

コロナ禍で逆にパワーを増し、今まで以上のスピードで新作を作れたと。では、そのニューアルバム『The Race』はどんな作品を目指したんですか?

制作期間は2カ月で、まさにゼロから作っていったんですけど、アプローチ的に意識したのは、まず“客演でやるイメージで作りたい”っていうのがあったんです。客演で気負わずやった時にいいバースが生まれることって多いんですよ。だから、“これ、自分のアルバムでやりたかったな”って思うことが結構あって。うちのプロデューサーとも話して、そういう意識でアルバム制作を進めました。あと、言葉のイメージとか音も、今までと同じようなのものだと予定調和を感じて全然面白く思えなかったんですよね。作っててワクワクしないものはやめようっていうのは徹底してました。そういう意味では、今回って新しいアプローチに聴こえるかもしれないです。

確かに印象が違いますね。今のヒップホップはトラップ系が主流ですけど、そこでのAK-69さんの自然なアプローチという感覚があります。

俺が聴いてる音楽って…まぁ、昔の曲も聴きますけど、一貫して新しいものが好きなんですよ。車も服も音楽も、最新がカッコ良いと思うタイプなんです。よくいるんですよ、“90年代のヒップホップじゃないとダメだ!”とか言う連中が。それがカッコ良いのは分かるけど、偏屈な固定概念を持った時点で堅物の現役落ちだなって。だからって俺は意識して“最新のものを聴かなきゃ”ってタイプじゃなく、素だから自然とこういう作品になったんです。なので、強いもんができるというか。コロナ禍で自分の立ち位置を客観視できたのも大きいですね。勢いに乗ってる期間や下がった期間とかいろいろ経て、何周も回ってここにいるんで。自信もあるし、いい意味で好き放題できるメンタリティーにいるってことですかね。

ラップのフロウもいろんな表現をされてますよね。

前作の「Bussin' feat. ¥ellow Bucks」がヒットして、“AK、ラップうまかったんだ!?”って言う人が結構いたんですよ。“いやいや、俺、ずっとラップしてるって”と思いましたけどね(笑)。ただ逆に言うと、俺を「START IT AGAIN」(2013年1月発表のアルバム『The Independent King』収録曲)のサビとかでしか知らない人が結構いて、改めてラップ聴いたらうまかったってことだったのかなって。“だったら、俺のラップを聴かせてやるよ!”っていうのが大きかったです。なので、今回はあえて自分の歌を封じ込め気味にしたんです。2曲くらいメロディー使ってるのも声色変えて歌ったりして、あとはBleecker Chromeやちゃんみなにメロディーを歌ってもらいました。とにかくラップしようって感じでしたね。

あと、曲のコンセプトはずばり車のレースをイメージさせますが、これはどういう流れで決まったんですか?

コンセプトは先に決めたんです。で、ピットから出てスタート位置に着いた瞬間、スタートした瞬間、デッドヒートしてるところだったりって場面を区切って曲に当てはめて作っていったんですよ。例えば「Thirsty feat. RIEHATA」はレースに勝った日のアフターパーティーでの光景で、全部にそういうテーマがあります。なぜレースをコンセプトにしたかというのは、俺は全国区になってから15年くらいずっと走り続けてて上がったり下がったりをずっとやってるんですね。だから、勢いのある奴が瞬間速度で俺と並んだとしても…これは「Racin' feat. ちゃんみな」のリリックでも言ってるけど、“お前は俺とデッドヒートしてるつもりかもしれないけど、俺は一周多く回ってますから”って。それは強がりとかじゃなく、事実なんで。

確かに。

コロナ禍で自分を振り返った時、そういうことをすごく実感したんですよ。あと、ピットで自分たちのウィークポイントをビルドアップしてまたコースに戻るとか、走ってるのは俺だけど仲間がいてこそAK-69って看板があるとか。まさにレースの世界と一緒だなってことで、このテーマになったんです。

もちろん中心にあるのはアーティストですけど、多くの人とのチームプレイで活動が成立してるわけですからね。

そうなんです。それによって自信にみなぎってることが、今回のコンセプトに表れたのかなと思いますね。いろんな意味で、格の違いをふんだんに見せるっていうのはやってて楽しかったです。と言いながらも、最後の「Victory Lap feat. SALU」で“自分しか敵はいない”とSALUが代弁してくれてて。レースって他者がいて成立するものですけど、結局は自分との戦いを制してこそ結果や自信だったりが出てくるんだってことを最後に言って落としたかったのもありますね。
AK-69
アルバム『The Race』【初回限定盤】(CD+DVD)
アルバム『The Race』【通常盤】(CD)

OKMusic編集部

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