ブロードウェイ・ミュージカル『イン
・ザ・ハイツ』を映画化~新たな場面
写真を公開

大ヒット・ブロードウェイ・ミュージカルの映画化作品『イン・ザ・ハイツ』が2021年7月30日より日本で公開される。新たな場面写真の解禁に合わせ、本作の魅力を紹介する。
【動画】映画『イン・ザ・ハイツ』本予告

『イン・ザ・ハイツ』の原作は、リン=マニュエル・ミランダの作詞・作曲、キアラ・アレグリア・ヒューディーズの脚本により作られた同名ミュージカル作品である。2007年、オフ・ブロードウェイでミランダ自ら主役を演じた舞台が評判を呼び、2008年にはブロードウェイに進出。同年のトニー賞で13部門にノミネートされ、うち作品賞、楽曲賞、振付賞、編曲賞に輝いた。さらに同年のグラミー賞でもミュージカルアルバム賞を受賞し、ミランダは一気にブロードウェイのスターダムにのし上がった。彼はやがて、移民という切り口とラップという手法によってアメリカ建国史を再構築した『ハミルトン』(2015年)という傑作を発表し、ミュージカル史に一大革命を起こすこととなる。一方、『イン・ザ・ハイツ』は、アメリカ国外でも広く上演されるようになり、日本にはツアー公演が来日したほか、日本語版も二度上演され、さらには韓国語版も来日するという、本作品ファンには幸運過多ともいえる状況が続いてきた。そんな中で、いよいよ待望の映画版がこのたび公開される運びとなったのである。
『イン・ザ・ハイツ』7月30日(金)全国ロードショー! (c) 2021 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved
『イン・ザ・ハイツ』の舞台は、ニューヨーク市マンハッタン区の北端、観光ガイドブックにもほぼ記述されることのない、ワシントンハイツである(この地名は、アメリカ独立戦争の際、ワシントン総司令官がこの界隈に「ワシントン砦」を作らせたことに由来する)。そこかしこで常に音楽が流れているというその陽気な地域は、古くから移民の街で、ミランダが生まれ育った1980年代にはドミニカ移民が多数を占めていたそうだ。この物語では、ミランダ自身を投影させていると思しき主人公ウスナビをはじめ、ここに暮らす誰もが、移民ならではの様々な困難に見舞われ、挫けそうになりながらも、絆を確かめ合い、夢に向かって踏み出していく姿が描かれる。
『イン・ザ・ハイツ』7月30日(金)全国ロードショー! (c) 2021 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved
リン=マニュエル・ミランダも製作に名を連ねる映画版の『イン・ザ・ハイツ』は、ジョン・M・チュウがメガホンをとった。あの『クレイジー・リッチ!』(キャストがほぼ全員アジア人であるにも係わらず全米3週連続第1位を記録!)という異例の大ヒット作品を監督した鬼才である。自身も台湾からの移民一世で、NYのドミニカ移民の街ワシントン・ハイツを描いた『イン・ザ・ハイツ』には共感を抱いたというチュウ監督は、リアルなワシントンハイツの風景と共に、登場人物たちの内面を丁寧に描いた。だがその一方で、VFXを惜しみなく取り入れたスケールの大きなスペクタクルを随所で展開したり、心憎い小技をふんだんに仕掛けるなどして、映像でしか表現しえない全く新たな『イン・ザ・ハイツ』を創造した。さらに注目なのが、ラップ、ヒップホップ、ラテンポップスなど多彩なジャンルの入り混じった多彩なミュージカルナンバーの粋な新アレンジと、それらに乗せて繰り広げられる熱狂的なダンス(振付:クリストファー・スコット)である。オーディオ✕ヴィジュアルの両面から堪能しなければもったいないので、ぜひとも音響の優れた、大スクリーンの映画館で作品を鑑賞して欲しい。
『イン・ザ・ハイツ』7月30日(金)全国ロードショー! (c) 2021 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved
キャスト陣も豪華で魅力的だ。主人公ウスナビ役を務めるのは、ミュージカル『ハミルトン』のブロードウェイ初演で、ジョン・ローレンス/フィリップ・ハミルトン(息子)の二役を演じ、その後、スクリーンの世界でも活躍中の二枚目、アンソニー・ラモスである(ちなみに、『ハミルトン』での勇姿はDisney+で確認できるのでぜひ!)。一方、ウスナビが恋情を抱くヒロイン、ヴァネッサ役を演じるのはメキシコの人気歌手で女優のメリッサ・バレラ。彼女はこの先、オペラ映画『カルメン』(監督:バンジャマン・ミルピエ)でタイトルロールを務めるほか、Netflixの新ドラマ『ブリース(原題)/Breathe』で主演に抜擢されたことも先頃発表されたばかり。つまり業界再注目の女優というわけである。
『イン・ザ・ハイツ』7月30日(金)全国ロードショー! (c) 2021 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved
また、街の希望の星として大学に進学した、タクシー会社の娘ニーナ役を務めるのが、ラテンポップス界の人気シンガーソングライターで今回が映画初出演となる、レスリー・グレース。そのニーナに思いを寄せるタクシー会社社員のベニーは、ドラマ・映画・舞台を股にかけて活躍する人気俳優コーリー・ホーキンズが演じる。さらに、ウスナビらハイツの住民たちにとって母親代わりの存在ともいうべきアブエラおばあさん役には、舞台版初演でも同役を演じた、キューバ出身のオルガ・メレディス。美容サロンを営むダニエラ役には、ミュージカル『レント』の初代ミミ役を演じた、ブロードウェイの神話的存在というべきダフネ・ルービン=ヴェガが配された。他のキャストたちも皆、すべて個性の光る適役揃いだ。
『イン・ザ・ハイツ』7月30日(金)全国ロードショー! (c) 2021 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved
だが何より忘れてはならないのが、舞台初演でウスナビを演じたリン=マニュエル・ミランダだろう。本作にもしっかり出演し、味わいのある喉をたっぷり披露しながら、存在感をスクリーンに焼き付けている。だが、何の役なのかを書くのは、ここでは敢えて控えることとしよう。観てのお楽しみ。
本作は、アリアナ・グランデをして「美しく完璧」、ヒュー・ジャックマンをして「圧倒された。演技もダンスも音楽も演出も驚くほど素晴らしい」と、それぞれブロードウェイ・ミュージカルの経験もある二人に言わしめた。一方、アメリカで最も信頼される映画評論サイト「ロッテントマト」でも99%フレッシュという驚異的な高評価を獲得し、早くも来年のアカデミー賞の最有力候補との声さえあがっている。それは恐らく、アメリカの人々にとって、トランプ政権やコロナ禍のもたらした深刻な分断を乗り越える希望の光のようなものが、この作品の端々から木洩れ日のように優しく解き放たれているように感じられたから、なのではないか。とくに『イン・ザ・ハイツ』において印象的なのが、ハドソン川をはさんで、対岸のニュージャージー州フォートリーとの間に架かる大吊り橋「ジョージ・ワシントン・ブリッジ」の存在である。かの橋には、分断を超える象徴として、見るものを前向きにさせる効能が感じられる。そもそも『イン・ザ・ハイツ』という映画自体が“夢の架け橋”あるいは“多様性への架け橋”というべき極上のエンターテインメント作品なのである。ともあれ、分断とコロナに疲弊した全ての人々に、この“心のワクチン”の接種をおすすめする次第である。
『イン・ザ・ハイツ』7月30日(金)全国ロードショー! (c) 2021 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

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