校條拳太朗、杉江大志、田中稔彦、小
笠原健インタビュー 舞台『WORLD~
Change The Sky~』を観た後に考えて
欲しいテーマとは

舞台『WORLD』は菅野臣太朗が脚本・演出を手掛けるオリジナルストーリーの舞台。2013年の初演、2016年のリメイク再演(『WORLD~beyond the destiny~』)はともに盛況で幕を下ろし、そしてついに三度目の公演が実現する。同じ物語を軸にしつつ、公演によって演出や登場人物が異なっており、同じ作品ながらも全く異なる見え方であった。今回はどんな公演になるのだろうか。
物語は18年前に起きた殺人事件をきっかけとして人生が変わってしまった人たちの、複雑な人間模様が渦巻くジェットコースターサスペンス。
今回は主演の校條拳太朗(三上龍司 役)をはじめ、2.5次元でも多くの作品に出演している杉江大志(相沢顕示 役)、田中稔彦(浅沼達樹 役)、小笠原健(犬飼猛 役)の4人にインタビューを行った。
■『WORLD』が持つ小説的な面白さ
ーーまずは台本を見た時、どう思われましたか。
校條:すごく人間の感情が渦巻いていて、脂っこいなという印象でした。それぞれの登場人物の思いが描かれていて、それが交錯したりぶつかったりしています。すごく人間味のあるお話だと思います。人間が誰しも持つ危険性や犯罪心理など、ちょっとわかってしまうなという瞬間があったりもしました。
校條拳太朗
杉江:出てくる人物がそれぞれとても人間味があってすごく濃いなという印象がありました。その印象のまま読んでいると、サスペンスとしてのお話にどんどん引き込まれていって、この後どうなってしまうの!? と次が待ちきれないような展開でした。このお話もおそらく実際に人が演じることでさらに人間味が増していくと思います。サスペンス要素と、このキャラクターたちの抱える思いと……。それらが同時に走っていて目が離せないような面白さがありました。
田中:僕は前作にも出演していたのですが、最初に台本を読んだ時に思ったのが「前回と全然違うじゃん!」ということでした。前作を見たことがある方は本当にびっくりすると思います! あとは台本から小説的な面白さを感じました。そしてこれを大きな劇場で芝居するのか……難しいよ、これ! って思いつつ、それは役者と演出家に委ねられているんだなということも同時に分かり、改めて頑張ろうという気持ちになりました。
小笠原:僕も小説的な面白さは一番感じたとことですね。読み物としても面白いですし、やはり日本人らしいなとも思いました。ハリウッド映画のような派手なドンパチではなく、人間の深層心理、心の奥深くに封印していた暗い感情とどう向き合っていくのか、どう読み取っていくのかということを感じて、すごく面白かったです。
ーー今回のインタビューでは2.5次元舞台でも活躍される方が多いですが、ストレートプレイのお芝居で楽しいと思うことやその瞬間はありますか。
校條:原作があるものはそれはそれですごく面白いですが、決定的な違いとしては原作があるかないかということ。いちから役を生み出すか、キャラや世界を勉強してなりきるかという差があると思います。ストレートプレイのお芝居は自分から出せるっていう部分がとても良いですね。ひとつの役に対しても演出家さんの想いや演じる側の意志が入り、たとえ同じ役でも演じる人によっても見え方は全く変わるでしょうし。この自由さが楽しいです。
杉江:僕はナチュラルに「会話ができること」です。普通にそのままでセリフを交わせるのが楽しいです。2.5次元だと良くも悪くもキャラクターというものがあるので、キャラクターに向けた会話になるんです。できるだけナチュラルに会話をしていきますが、セリフはキャラクターを立てるためのものなんですよね。僕は言葉を交わしているときが一番楽しいので、こういうお芝居ではそれがそのままできるのが良いと思います。
杉江大志
田中:キャラクターがあると、その分下駄を履かせてもらっているなと思うんです。お客さんも最初からキャラクターを見てくれるので、その分プラスされている面があります。ただ似ていなかったり、声や動き、性格、演じ方が違うと一気にマイナスになるっていう、プラスマイナスが激しいっていうところが2.5次元の特性だとも思っています。ストレートはゼロ、全員フラットから見てくれるので、何も色眼鏡がなくお芝居だけを観てくれるのが好きなところですね。
小笠原:僕は、野球部出身なので、野球に例えて話します。2.5次元は高校野球、甲子園のキラキラ、はつらつとした青春のようなものです。ストレートの舞台はメジャーリーグで、力と技術のぶつかり合い。どこで力をつけてきたんだ、というような人たちが集まって、お芝居というジャンルで勝負している。そういうレベルの高さや面白さがありますね。2.5次元ばかりやっているとそういう芝居しかできない、みたいな苦労も出てきます。2.5次元もストレートのお芝居もそもそも全然違う性質のものではありますが、役者の力と力がぶつかり合うのは純粋に楽しいと思います。
■前作であった派手なシーンは全てカット。でも面白い!
ーー(校條さんにお聞きします。)本作は「ジェットコースターサスペンス」ですが、そもそもサスペンスはお好きでしたか。
校條:全然見ないタイプで、このお仕事をいただいてから見るようになりました。サイコパスな人が出てくるような、事件が起こるようなものを見てます。僕は洋画が好きなので、サスペンスにはちょっと縁遠かったんですが、その楽しさにも気付けましたし、勉強のためにも今たくさん見ています。いろんな犯罪者・殺人者の演じ方があるなと着目できてとても楽しいです。黒幕の存在がわかるパターンもありますが、真実が明かされたときのゾワゾワ感は言葉に表せないくらいすごいですね。
杉江:サスペンスって好き嫌いがすごく分かれますよね。しかも好きな人は見抜く力もありますし。考察もすごくて「そんなこと思って見てたの!?」っていつもびっくりします。僕はいつだって素直に騙されちゃうもん!
校條:僕もそうだな。
小笠原:(笑)。
田中:視聴者としてはその方がいいんだけどね。
杉江:見抜くのはいいけど、一緒に観てるときに考察は言わないでほしいな~(笑)。
ーー先ほど校條さんが作品をおっしゃったときに田中さんがすごく頷かれてましたが、サスペンスものをよく観られるんですか?
田中:サスペンス、特にバイオレンス作品が大好きです! 韓国映画が最近のお気に入りです。
小笠原:韓国映画はいいよね、おもしろい!
田中:バイオレンスでギトギトしてるんですよね。油ギッシュなおじさんとかがたくさん出てくるようなやつ! 濃くて面白くて大好きです。
(左から)田中稔彦、校條拳太朗、杉江大志、小笠原健
ーー(杉江さんにお聞きします。)コメント動画で「どういう家庭を描いていくか」とありましたが、どういう家庭を「幸せ」だと考えますか。
杉江:哲学だなぁ~! 「幸せとは何か」、人は幸せを追い求める生き物ですからね。自分はすごく幸せに育ってきたので、自分の家族をひとつのベースとするところがあります。両親、祖父祖母、そして兄弟がいて。同じように子供も何人かほしいなとか、そういうことをふんわり思ったりします。そのほかにも、暮らす家が「無理のない空間」になれば幸せなのかなと思います。仕事が終わって家に帰っても頑張らなければと意気込むような場所ではなく、みんなが楽になるところ、帰ってこれる居場所だったらいいな。
小笠原:大志も大人になったな~!(感動)
ーー(2016年の第2回公演に温水凛太郎 役でご出演されていた田中さんにお聞きします。)前回とは異なる役ですが、前の公演で印象的だったこと、本作との違いなどがありましたらお願いします。
田中:前回は稽古場の雰囲気も良く、特に憂いもなく順調に進められていました。脚本も一作目からさらに面白くなってたんです。一作目はベースとなる基本的な作品で、二作目はそこに派手な要素が加わります。オープニングでいきなり爆発があったり、拡声器を使ったり、アクションがあったり……見せ方がすごく激しくなっていました。でも今作では実はその派手要素が全てカット! しかも劇場も二作目と比べてさらに大きい! この『WORLD』の難しいところだとも思いますが、すごく攻めてるな~と驚いてます。でも僕は今回もすごく面白くなると思っています。役者で言えばすごくヤンチャな方が多いですしね(笑)。
ーー(小笠原さんにお聞きします。)久々の刑事役とのことですが、刑事と聞いてぱっと思いつく役者さん、ドラマ、小説などはありますか。
小笠原:やはり織田裕二さんですかね。
田中:油っこい刑事もの好きって言ってたから、僕が思い浮かべる人に近いところが出るかと思った……!
小笠原:えっ、誰だろう?
杉江:『古畑任三郎』、『相棒』、もしくは阿部寛さんとか?
田中:西島秀俊さん!
一同:あ~!! なるほど!
小笠原:最近見たのは役所広司さんの『孤狼の血』という作品ですね。
田中:もう大好き! 最高!
田中稔彦
小笠原:ヤクザと刑事とを描いた映画なんですが、めちゃくちゃ面白いです! 『WORLD』の出演が決まった後だったんですが、たまたまその『孤狼の血』を見て、作品としての面白さや役者さんのすばらしさを感じました。
田中:綾野剛さんの『日本で一番悪い奴ら』っていうのも非常に良いよ!
小笠原:アツいね! 作品も俳優さんのお名前もたくさん出てくる!
杉江:所轄っていう意味では最初に織田裕二さんの名前が出てくるのはわかる気がするよね。僕も印象強い!
■普段触れられない憎悪や愛情に近づける
ーーこの作品を観てくれた人に考えてほしい「テーマ」とは何でしょうか。
校條:芝居だからこそ、犯罪者・罪を犯すものの側の裏側、ストーリーを見れると思います。現実のニュースだと知ることができるのは逮捕されたという結果だけです。もちろん殺人は絶対に肯定できませんが、『WORLD』で描かれる龍司などの心理、原因、憎悪の裏側にある愛情など、普段触れられないところに近づけるかなと思います。そういう部分でスリルを味わっていただけたらと思います。
杉江:難しいな~! 正しさと幸せってなんだろう、ということを考えてほしいかもしれません。「尺度の基準は人間である」という哲学者の言葉もありますが、幸せというものも振りかざす正義も人間が決めるものなんですよね。あなたの正義は誰が決めた正義ですか? 果たしてその中に幸せはあるのか。そういうことを問いたいです。
田中:僕は逆に「何か持って帰ろう」とは考えずに観てほしいかもしれません。これを伝えたいっていうことをあまり押し付けたくないです。作品を観劇して、犯人や黒幕がわかっただけでいいかも。そこから何かプラスしてキャッチできるならしてほしいけど、サスペンス、ミステリー的な要素、それ自体を楽しんでほしいですね。
小笠原:稔くんが言ったように、自分がサスペンスを観終わっても何か深く考えるっていうことはあまりしないよね。シンプルに面白かったな、観ている時間が幸せだったな、楽しかったって思う、そういうことでいいんじゃないかな。校條くんと大志が言ったように、役者としてはこう考えてほしい、読み取ってほしいとかいうのはもちろんあります。なので両方ですね。みんなのいいとこどりしちゃったな!
田中:うん、僕らは演じるうえで伝えたいこととかたくさんあるんだけども!
小笠原:逆に「何も感じなかった」、っていうのもそれでいいと思う。
ーー今回も推しがかっこよかったな、でいいんですよね。
小笠原:そう、それでいいんです! 僕らはプロとして意志は見せるためにある、ただそれをどう感じるかはあなた次第、ですね。
小笠原健
ーー最後にメッセージをお願いします。
校條:こういうご時世ですが、僕らはやれることを一生懸命にやります。ご来場くださる皆さま、観てくださる方にはそれだけのものをきちんとお届けしますので、楽しみにしていてほしいです。
杉江:僕はこの本を読んだときに、人によって見方次第でいろいろな楽しみ方、いろいろな視点があるなと思いました。先ほどテーマの質問の時にも出ましたが、各々の思う楽しみ方をしてほしいです。でもちょっとお話がややこしかったりもしますので、いろんな見方をするためにもできれば何回も観ていただければと。見え方や感じることが変わって、考えられることが増えるんじゃないかなと思います。ぜひ、複数回観てほしいです! 贅沢ですみません!
田中:今回はお芝居としてもとても難しいので、一生懸命全力で今持てる全てをつぎ込みたいと思っています。興味本位で観に来てほしいです。ふらっと劇場に行ってみようかなくらいの感覚で来たら、そこには良い芝居があった。って思わせたいですね!
小笠原:気軽に行くような劇場ではないような気もしますが、作品的にはそっち寄りですね。なので、ふらっと来ていただけるような?
杉江:さっきからみんなの言うこと拾いまくってるじゃん!
小笠原:だってみんな良いこと言うんだもん。なので、全通してもらえるといいんじゃないかなと思います!
田中:ふらっと、って言ってたのに(笑)。
小笠原:ご時世的にも厳しいこと、大変なこともありますが、頑張りますので!
校條:ちゃんと全部回収した!(笑)
小笠原:座長も素敵ですし、最高の芝居になります! ぜひご来場ください。
(左から)田中稔彦、校條拳太朗、杉江大志、小笠原健
取材・文=松本裕美  撮影=荒川潤

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