Hakubi片桐、J-WAVE初の生放送で弾き
語りカバーに1ヶ月挑戦中! 企画へ
の率直な想いとバンドの変化とは

生きることに向き合い、弱さを押し殺しながら素直でまっすぐな声に乗せて遠くまで飛ばす表現で存在感を表したHakubi。そのボーカル/ギターの片桐が5月の1ヶ月間、J-WAVE『SONAR MUSIC』のエンディングで毎日、弾き語りカバーを披露している。様々な時代の誰もが知る名曲をその日に発表し、フルコーラスで届ける緊張感や、リスナーに共通する思い出や曲への共感も相まって、オンエアを重ねるごとに話題も広がっている中、3週目に突入した片桐に、この試みに対する思いをインタビュー。また、今年9月にメジャー1stアルバムのリリースが決まっている今、そこに向かうHakubiの変化についても話を聞いた。

※5月31日の放送にて、6月1日からも番組エンディングの弾き語りカバー企画の継続が発表されました。
――まず1ヶ月に渡る生での弾き語りというオファーが来たとき、どう思われました?
J-WAVEさんはみんなにめちゃめちゃ聴かれているし、『SONAR MUSIC』は自分自身聴いていたり、『THE KINGS PLACE』っていうちょっと若手のバンドが出てくる番組もよく聴いていて。このお話を頂いた時、すごく嬉しかったです。でも『SONAR MUSIC』のこの企画は番組のエンディングっていうところで、しかも24時前、1日の終わりの1曲を担当するっていうので、すごいプレッシャーがあるなとは感じていました。
――でも引き受けた最大の理由は?
もともと、バンドを始める前から配信で弾き語りをカバーでしていて。1日4時間とかやってしまうぐらい、いろいろな曲をやってて。単純に弾き語りをするのが好きだったし、今のタイミングでバンドがなかなか動けなかったり、ライブができなかったり、特に自分はバンドを始めてから弾き語りでライブをするのはやめていたりしていて。聴いてもらえる機会がないなって思っているときだったので、すごくありがたかったですし、挑戦できるなと思って。私は緊張しいなので、すごくありがたい機会だなと思い、やらせていただきたいです、とお伝えしました。
――番組のプロデューサーさんがこの企画を立ち上げた理由として、コロナ禍でも、少しでも歌でリスナーの方の心が晴れればという意図があったそうですが、この理由には共感されました?
そうですね。弾き語りって一人でしか歌わないし、部屋の中でやっているイメージが強くて、自分自身もそういう風に思っていたし、配信とかでも一人きりでカメラの前でやっているものなんですけど。それが電波に乗ることで、一緒に歌えるというか、時間を共有してるっていうのが、一人っきりの部屋であっても、それは共有できているなっていう感じがして。自分の弾き語りにもできることがあるんだという風に思いましたし、自分は外に向かって“一緒に歌おう”っていうタイプではなかったんですけど、時間的にも24時前なので、一緒に部屋の空間にいるような、同じ空の下にいるような温かい時間って、すごくいいなって思いました。
――公の場所で他アーティストの曲を披露することって、なかなか覚悟がいることなのかなと思ったんですけど、別にそんなに重い感じではなかったんですか?
ああ、でもやっぱり自分が曲を書く側としても、他のアーティストさんを見ていても、曲を作り上げるのは大変だし、すごい思いが詰まっている曲を自分が歌わせてもらうことに対しては、すごくプレッシャーを感じているのですが、単純に曲が好きだったので、そこはすごく楽しんでやらせてもらってる感覚があって。なんか、バンドは自分だけかもしれないんですけど、苦しみながらやっていくものというか、人生としていろんな紆余曲折ありながら進んでいくものだと思っているんですけど、この企画に関してはちょっと違う。こう、枝分かれみたいに行ってみる、みたいな、そういった楽しみ……楽しんでやれている感覚があって。ただの音楽好きというか、曲好きとして歌えてることがすごく嬉しいです。
2021年5月24日の生放送の様子
中島みゆきさんの「ファイト!」は、語り継がれていく名曲って、こういう曲なんだなって噛み締めて歌っていました。
――具体的なことなんですが、選曲はどれぐらいのタイミングでしているんですか?
あー(笑)。ほんとに今週のものだと今週のはじめに決めちゃって。リクエストもいただいているので、ギリギリまで引っ張って、どれにしようか、と。でも結構、一任していただいてるので、好きな曲を。で、もちろんみんなが知っている曲っていうのも念頭にあって。
――SNSでリクエストされた曲もあると思うんですが。
ASIAN KUNG-FU GENERATIONの「ソラニン」と、フジファブリックの「若者のすべて」も、YUIさんの「GOOD-BYE DAYS」、RADWIMPSの「トレモロ」、中島みゆきさんの「ファイト!」、めっちゃやってますね(笑)。
――リクエストする人は片桐さんのことを知っている人も、番組を聴いてて歌って欲しいなと思った人もいるかもしれないですね。ちなみにリスナーの方からはどんなリアクションがありますか?
ファンの方からいただくメッセージは「いつもと違って緊張感があっていいね」とか。配信とかではワンコーラスしか歌わなかったりしてたので、1曲を通して聴くとまた違うって言われたり。ラジオリスナーさんからは、毎日やっているので、日を追うごとに、「今日めちゃめちゃよかった」とか言ってくださることがすごく嬉しいです。単純に『SONAR MUSIC』のリスナーの方にも認めていただくような感じだったり、「今、この曲聴きたかった」とか反応をいただくことはすごく嬉しいです。
2021年5月24日の生放送の様子
――5月のウィークデーはJ-WAVEに通っているわけで、そういう毎日はどうですか?
単純にすごく嬉しいです。自分は忙しいのがすごくありがたいなと思っていて。コロナ禍で動こうと思っても動けない、自分たちの世代だと特に、ライブもできず、曲作りしかできない環境で活動してる人たちが多いなかで、自分たちはこうやって動けていることは、すごくありがたいなぁって思います。
――ミュージシャンにはそういう場所がないと、逆にしんどいのかな? とも思うんです。
私はすごい緊張しいなので、ライブをすることにすごい緊張してしまって。しんどくなってしまうこともあったのですが、コロナ禍でライブができないってなると、逆にしんどくなっちゃって。ライブがあるとすごいスッキリした気持ちになったので、やっぱり歌える場所が必要だったんだなと思います。
――決まった時間に生でオンエアされるわけで、しかも今はradikoのエリアフリーで全国どこでも聴けちゃうわけですよね。そういうのを考えると緊張しちゃいますか?
そうですね、緊張しちゃってました。1週目はめちゃめちゃ緊張しました(笑)。そのドキドキが“大丈夫かな?”っていうのとはまた違って、“何が起こるんだろう?”っていう、ワクワクする感じになってくれればなと思って。だいぶましになりました(笑)。
――中島みゆきさんの「ファイト!」のカバーを聴いたんですが、凄かったです。
ああ~、ありがとうございます。
――歌詞の内容とかは今の時代にはない部分もありますが、どう消化して歌いました?
そうですね、歌の力がすごいなって、めちゃめちゃ思って。なんですかね……自分が誰かの曲を歌わせてもらう時って、傍観者じゃなくて主観として歌を歌っている気がしていて。自分のオリジナル曲をやるときと同じような気持ちでやっているんですけど。例えば役者さんが演じていて、それにのめり込みすぎて感情が出ちゃうみたいな、すごく泣いちゃうみたいな。その人から抜け出せない、そんな感じに自分も歌っていてなって。「ファイト!」に関しては、一番、全然自分とはかけ離れた時代の話であったり、中島みゆきさんという違う方の言葉なんですけど、自分にすごくズシンとくる、これはなんですかね? 言葉選びで、これだけ人を感動させられるのか? というか。サビも同じであったりするんですけど、その中のエネルギーがほんとにすごいなと思って。語り継がれていく名曲って、こういう曲なんだなって噛み締めて歌っていました。
“たくさんの人に届け!”っていう気持ちをもってやっているのは、今までとは心がちょっと変わっているかもしれないです。
――今回の経験がこれからのHakubiで片桐さんが作るものに何か影響はありそうですか?
単純にたくさんの方の曲をカバーをすることによって、音楽性的にも広がるなと思ったり、この企画の中にある、みんなで同じ空の下で一緒に同じ歌を歌おうっていうのも、自分はこれまでしてこなかったことなんですね。自分だけで完結していたり、配信で弾き語りをしていても、自分が歌ってそれを聴いてもらうっていうだけの感覚でやっていたので。この曲をみんなに一緒に歌ってもらおうとか、この時間をもっといいものにしなきゃって、すごい気持ちをもって取り組めているので。その“たくさんの人に届け!”っていう気持ちをもってやっているのは、今までとは心がちょっと変わっているかもしれないです。結構、自分のことをとにかく吐き出したい、吐き出したいっていう風に歌っていたのとはまた違う気持ちで、優しい気持ちになっているかもしれないです。
――ラジオって、Hakubiのメンバーでもやってらっしゃいますけど、また今の時代に見直されているメディアでもあり、身近になっている気がします。片桐さんのラジオリスナー体験として、思い出に残っているものはありますか?
私、ラジオ結構好きで。高校を卒業するまでは岐阜県のすごい田舎にいて、同じ音楽が好きな人たちと繋がるような日本のロックがメインの番組をすごく聴きたかったんですけど、持ってるラジカセでは全然聴けなくて。電波がザーザーの中で時々“あ、聴けた!”みたいなのをやっていたんです。で、大学になって、京都で一人暮らしをするようになって、深夜のお笑い芸人さんの番組などもよく聴いてたんですけど、一人暮らしだったので、誰ともしゃべることがあんまりない中で、すごく隣にいてくれる、みたいな感覚はありましたね。一人でいてもこんなに笑えるんだと思ったり、新しい曲を聴いたり、出会うことで、空白の時間を埋めてくれる感じがして、すごい好きでしたね。
――ところで一人でスタジオに行って歌うわけですが、メンバーはどんな感想を持っているんですか?
なんか、普通にLINEをしたらいいのに、インスタグラムで「今日もありがとうございました」って投稿したら、ダイレクトメッセージで「おつかれさま」って(笑)。いやいやいや、LINEとかしろよ、みたいな(笑)感じなんですけど。聴いてくれているみたいですね。でもちょっとジェラシーを感じてるんじゃないですか? 私だけ出させてもらってるから、“俺もいつか出させろ”っていうアピールなんですかね(笑)。
――Hakubiはコンスタントに配信シングルをリリースしていますが、最近は制作の手法も変わってきましたか?
確かに制作の手法は変わっているかもしれないですね。今までは結構、自分がいろいろストックというか、ゴミ箱みたいのがあって(笑)。一応、残しておこうかなみたいな、いつか使うだろうみたいなのがいっぱいあるんですけど。そういうのを誰にも見せないで、自分が“いいかな?”って思う曲だけを渡して、それを作品にしていくことが多かったんですけど。コンスタントに曲を作っていきたいなというのと、意外にそのゴミ箱にある、私は“いやー、これは聴かせるほどでは……”みたいな曲でも、“これいいじゃん”って言ってくれることが多かったので、ゴミ箱開放しよ、みたいな感じで。今は100%のなかの20%ぐらいのゴミ箱は開放していて。それからみんなでたくさん断片を基に協議していったんです。なので、今までは自分の曲に対してもあまり自信がなかったので、聴かせてもいいぞっていう曲しか出さなかったものから、ちょっと信頼できている、周りを。それは大きく変わったかもしれないです。
――徐々に変化してきているんですね。それにしても9月にフルアルバムのリリースが決まっているということは、プロセスを見せていく感じなんですか?
そうですね。小出しになって行っちゃってるんですけど。
――今、3曲リリースされていて、この後は?
また先行配信が、あと2曲か3曲あると思います。特にこの時代はデジタルでパッパッて出せちゃうので。逆にいうとみんなから、出していないとその存在が危ぶまれるというか、忘れ去られちゃうことも若干怖かったり。まぁ、お知らせがあるってことをすごく嬉しく思ってくれる方がたくさんいるって気づいたので、そこの部分でも月1で出せることはすごくいいなと思います。
――番組で片桐さんに出会った方は、Hakubiの今もチェックしていただけるといいですね。
そうですね。今日はありがとうございました!
取材・文=石角友 撮影=大橋祐希

【SONAR MUSICプロデューサー日浦氏コメント】
――『SONAR MUSIC』のエンディング弾き語りコーナーが生まれた理由とは?
東京では3回目となる緊急事態宣言も延長され、ゴールデンウィークも外出を自粛したりと、まだまだこれまでのような日常が戻らない鬱々とした状況が続く中、少しでも音楽を通じてラジオリスナーの心が晴れるような企画を、と思いスタートしました。同じタイミングで、J-WAVE全体としても「今こそ歌おう!大きな声で!自分の空間で!みんなで、同じ時間に、同じ空の下で、同じ歌を歌おう!」という想いのもと『SINGIN’ LOUD』という企画が生まれ、リスナーから片桐さんと一緒に歌いたい曲をミュージックシェアするなど、SONAR MUSICでも連動してオンエアしています。

――今回の企画にHakubi片桐さんを指名した理由は?
初めてHakubiの曲で片桐さんの歌声を聴かせてもらった時、歌詞と一緒に迷いなくストレートに心に飛び込んでくる声だなという印象がありました。ギター1本弾き語りでその歌声がラジオから流れてきたら、きっとリスナーの心をつかんで離さないだろうなと思い、今回の企画をお願いしました。
――放送後の反響はいかがですか?
番組ではSNSを中心にリスナーのメッセージや感想を募集していますが、毎回片桐さんの演奏が始まると沢山の方に反応いただいています。その日演奏するカバー楽曲は片桐さんが歌うまで明かしていないので、今日は何を歌ってくれるんだろう?というワクワクした気持ちもリスナーの皆さんには感じていただいているようです。業界の方々も聴いてくれているようで、連絡頂いた方に「毎回生で演奏してもらっている」と伝えると、皆さん驚いています(笑)。
――『SONAR MUSIC』以外でも生演奏やスタジオライブ、ミュージシャンの自宅からの弾き語りなどをラジオでオンエアされていますね。
CDや配信でリリースされる作品ももちろん素晴らしいですが、やはり生の空気感で音楽を伝えるということは特別なことだと思っています。その時々で変化する音の違いも、ミュージシャンの皆さんの息遣いも、一番近い距離感で音楽が聴けるのはラジオというメディアの特長であり使命だと感じているので、その生の音楽の醍醐味をリスナーの皆さんにも届けられたらいいなと思っています。
――コロナ禍以降のラジオ番組とリスナーの関係の変化は感じられますか?
大きく何かが変わっているというよりは、変わらないということがラジオの良さでもあるかなと思います。コロナ禍にあってもJ-WAVEでは、「いつもの声を、いつものように届ける」という意識で放送に臨んでいます。これまで以上にリスナーの皆さんの日常に寄り添いながら、より近くにラジオの存在を感じてもらえれば嬉しいです。
【放送情報】
J-WAVE(81.3FM)『SONAR MUSIC』
毎週月曜~木曜 22:00-24:00 O.A.
ナビゲーター:あっこゴリラ
■オフィシャルサイト https://www.j-wave.co.jp/original/sonarmusic/
■J-WAVE(81.3FM)『SONAR MUSIC』番組LINEアカウントはこちら

SPICE

SPICE(スパイス)は、音楽、クラシック、舞台、アニメ・ゲーム、イベント・レジャー、映画、アートのニュースやレポート、インタビューやコラム、動画などHOTなコンテンツをお届けするエンターテイメント特化型情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着