MARiAに草野華余子・山崎まさよしら
豪華作家陣が「歌わせてみた」 ソロ
アルバム『うたものがたり』ロングイ
ンタビュー

GARNiDELiA(以下「ガルニデ」)のボーカルであるMARiAが、2021年5月26日(水)、自身初のソロアルバム『うたものがたり』をリリースした。また6月5日(土)には、東京・チームスマイル豊洲PITにて『MARiA Live 2021「うたものがたり」』の開催を予定している。ユニット結成10周年を迎えた2020年から、今年の前半にかけ、コロナ禍ながらも配信・リアルの両方でライブを開催するなど、決して歩みを止めなかったガルニデ。メンバーであるMARiAとtokuが、今それぞれソロとしての活動を開始するのも、その歩みを止めるのではなく、新たな一歩を踏み出すための過程でもあると言う。その想いが込められた、MARiAのロングインタビューをお送りする。
■「歌ってみた」ではなく「歌わせてみた」。ソロだからこそ生まれた、MARiAの新たな表現方法
――まず、ソロデビューの経緯や思いなどを、最初にお聞かせください。
なぜこのタイミングなのか? って、多分皆さんも思われていると思うんですけど。ガルニデで10周年を迎えて、一つの区切りでもあったのと、ここからまた新しい一歩を踏み出していくタイミングで、やったことがないことに挑めば、その中で得たものが絶対に私たち返ってくると思ったんです。それに元々ソロとしてのアーティスト活動はやりたかったというのもあったんですよね。
――なるほど。
今までガルニデとしては自分の言葉でずっと届けたい想いを紡ぎ続けてきたけれども、そうじゃないやり方って何だろうとか、MARiAのソロだからできることにも挑戦したいと思って。「私にどんな歌を歌わせたいですか?」って投げかけで、ぜんぶ違うアーティストの方に問いかけたんです。それで返ってきた答えが、このソロアルバムの曲たちなんですよ。
――「歌わせてみた」ですね。自分を素材にしてもらうっていう。
そうなんです。「歌ってみた」じゃなくて、「歌わせてみた!」みたいな(笑)。いままで皆さんにガルニデではお見せしてなかった私がソロとしてのMARiAなんですよ。私の声、歌を使って、私を調理してもらう。
――マテリアル的に自分を提供し、来たものに委ねて作ると。そうして歌うことに対して、ヤキモキしたりすることは無かったのでしょうか?「もっとこうしたい!」とか。
そうなるスイッチは不思議となかったですね、だって全部この曲たち良くないですか?本当に素晴らしい歌たちだし、しかも日本のトップアーティストの方々が、私を感じて、私の中の何かを探して、それを見つけ出してくれて、私が歌うことで完成する音楽の世界って、本当に音を紡いでいる世界だって。
――例えばこのジャケットの写真など、ビジュアルに関しても、ある程度委ねた部分があったりするんですか?
いや、結構委ねましたよ、色々アイディアとかは共有させてもらいましたけどね。
■「J-POPのど真ん中を刺すアルバムに」シンガー・MARiAを試す、強烈な個性の楽曲が集結
――楽曲を聴かせてもらっても、とても新鮮でした。例えばリード曲の「コンコース」は、MARiAさんの中ではどんな印象でしたか?
この曲は、デモをもらったときに、めっちゃビビッときたんですよ。全曲そろってなかったんだけど、「これ、絶対リードにする!」って決めて。この曲はwacciの橋口(橋口洋平)さんが書いていて、こんなに現実的で、身近で、ストレートに共感できるような曲を私はあんまり歌ってきたこともないと思うんです。
――曲自体は懐かしい感じがするなと思いました。でも、聴いていると、歌詞に「LINE」とか「スタンプ」とか出てきて、「あ、今の曲だ」って感じるんですよ。
全体的にノスタルジックと言うか。
――アルバム全体を通して、シンプルですよね。ガルニデにも、ピアノ1本の曲や、バラードの曲ももちろんあるけど、全然シンプルで、ストレートな世界ですよね。
うん、超シンプルです。メチャクチャ難解複雑な感じでいつもやっているから。
――多分そういうところにガルニデのこだわりがあるんだと思うんですけれど。ソロアルバムを聴いて「音楽にはこういう魅力もあるんだ」と皆さんに聴いて、感じてほしいですよね。そんな中でも、超難解な曲もありました。
「おろかものがたり」とかヤバイですよね! 愛の挑戦状を叩きつけられた感じです。カヨコ(草野華余子)さんとは割と長い付き合いになるんですけど、出会った当初から「ソロやる機会があったら、(曲を)書かせてね」って言ってくれていて。今はめっちゃ忙しいと思うけど、お願いしたら「やるよー!」って、念願叶いました。そのとき、「どんなやつでもいいんで、私に歌わせてみたい感じでやってもらっていいですか? カヨコ節炸裂させちゃっていいし、エグいのがいいな」とオファーしたら、とんでもないのがきちゃった(笑)。
――節ですよね(笑)。
今回の中で最高難易度でしたね。「歌ってみろ!」だったこれは。だけど、歌っていてメチャクチャ楽しいです。
――曲順として、4曲目に入ってくるのもスパイスとしていいですね。さらにそのあと「マチルダ」がくるのも。山崎まさよしさんに曲を書いてもらうって、なかなか想像できなかったです。
私も、生きている中で、山崎さんに書いてもらうことが起こるなんて思ってもみなかったですね、本当に光栄です。このすごくシンプルな音に、自分の声を乗せていくっていうのは、すごく試されている気がしました。難しすぎますよ、この曲も。デモには山崎さんの仮歌が入っていて、曲は楽しい雰囲気ではないんだけれども、音の海に沈んでいるというか泳いでいる感じで、どう歌っても正解がない歌だったんです。毎回歌うごとにそれが答えになっていくような感じでライブ感がありましたね。間の作り方や呼吸一つとっても、すべてが歌になる。じゃあどう歌ったら私はこの曲の中に沈んでいけるのかなぁって、すごく問われたなと。それがボーカリストとしての味だったり、技量だったりすると思うんですけど。
――それこそガルニデでは、「ambiguous」や「Hysteric Bullet」とかも、バチっとはめて、ズレたらかっこ悪い、みたいなところがありますよね。
ガルニデはそういうジャンルですからね。BPMもめちゃくちゃ早いのもあるんだけど、すごく正確さも問われるタイトな曲がけっこう多くて。多分「マチルダ」は、20代前半とかの私だったら歌えなかったと思う、怖いですよ歌えたら。今の私だから、肩の力を抜いて純粋な感覚で歌えました。
――レコーディングはいかがでした?
今回、アルバムレコーディングも、いつもとぜんぜん違う録り方してて。「Aメロ録って、Bメロ録って」みたいに分けたレコーディングではなく、流れで何回か録って、組み換えとかもやらずに、どのテイクが良かったか選んでいく形でした。加工もなくて、ナチュラルな録り方をしましたね。
――山崎さんの楽曲っぽいエアリー感と言うか、今までのMARiAさんの曲の中では、空気の含み方が一番多く感じましたね。フカフカだな、と。
フカフカですね、それがすごく新鮮で楽しかったなぁ。
■「MARiA節」を完全封印。削ぎ落した先に広がった、ボーカリストとしての振り幅
――この他に、MARiAさんの中で特に新しい発見があった曲を一つ挙げるとすれば、どれですか?
「憐哀感情」ですね。この曲からレコーディングをスタートしたんですよ。MARiAのソロのアルバムを作るにあたり、レコーディングにどんな心で向き合うか、1曲目ってけっこう大事で。
――そうですよね。
本間(本間昭光)さんともいっぱい話し合って、今回はMARiA節を封印しようって決めたんですけど、じゃあ、具体的にMARiA節って何だろう? ってなったんです。
――フィーリングではなく、具体的にということですね。
この18年間歌い続けてきて、初めてこんなに自分の歌と向き合ったんです。自分のフェイクの仕方や、語尾の跳ね上げ方、ビブラートの付け方とか、ぜんぶ削ぎ落として。そこにある私の声だけっていうシンプルな世界。その私が昂ぶりや切なさや優しさや喜びや、すべての感情を表していこうと。「憐哀感情」はすごく文学的で、ドンッて底に落ちている感じの悲恋を表現する楽曲なんですけど、そういう表現をあんまり私はしてきたことがなかったし。
――それでも、ミスマッチな感じはしないんですよね。ひょっとしたら、こういう感情も持ってらっしゃったのかな? みたいに感じて。
みんなに見えているMARiAは、私が作り上げているもので。この曲の感情も、絶対私の中にはあるけれど、ガルニデのMARiAとしては描いてこなかったですね。「オラー! 頑張っていくぜー!」みたいなものと、ちょっと離れた場所にある感情の部分だから。それとは真逆にある立ち位置の曲を1曲目にレコーディングできたことで、振り幅が広がったところが凄くあって。
――振り幅はたしかにそうかも知れませんね。
この曲を聴いているときに、真っ暗なステージが思い浮かんだんです。何も無い空間で、ピンスポットが当たって、私が歌っている。だから、アルバムに「うたものがたり」ってタイトルが付いた。「憐哀感情」がこのアルバムの裏テーマと言うか、基盤になっているような曲かなと。
――圧倒的に違いを感じるのは、ガルニデって訴えかけやメッセージ性が強いけれど、今回のソロは結構、心情吐露なんですよね。「こう聴いてよ!」って言うよりは、つぶやく感じ。
そうなんですよね。語ったり、つぶやいたり。
――リアリティのある女の子の感情吐露みたいなところが多い印象でした。「ガラスの鐘」とかもまさにそうで、恋に迷い込んだ瞬間の曲ですよね。
迷い込むときって誰もがありますよね。「ガラスの鐘」はMAARiAはぜんぶ自分で決めてますよ! みたいな印象を持たれること多いんですけど、私だって迷うときもありますよ(笑)。だから、「あ、MARiAも女の子だったんだね」って思ってください。
――それぞれの楽曲で、描かれている恋愛感情が違っていて。このテーマの分け方も、意図されたところはあるんでしょうか。
べつに失恋の曲がずっと続いてもいいなと思っていました。悲しい愛しかないアルバムでもいいなと、だって、悲しさと喜びって、人が生きてるから起きる葛藤、そこから生まれてくるリアルな感情だから、悲恋が後ろ向き、楽しい恋は前向き、とか全然そういうことじゃないと思うし。
――そうですね。ちょっとラブラブな感じは、「キスをしてみようか」ぐらいでしょうか。
「Brand new me」も、自分への応援歌と言うか。自分への愛。これはラブソングのワードの中でも、人と人との愛みたいなことだから、「恋愛」って言われたらそうじゃないかもしれないけど。恋愛観で考えると……なんなら、ぜんぶ悲しくなるかも。どれも終わった後、ふんわり悲しいですよね。
――コメントでプロデューサーの本間さんもおっしゃっていますが、やっぱりどの曲もMARiA色になっていくのが面白いなと思いましたね。
ありがとうございます。嬉しい。このアルバムのすごく面白いところだと思います。
――そして、今回のアルバムを聴いたあとにガルニデの曲聴くと、改めて、これまでのこだわりが浮き出て見える気がしました。
だから、私はソロもガルニデもどっちも聴いて、どっちも好きになってほしい。ソロを聴いて、またガルニデに戻るっていう聴き方すると、超面白いと思っていて。
――そういう意味では、このタイミングでのお互いのソロ活動を始めたことって、いいことだなって凄く思いました。
10周年を迎えたからこそ楽しめることだから面白いと思うんですよね。
■「私が、そこには居る」歌劇なライブという新しい形でおくる、6月のワンマン
――ソロを発表したときは、お客さんにどう受け取られるか、不安などはあったりしたんでしょうか?
改めて、自分たちの音楽人としての挑戦だったり、さらなるパワーアップのためのものだったりとか。このソロの活動自体は、いちアーティストとして凄く意味があるから。しかもMARiAとtokuが、二人とも同時のタイミングでソロをやっているって、相当凄いことだと思いますよ。背中合わせて、じゃあ行ってくるぜ、みたいな感じなんですよ。
――そして6月5日、豊洲PITでのソロライブが予定されています。
そうですね。MARiA単体でのワンマンって、今までもやったことなくって。本当に初めてなんですよ。どんなことしようか凄く考えたんですけど「うたものがたり」を表現するために、ある意味では演じる私がそこに居る場面があったり。歌劇と言うか、そういう表現のライブを考えています。そこも多分、新しい扉だと思うんですけど。
――ダンスなどはあるんでしょうか?
ダンスは入れますよ、もちろん。私というアーティストの表現の一つとして大切にしていることなので。
――確かにそう言われたら、シンガーMARiAっていう括りは、ちょっと新鮮かも。ガルニデとしてのMARiAさんは、アイコン的な部分もありましたもんね。
本当にそうなんですよ。私っていう像があって、ファッションとかも作ったりしているし。
――「起死回生」のときも、すごいなと思いました。
あれね!あはは!(笑) でも、それが好きでやってるし。もちろん、そっちの私も本物の私なんだけど、ソロのときの私で表現するものも本物で、表現が違うんですよね。ソロは純粋にいろんなものを取り払って、歌を聴いてほしいんだ、っていう。
――それは良い欲求な気がしますね。
だってガルニデは地上にいないんですよ。でもソロのMARiAは、地上にいるということ。現実感を目指してますね。ビジュアルに関しては、余計なものもべつに要らないかなっていう。本当に、歌を聴いてもらいたい。
――それこそ「起死回生」のMVを観たときに、女神の姿である一方で、トレーニング風景のようなシーンもあって。その日常的な姿の方が、お客さんには新鮮に映ったと思うんです。
見たことないですよね。
――その延長線上だというのは、ロードマップとしてちゃんとつながっている印象があって、すごく腑に落ちますね。ライブを振り返っても、例えば2月に開催された『REMAIN』は、歌ものも多かったじゃないですか。それから今回のソロというところにもつながりを感じました。
そうなんですね。
■「止まったら死ぬ」ガルニデが守りたかった、音楽・エンタメ・ライブ
――やっぱりこのコロナ禍、大変だったと思います。でもその中で、ガルニデは歩みを止めなくて。ガルニデとしても大変な時期ではあったと思うんですが。
本当に大変でしたよ!今だってまだ、「大丈夫そう!?」って思っていますからね毎日。大変が続いていますよ。
――その中で、去年8月の『東京紅夜』もあったし、11月の「起死回生」のリリースイベントもあったし。去年からここに来るまで、ライブを含めてすごく自己発信し続けられていて。
止めちゃった方がひょっとしたらラクかもしれないし、止める勇気が必要なこともあると思います。でも自分たちが今まで「続けることに意味がある」って訴えてきたのは、皆と私たちとでこの場所を守らなきゃいけないって思いが全部にあって。世間からは「なぜ?」って問いかけもあるだろうし、「いらない」って思われちゃったとしても、自分たちは音楽が無くなったら死んでしまうから。でも、本当にその時々の判断や行動が絶対にあると思うので、無茶はして絶対にダメだし、人間一人で生きているんじゃないから。止まることが大事な時もありますよね。そういう話し合いって、去年の3月からスタッフと皆でいっぱい話し合ってますね。
――まだアイドリングできていれば、踏めば走るけど。エンジン立ち上げるのが一番大変。
本当に、止まったら死ぬ、みたいな感覚。だから、ジワジワでもいいから。ぜんぜん一歩も進めてないんだけど……。
――いやいや!
それでも、やってきたことに絶対意味はあったって言える未来が待ってると思うから、私は「止めない!」って決めたんですよ。
――ハロパもあったし、ライブも何本も開催されてきて、ご自分の中ですごく印象的だった瞬間って、あります? しんどかった、とかでも。
全部しんどかった(笑)。でも、そうだなぁ。11月の『起死回生』は、「やっと(有観客)ライブできる!」って思った。ここは、みんなにとってもそうだと思うし、自分たちにとっても印象的だったし。「やっぱここが居場所だ」って、すごく思ったんだよね。だから、続けていかなきゃいけないなと思ったし。
――ずっと言われてましたもんね。「必ずみんなの顔見て歌う日まで頑張る」って。どの配信ライブでも。
言ってた。ファンのみんながそこにいてくれることに、もの凄い意味があるんですよ絶対。だから、配信も意味がないわけじゃないけど。ライブをやるアーティストは、みんな多分そう思っているはず、お客さんがいるかいないかでぜんぜん違うから。直接じゃないとってすごく思いました。そこにみんながいてくれる意味。一緒に歌うのはまだ先みたいだけど、立ち上がったり踊ったりは今はできるようになってきたし。そこにいてくれるだけで返ってくるものがあって、受け取ってくれてるその人がいるから、それだけでぜんぜん違った。気持ちが変われたんですよね。自分がそれで、やる意味があると思ったんですよ。
――配信も必要だと思うんですけど、ライブの代替えにはならない気もしています。
うん、どちらかというと別ですよね。
■「そこにあなたがいるだけでいい」この時代だからこそ刺さるライブを
――だから今回、特に「シンガー」として「うたものがたり」を届けるライブは、リアルのライブである必要はあるなと思いますね。
そうなんですよ。だから本当に、やらせてください! 頼むからお願い!
――では最後に、ファンの方々への一言をお願いします。
ガルニデの活動としては10周年を迎えてのソロデビューですけれど。ソロだからこそできる表現や伝え方を、この「うたものがたり」から見つけ始めました。それがみんなに伝わって、楽しんでもらえるといいなと思います。音楽って、いろんな楽しみ方があるから、それをみんなにも見つけてもらえる一つの手がかりに「うたものがたり」がなればいいなと。MARiA自身も、18歳のときから長いことやってきたけど、シンガーとしては1年生なので、「この新鮮な感覚が、まだ見つかるんだ!」って、物凄く楽しんでいるし、すごく面白いんです。ファンのみんなも、そういう感覚がこれからも多分あると思う。これからもMARiAのソロの活動はガルニデと並行して続けていくから、いろんなサプライズや、新鮮な気持ちを毎回更新していけたらいいなと思います。ガルニデは一貫したものがあるから、ガルニデではそれをもっと深く表現して発信していくので、どちらも楽しんでもらえたら嬉しなと思います。これからもよろしくお願いいたします。
インタビュー=加東岳史・平原 学 文・構成=平原 学

SPICE

SPICE(スパイス)は、音楽、クラシック、舞台、アニメ・ゲーム、イベント・レジャー、映画、アートのニュースやレポート、インタビューやコラム、動画などHOTなコンテンツをお届けするエンターテイメント特化型情報メディアです。

新着