【仲村瞳の歌謡界偉人名言集】#201
作曲家・古賀政男の言葉

作詞家、作曲家、編曲家、音楽プロデューサー、バンドマン、振付師、……そして、歌手。きらびやかな日本の歌謡界を支えてきた偉人たちを紹介するとともに、その方々が発したエネルギー溢れる言葉を伝えます。常軌を逸した言動の裏に、時代を牽引したパワーが隠されているのです! このコラムで、皆様の生活に少しでも艶と潤いが生まれることを願います。

わたしは歌謡曲の場合、あくまで歌詞が
主人で、メロディは妻だと思う

『我が心の歌』(著・古賀政男/展望社/1965年4月38日発行)より

今回の名言は、古賀政男の自伝からの抜粋。古賀が本書の中で、佐藤惣之助、荻原朔太郎、西條八十の3人の詩人との交流を「生涯にとってありがたいこと」とした上で表現した言葉である。名曲を生み出すための詩人に対する古賀流のスタンスであり、彼の作曲法にも深く関わっている。「その妻が幾人かの夫をとりかえてみて、つくづくたのもしく思う男性というのは、そうざらにいるものではない」と、詩人たちをかけがえのない存在として強調。なかでも、古賀が佐藤惣之助から受けた影響は大きい。佐藤は古賀とのコンビで「人生の並木道」(歌:ディック・ミネ)や「人生劇場」(歌:楠木繁夫)をはじめ、多くの名作を手がけ、昭和の作詩界を西条八十と二分したとも言われる人物。古賀とのコンビが一番多い詩人でもある。古賀が佐藤の詩から教わったのは、「真剣に自分の心をはき出そう、そこにはきっと大衆の心を打つなにものかが生まれるはずだ」ということ。他にも、「古賀さん、釣りというやつぁね、女を口説くのと同じなんだよ」と、「佐藤惣之助さんは、釣り談義になると、いつも目を細めてこのたとえ話をした」と古賀は回想している。古賀の詩と詩人に対する愛情の深さこそが、人の心を打ってやまない古賀メロディを生んだのだと感じられる言葉である。
古賀政男(こがまさお)
1904年11月18日生まれ、福岡県大川市出身。作曲家、ギタリスト。1923年、明治大学予科に入学。明治大学マンドリン倶楽部の創設に関わる。1929年、明治大学マンドリン倶楽部の定期演奏会にて「影を慕いて」(ワルツ・ギター合奏)を発表。同年、佐藤千夜子の歌唱とマンドリンオーケストラにより「文のかおり」などの自作品をビクターにて収録。1930年、佐藤千夜子の歌唱による「影を慕いて」をビクターからリリース。1931年、日本コロムビア専属の作曲家となる。藤山一郎の歌唱による「酒は涙か溜息か」「丘を越えて」「影を慕いて」など、多くのヒット曲を連発した。1934年、コロムビアからテイチクに移籍し、ここでも「緑の地平線」「二人は若い」「東京ラプソディ」「あゝそれなのに」「青い背広で」「人生の並木路」などの名曲を生み出す。1938年、外務省の音楽文化親善使節として渡米。1939年、コロムビアに復帰。1948年、近江俊郎の「湯の町エレジー」が大ヒット。同年、『古賀ギター歌謡協会』(古賀ギター学院)を設立。1959年、日本作曲家協会を創設。初代会長となる。服部良一らとともに『日本レコード大賞』を創設。1964年に発売された、美空ひばりの「柔」が約190万枚を売り上げるメガヒットを記録し、1965年の第7回『日本レコード大賞』にて大賞を獲得。1966年、美空ひばりの「悲しい酒」も約145万枚を売り上げるミリオンセラーとなった。1978年7月25日、急性心不全により死去。享年73。同年、国民栄誉賞が授与された。
仲村 瞳(なかむらひとみ)
編集者・ライター。2003年、『週刊SPA!』(扶桑社)でライターデビュー後、『TOKYO1週間』(講談社)、『Hot-Dog PRESS』(講談社)などの情報誌で雑誌制作に従事する。2009年、『のせすぎ! 中野ブロードウェイ』(辰巳出版)の制作をきっかけに中野ブロードウェイ研究家として活動を開始。ゾンビ漫画『ブロードウェイ・オブ・ザ・デッド 女ンビ~童貞SOS~』(著・すぎむらしんいち/講談社)の単行本巻末記事を担当。2012年から絵馬研究本『えまにあん』(自主制作)を発行し、絵馬研究家としても活動を続ける。2014年にライフワークでもある昭和歌謡研究をテーマとした『昭和歌謡文化継承委員会』を発足し会長として活動中。

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