内田 彩

内田 彩

【内田 彩 インタビュー】
“今を楽しく
生きているなら大丈夫”と、
ありのままを認めてくれる一曲

自身も出演しているTVアニメ『やくならマグカップも』EDテーマを含む5thシングル「Pale Blue」。表題曲の歌詞は自分とリンクすることも多いようで“全部が私じゃん!”と話すほど。本誌初登場となる彼女に音楽活動に対する気持ちの変化やファンへの想いも訊いた。

hisakuniさんの歌詞には
私がいちばん癒されているかも

音楽活動を始めてから6年以上経ちましたが、アーティストとして活動する上で大切にしていることは何ですか?

自分の気持ちに嘘はつかないことです。作家さんに楽曲を作っていただく以上、全ての歌詞が私の経験にもとづくわけではないので、新しい曲を歌う前には自分なりにストーリーを考えているんですよ。最近、ようやくしっかりと曲を自分の中で消化して、“演じながら歌う”ことができるようになってきました。

その変化には何かきっかけがありそうですね。

きっかけは、4thアルバム『Ephemera』(2019年11月発表)ですね。この作品から制作チームが新体制になったことで、歌詞の一人称に“僕”が使われ始めたんです。それまでの楽曲は“私”で統一してきたところを、新しいスタッフさんから“内田さんの楽曲を聴いた人の感情が“僕”という言葉をきっかけに動かせたら、それはとても素敵だと思いますよ”とご提案をいただいて。これまでは“私とみんな”というような向かい合うイメージで歌詞を届けることにこだわっていたものが、“僕”にすることで私を含めて“みんな”という一体的な感覚を持って伝えられるようになったことが大きかったですね。

『Ephemera』と言えば、2020年3月開催の無観客ライヴ『AYA UCHIDA「Reverb」リリース記念無観客配信ライブ~decorate your live!~』でもセットリストの主軸になっていましたね。

全体的に内向的な歌詞の多い作品なんですよ。それがファンのみんなが会場にいない無観客ライヴというシチュエーションと奇跡的にマッチして。もちろん音楽を通してみんなとつながっている感覚はずっと持っているんですけど、“目の前にいる方々に直接訴えかける方法以外でのパフォーマンスもあるんだ!?”と無観客ライヴを通して新しい発見がありました。

そうした成長を経て、シングル「Pale Blue」が発売されます。表題曲はTVアニメ『やくならマグカップも』EDテーマに起用されていますが、内田さんも出演しているんですよね。

そうなんです。このアニメは女子高生4人による陶芸部での活動をテーマに、それぞれの想いや成長を描いた青春群像劇になっていて、私は真土泥右衛門というマスコットキャラクターを演じています。今回のアニメ版では原作と少し違って、次回予告のナレーションを担当しながらメインキャラクターたちを見守り、“このあとはどうするんだ!?”とツッコミを入れたりしていますね。

私も観ましたが次回予告も面白いですよね。楽曲としてはどのような仕上がりになりましたか?

プロデュースをしていただいた作家のhisakuniさんに、アニメの内容をうまく汲んでいただけて、タイトルの“淡く蒼い”色が思い浮かぶ、さわやかなものになりました。アニメを視聴されている方には彼女たちの想いと通じる部分を、そうでない方には淡い恋愛や友情からうっすらと懐かしさなどを感じていただけると思います。私自身も高校時代を懐かしむ気持ちになりましたね。

楽曲制作はコンペ形式ではなく、決め打ちで?

そうですね。デモ段階では“青春ど真ん中”な構想もあったんですけど、スタッフさんに“彼女たちを見守るお姉さん目線のような落ち着いたアレンジのほうがいいよね”と相談して、現在の完成形になりました。改めて振り返ると、私が歌う歌詞の目線と演じている真土泥右衛門の立ち位置が、どちらも“俯瞰”という点で共通していますね。

この曲を歌う上で意識したことはありますか?

全体的に柔らかく、ほんわかとした雰囲気で楽曲がまとまることを目指しました。実はアニメ監督の神谷 純さんとレコーディング当日にお話をする機会があって。当初はエンディング映像が出来上がってなかったので、どんなふうに歌うか自分の中で悩んでいたんですけど、映像のイメージを監督に教えてもらえたんです。“真土泥右衛門などのマスコットたちが出てくる、可愛くてほのぼのするような映像になるよ”と。そのお話を先にうかがえたから、歌唱のイメージもしっかりと持って歌えました。この話を聞けずにいたら、もう少し感傷的でエモーショナルに歌っていたかもしれないですね。

確かに、歌詞の中で登場人物たちの関係性の変化を予感させる描写もありますし、そうした方向性の理解もできそうですね。

今回の制作にあたり、hisakuniさんから“こういう曲にしたいです!”というメッセージもいただいたんです。そこには、青春をテーマにしつつ女の子同士が恋心を抱きながらもすれ違うかも…といった内容が書かれていて。

作品の裏テーマのようにも思えますね。そんな hisakuniさんとは2ndアルバム『Blooming!』(2015年7月発表)の収録曲「with you」に始まり、これまでに数多くの楽曲でタッグを組まれていて、内田さんに対するhisakuniさんの理解度も相当かと思われますが、「Pale Blue」の歌詞にも共感できるポイントは見当たりましたか?

それが、もうめちゃくちゃあって。今までも“どこかで私を見てたの?”と思うほどだったところが、今回は“全部が私じゃん!”って(笑)。

その中で特に好きなフレーズはどこでしょう?

2番Aメロの《好きなモノ 好きなコト/恥ずかしがらず好きと言える/君が好き》から始まる部分です。すごく私っぽいなって。

内田さんなら絶対にそこを選ぶだろうと確信していました(笑)。それこそ、2014年8月まで遡りますが、代々木アニメーション学院名古屋校の体験入学イベントへ出演された時に、学生のみなさんへ“笑われても、バカにされても、自分の夢と自分を信じて進んでこう!”と伝えていた姿を印象深く覚えています。今回の歌詞にも通じそうなメッセージですね。

確かに! すっごく懐かしいですね(笑)。

今でも当時の想いは変わっていない?

ちょっと…変わっちゃったかもしれない(笑)。声優になったらなったで悩みが10倍くらいに膨らんじゃうこともあるし…

とはいえ、そうした夢に向かって努力する人さえ、「Pale Blue」は温かく見守ってくれそうです。

それで言うと『やくならマグカップも』第3話では、真面目に陶芸に取り組む青木十子ちゃんと、賑やかに部活動を楽しみたい久々梨三華ちゃんが喧嘩をしちゃったんですよ。原作を読んだ時から感じていたんですが、十子ちゃんが抱いている先輩らしい考え方は自分の中にも存在しているなと。

内田さん自身に重なる部分があるんですね。

例えば、大好きな歌を素直に楽しめばいいのに、最初はアーティストデビューを嫌がってたし、大人っぽい歌を歌えるほうがいいと考える自分と、可愛い歌が大好きでいるもうひとりの自分がいたり。最近だと、アーティストとして早くライヴを開催したいと周囲に発信すべきと考えているんですけど、コロナ禍ということもあって、私の決断でひとりでもつらい想いになってしまう方がいるのなら、それは望みたくないという…。複雑なところですね。

こうした状況下だと、なおさらに二律背反が生じてしまうと思います。

人生って常に理想と現実を行き来するものだと思うんです。その上で「Pale Blue」を歌っていると、周囲に対してもそうなんですが、むしろもうひとりの自分自身と向き合える気がしていて、そこに心をグッと掴まれるんですよね。自分を俯瞰で見て包み込んでくれるようで、“今を楽しく生きているなら大丈夫”とありのままを認めてくれる一曲だなって。最後には自分に意味が返ってきてくれる言葉ばかりだから、私がhisakuniさんの歌詞に一番癒されているかもしれないです。
内田 彩
シングル「Pale Blue」【限定盤】(CD+DVD)
シングル「Pale Blue」【通常盤】(CD)

OKMusic編集部

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