SUPER BEAVER・渋谷龍太 ロングイン
タビュー後編「誰であっても、どんな
場面であっても嫌な思いをする必要は
ない」

最新曲「愛しい人」のリリースを記念した、SUPER BEAVER・渋谷龍太のロングインタビュー後編。渋谷独自の言い回しであらわされる感じ方、考え方、価値観の数々――。そんななか、この後編では彼の揺るぎない意志が感じられる発言が多くあった。そして、そこには渋谷のやさしさも流れていた。何か葛藤を抱えて生きている人、弱さに押し負けそうになっている人。そんな人たちの支えになるようなその言葉。前編に続いて、彼の話のニュアンスをできるだけ再現しながらインタビューをお届けする。
●「人間は満足できない現実があると誰かを攻撃的して安心感を得る」
――「愛しい人」の次に収録されている「ほっといて」はどのような楽曲であると捉えていますか。
この曲はアンチテーゼに近いですね。自分たちが「格好良い」「素敵だ」と感じるものがあるからこそ、それに該当しないものって、あまり好きじゃない。だけどそれに対して、むやみやたらに嫌う必要はないですよね。好きなものや愛情の表裏を形にしました。
――他人の趣味について、興味がないなら何も言わなければ良いのに、なぜか否定をしてくる人もいますよね。
そういう人ってきっと自分に自信がないんだろうなと思います。人間は何かを攻撃しているときに安心を得るんですよ。だから自分にはないものを誰かが持っていたり、満足できていない現実があったりすると、ついつい対象を攻撃してしまうのだと思います。
――SUPER BEAVERも表に立つ機会が多くなりましたし、その分、意図していないことをとやかく言う人も増えたんじゃないですか。
他に比べるとそれほど多くないはずだし、そもそもあまり把握はしてないのですが、でもきっといますよね。ただ、そういう人はそういう人生で終わるんじゃないかな。だからほとんど痛くないし、僕の人生には何の影響も及ぼさないですね。いや、もちろん気にはなるし、ちゃんと傷つきますけど。
――そうそう。誰だってちゃんと傷つくということですよね。そういう点では同じ人間。それなのになぜ、表に立つ人やクリエイターのことをそこまで叩けるのか。
ある一定の形でマウンティングをしたい人はいますよね。しかもマウンティングは、誰かに見てもらうためにやる。攻撃して人の目に止まることで安心材料になる。家でノートに書き留めているだけのようなものなのに、ネットで書いちゃう。本当はその程度のことなのに。信念であるとか、やらなきゃいけない類のものとか、そういうところではない感情の吐露。それに対して気持ちが揺るがされることは、本来はあってはならないことです。
――渋谷さんは小説『都会のラクダ』で、傷ついたりしてどうしようもなかったら、逃げた方が良いと綴っていらっしゃいました。道徳観が欠けたやつなんて絶対にいるから、と。
まったく正面から向き合う必要がないですからね。誰であっても、どんな場面であっても、自分が嫌な思いをする必要なんてないから。
――クリエイターだけではなくどんな立場の人にも通じる言葉ですね。
本当に興味がなかったら攻撃なんてしないで、それを避けて生きれば良いじゃんって思います。
●「中学の友人が「いつかお前らのツアーを一緒に回れるようになりたい」と言ってくれた」
SUPER BEAVER
――3曲目「はちきれそう」は記憶にまつわる楽曲です。「忘れたはずだったけど覚えているということは、すなわち特別なんだ」という。
これはすごく好きな曲です。僕自身もやっぱり特別な相手だからいろんなことを覚えているし、そういう人って今でも何らかしらで関係性がつながっています。逆につながりが途絶えた人に関しては、そんなに覚えていないかもしれないです。
――4月16日にオンエアされたラジオ番組『オールナイトニッポンX(クロス)』で、スタジオに翌週やってくる柳沢さんに仕掛けるドッキリ企画の内容をリスナーから募集されましたよね。そのなかの1通のメールに「柳沢さんのことをヤナギザワと呼んでみる」というアイデアが送られてきて、渋谷さんが「あれ? こいつ中学の友だちじゃん!」と素性に気づく一幕がありましたが。
ラジオネームに特徴は全然なかったけど、メールアドレスのなかにその友だちの誕生日の数字が入っていたんです。地元の友だちで、年始と夏には会っていて今でも交流があって。そいつは10年間、マッサージ師として働いたあと、その仕事を辞めて鍼灸師の学校に通って、今年4月に鍼灸師になったんです。昔から「一緒に仕事をしたいね」とお互い言い合っていたんですけど、4月28日、29日のTACHIKAWA STAGE GARDEN(東京)でのライブにマッサージ師として入ってもらう予定だったんです。やっと一緒に仕事ができるはずだったのに、延期になって本当に残念です。
――先日のラジオの際のメールとは関係なく、前々から決まっていたわけですか。
そうそう、関係ないですね。そいつとはそういう話をずっとしていて。「いつかお前らのツアーを一緒に回れるようになりたい」と言っていたんです。当時は僕たちも、マッサージ師をその都度で呼べる規模のライブはやっていなかったので。「俺らも人を雇える規模のライブができるバンドになってみせる。だからお互いにがんばろうぜ」と言っていました。それが今、こうやって夢が叶えられるところまできました。
――そもそも、友だちであっても誕生日ってなかなか覚えていないですよね。だけどメールアドレスを見てそれに気づくのがすごい。
本当は数字や細かいことを覚えるのは苦手なんです。一方で誰が何を言ったかなんかは、よく覚えています。この人がどの場面でどんなことを言ったかとか、何が好きか嫌いかとか。
●「あの頃の自分たちに比べて、今の自分たちはどこに立っているか」
SUPER BEAVER
――『オールナイトニッポンX(クロス)』では柳沢さんにドッキリを仕掛けましたが、やってみていかがでしたか。
1時間というオンエアの尺のなかで、柳沢とのアコースティックライブを3曲やって、ほかにも楽曲を流すことが決まっていたし、喋る時間が20分くらいしかないなかでドッキリをやるのは難しかったですね。柳沢をびっくりさせるために、メールでいただいたドッキリをいろいろやったけど、その半分くらい、柳沢は気づかなかったですね。ドッキリをバラすタイミングもうまくなかったから、放送を聴くのが怖かったです(笑)。
――前週のオンエアでも「柳沢さんはドッキリに気づかない」とおっしゃっていましたもんね。
本当にいろんなことに気づかなかったから大変でしたね。でもそれは一概に柳沢の責任じゃないですね。仕掛けが甘かった我々のせいですね!
――そういうやりとりも含めて、バンドはものすごく良い状態のように感じられます。これから大きいツアーも控えていますし。良いムードで臨めそうですね。
自分たちが置かれている現状や位置がどんなものなのか、何となく分かっているつもりです。バンドの内面に関しては、どのバンドよりも良い状況じゃないかなって。4人の関係性とバランスがしっかりしているし、役割分担もできています。何より、4人でいるときはずっと喋っているなど仲の良さがあって、でも、仲の良さに甘んじることなく「ちゃんとやろうね」とお互いに律することもできています。状況はすごく良いです。
――バンドの立場の話が出ましたが、自分たちでどのようなポジションにあると感じていますか。
いろんなバンドを見渡すこともありますが、もっとも比較対象にしているのは「あの頃の自分たち」です。「あの頃の自分たち」と比べて、今の自分たちはどういう場所に立っているのかをいつも考えています。いろいろなことに責任を持たなければいけなくなっていることも分かっています。それだけたくさんの方にバンドを見ていただけていると感じています。言ったことに対して賛同してくださる方もかつてより増えた分、バンドとしても個人としても、発言の一つひとつに強い責任を感じています。ありがたい状況を自覚した上で、俯瞰的に見た自分たちの姿を理解していないと怖いと思ったんです。
――なるほど。
たくさんの方に見ていただけるバンドに少しずつなってきました。それにともなって、自分たちがどのようなバンドなのか、どんなバンドでありたいかを照らし合わせていかなきゃダメだなと。
――10月9日(土)からはバンド史上最大キャパの3都市6公演のアリーナツアー『SUPER BEAVER 都会のラクダSP 〜愛の大砲、二夜連続〜』もありますし、現在のそういった影響力が如実にあらわれそうですね。
ただ、今置かれている自分たちの立場を特別視し過ぎないように気をつけたいですね。大きなキャパシティでライブができる楽しみ、ワクワク感、その場所で響く音、それを大事にしたい。そういう点では、これまでのツアーともそんなに変わらないんじゃないかな。そんな気持ちでツアーに臨みます。
SUPER BEAVER
取材・文=田辺ユウキ 撮影=森好弘

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