EXiNA ファーストシングルで生まれ
た西沢幸奏の化学反応 「私の揺らぎ
も含めて面白がってもらいたい」

西沢幸奏によるソロプロジェクト、EXiNA(イグジーナ)が動き出した。TVアニメ『BLUE REFLECTION RAY/澪』OP主題歌である「DiViNE」を表題曲としたファーストシングルCD『DiViNE』が5月19日にリリースされる。カップリングには岸田教団&THE明星ロケッツmajikoを迎えたカップリング曲を用意。バラエティに富んだ内容となっている。西沢幸奏の怒りを内包したこのソロプロジェクトは、今回のリリースに関してどう化学反応を起こしたのか?西沢幸奏に聞いた。
■ずっと大切にしていきたいと思える一枚ができた
――西沢幸奏がEXiNAとして動き出して約2年が経ちました。この2年間の活動は、いかがでしたか?
正直、コロナで動きがストップしてしまっていて、プロジェクト開始当初に思い描いていたような活動はできていないのが現状ですね。ただ、活動ができない時間の中で、自分は何をしたいのか、今できることはなんなのか、ということを振り返ることができたので決して無駄な時間ではなかったと感じています。
――そういった期間を経てファーストシングル『DiViNE』が2021年5月19日にリリースとなります。CDとしてリリースは2019年8月に出した『XiX』以来ですね。
そうですね。もともとEXiNAとしての活動方針としてリリースの形式はこだわらない、CDじゃなくても音源が出せる時代だから遠慮なくやっていこう、というのがあったんです。なのでこれまでデジタルリリースという形で曲を出し続けてきたんです。ただ、少し寂しさを感じることもあったんですよ。
――寂しさですか。
CDを出す時ってそれに付随した活動みたいなものもあるんですよね。ライブだったりイベントだったり、ファンの皆さんと触れ合える。それが私の中で人生の楽しみの一つだったんだな、ということを痛感して。それがなくなってしまった状況に寂しさを感じたんです。なので、今現在いろいろなことが制限されている中ではあるんですが、CDという形式でのリリースをしようと思ったんです。
――そういったお気持ちでリリースされる今回CD「DiViNE」ですが、出来上がった今のお気持ちはいかがですか?
宝物が出来上がったな、という気持ちがすごく強いですね。愛しの我が子が生まれた、みたいな感じです(笑)。 これからもずっと大切にしていきたいと思っている一枚ですね。
――なるほど、ではその宝物に関して詳しく聞ければ。一曲目からお話を伺っていければと思います。まず一曲目の「DiViNE」、こちらはどういった楽曲ですか?
この曲は、これまでのEXiNAらしい激しいサウンドを意識して作曲は行っているんです。なのでギターとかゴリゴリなんですよ。ただ、歌詞の部分では今までと違う感じを出せればと思ったんです。
――歌詞で違う部分ですか。
はい。これまでの曲は音の激しさに合わせて、激しい感情を外に向かってぶつけるような歌詞が多かったんですよ。ただ、今回は内面に宿っている普段表に出てこない儚い感情みたいなものを歌詞にしたいと思って作詞しました。そういったすぐに消えてしまいそうなものを歌詞に変えて、激しいサウンドと合わせたら面白いんじゃないかと思ったんです。
――この「DiViNE」はアニメ『BLUE REFLECTION RAY/澪』とのタイアップですね。作品が楽曲制作に影響を与えた部分はありましたか?
ありましたね。『BLUE REFLECTION RAY/澪』が学園を舞台に、少女たちの苦悩なんかを描いた作品なので、この作品で描かれる切なさを楽曲でも表現できればと思ったんです。それで歌詞に儚い感情を込めようと思いました。新しいチャレンジをさせてくれた今回の作品にはすごく感謝しています。
――MVも拝見させていただきましたが、これまでお話しいただいた世界観が非常によく表現されていると思いました。
ありがとうございます! 今回のMV、実は私主導で話を進めさせていただいたんですよ。これまではなかなか自分の中に映像のイメージがあってもそれを伝えることができなかったんですが、今だったらできるように感じがして。実際にイメージを言葉にして作品という形で落とし込むことができたので作っていてすごく楽しかったです。動きだったり表情だったり、私の「こうしたい」がふんだんに詰まった作品となっているので、是非合わせて観てもらいたいですね。やりたいことがどんどん頭に浮かんで、それがどんどん形になっていく、素晴らしい体験をさせてもらいました。
――撮影されているロケーションもすごく印象的でしたね。礼拝堂と廃墟的な空間が交互に挿入されていて、楽曲の世界観が浮き彫りになっていました。
今回の楽曲のイメージ通りの場所で撮影ができたな、と思っています。あの場所、教会なんですけど、その地下に瓦礫が散乱しているところがあるんですよ。その「教会」と「瓦礫」っていう対象的なものが混在しているところがイメージにピッタリだと感じて。今回の楽曲の中に出てくる「怒り」と「儚さ」への対比を場所にしたらこんな所なんだろうな、と思っています。
――そんな印象的な場所でギターを掻き鳴らすEXiNAさんの表情にも目がいきました。
ありがとうございます。私自身も最近は顔や表情も積極的に出していきたいと思っているんですよ。顔も含めて歌を歌うってことなんじゃないかな、って思っているので。なので自分自信の表情なんかも研究して、そう言った部分はMVなんかでも出していくことができればいいのかな、と思っていますね。
■ボーカリストとしての自信を取り戻せた気がする
――今回は「DiViNE」以外に2曲が収録されているのですが、両楽曲共にコラボ曲です。岸田教団&THE明星ロケッツとmajikoさんとのタッグはちょっと新鮮で驚きもありました。
EXiNAってプロジェクト自体が「私自身がやりたいことをやる」というプロジェクトで、このコロナ渦でできることが限られている中でできる、やりたいことを考えた時に思いついたのが「コラボで楽曲を作る」ことだったんです。
――コラボに際してのオファーは、どういうアプローチで依頼をされたんでしょうか。
やる以上は相手のアーティストさんの色が100%出た状態でぶつからないと意味がない、と思っていて。なので曲を作っていただく時も、遠慮なく自身らしさを出した曲を作ってください、とお願いしました。その上でEXiNAに歌うんだったら、ということを意識していただいて。そうしたら本当にお願いしていた通りの楽曲が来てすごく嬉しかったですね。
――それぞれのアーティストの自分らしさは出ていた気がしますね。実際に楽曲を作っていく作業はいかがでしたか?
お二方ともすごく私のボーカルアプローチを尊重してくださったんです。すごくやりがいも感じたし、腕前を試されていると思いましたね。ボーカリストとして自信を取り戻せたように感じました。
――自信を取り戻せた、ですか。
はい、今までは他の人のボーカルを聴くと引目を感じることがずっとあったんですよ。ただ、今回こうやって他のアーティストの方とコラボで楽曲を作ることで自分自身の歌だったり、ボーカリストとしての自分の持ち味を再確認して、自信を取り戻せたような気はしますね。
――ではそんな自信を取り戻すきっかけとなったコラボ楽曲のお話も聞ければ。最初が岸田教団&THE明星ロケッツとの「DEAR JUNKS」ですね。
岸田教団&THE明星ロケッツ主宰の『ガチです(ФωФ)!』ってイベントが以前ありまして、そちらでゲストとして岸田教団の皆さんと歌わせていただいたご縁がきっかけで生まれた楽曲なんです。あのイベントでは今は無くなってしまったディファ有明の、プロレスのリングの上で歌ったんですけど(笑)。 私、プロレス全然詳しくないんですけどあの時はなんか興奮しましたね。
――あれはなかなかすごいイベントでしたね……(笑)。 改めて岸田教団の皆さんへの印象はいかがですか。
本当にこの人たち音楽大好きなんだな、って感じましたね。すっごく楽しみながら音楽をやっている、見ていて本当にキラキラしている人たちに映りました。そんな中に入れていただいて、純粋に音楽って楽しいって思える経験をさせてもらいました。それで岸田さんに「バンドっていいですね」ってお話をしたら「俺たちはバンドじゃないけどね」って言われてしまいましたけど(笑)。
――岸田さん、絶対に自分たちのことバンドだと言わないですよね(笑)。
あくまで同人サークルだ、って(笑)。 でも、私からしたら超バンド!って感じなんですよ。なのでバンドの一員になったつもりで楽しませてもらいました。制作の過程で、岸田さんが自分の持ち味をどんどん出してきて、それに対して私も自分の出せる歌を返す、そういう化学変化で出来上がったのがこの曲ですね。
――凄く楽しそうにお話されるので、こちらにも現場の楽しさが伝わってきますね。
岸田さんって全くお世辞を言わない人なんです。そんな岸田さんが私のボーカルを聴いてめちゃくちゃかっこいいって言ってくださって。本当にネガティブなものが一切ない空気の中で制作ができたのがすごく印象的でした。超幸せでしたね。
――その幸せが歌詞にも反映されたのか、メッセージにEXiNAさんの歌詞によく出てくる怒りのようなものがあまり込められていないように感じました。
今回の制作にあたって、楽しいとか嬉しいって感覚がすごく私の中にあって、歌詞を考える時に怒りとかを込めようって気持ちにはならなかったんです。あとはコロナ渦で私自信いろんな憑物が取れてスッキリした部分もあるので(笑)、そういうところも反映されているかもしれないですね。
――その瞬間のEXiNAさんの感情だったり思いというものが楽曲に色濃く反映されるんですね。
そうですね。知らず知らずではありますが。前に出したアルバム『XiX』とかはもう全てが怒りという感情でコーティングされている感じがしていて。それと比べると今は全然気持ちが違いますね。
――そんな新しい気分の中、三曲目に収録されているのがmajikoさんとのコラボ曲「ERiCA feat.majiko」です。
私majikoさんのこと本当に大好きで、作詞作曲ともにmajikoさんにお願いして、フルプロデュースって形でやっていただいたんです。なのでこの曲は今までのEXiNAにはない爽やかなで柔らかさのあるサウンドに仕上がっています。
――確かに爽やかさを感じるサウンドですね、今まではかなりゴリゴリのパワーロックだったのでちょっと意外でした。
majikoさんがこういう曲を私に歌わせたら面白いと思ってくださったんだな、というのがすごく面白くて。なんだか私のこれまでの活動を肯定してくださったかのようにも感じたんです。すごく嬉しかったですね。
――この楽曲はすごくボーカルワークがいいな、というのが個人的感想なんです。
「ERiCA」ではフルプロデュースしていただいたので、自分は歌だけを提供するという形になったんです。そうするとこの曲での自分の商品は声だけなんですよね。
――そうですよね。
改めて自分の声に対してもっと興味を持たないといけないんだな、というのを今回すごく感じたんです。そういう興味の部分が自身のボーカルワークにも現れたんだと思いますね。
――今回収録されている三曲、改めて振り返っていかがですか。
本当に個性豊かな三曲になっていると思います。その一方でややまとまり感はないかな? と思ったりもしますが(笑)。 でも、今はなんとなくそれでいいと思っているんです。今はその瞬間瞬間に自分がやりたいことをやろう、みたいな感じなんですよ。そうやっていくうちに自然と作りたい曲の流れみたいなものも出来てくるのかな、とは思っているので。
■全員に好きになってもらいたいと思っているわけではない
――ここで生まれた新しい楽曲が、いかにライブで組み込まれるかもすごく楽しみですね。
長らくライブをやっていないので……どうしましょうね!(笑) ただ、これまでのライブって本当に一曲ずつ全部短距離走みたいな歌い方していたんです。それが今後は楽曲が増えた分これまでとは違ったアプローチもできるわけですから、そこはいろいろと作戦を練っていきたいですね、折角時間だけはあるので。
――やはりご自身としてもライブを心待ちにしている部分はあるんですね。
ありますね。ただ、焦ってもいないです(笑)。 正直また自分のライブスタイルみたいなものを作り直さなきゃいけない段階なので。焦って答えを出すんじゃなくて、きっちり作戦を立てて次に臨みたいです。かといってあまりこだわりすぎると身動き取れなくなるので、そこは程々に(笑)。
――なんか以前インタビューをした時より、落ち着きみたいなものをEXiNAさんの中に感じられるんですが、成長というか。
いやぁ、落ち着きましたね。むしろなんで今まであんなに生き急いでいたんでしょう、ってぐらいです(笑)。 大人になったっていうか焦りがなくなった感じというか。今までは焦っているのが普通で、焦ることに対して何の疑問も感じなかったんですよ。ただ焦ってもどこにも動きようがない状況に陥りましたから。
――そうですよね、でも落ち着いたことで見えてきたものもあったのではないかと思います。
ありますね。これまでって頭の中がずっと整理されていない状態でものを考えていたんです。そのせいでインタビューとかで用意されてないような質問とかされると何も答えられなくて固まっちゃったりして。でも、いまはそれがなくなりました。きっと私の中で何かが見えてきているんだと思うんです。まだそれを言葉にすることは出来ませんけど。
――だとしたらこれまでの焦りはどこから来たものだったんですかね?
なんだったんでしょうね(笑)反抗期みたいなものだったんですかね……。何か言ってくる大人はみんな敵、みたいに思ってましたから。そのせいでアドバイスくれている方を敵視しちゃったりもしてましたし、私自身も必要以上に苦しんだりもして。そういう私ってアーティスティック、って酔っていた部分もあるんですよね……。今にして思えば必要のない時間を過ごしたようにも思います。
――でも、その経験がご自身のバネになる時もくると思うんですよね。EXiNA……西沢幸奏はそういうアーティストだと思っています。
そうあって欲しいですね(笑)。
――改めてこのコロナ禍、緊急事態宣言が続く日々の中インタビューを行わせていただいていますが、今後やりたいことなどあれば教えてもらいたいです。
音楽的にはやりたいサウンド感だったりが具体的になりつつあるので、それは今後の作品に活かしていくのでお楽しみに、という感じですね。あとビジュアル面も今後はこだわっていきたいと思っています。自分の中でやりたいビジュアル像というのも出来上がりつつあるので、それもだんだんと御披露目できるんじゃないかと。
――それは楽しみですね。
ビジュアル的なところは今回のMVにも出ているんです。女性らしいドレスを身に纏っているけど、それがグランジ的なものと掛け合わさっているところとか。そういったバランス感のビジュアルを目指していきたいんです。なんか「女性」と「戦い」の掛け合わせとかも自分と合っている気がするんですよね。そういう一見違和感あるマッチングみたいなものを今後意識して出していきたいです。
――最後に、このインタビューを読んでいる方にメッセージをお願いします。
まずここまで読んでくれて本当にありがとうございました。SPICEさんのインタビューでは、西沢幸奏の頃のインタビュー含めて読んでいただくと、毎回言っている内容が変わっている部分もあるかと思うんです。正直、次のインタビューの時にはどうなっているかも私自信も全くわからないですし。でもそういった揺らぎみたいなものも含めて面白がってみてくれていたら嬉しいな、と思っています。変な話ですけど、読んでいる全員に好きになってほしいとは思っていないので、共感してくれる人がいたら、今後とも是非よろしくお願いします!
インタビュー・文=加東岳史 構成=一野大悟

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