映像の表と裏、劇場と配信で多次元的
に 舞台『Another lenz』ゲネプロレ
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舞台『Another lenz』が2021年5月15日(土)、東京・新宿 FACEにて開幕した。生配信を活用し、劇場と画面越しとでまったく異なる作品に見える新しい感覚の舞台に挑戦している。初日直前に行われたゲネプロと囲み取材の様子をお伝えしよう。
新しい演劇の在り方を追求したプロジェクト「AD✕STAGE」の第一弾。俳優としても活躍する磯貝龍乎が脚本・演出を務め、生放送によるノーカット撮影でハリウッドホラーに挑むキャスト、撮影クルーたちの物語となっている。

舞台『Another lenz』ゲネプロ写真
舞台『Another lenz』ゲネプロ写真

冒頭から、クライマックスとも呼べる緊迫したシーン。中継用のカメラがキャストを追いかけていることから、劇中劇となる作品を演じていることが推測される。この場面に至るまでどのようなドラマが繰り広げられるのかと考え始めたのなら、すでに本作の仕掛けにかかっているのだろう。
舞台『Another lenz』ゲネプロ写真

舞台『Another lenz』ゲネプロ写真

前半は、作品が放送されるまでのドタバタ劇が繰り広げられる。生ライブドラマが始まる寸前にも関わらず、スタッフが到着しないトラブルが発生。監督の藤原(碕理人)が気を揉む中、主演の松田(太田将熙)が臨時クルーを手配する。なんとか体裁を整えるが、ポンコツぞろいのせいでスムーズに進まない。
舞台『Another lenz』ゲネプロ写真

舞台『Another lenz』ゲネプロ写真

舞台『Another lenz』ゲネプロ写真
キャスト、スタッフたちの人間関係も明らかに。松田とライバル関係にある苅野(菊池修司)、性格に難ありの藤原をサポートする森(山沖勇輝)、藤原とひそかに関係を持つアイドル・須田(北澤早紀)――物語が進むにつれ、複雑な人間模様がどんどん折り重なっていく。
舞台『Another lenz』ゲネプロ写真

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スピーディーなテンポでコメディらしい展開から、徐々にシリアス色が滲んでくる。藤原が監督を降り、代わりに松田が主役と兼務する形に。ここまでは優れた人格者かのように表現されてきた松田だが、次第に陰険で卑劣な性格が露わになっていく。その表情が陽から陰へ、はっきりと変貌する瞬間には息をのんだ。
舞台『Another lenz』ゲネプロ写真
客席とスクリーンに囲まれ、役者にとっては逃げ場のないステージ。可動式のセットを動かすことで場面転換や空間づくりを行う。劇場では配信公演の映像が同時上映されており、なんとも多次元的な空間だ。
舞台『Another lenz』ゲネプロ写真
本作における配信では、劇場での中継の役割だけではない。後半からは松田が指揮を執り生ライブドラマがいよいよ始まると、劇場の観客視点と配信公演で映る映像とはまるで異なる展開に分岐する。
舞台『Another lenz』ゲネプロ写真
劇場で観劇していると、カメラの外側で起こっている物語に目を向けられるのが面白い。セットの裏側に潜むスタッフや、出番直前のキャストの様子をじっくり観察できるのだ。生ライブドラマは時にステージを飛び出して撮影され、廊下や楽屋の方から演技している声が漏れ聞こえてくる感覚も新鮮だった。
舞台『Another lenz』ゲネプロ写真
役者という華やかな存在の裏に、本当にあるかもしれない醜悪さ。濁った感情をむき出しにするセリフだけでなく、挑戦的な演出も観客側に緊張感を与え続ける。ラストは衝撃的なシーンの連続にも関わらず、観劇後は心地よい疲労感に包まれた。芝居を受け止める、熱量を感じて余韻に浸る。そんな演劇の醍醐味を味わえた作品だった。
初日は配信公演のみという上演スケジュールも斬新。観劇した人は、生舞台公演も見たいという焦燥感に駆られたことだろう。生で芝居を観劇する楽しみに加え、配信でしか味わえない感情も抱くことができる。ぜひどちらも楽しんでほしい。
囲み取材より
ゲネプロ終演後には囲み会見が行われた。キャスト5名が登壇し、見どころや抱負が語られた。主なコメントは以下の通り。
■太田将熙
全部が見どころと言いたい。演じる松田は、初めは良い奴に見えるがどんどん闇が出てくる人物。松田としている場面と、(劇中の生ライブドラマで演じている)タカハシでいるシーンが切り替わるので、より瞬発力が求められる現場。演じ分けの違い、芝居の細かいところを見ていただけたら。
■菊池修司
斬新な発想で、映像と舞台が融合した新しい作品。個性豊かなキャラクターたちはもちろん、生配信と観劇との両方の視点から楽しめるのが大きな見どころ。情報量が多いですし、役者がどう動いているのかを見るなど、いろんな角度、いろんな視点からぜひ見ていただきたいです。
■碕理人
演じた藤原はリアルを求めるあまり見放され、とんでもない方向に進む役。これは山沖勇輝からぜひと言われたので言いますが(笑)、彼が演じる森との掛け合いにも注目してほしいです。なにより、この舞台は生配信と生観劇があり、モニターで見る人と生の舞台を観る人で分かれるはず。だからこそ、僕たちも集中力を切らさず全力で頑張りたいと思います。
■北澤早紀(AKB48
アイドル役ということで、私も普段はAKB48というグループで活動しているので、似通った部分があるのかなと思ったら……恋愛はするしタバコは吸うし、出会ったことのないタイプのひどいアイドルでした。すごく嫌われる役だと思いますが、嫌われたら勝ち、本望と思いながら演じていけたら。
■伊崎龍次郎
普段なかなかない量の血のりを使うのが楽しかったです。見どころとしては、山沖さんが演じる森。配信にはほぼ出ていないので、ぜひ劇場で活躍と雄姿を見守っていただきたいなと。そういった部分が出てくるのも、この作品の魅力。ぜひ配信の舞台裏も見てください。
取材・文・撮影=潮田茗

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