大柴広己

大柴広己

【大柴広己 インタビュー】
新世界と旧世界、ふたつの世界を
ちゃんとつなぎ止める
ピースがあるべき

“旅するシンガーソングライター”として全国のライヴハウスを回りながら、もじゃ名義でボカロPとして、またフェスの主催、楽曲提供などマルチに活躍する大柴広己が、まさに現在地を表明する2ndフルアルバム『光失えどその先へ』を届けてくれた。コロナ禍にこそ生まれ落ちた意味を示す本作を、彼のヒストリーとともに紐解く。

弾き語り旅は日常と非日常を行き来し
自分をフラットに保つ手段

大柴さんはシンガーソングライターとして長いキャリアを経てこられましたね。

そうですね。音楽活動自体は2000年の1月1日から始めているので、昨年の1月で20年。デビューが06年なので、今年で15周年になりますね。でも、キャリアの長さだとかアニバーサリーとか、ほんとに興味ないんですよ。だから、ビジネスマンには向いてないし、ずっと“プロっぽい人”で止まってる。むしろ一生、“プロ”じゃなく“プロっぽい人”でいいかなとまで思ってますね(笑)。

その20年に渡る活動をもっとも表現するキーワードが“旅するシンガーソングライター”ですが、ストリーミング系アーティストとしての活動やフェスの主宰、レーベル運営など、本当にマルチですね。

本当はひとつのことで飯を食えるのが一番いいんですけどね(笑)。“旅するシンガーソングライター”と言われているのも、レコード会社をクビになって給料がもらえなくなったので師匠のリクオさんにくっついて全国を旅していたら、いつの間にか自分もツアーを回るようになったからで。地方に大事な人がたくさんできて、気づけば年間200本ほどのライヴをやるようになったんですね。レコードレーベルを作ったのもレコード会社に入りたいと言っていた今のマネージャーと出会って、どうせなら自分たちでレーベルを作ったほうがいいと、直接行動する考えに至っただけなんです。

気がつけば、すごくシンプルな発想に立ち返っていたと。

そうそう。やっぱり自分たちの責任でやれるのが一番いい。自分の言葉に責任が取れますからね。レコード会社からお給料をもらってた時は、それをすっかり忘れちゃってた。自分が何を世の中に言いたいのかを思い出したら、二本の足でちゃんと立ってようやく一人前になれたし、どんどん原点に戻ってこられた。結局、遠回りが一番の近道だったのかなと思いますね。

そんな精力的な活動を長く続けられるモチベーションはどこから?

常に最新型の自分でありたいからですかね。初期衝動をずっと感じていられるから、20年間も音楽を続けてこられているし。これから音楽を始めたい人にも、俺がやってることを見てムラムラを感じてもらいたいんです。

自分がやりたい音楽を自分自身で作り、届け続ける大柴さんは、憧れのアーティスト像を体現されていますね。

そう思われたいがためにやってます(笑)。ミュージシャンは憧れられる仕事だと思うから、“この人みたいになりたい”と思われなきゃ意味がないじゃないですか。野球選手と同じで。だから、全力でカッコつけないとダメ。でも、その人らしいかたちじゃないと全然カッコ良くない。俺には自分の中に“俺はシンガーソングライターだ”という誇りがあるし、それをビジネスとしてもちゃんと成立させていく…それが俺の中でのミュージシャン像なんですね。最近は他のアーティストをプロデュースしたり、Da-iCEや演歌歌手の丘みどりさんに歌詞を提供したり、本業以外もいろいろやらせてもらっていますが、それも惑星の周りを衛星が飛んでるみたいな感じ。ちゃんと母体があるから成立するんですよね。

その母体が旅をしながら弾き語るシンガーソングライターとしての自分だと。昨年、今年とコロナ禍が続き、旅にも出られない状況ですが、その間はどういう活動を?

配信ライヴばかりですね。でも、地方のライヴハウスも大変じゃないですか。なので、自分がTwitCastingでやっている配信ライヴをライヴハウスのスクリーンでも上映したりしました。10年以上前からやっているYouTubeチャンネルの更新も活発でしたが、コロナ禍だから何か変わったかと言えば、実は何も変わってなくて。ただ、コロナ禍前と比べて思うことはありました。

それは何でしょう?

今までは自分を支えてくれているお客さんのことがよく分かっていなかったんですよ。Twitterで何万人フォロワーがいても、その何パーセントが自分に本当に興味があるのかは未知数でした。でも、オンラインサロンや配信ライヴを続けていると、どんな人が僕に対してお金を落としてくれるかが見えるんです。そういう人たちのありがたさを改めて実感したし、誰に向けて何を届けるべきかがはっきり分かってきた。より自分の歌も強くなったと思いますね。
大柴広己
アルバム『光失えどその先へ』

OKMusic編集部

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