L→R 藤田 勉(Dr)、本田 毅(Gu)、JILL(Vo)、渡邉 貢(Ba)

L→R 藤田 勉(Dr)、本田 毅(Gu)、JILL(Vo)、渡邉 貢(Ba)

【PERSONZ インタビュー】
“バンドであることの意味”
みたいなものも含んだ行為

過去作を最新の状態にアップデートして蘇らせる“RELOAD PROJECT”の第四弾として、1986年と1987年にインディーズでリリースした『ROMANTIC REVOLUTION』と『POWER-PASSION』を“RELOAD”! 今回の制作背景について訊くとともに、この2作品からうかがえる初期PERSONZのロックバンドとしての革新性について、メンバー4人を深掘りした。

ただ演奏を一発録りするだけじゃない、
もっと複雑なものがある

今回が第四弾となるわけですが、この“RELOAD PROJECT”(以下、“RELOAD”)をスタートさせたきっかけというのは?

JILL
第一弾だった『PERSONZ』(2016年11月発表)の前年に日本武道館公演がありまして、その武道館を達成するまでに4年くらいかかってしまったんで、公演を無事に終えたあと、ちょっと抜け殻みたいになってしまったんですね。で、“次に何をやったらいいのかな?”と考えていた時に、ある方から“アナログレコードを作らないか?”という企画をもらったんです。アナログレコードだったら過去のものをもう一度蘇らせても面白いかもと。ただ、『PERSONZ』というのは1stアルバムで、当時はアナログレコードでしたから、それをそのままやっても面白くないので、一発録りのライヴでレコーディングするのはどうだろうか…というような経緯だったと思います。

『PERSONZ』を皮切りに、2017年に7thアルバム『The Show Must Go On』と3rdアルバム『NO MORE TEARS』の過去3作品を“RELOAD”されてきましたが、そこから少し期間が空いて、今回は第四弾としてPERSONZのもっとも古い音源である『ROMANTIC REVOLUTION』『POWER-PASSION』を“RELOAD”されました。これはどういう経緯だったのかを教えてください。

JILL
今回はコロナ禍で身動きが取れなかった…昨年と今年はツアーが全部中止になり、この先もライヴができない状態がどこまで続くのか分からない中、“でも、何か作品を作らないといけない”というところで、“あっ、これだったら!”と案が出てきた感じですね。
渡邉
他の候補もいろいろとあったんですよ。これまでの“RELOAD”もいつも同じようなやり方をしていたわけじゃなくて、いろいろとかたちを変えていたんで。でも、その中で今回は一発録りというカテゴリーの中でやれることを考えたんです。このご時勢だったり、収録場所がCLUB CITTA'であることを考えると、インディーズの2枚をやるのが一番いいんじゃないかということで選ばせていただきました。
藤田
僕は“今回はどのアルバムを料理しようか?”という時から話し合いに参加していたんですけど、他にもいくつか候補があったんですよ。でも、他の作品に手をつけるとなると“じゃあ、ここの打ち込みの部分をどうする?”とか“ダビングはどうする?”とか、結構作り込む作業が発生してきちゃうので、みんなで集まって“せーの”ですぐにかたちになるものと考えると、このインディーズの頃の曲が一番適当なんじゃないかと。

今の状況下でやれることを考えると、『ROMANTIC REVOLUTION』と『POWER-PASSION』が相応しかったという感じでしょうか? とはいえ、一発録り自体は何度もご経験があると思いますが、その緊張感は凄まじいものがあったのだろうとお察ししました。

渡邉
お客さんが誰もいない中、音と映像を一緒に録られるというのはかなり厳しい作業でしたね。こういう経験はないし…本当に最初の2曲くらいは何をやっていたのかよく覚えてないんです(苦笑)。レコーディングでは演奏に集中するじゃないですか。どんな顔をして弾いているとか、あんまりそういうのは関係ない。だから、“観られているという体裁をどういうふうに自分の中で解釈したらいいのか?”というところで、ただ演奏しているだけではいけないし、あんまりカッコつけてると間違えちゃうし(笑)。

眼前にお客さんがいないというのが大きかった?

渡邉
今回、それに気づいたんですけど、誰かに観られている前提があると、それはそれで割りきれるというか、吹っきれるというか、諦めがつくというか(笑)。観客がいないとインナーにプレッシャーが向いてくるんですよね。

その辺、JILLさんはいかがですか?

JILL
緊張感はまったくなかったですね。私には“こういうふうにパフォーマンスしよう”というプランがあったし、歌は普段のライヴと一緒のように一発で歌えばいいと思ってたんで、何もこだわることはなかった。ただ、ちょっとプロモーションビデオ的なイメージを入れようと思ったから、それが今までの『RODEO DRIVE』(無人のライヴ会場での一発録りを収録したDVDアルバム)とは少し違いますね。今、Instagramにアップしていますが、昨年11月から自分でもショートMVを作ってたからイメージはしやすかったというのはありましたけど、10曲分の着替えをしなくちゃいけなかったので緊張する暇がなかったという(笑)。

本田さんはいかがでしたか?

本田
今回はちょっとアレンジされてて…イントロダクションがついたりして、昔と違ったりしているところがあるんですよ。その部分はアドリブ性があるというか、インプロビゼーションみたいな感じだったりするんですね。演奏陣はアドリブプレイ的に始まって、そのあとで本編に入っていくんだけど、“アドリブがうまくいったとしても、次のイントロで俺が間違ったらどうしよう?”とか“出だしはカッコ良かっただけに、そのあとで俺が失敗したらヤベぇな”みたいな変なプレッシャーはありました(笑)。

同じ質問ですが、藤田さんはいかがでしょう?

藤田
僕も渡邉くんの感覚とほぼ一緒ですね。スタッフの人たちは周りにいっぱいいたけれど、お客さんに観せているわけではないので、やっぱり意識が内々に向くんですよ。演奏しながらでも“こうしなきゃいけない”“ああしなきゃいけない”という気持ちが悪い方向に回り始めていたような気がします(笑)。あとは、まるまる一年間、まともにライヴができていないということをぶつけようとしていたところもあるんじゃないかと。それが固さとか、力みに向かってしまった反省点はちょっと感じてますね。お客さんがいないというのは、気持ちをフラットにするのがなかなか難しい状況でした。

みなさんの発言からはかなりストイックに臨まれたことがうかがえますが、逆に言いますと、それをやれるだけのバンドの力量であり、プライドを感じたところではあります。

JILL
1986年や1987年にこれをやれと言われてもできないですね。ただでさえ『ROMANTIC REVOLUTION』はレコーディングが初体験だったので。そう思うと、一度も活動を止めることなく、長年やってきたことが表れているのかなと思いますね。
渡邉
ただ演奏することだけなら若いバンドでもできるんでしょうけれど…何でしょうね? それだけじゃないんですよ。“バンドで一発録りをしよう”というところに至る気持ちというか。ただ演奏を一発録りでやるということだけじゃない、もっと複雑なものがあって…ある種の集大成と言っちゃうと大袈裟ですけど、“バンドであることの意味”みたいなものも含んだ行為というか。そういうものがあるんですよ。
L→R 藤田 勉(Dr)、本田 毅(Gu)、JILL(Vo)、渡邉 貢(Ba)
CD+DVD『ROMANTIC REVOLUTION / POWER-PASSION』

OKMusic編集部

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