【前島麻由 インタビュー】
答えが出ないことを
動と静で表現した
対極的な曲調の2曲だが、
そこを楽しんでくれたら嬉しい
カップリングの「bleed」は静かだけど、次第に感情があふれ出していく楽曲になっていますね。
A面は結構ハードだけど、B面は逆にガラッと印象が変わるという。“表題曲と反対のものをやりたい”と思ったところから始まりました。あとは、私のルーツでもある洋楽的なエッセンスをより前に出した楽曲がやれるといいなって。歌詞に関してはAIJさんと一緒に作らせていただいたので、私の考えていることや思っていることをそのまま歌詞にできました。だから、メロディーも内容も、それに合わせて歌い方も、よりエモーショナルな一曲になったと思っています。
タイトルにはどんな想いが?
“bleed”はBメロの最後に出てくる単語で、この歌詞になった段階からタイトルは“bleed”だと思っていました。自分が日々生きていくエネルギーになっているものが、同時に自分から血を流すような刃になっていると感じることが多くて。でも、私の場合はその刃やエネルギーは常に負の感情から生まれているんです。今までも自分の中にある負の感情をいろいろな表現の仕方で歌にしてきたんですけど、今回は自分から何かを奪っていくもの、自分を弱らせていくものと表現しました。Bメロのセクションでは“周囲の人からは変わったほうがいいとか、変わるべきと言われるけど、それを意識すればするほど、自分から血が流れていく”と言っているんですが、“変わるべき”ということに対して反発して血が流れているわけではなくて、変わる必要性を理解した上で自分が変われない性であるということで流れる血というか。これは私が幼い頃から自分で感じてきたことで、それが長所として出る時もあるんですけれど、自分の首を絞めていると思うこともあって。でも、自分の首を絞めているから変えたほうがいいとならないのは、やはり性だなと。それを変えたり、捨てたり、脱いじゃったら、私が生まれてから今まで生きてきて構築したものに失礼じゃない!…みたいな感じです(笑)。
静かな楽曲の中で前島さんの凛とした歌声がとても印象的でした。
この歌は自分の中にあるものをそのまま言葉にしているので、そういった意味では非常にエモーショナルなのですが、例えば1A、2A頭の《My future is burning》と《My dream is falling》は“未来が燃えていく”と少し情景的なところもあって。
それはどういったことでしょうか?
自分の中で夢や未来が燃えたり落ちていっているのではなくて、自分が見ている目の前で燃えたり落ちたりしている感覚があるんです。例えるなら“冬になって葉っぱがどんどん枯れて落ちているのを見ているだけ”みたいな感じで。だから、自分が今まで歌ってきた歌の中でも、特に情景的な要素が大きいです。「bleed」はそういった情景的なところもあるので、今までのエモーショナルな感じとはまた違った、別の種類のエモーショナルな声につながっているといいなと思いながら歌っていましたね。
自分の中から湧き上がるものと客観的に見えるものを歌うのは、やはり違うのですね。
違いますね。例えばですけれど、私の声帯がダメになってしまって夢が潰えたというのとは、また少し違ってて。何かの事象があって夢が潰えたのではなく、慢性的に夢が燃えて灰になっていっているという感じなんです。幼い頃はあまりそれを考えないようにしていたんですけど、歳を重ねるにつれ、その感覚に正直にならざるを得なくなってきて。ここ2年くらい、今まで以上に自分の中でこういう感覚があると実感しているので、それが言葉に出たのかなと思っているんですけれど。
それを実感したのは、何かきっかけがあったのですか?
言葉は悪いですけれど、老いだと思います。
えー! その若さで“老い”という言葉が出てくるとは思ってもみなかったです(笑)。
すごく年をとっているわけではないんですが(笑)、それでも何を考えていても“あと5年早ければな”と思うようになって。年齢という概念にとらわれないように生きていても、やはり時の流れは顕著に自分のメンタルに影響するものだというのを、今まで以上に感じるようになりました。時間は決して止まるとか戻るとかしないじゃないですか。
まぁ、そうですが。
だから、現在進行形で時が着々と経っていくという感覚が、たぶん夢が目の前で燃えたり落ちたりしている感じになっているのかなと思っていて。逆に、何かひとつのきっかけで未来や夢が壊れるんだったら、もっとパンッ!と一気になくなる、潰される、壊されるという感じだと思うんです。でも、燃えていくのはちょっとずつじゃないですか。少しずつ火が広がって、どんどん灰になっていくので、一瞬で消えてしまうものではない。だから、燃えていくとか、落ちていくという表現が自分から出たのは、“時が経つ”ということに対する私の感じ方が顕著に言葉に出たんだと思うんです。“夢が壊れていく”とか“未来が消えていく”と他の表現も試したんですが、自分の中では“燃えていく”と“落ちていく”以外は違うというか、絶対に嫌で。自分で歌詞を書くとこういう発見があって面白いですね。
今作は「ANSWER」も「bleed」も前島さんのヴォーカル力のすごさを体感できる2曲ですね。
ありがとうございます。“答えが出ない”とか“ずっと自分の中にあるんだ”みたいなものを動で表現したのが「ANSWER」で、静で表現したのが「bleed」ですね。対極的な曲調ではありますが、そこを楽しんでいただけたら嬉しいです。歌詞のほとんどが英語なので内容というより純粋に楽曲、メロディー、リズムといった音楽的なところを楽しんでいただけたらと。ただ、その先に“どんなことを歌っているんだろう?”となった時、“こんなことを歌っているんだ!?”や“意外とネガティブなんだな”とか、“自分もすごく共感できる!”と感じてもらえたらと思います。
また、これからの活動でも新たなチャレンジもされるそうですね。
最近YouTubeチャンネルを作ったのですが、さらにTikTokアカウントも作りまして。でも、私はTikTokをあまり分かっていなかったものですから、“みんなは何をやっているんだろう?”といろいろ見て勉強中です。自分とは縁遠い表現も多くて“なるほど!”なんて思ったんですけど、アナログ人間なりに楽しみながら更新していけたらいいなと思っています。
取材:キャベトンコ