犯人&ネタバレは終演まで内密に!
DAIFUKU vol.7はバレエによるミステ
リー劇「DAIFU”Q”」

2021年5月22日(土)・23日(日)にバレエユニット「DAIFUKU」公演vol.7「DAIFU”Q”」が上演される。

「DAIFUKU」は大和雅美(元新国立劇場バレエ団)と福田圭吾(新国立劇場バレエ団)が企画から演出・振付を行うユニットで、ダンサーをぐるりと囲む360度視点という会場、ジャズやビートボックスなど多彩なジャンルの音楽を使ったバレエやダンス、ときにはコメディ要素も溢れるストーリーを軸とした作品を上演するなど、斬新なアイデアとともに生み出されるチャレンジングな舞台をつくりあげている。出演ダンサーも新国立劇場バレエ団や東京バレエ団をはじめ、各所属カンパニーの第一線で活躍するダンサー達が垣根を超えて集うことや、普段の公演とは違ったダンサーの別の側面が見られることなどから次第にバレエファンの注目を集める公演に成長している。今回はその大和・福田両名にインタビュー。DAIFUKU結成以来の歩みや、次回公演についての話を聞いた。(文章中敬称略)

■英国でヒントを得た360度視点の舞台。バレエを「近く」感じ「今度は劇場へ」という循環を生み出したい
――DAIFUKU第1回公演は2016年「360°Nutcracker/REFLECTS」で、「くるみ割り人形」の抜粋と、福田さん振付作品「REFLECTS」の2本立てでした。DAIFUKU結成の経緯は。
大和 私が2015年に英国に研修に行った際、360度視点の劇場で舞台を見て、これは面白い、日本でもやってみたいなと思ったのが最初のきっかけです。帰国して横浜のスタジオを見たとき、英国のものと規模は違うが使えそうだと思い計画を練った際に、クラシックだけでなく別の要素も取り入れたいなと考えました。そこで新国立劇場バレエ団でもよく一緒に踊る機会のあった福田圭吾君にお願いしたんです。
福田 僕はちょうど2015年に、新国立劇場バレエ団の「Dance to The Future Second Steps」で初めて振付をやったところだったので、チャンスをいただいたと思い、ぜひともとお受けしました。でも360度視点というのは全然想像が付かなくて、とにかく大先輩に与えていただいたチャンスにがむしゃらに対応したという感じでしたね。360度だから難しい、と最初は考えていたところもありますが、逆に360度だからこれはOKだというふうに作り方もだんだん慣れていきました。
――360度視点のバレエというのはある意味DAIFUKUの大前提でもあるわけですか。
大和 そうですね。2回目は通常のホールで行いましたが、360度視点も含めて様々な形を考えていきたいです。あと、私がバレエ教室などで教えている生徒さんたちにバレエの公演の体験をさせてあげたいということ、またお客様にバレエをいろいろな意味で「近く」感じてほしい、というのもDAIFUKU結成の理由にありました。一般的なバレエ公演って「笑っていいのかな?」というところもありますよね。でもDAIFUKUでは笑ってもOKで、またそのことでバレエをより身近に、そして小さい会場ですからダンサーの動きを至近距離で感じてほしい。そしてDAIFUKUでバレエを見た人が今度は劇場の公演に足を運んでみようかなという気になるといった、そんなバレエ界を盛り上げる循環を考えての思いもありました。
vol.1「360°Nutcracker/REFLECTS」

■多才な音楽とのコラボレーション。バレエとは真反対の音楽から臨機応変さと「ゆとり」を学ぶ
――その後vol.2「Tri[y]」(2017年)、DAIFUKU vol.3 「Mixture」(2018年)と、こちらはジャズやクラシックの枠を超えて活躍されているミュージシャンとのコラボレーションが続きます。
vol.2「Tri[y]」
福田 大和さんは顔が広くていろいろな方と交流があるんです。
大和 バレエ以外のジャンルの踊りにもすごく興味があって。今指導をしているダンスのスタジオにはいろいろなジャンルの方がいるので、そのつながりで様々な踊りを見に行く機会が増えたんです。そうすると新しいものをバレエに取り上げてみたいなという思いが湧いてくる。
福田 そうしたコラボレーションを通してアイデアが広がったりする。2回目、3回目の時はミュージシャンの方からもいろいろアイデアをもらいました。みなさん臨機応変で、演奏などもすぐに変えてくれたりと、その対応力には驚きました。
大和 ジャズミュージシャンはリハーサルをあまりやらず、いきなり本番で合わせるんです。だからジャズの方々はバレエとはすごくやりづらかったと思います。
――ジャズはその場で生まれるアドリブやセッションによる音楽ですし、バレエは緻密にリハーサルを繰り返しながら本番に持って行かなければならない。ある意味真反対ですね。
大和 はい。バレエはある程度テンポや音の感じなどを同じようにしてもらわないと、ダンサー達が舞台上で迷ってしまう。だからジャズミュージシャンにしてみたら、バレエとの共演はすごく窮屈だったんじゃないかな。ジャズだけのパートでは生き生きと自由に、リハーサルとは全然違う音を出していたので「すいません」って思いました(笑)
福田 でもそういう意味では僕たち踊る側は少し頭が固かったかもしれないって思いましたね。その経験を経て少し頭が柔らかくなった感じがする。バレエの現場でリハーサルと違う事が起こっても楽しめるようになってきたんですよ。昔はちょっとでも変わったりすることが起こるとすごく怖かったりしたんですけど。ゆとりみたいなものが出てきたっていうのかな。
vol.3 「Mixture」

■ダンサーセレクトはコンセプトありき。ドラマにチャレンジしたvol.5「HOME」。コロナ禍をBonds(絆)で乗り越えたvol.6「Strong.B」
――DAIFUKU vol.4「360°Nutcracker」(2018年)のあと、DAIFUKU vol.5「Home」(2019年)と続きます。この「Home」は漫画の「サザエさん」にインスピレーションを得た、DAIFUKUでは初めてのドラマ的な作品でした。これをやろうと思ったきっかけは。

vol.5「Home」

大和 これまではではずっと私の生徒さん達を出演させてきたんですが、あるときプロだけでやってみようかって話になったんです。だったらきっとお芝居的なことができるかなと考えたところ、圭吾君が「サザエさん」のような話がテーマならみんなに分かりやすいかもってアイデアを出してくれました。その瞬間、頭の中にそれぞれのキャラクターに当てはまる方々がパパっと浮かんできたんです(笑)
――となるとダンサーのセレクトはコンセプトありきなのですね?
大和 はい。この後の「Strong.B」や今度の「DAIFU”Q”」もそうですが、全て作品コンセプトを考えたうえで、役に合うダンサーは誰かを考えてお互いの人脈から探しています。「Home」のときも、お父さんだけどうしようと思ったら、圭吾君が趙載範さん(新国立劇場バレエ団)を紹介してくれたんです。載範さんとは私はそのとき初めてお会いしたんですが、私と圭吾君は感覚が似ているので、圭吾君の紹介で私が「はじめまして」でも、私の紹介で圭吾君が「はじめまして」でも、そこのところは全然心配ないんですよね。
――ストーリーはお二人で考えられたのですか。
大和 今は圭吾君がいろいろ考えて、そこに私がアイデアなどをいろいろ提案してくっつけているという感じです。二人でやると統合できず収集がつかなくなることもあるので。
福田 ストーリーというより大雑把にざっくりと、こんな感じでっていうのを大和さんに伝えて、アドバイスをもらいながらやっています。
vol.5「Home」
――そしてコロナ禍で順延したvol.6「Strong.B」が2020年9月に上演されました。
福田 前回がドラマだったので、vol.6はとにかく踊ろうと。四つ打ちのガンガンなビート音楽の振り付けって、考えてみたらDAIFUKUではやったことがなかったので。ビートボックスのHIRONAさんは、これも大和さんの紹介なんです。
大和 圭吾君の振り付けがHIRONAさんの音楽と絶対似合うだろうなと思って。
福田 「Strong.B」のBって「Ballet」「Beauty」「Body」とかいろいろな意味を込めましたが、終わってみたら「Beat」でもあり、コロナ禍で延期になってもやりたいって言ってくれたダンサー達との「Bonds(絆)」だったなと思っています。
vol.6「Strong.B」

■vol.7で重視したのはダンサーの「演技力」。無言のバレエでの物語からは一瞬たりとも目が離せない!
――そうしていよいよ、vol.7「DAIFU” Q”」です。まずこの「Q」の意味は。
大和 「Question/クエスチョン」です。今回はミステリー的な作品なので。
福田 サスペンス要素が強い完全にオリジナルのストーリーで、殺人事件が起こり、一体誰が殺ったんだということで物語が展開していきます。ただ言語を用いないバレエでの表現になるので、テレビドラマや映画とは違った、目の前で繰り広げられるライブ感というのかな、新しい舞台パフォーマンスができたらいいなと思います。
大和 DAIFUKUって実はお客様から笑いの要素もすごく期待されているので「Home」「Strong.B」ではそこも意識してつくりました。小柴富久修君(新国立劇場バレエ団)がお笑い担当でとてもいい味を出してくれたんですが(笑)、今回はちょっとお笑いの要素は抑えめです。でも至近距離のステージならではの、ダンサーの細かな表現や演技力が見られる作品になると思います。
vol.5「Home」
――では今回のダンサーの選出基準は。
大和 演技力ですね。表情だったり目線だったり、そういう細かいところまで皆さん演技してくれると思うので、お客様もぜひそこを見逃さないように、サスペンスドラマを味わってもらえたらなと思います。

■360度どこから見ても楽しめる。常に開かれたユニットとして、今後は再演も視野に
――360度というステージはお客様にとっては慣れないスタイルのためか、「どの席を買っていいかわからない」という声も耳にしますが、席に違いはあるのでしょうか。
福田 どこから見ても成立するように意識して作っていますので、そこは安心していただければ(笑) それに会場自体がそんなに広くはないので、むしろその空間のエネルギーを共有できるようなライブ感を楽しんでいただければと思います。
大和 360度だとダンサーはなかなかソデに入れないのがちょっとかわいそうかな(笑) 普段の公演だとお客様に見えないところで表情をオフにできるので、それで気持ちにメリハリをつけたりすることもできるですが、360度だと全然気が抜けないから……。
福田 360度だからお客様からは全方面どこからも見られているので、その緊張感は半端ないよね。実はそれに慣れるのに意外とみんな苦労しているんです。
――それでもこれだけ話題になってくると「DAIFUKUに出たい」とオファーを持ちかけるダンサーさんもいらっしゃるのでは?
福田 すごく多いです(笑) 今回出演してくれる八幡顕光さんは「俺に声がかかるのはいつなんだ」って、実はずっと言われていました(笑)
――まだvol.7「DAIFU” Q”」がこれからの上演ですが、今後のDAIFUKUの目指すところは。
大和 ダンサーを囲い込まずに、フリーな状態のユニットで活動していきたいなと。「DAIFUKUといったらこのダンサーたちだよね」というのではなく、常に誰でも踊れる団体でありグループでありたいなという気持ちはありますね。様々なダンサーに間口を広げて活動していければと思います。
福田 DAIFUKUでの経験はすごく大切なもので、大勢の方々に助けられ支えられていつの間にか7回目。駆け抜けてきたという感じです。これからは新作のほか、以前上演した作品の再演なども、例えばキャスト違いやダブルキャストも含めて視野に入れていきたいですね。そうした活動を通してバレエ界が盛り上がればいいなと思います。
――ありがとうございました。
vol.4「360°Nutcracker」
取材・文=西原朋未

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