早川聖来(乃木坂46)が語る『スマホ
を落としただけなのに』~アンコール
上演に向けての意欲やこの一年の変化

今や私たちの生活に欠かせないものとなっているスマートフォンやインターネット、SNSにまつわる恐怖を描いたミステリー作品『スマホを落としただけなのに』。「このミステリーがすごい!」の隠し玉シリーズとして刊行されて以来、実写映画化、漫画、ラジオドラマなどのメディア展開がされ、続編も刊行されるなど人気を博している。

2020年にはふぉ〜ゆ〜・辰巳雄大が主演を務め、浜中文一を共演に、ヒロインには乃木坂46・早川聖来を迎えて舞台化された。新型コロナの影響で休演となっていた本作だが、一年の時を経てアンコール上演が決定。それに伴い、再びヒロイン・稲葉麻美を演じる早川聖来にインタビューを行った。
<あらすじ>
物語は、長い黒髪の女性を狙う猟奇殺人の容疑者である男(浜中文一)が逮捕されたことから始まる。証拠はなく、男の身元も不明。手がかりは男が逮捕されていた時に所持していたたくさんのスマホのみ。
行き詰まりを見せる中、サイバー犯罪に詳しい若手刑事・加賀谷学(辰巳雄大/ふぉ〜ゆ〜)が捜査に抜擢された。
彼の捜査により新たな手がかりとして浮かび上がったのが、カードの不正利用を受けた被害者・富田誠(佐藤永典)。そして彼の恋人・稲葉麻美(早川聖来)は、長い黒髪の美人であることが発覚する。
スマホを落としたことをきっかけに、富田と麻美の周辺で起こり始めた不可解な事件やトラブル。正反対の立場である容疑者の男と刑事の間に芽生える奇妙な感情。明らかになっていく過去や真実とは――。

■再挑戦への思い
ーーまずはアンコール上演が決まった感想を教えてください。
同じメンバーが集まって同じ作品をできるのは本当に奇跡的なことだと思うので、すごく嬉しいです。
ーー昨年は、公演が中止になってしまいましたね。
複雑な気持ちでした。たくさん稽古をしましたし、作品にもカンパニーにも愛があって、もっといい作品を一緒に作りたいと思っていたので。本番の回を重ねるごとにその想いは強くなっていって、より多くの方に観てほしいという気持ちも持って挑んでいたので、悔しさがありました。
でもそれ以上に、コロナで世の中が変わってきて、医療従事者の皆さんや感染された方など、たくさんの方が大変な思いをされている中で、「やりたかった」とも言いづらくて。言えない状況もまた悔しかったです。
■作品に対しても、自らや共演者の役にも愛情を持てた
ーー初めて観る方もいると思うので、改めて稲葉麻美というキャラクターについて教えてください。
強いけど弱い、自分を強く見せている女性です。前回は「強さ」に重点を置きすぎたので、今回は「本当は弱い女性が強く見せている」という複雑さが伝わるようにしたいと思っています。ある秘密を抱えているキャラクターなので、影がある感じも、もう少し出したいです。
ーー初演で思い出に残っていることはありますか?
舞台では、1〜2時間程度で一人の人生を生きると思うんです。「この女性は(描かれていない)空白の何年間かでどんな思いをしてきたんだろう?」と自分なりに考えて、一緒に生きている感じがしたので、役に対する愛情があります。1ヶ月程の稽古を通して作品についても深く考えられましたし、他のキャストさんが演じる役に対しても愛を持てました。恋人のマコちゃん(富田誠)とのシーンは、本番を行う中で、稽古期間に作ったものとは変わっていって、思い入れが深まりました。
ーーでは、楽しかったことは。
私は物語の中盤から登場するので、袖にはけてくるキャストの皆さんの顔を見るのが好きで、楽しみにしていました(笑)。特に宮本まゆ役の北村由海さんがとても個性的で。被害者役なので、血塗れであざがあってウェディングドレスで……というシリアスな見た目なのに、袖ではおどけて笑わせてくれるんです。浜中さんも、途中で金髪のカツラをかぶってスカした顔で帰ってくるんですけど、それがツボで(笑)。そうすると浜中さんが「何笑ってんねん!」って(笑)。
私の出番の前は、座長を含めたキャストの皆さんが「ここから早川聖来のシーンだね! 旋風巻き起こしていけ!」って毎回盛り上げてくれました。優しいお兄さんお姉さんたち揃いのカンパニーがすごく好きでした。
舞台『スマホを落としただけなのに』
■一年間で得た気付きや反省点を活かしたい
ーーこの一年、対面で人と接する機会が減り、スマホの重要度がさらにアップした気がします。
リモートが多い状況になったことでネット犯罪などもさらに増えていると聞くので、この作品がより時代にマッチしたのかなと思っています。個人的にもリモートのお仕事が増えましたが、ファンの方と交流する機会は減りました。スマホを使ってメールを送ったりブログを書いたりという時間が以前より増えたので、重要性は改めて感じています。
ーー作品や役について、心境の変化はありましたか?
一年間、乃木坂46としていろいろなお仕事をする中で、「このシーンはもっとこうすれば良かった」という反省点を見つけたり、他のお仕事の中で「こういうこともできるんだ」という新たな引き出しに気付いたりしました。ドラマのお仕事をしたときに、「一番人間味が出るのは0か100かじゃなく間の感情だよ」と教わって。嬉しい・悲しいの間の、嬉しいけど悲しいという表現が大事だということとか、なるほどと感じたことがすごく多かったです。前回は麻美を「強い女性」と「弱い女性」の二択で演じていましたが、もっと間を作れば良かったなとか、強い中にも色々な面を織り交ぜれば良かったなとか、色々と考えました。
テレビの仕事では、表情をより意識するようになりました。ライブや舞台は表情も体の動きも大きくするのが大事だと思っていましたが、そればかり気にして、表情や口角の上がり方など、細かいところをあまり作れていなかったんです。でも、そこをもっと意識できたら、お客さんには伝わらなかったとしても、一緒に舞台に立つキャストの方に伝わって、より熱のあるお芝居ができたかなと。お客さんに伝えることばかり考えていたけど、キャストの方との掛け合いのためにも、細かいところまで気にしたいと思いました。
そういった発見と反省がたくさんあった一年間でした。他のキャストの皆さんや演出の横内さんも、それぞれ色々考えていた一年だと思うので、それを持ち寄ってもっといい作品にできると思うと楽しみです。 
ーーこの一年で、ラジオやドラマなど活躍の場を広げていますが、ここは成長した! と自信があることはなんですか?
えっ……なんでしょう(笑)? 緊張せずに喋れるようになったことですかね。ラジオのお仕事が増えたのもあるかもしれませんが、お話しすることに対する怖さはあまりなくなりました。あと、ライブが配信になったり、歌番組に出していただいたり、4期生でコント番組を始めたりする中で、画面の四角い枠の中でどれくらい魅せられるかという経験を積み、多くを得られたと思います。自信を持って「成長した」とは言えませんが、多少は変わっているかなと。
■役者としての意気込みと、生の舞台が持つ魅力
ーー初演の時に印象に残ったアドバイスはありますか?
アドバイスといいますか、のびのびやって! という感じでした。もちろん稽古中は横内さんから、セリフや語尾など細かく指導していただきましたが、稽古後半や本番は「そのままでいいよ」と言われていたので。浜中さんや辰巳さんも「いいよ」「大丈夫」と。でも、それが本当にいいと思ってもらえていたのか、私のその時の精一杯を見て「今はこれ以上言わないのがベスト」と思われていたのか分からなくて。多分、本当にいいわけじゃなかったと思うんです。まだまだ経験もないので、次回はもっと成長できていたらなと思っています。
ーー改めて、舞台の魅力はどんなものだと思いますか?
最近出演したエチュード(『あなたと作る〜etude The 美4』)は舞台ですが無観客配信だったので、目の前にお客さんがいるということの大切さを感じました。私は舞台の「秘密の共有感」がとても好きで。ここにいる人しか観ることができないし、毎公演アドリブや間が全部違って、全く同じものはひとつもない。今日来たお客さんだけに届けるものという感覚が魅力だと感じます。
ーー最後に、お客様へのメッセージや意気込みを教えてください。
一度中止になり、改めて舞台ができることへの感謝やありがたみを感じました。一年間温めてきたので、前回より絶対良いものにしなきゃいけないという使命感が大きいです。公演をできるのが当たり前じゃないという感謝と、アンコール上演だからこその熱意を持って挑みます。絶対に熱い作品になると思うので、ぜひそこを観ていただきたいです。また、次こそ大好きな地元・大阪で公演ができるのもとても嬉しく思います。大阪でいいスタートダッシュを切って、東京の千秋楽までみんなで駆け抜けたいです!
取材・文=吉田 沙奈

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