無意味を愉しむ詩人・天川悠雅。ギリ
シャラブの新作『ヘヴン』から見る詞
の真髄

空虚を背負ったような歌、夢幻と快感に酔っているような声、そしてさらりと真理に触れるような歌詞。天川悠雅は詩人として抜きん出ている。京都出身の5人組バンド・ギリシャラブが、志磨遼平監修の〈JESUS RECORDS〉を離れ、自主レーベル〈都市国家レコード〉を設立。独立後初となる音源『ヘヴン』をリリースした。作風は前作『悪夢へようこそ!』から一転、“軽さ”を押し出したような素朴な音色が印象的な一作である。どこか原点を思わせる新作から、天川悠雅が綴る詞の真髄に迫る。

弾き語りの良さを活かす

ー「都市国家レコード」という名前を聞いた時、根無草だったバンドがとうとう自分の国を作ったのかなって思いました。
そうですね、なんかそういうことも、この名前にすることで想像できるなとは思いましたけど(笑)。
ーそんなに意図的なものではない?
ギリシャっぽい名前にしようと思って。「ソクラテスレコード」とか、そういうのも考えたんですけど、僕が「都市国家レコード」って言ったら結構評判が良くて(笑)。ギリシャラブっていうバンド名もそうですけど、あんまりない名前なので、これでいいかなって思って2秒ぐらいで決めました。
ー自主レーベルを立てた理由はなんですか?
そんなに強い動機があったわけじゃないんですけど、きっかけはギターの取坂(取坂直人)が東京のレコーディングスタジオで働き始めたことです。録音の技術が比べ物にならないくらい上がって、正直これでいいじゃんっていう音が録れるようになってきたんですよね。それでミックスも自分たちでやりたいと思うようになって、じゃあミュージックビデオの撮影やレーベル自体僕らでやっちゃえばいいんじゃないかって話になって。今回はこういう感じでやってみたって感じですね。
ー『ヘヴン』の制作はどういう風に進んでいったんですか。
新しく入ったベースの守屋さん(守屋咲季)と、取坂と僕の3人でスタジオ入ることが多くなって。そこで僕がなんとなくドラムを叩き、ギターを入れて歌も録って、キーボードも入れてデモを作っていくんですけど、今回はそのドラムをそのまま使っていたりしていて、録り直していないものもあるんですよね。なので10曲のうち、半数以上の曲を5人では作っていないというか。僕と取坂だけで録っているものもあるし、『ヘヴン』は僕の裁量が多い作品になったなとは思います。
ーおどろおどろしい作風だった前作(『悪夢へようこそ!』)とは打って変わって、音色が軽快ですね。圧がなく、爽やかな印象さえあります。
ギターで曲を作るんですけど、取坂からは「弾き語りの時は凄く良い曲だと思うけど、バンドで合わせると変な曲になっていく」って言われたことがあって、それは僕も何となく思っていたことだったんですよね。1曲目の「カフェ・オ・レ」も凄く古くからある曲で、それこそバンドでやると難しいってことで寝かせておいた曲だったりして、今回は弾き語りの良さをそのまま自然に活かすことを考えて作っていました。
ーなるほど。
あと、極端な話をすれば、音のパワーはマスタリングの段階からでも一気に上げることができるんですけど、今回はあまりそういうことをやる気にはならなかったんですよね。そもそも眼中になかったというか、音小っちゃくてもいいやって気持ちがありました。
ー何故?
制作の段階からメンバー同士で話していたことなんですけど、『ヘヴン』の感触は1枚目のアルバム『イッツ・オンリー・ア・ジョーク』に似ていると思うんですよ。あれは京大の軽音楽部の部室で録って、本日休演のメンバーがミックスしてくれたアルバムなんですけど。いわゆるそういうオーガニックな感じというか、音的にはあの作品に近い気がしていました。で、ロック的な音圧はかなり欠いている作品ではあったんですけど、あれよかったよね?みたいな(笑)。
ーそれで素朴さを活かすような音になったと。
はい。なので地元の公民館みたいなところで、取坂とふたりでMTRで録ったギリシャラブを組むより前の感じをやりたいと思ってました。
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