【レポート】Co.山田うん、新作『コ
スモス』を映像版&劇場版で制作~ダ
ンスの豊かな可能性を深め広げて

■"土着"すなわち社会に根付いたダンスを
2002年に設立されたダンスカンパニーCo.山田うんは、主宰で振付家の山田うんの下、多彩な出自からなる才能あふれるダンサーたちが集い精力的に活動している。チャレンジングな創作、特に10数人が踊る群舞は大きな売りだ。彼らは国内外で新旧作品を上演するとともに、全国の劇場や教育機関、福祉施設においてワークショップやキッズ・ダンスプログラムも行う。自らのダンスのスタイルを"土着"と称する山田は、アウトリーチや後進の育成にも気張らず取り組むことによって、社会に根付きながらダンスの魅力を深め広げている。
山田うん Un Yamada
そんなバイタリティあふれるCo.山田うんは、世界的な感染症拡大の影響を受けても粘り強く活動を続けている。2020年最初の緊急事態宣言中に、ダンサーの仁田晶凱がディレクターとなり、リモートコミュニティセンター「文舞両道」を開設し、オンラインレッスン、コラム、インタビューなど豊富なコンテンツを配信。2020年8月末には、自治区金石大野アートプロジェクトアーティスト・イン・レジデンス Co.山田うん金沢港パフォーマンス『みぎわ』を、10月にはインスタレーション・ダンス『BODY GARDEN』を行った。
Co.山田うんメンバー (c)HAL KUZUYA
そうした中、秋から冬にかけて新作公演『コスモス』を控えていた。東京・山口・新潟の3都市ツアーを予定していたが、2020年11月末の東京芸術劇場シアターイーストにおいて芸劇danceの一環として実施するはずだった東京公演は、感染状況を考慮して無観客で映像作品を制作することに切り替えた。映像版は2020年12月28日(月)から2021年1月3日(日)まで「Streaming+」にて有料で配信。いっぽう、2021年2月28日(日)山口情報芸術センター、3月6日(土)りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館において舞台上演した。
Co.山田うん『コスモス』映像版バナー
映像版も堪能したが、Co.山田うんのエネルギッシュな作品群を設立以来ほぼ欠かさずに観て刺激を受けていることもあって、劇場版を見逃したくなかった。そこで新潟に足を運んだ。ここでは劇場版の模様を中心に報告し、映像版についても触れたい。
Co.山田うん『コスモス』劇場版フライヤー
■"宇宙の渦のような秩序"から日常の風景までを捉える
『コスモス』は11のシーケンスから成る。冒頭の「コズモ」では、男女13名が三々五々現れ、列をなし円状に歩いたかと思うと分離して踊る。"宇宙=『コスモス』""コスモスという宇宙の渦のような秩序"(チラシのコピーより)を象徴しているのだろう。その模様を間近から切り取った映像版にも惹かれるが、劇場の客席から接するとより"渦"を感じる。
Co.山田うん『コスモス』映像版収録の模様 (c)羽鳥直志
続く「ガーデン」では、植物に覆われた庭(ガーデンデザイン:塚田有一)で望月寛斗と山根海音が踊る。二人の語らいが聴こえるかのようなナチュラルで繊細な質感はしかと伝わったが、ここでは映像版のインパクトが強いかもしれない。舞台装置を背に演者がアップを捉えるので、画面越しとはいえディティールがよく分かり緊密感がある。
Co.山田うん『コスモス』映像版収録の模様
一転して「ホスピス」の舞台はベットがひとつだけ置かれた殺風景な部屋。電子音が鳴り、ひんやりとした空気感が支配する。そこで河内優太郎、山口将太朗が絡み、静謐さ、わびしさを際立たせる。「秋桜」では、"pink"の山崎眞結、"purple"の西山友貴という、それぞれピンク、紫の衣裳に身を包んだ二人を中心に、どこかのどかな雰囲気で自在に舞う。
Co.山田うん『コスモス』劇場版 新潟公演 (c)2021村井勇/アトリエラボン
「パーティー」では、白いテーブルクロスが敷かれた長机が正面を向いて置かれ、飯森沙百合、黒田勇、田中朝子、西山友貴、望月、山崎が、テーブルの上下、前後で闊達に踊り絡む。「コスモポリタン」ではアナーキーな踊りが繰り広げられ、「猫」では仁田晶凱がしなやかに踊る。
Co.山田うん『コスモス』映像版収録の模様 (c)羽鳥直志
川合ロン、長谷川暢、山根、吉﨑裕哉が声を上げ討論し呵々大笑する「ドラマ」に続いて、「フラワー」「カオス」「エンド」と全員による踊りのテンションは高まっていく。ことに万国旗を広げ、舞台狭しとばかりに踊りまくる群舞はCo.山田うんの真骨頂で、映像版&劇場版それぞれパワフルで見応えがある。"随所にちりばめられる2020年のオマージュが現れては消える"(チラシより)といった辺りの要素もそこかしこから感じ取れるだろう。

Co.山田うん『コスモス』劇場版 新潟公演 (c)2021村井勇/アトリエラボン

"宇宙の渦のような秩序"から誰しもが経験するような日常の風景まで、マクロ/ミクロの両視点から世界を捉えて奥深い。とはいえ、全体的に重々しさはなく、ポップで軽やか。そのうえで、人生の一断面を巧みにすくいあげ、連ね、人間という存在の愛しさを伝える。
Co.山田うん『コスモス』劇場版 新潟公演 (c)2021村井勇/アトリエラボン
公演当日配布パンフレットには、各シーンについて「dance&created by ~」というようにダンサーの名前も挙げられていた。山田の年季の入った洞察力とメンバーの個性やアイディアが折り重なって、このカンパニー、このメンバーだからこその味わいを醸し出す。山田は美術も担当。音楽は山田の盟友ヲノサトルで、音楽と動きが表裏一体のごとく共鳴する独特な時空を立ち上げるが、今回は何度もリフレインするメロディが一際心に響いた。
Co.山田うん『コスモス』劇場版 新潟公演 (c)2021村井勇/アトリエラボン
劇場版だけの演出に忘れ難いものがある。舞台上に連翹(レンギョウ)というモクセイ科の黄色い花が設えられ、山田うんワールドを見守った。早春に咲く花の落ち着きのある色合いが、舞台空間に得も言われぬ彩りと温もりをもたらしていた。
Co.山田うん『コスモス』劇場版 新潟公演 (c)2021村井勇/アトリエラボン
■何時も自然体、そして挑戦を忘れない
山田は2020年春、第37回(令和元年)江口隆哉賞(制定:一般社団法人現代舞踊協会)を受賞。「受賞のことば」の中で、こう記している。

どんな困難な時代でも、どんな平和な時代でも、太古からそうであるように舞踊は尊い表現として存在し続けなくてはならないと思っています。これまでもそうであったようにこれからも。無力な踊りなど一つもないのですから。 私にとって舞踊を生み出すことは、自然と秩序と混沌の中で、自由を生成する姿勢です。生命のための舞踊を追求し、未来に橋を架けられるような領域へ、恐れず、丁寧に、大胆に、精進して参りたいと思います。

Co.山田うん『コスモス』劇場版 新潟公演 (c)2021村井勇/アトリエラボン
映像版&劇場版を制作した『コスモス』を経て、Co.山田うんの快進撃は続く。2021年5月22日(土)国立劇場令和3年5月特別企画公演「二つの小宇宙―めぐりあう今―」において、新作『Bridge』を発表。声明とのコラボレーションだ。2021年7月2日(金)~7月4日(日)には新国立劇場主催公演で新作『オバケッタ』を披露。2021年8月28日(土)~29日(日)日生劇場ファミリーフェスティヴァル2021音楽劇『あらしのよるに』(2019年初演)において、振付(山田)、出演(Co.山田うん)で参加する。さらに、2021年12月、山田が、りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館専属舞踊団Noism Company Niigata(芸術監督:金森穣)に招聘され、プロフェッショナルダンスカンパニーNoism1に新作を振付する。何時も自然体で、地に足を付けて歩みつつ挑戦を忘れない。今後もダンスの豊かな果実を分かち合う場を創り続けるだろう。
【動画】Co.山田うん 新作「コスモス」映像版 トレーラー
取材・文=高橋森彦

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