太田将熙×碕理人×磯貝龍乎「“性格
が悪い”設定に惹かれました」~舞台
『Another lenz』インタビュー

2021年5月15日(土)~5月23日(日)、東京・新宿 FACEにて上演される舞台『Another lenz』。新しい演劇の在り方を追求したプロジェクト「AD✕STAGE」の第一弾を飾る。本作に出演する太田将熙と碕理人、脚本・演出を務める磯貝龍乎にインタビューし、新境地に臨む心境と謎めいたストーリーに迫った。
ーー同じ台本でありながら、生観劇と生配信とで全く異なる展開に見えるという試み。どんな感想を持たれましたか?
太田:コロナ禍でオンライン配信が主流になってきましたが、どうしても劇場まで来られない方に対して、配信でしか味わえない楽しみ方を提供するというコンセプトがすごく新しいと感じました。同じ内容だとやっぱり劇場で観たくなる。もちろん、そう感じるのが舞台の醍醐味でもありますし。そんな中で、こうした挑戦的な企画に携われて嬉しいです。
太田将熙
碕:僕も衝撃でした。今の界隈にはない、新しいことをやりたいという意欲をすごく感じたと同時に、楽しみしかないです。完成形は劇場に入ってみないとわからないでしょうし、予想がつかない。物語としてはディープな作品になっていますし、皆さんにもガツンと衝撃を与えたいです。
ーーこのコンセプトで本作を書かれたのはなぜでしょうか?
磯貝:まず、お話をうかがったときに、面白いことができそうだと確信しました。円形舞台なのでいろんな角度から違った視点で見てもらえますし、プロジェクターも使います。スタッフチームがカメラで撮っている映像を、そのまま映し出すんです。客席からの見え方と、舞台上からの見え方の違いも感じてもらいたいですね。カメラを通して見る映像と、視聴者のイメージと異なる裏側を描けたら面白いなと。役者という一人の人間をとっても、映し出されている姿とプライベートは違いますし、きれいごとだけじゃない、人間の内側にある下衆さを見せていきたいです。
ーーなかでも太田さん演じる松田は、売れっ子役者でありながら性格の悪さが際立つ役どころです。
太田:今まで演じたことのないタイプなので、ワクワクしています。人間誰しもが持っている感情を抱えていて、共感できる部分も多かったですが。実は、役の候補が二つあったんです。松田の設定にあった「性格が悪い」の一文に惹かれて「ぜひこっちの役をやりたいです」とお願いしました。これまで演じてきた役は、なんだかんだ愛されるタイプが多かったんです。役者として違うポイントに行きたいタイミングでもあったので、よりステップアップできる役に挑ませてもらうことになりました。
ーー一方、碕さん演じる監督の藤原も、実力はあるが癇癪持ちという癖の強さです。
碕:思いが強すぎるあまり、誰もついて来られない人ですね。スタッフ側にいろんな事件が起こる中で、それでも作品を撮らなくてはいけないと。こういう状況、本当にあるんじゃないかって思わされます。かろうじてついて来てくれるスタッフ陣も、これまた鬼のようにヤバい奴らなんです(笑)。役者チームとも絡む役どころなので、松田をはじめやり取りがすごく楽しみです。
碕理人
太田:現実では、役者が監督に強く出ることって滅多にないんです。でも、それはあくまで表面上の話。人間だから、裏で思ってることはあります。そういった一面も垣間見れる作品なんです。
磯貝:そう、それ! いいこと言った。
ーー演出側としては、磯貝さんはお二人にどういった期待がありますか?
磯貝:お芝居じゃなくて、リアルにそこで起きていることという錯覚を起こしたくて。セリフではあるけど、別にセリフ通りである必要はない。複数人が話していると、現実では発言のタイミングが被ることもありますよね。そういうことが起こってもいいし、みんなできる役者だと思っています。
碕:今回はしゃべりますからね~!
太田:セリフ量、多いですもんね。
磯貝:ね(笑)。これまでのイメージを払しょくさせるような、狂気的なお芝居を期待しています。
ーー演出家としての磯貝さんの印象は?
碕:役者としては結構共演歴が長いんですが、演出はゲスト出演した作品で一度だけ。
磯貝:僕の処女作でした。
碕:いやぁ、ぶっとんでました(笑)。
太田:僕、龍乎さんの演出を受けるのが初めてなんですけど、稽古はどんな感じで進められるんですか?
磯貝:簡単に言うと、稽古時間が短い(笑)。僕の集中力が、もってたぶん3時間なので……。
太田:それを聞いて、すごくやる気が湧き出てきました(笑)。
磯貝:役者さんもそのほうが嬉しいでしょ? 3時間にぎゅっと凝縮して、あとは役者が各々に時間を使ってほしいですし、早めに次の日の土台を作りたいなと。
(左から)磯貝龍乎、太田将熙、碕理人
ーー新しい部分が多いプロジェクトですが、現時点で役者視点から演出の磯貝さんに聞いてみたいことは何かありますか?
碕:僕、実際に聞いてみたことがあるんです。内容がめちゃくちゃ生々しいので、ベースとなったものや影響を受けたことはあるんですかって。龍乎さん、園子温監督がお好きらしいんです。僕も好きなので、ますます楽しみになりました。
磯貝:『冷たい熱帯魚』という映画が、ものすごい生々しくって。血だらけのシーンもあって息をのむ瞬間もありますけど、飛び越えるとある種のセクシーさすら感じる。そういうシーンをお顔のきれいな子が演じたら、それはそれはセクシーなんだろうなと。
碕:役者としての龍乎さんしか知らない方からすると、びっくりする内容かもしれない。脚本を書く龍乎さんの頭の中を知りたいなと思いました。
太田:今回のホンって、どれくらいの時間で書かれたんですか?
磯貝:試行錯誤をずっと繰り返してるからなぁ。試しに書いて消して、やっとベースができて、また消してって……いうのをずっとやってる。本当に難しいです。
ーーゼロから1を生み出す苦労は計り知れないです。
磯貝:本当に。やってる人、尊敬してます。
磯貝龍乎
碕:いや、龍乎さんもですよ(笑)。
ーーちなみに、太田さんと碕さんは創作に興味は?
太田:興味あります。今、レギュラーでラジオ番組をやらせてもらっているんですけど、いつかラジオドラマを作ってみたいです。役者をやりながら演出や監督業をされる方の活躍を見て、いろんな視点を持つことがお芝居の向上に繋がるんじゃないかと考えさせられました。ずっと現役で役者をやっていきたいからこそ、一度作り手を経験してみたらもっと成長できるんじゃないかと。大々的に公開したいという思いは今の時点でありませんが、身内向けに短編映画を撮ってみるのも面白そうですね。
碕:すごいなぁ。僕は無理です。ゼロからゼロです。
磯貝:あっはっは!
ーー公演に向けた意気込みやお客様へのメッセージをお願いします。
磯貝:初めていい音楽を聴いたときのような心境になっていただけたら。「ここがいい!」というよりは、全体を通して「なんか良かったな」と感じてもらえるような舞台にしたいと思っています。
碕:生で見る、カメラを通してみる、役者視点とスタッフ視点……今までにないジャンルへの挑戦でもあり、本当に“別次元舞台”の名にふさわしい内容になっています。アトラクションのように楽しめる舞台にするためにキャストや演出、スタッフさんたちを信じて頑張って作り上げていきたいです。
太田:演劇界への挑戦という、新しい覚悟を感じた作品です。もしかしたら、万人には受けないかもしれませんが、面白いことに挑戦できると自信を持っています。新しいもの、面白いものが見たい人にはぜひ見ていただきたいです。劇中では役者同士、スタッフ同士の衝突も描かれています。初共演の方もいらっしゃいますが、いつも持っている「お芝居では絶対に誰にも負けたくない」という気持ちをより前面に出せる作品です。みんなのお芝居でのぶつかり合いもぜひ楽しみにしてください。
(左から)磯貝龍乎、太田将熙、碕理人
取材・文=潮田茗  撮影=池上夢貢

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