【藤津亮太の「新・主人公の条件」】
第23回 「転生したらスライムだった
件 転スラ日記」リムル

(c) 柴・伏瀬・講談社/転スラ日記製作委員会 4月から「転生したらスライムだった件」のスピンオフ「転生したらスライムだった件 転スラ日記」(以下「転スラ日記」)の放送がはじまった。この「転スラ日記」は、本伝ではスポットがあたることがなかったストーリーの“隙間”、キャラクターたちの日常生活にスポットをあてたギャグ作品。本伝がSIDE-Aなら、こちらはSIDE-Bといった趣の1作だ。

 建設会社のサラリーマン三上悟は、後輩を通り魔からかばって死亡し、スライムとして転生する。スライムとなった悟はリムルを名乗り、転生時に身についた様々なスキルを生かし、仲間を増やしていった結果、ついにはジュラ・テンペスト連邦国の盟主となる。リムルは、仲間となった様々な種族(鬼人、ホブゴブリン、ドワーフ、オーク、ドラゴニュートetc)からとても慕われ、テンペストの求心力となっている。この様々なキャラクターの“リムル様大好きっぷり”は、「転スラ日記」ではギャグとして幾度も繰り返されることとなる。
 どうしてリムルは慕われるのか。
 それはリムルがいろんな問題を理詰めで考えるタイプだからだ。おそらくサラリーマンとしても優秀だったのだろう。理詰めだから不満も出にくい。リムルが国造りを始めたときの「皆が種族問わず楽しく暮らせる国」という理想は気分ではなく、そのようなリムルの理詰めと、そこから導かれる公平な姿勢によって、実現されているのだ(だからこそ本伝2期で、リムルが“敵”に対して怒りを向ける展開はインパクトが大きいのだが、それはまた別の機会に)。
 かなり以前に「フィクションに出てくるヒーローとは、つまるところ啓蒙専制君主である」という指摘を読んだことがある。この指摘は、ヒーローという存在が本質的に民主主義とは相容れない存在であるにも関わらず、民主主義を信じる大衆がそこに好感をもつという構図を皮肉ったものだったと記憶している。確かに、多くのヒーローは重大事について、民主主義的な手続きではなく、個人の決断で対処することが多い。ただ決して仲間やその意見をないがしろにしているわけではない。そのふるまいは開明的な専制君主に通じるものがある。
 この「ヒーローとは啓蒙専制君主である」という指摘を、ひっくり返して「啓蒙専制君主とはヒーローである」とすると、皮肉抜きにリムルの魅力をうまく言い当ているフレーズとなる。テンペストの盟主として、仲間たちに対して懐広く公平であろうとするリムルは、まさに開明的に近代化を進める啓蒙専制君主と重なって見える。
 そんなリムルの生き方は「転スラ日記」の中では「リムルはみんなの居場所である」というフレーズで表現されている。スライムであるにも関わらず圧倒的な強さを誇るリムルだが、実はその強さではなく、この「愛される盟主」というあり方こそがリムルをヒーロー=この物語の主人公たらしめているのである。

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