5月9日にフジテレビ『Love music』に
て放送決定 ライブイベント『若者の
すべて』にオーサム、Cody・Lee(李)
らが集結

「若者のすべて #01 -YOUNG, ALIVE, IN LOVE MUSIC-」2021.4.3
コロナ禍でライブやフェスの開催が難しくなっている昨今だが、フジテレビの音楽番組『Love music』と、コンサートプロモーターのサンライズプロモーション東京がタッグを組み、若く勢いのあるアーティストを集めたイベントが開催された。4月3日(土)に日比谷野外大音楽堂で行われた『若者のすべて#01 -YOUNG,ALIVE,IN LOVE MUSIC-』がそれである。「若者のすべて」は言わずと知れたフジファブリックの名曲から、「YOUNG,ALIVE,IN LOVE」はフリッパーズ・ギターの曲タイトルから引用するなど、音楽好きに向けたイベントの趣旨を物語るタイトルとして似つかわしいものだ。ちなみに、タイトルの「若者のすべて」というのは、アーティスト、お客さん、スタッフ、集まったすべての人が「年齢問わず、若者になれる空間にしたい」、という思いをこめてつけたそうだ。
なんでも、『Love music』というテレビの音楽番組のプロデューサー三浦淳氏が、2017年に番組内にインディーズのアーティストを紹介する「Come music」というコーナーを立ち上げ、それが今回の企画に繋がったという。YouTubeやサブスクリプション・サービスを漁っていればいくらでも安価、あるいは無料で音楽を入手できる現在だが、いやそんな現在だからこそ、テレビでの未知のミュージシャンとの出会いは逆に新鮮なのではないだろうか。
74年生まれの筆者もMTVやSPACE SHOWER TVで流れる音楽家のビデオ・クリップに魅せられCDを買ったり、ダウンタウンやとんねるずタモリなどがMCを務める音楽番組で初めて知ったバンドやシンガーが多数いた。そう考えるとこのフェス、中年層にとっては、原点回帰と言えるかもしれない。
イベント開催の発表時に出演が決まっていたのは、今後が有望な4組。キタニタツヤ、Cody・Lee(李)、小林私、浪漫革命。続いてトリのAwesome City Club(以下、オーサム)の出演がアナウンスされた。筆者はオーサム以外、出演するアーティストの名前も寡聞にして初めて知ったのだが、なるべくまっさらな状態でフラットに見ようと、会場の日比谷野外大音楽堂に足を運んだ。
オープニングを飾るのは、浪漫革命。RISING SUN ROCK FESTIVALやSUMMER SONICにも出演済みのバンドで、フェスに慣れているな、というのが第一印象。このイベントの一番手を飾るのに相応しい、熱と力のこもったパフォーマンスだった。特に歪み系のエフェクトをかけた2本のギターが鼓膜を刺激した。
浪漫革命
続くCody・Lee(李)(こーでぃ・りー)だが、andymoriにも通じるエバーグリーンで瑞々しい感興を覚えたのだが、筆者が感嘆したのはリード・ギターの力毅のプレイ。変幻自在、縦横無尽にソロを聴かせる間奏のパートももちろんだが、バッキングにまわった時のオブリガードやカッティングも見事で圧倒された。高橋響と尾崎リノが織りなす意気軒昂で美しいハーモニーがバンドを牽引し、先述のギターとの相性も抜群。これから大化けしそうな予感を感じさせる。
Cody・Lee(李)
この2組に言えるのは、どちらもインディー・ロック・シーンの今後を担っていくのだろう、ということ。以前、元昆虫キッズの高橋翔にインタビューした際「シャムキャッツの夏目(知幸)と話してたんですけど、若い子が東京でバンドやる時の、ある種のサンプルというか道筋を作ったところはあると思います」と述べていた。確かに浪漫革命にせよ、Cody・Lee(李)にせよ、彼らがバンドをやるにあたって、そうした先人たちの活動やサウンドを参考にしたところもあるのではないか。具体的にはサニーデイ・サービスを筆頭に、ミツメ、Yogee New Wavesnever young beach等のバンドとも共振している感もある。
続く小林私なのだが、たまたま以前サブスクリプション・サービスでアルバムを聴いていたものの、弾き語りによるこの日のパフォーマンスは音源とまったく別もの。最新作ではファットでタイトなビートに支えられた演奏が際立っていたが、この日のライブでは全編アコースティック・ギターの弾き語り。ライブと音源、両者は分けて別物と考えているのだろうか。ギターと歌だけの編成ということで、彼の生々しくネイキッドなボーカルの魅力がつぶさに伝わってきた。
弾き語りのミュージシャンのMCが長いのは伝統のようなものだが、この日のMCも牧歌的で親しみやすいもの。観客との距離の近さを感じさせる気さくでユルいMCをしたのち、歌いだすと即座に「ゾーン」に入る。その落差やギャップがこの日の小林のハイライトだった。
小林私
続くキタニタツヤは、かつてボカロPとして活躍していたこともあるシンガー・ソングライタ―。ソロ活動と並行し作家として楽曲提供もしていたそうだが、職人的な手さばきで音楽と真正面から向き合ってきたのはよく分かる。この日もバンド・サウンドをバックに、伸びやかで溌溂としたボーカルを披露。これはボブ・ディランとザ・バンドの共演のよう……というのは多少盛りすぎかもしれないが、巧みなコーラスワークも安定感のある演奏も、初見の筆者にも充分に楽しめるものだった。
キタニタツヤ
トリを飾るのがオーサム。映画『花束みたいな恋をした』は筆者も見たが、同作には、オーサムが演奏するライブのシーンが映っていた。以前からシティ・ポップ的なサウンドが好評を博していた彼らだが、あの映画でオーサムの新規ファンが増えたのは間違いないだろう。そして、オーサムは、演奏力でもパフォーマンスでも、この日出演した中で明らかに一頭地を抜いていた。男女混成のボーカルも見た目からして華があり、鮮やか。演奏スキルも一分の隙もなく、減点すべきところが皆無のパーフェクトなパフォーマンスを披露した。
Awesome City Club
サブスクリプション・サービスで手軽に音楽が入手できる現在、ライブの臨場感や高揚感やはり生でないと……というのは定型的な形容だが、この日それを噛み締めたという観客も多かったはず。今や音楽は蛇口をひねれば水が出てくるように、いつ、どこからでも手に入る。だが、時にはミネラル・ウォーターを買ったり湧き水を飲むことに悦びを見出す人だって一定数いるだろう。そんなリスナーにとっては恵みの水のようなイベントだったのではないか。ありきたりだが、コロナが終息し、こうしたイベントが当たり前に開催されることを願うのみである。
取材・文=土佐有明

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