髙橋大輔、レビュー仕立てのアイスシ
ョー『LUXE』に挑む心境を語る

フィギュアスケートと歌舞伎のコラボレーションを実現させた『氷艶hyoen2017 ‐破沙羅‐』、『源氏物語』の世界を氷上に描き出した『氷艶hyoen2019 ‐月光かりの如く‐』と、新感覚のアイスショーを作り出してきたチームが再集結して送る『LUXE』。アイスダンスの現役選手としても活躍する髙橋大輔が光の国の王子に扮し、世界を巡るというレビュー仕立ての作品だ。髙橋大輔に作品への意気込みを訊いた。
ーー<氷艶>シリーズも第三弾となりました。
俳優や歌手の方々、アンサンブルの方々もスケート靴を履いて滑る、そして、僕たちスケーターも歌ったり踊ったりお芝居したりするというところで、お互い新しいチャレンジをしているところが、他の舞台にはない<氷艶>の特色です。今回も、前2回同様、プロジェクションマッピングでチームラボさんに入っていただきました。これだけ氷の上にプロジェクションマッピングを映しながらその上でいろいろ演技するというのも、他のアイスショーではなかなかない、<氷艶>ならではのおもしろさなのかなと思います。
リモートインタビューより 
ーー今回はレビュー仕立てということで、さまざまな国、地域を巡る<光の国の王子>を演じられます。
前回はお芝居がけっこうメインだったんですが、今回は表現がメインという感じで、セリフもそこまで多くはなくて。スケーターも、他の演者の方々も、それぞれ何役か演じますが、スケートで国や地域の違いだったりというところを表現するというのはチャレンジですし、おもしろい試みだなと思っていて。ブラジルやスペイン、パリにニューヨークなどさまざまな場面があるので、短い間に気持ちを切り替えなくてはいけないというのがけっこう難しいのかなと。今まではずっと同じ役を演じるという経験をしてきましたが、どんどん切り替えてやっていく場合があります。ずっと同じに見えてしまうとおもしろくない。そこをどう違う風に見せるかといったところはチャレンジですし、成功すればすごくおもしろくなるだろうなと思います。けっこういろいろな人と組んで滑るシーンがあるので、その都度、雰囲気も変えていきたいなと。ちょっとBLチックなシーンもありますし、スペインの場面ではマタドールも演じますし、アイスダンスでパートナーを組んでいる村元哉中さんと組んで踊る場面もあって、そこに、平原綾香さんが作られたすばらしい主題歌や、柚希礼音さんのニューヨークの場面のかっこいいパフォーマンスも入ってくるんです。
ーー今回新たに構成・脚本・演出で参加されている原田諒さんは、レビューの伝統をもつ宝塚歌劇団の演出家です。そして、監修・演出の尾上菊之丞さんは、今回の作品で諸国を巡る王子の姿と、髙橋さんのスケーター人生とが重なり合う部分があるのではないかということを、取材の際におっしゃっていました。(尾上菊之丞&原田諒&宮本賢二が創る、レビュー仕立てのアイスショーとは 『LUXE』インタビュー https://spice.eplus.jp/articles/284345
僕自身、宝塚の作品は、原田さん作・演出の『For the people -リンカーン 自由を求めた男-』を観ましたが、“ザ・宝塚”なレビューは観たことがないので、その意味でも、今回、僕にとって初めての体験になっています。タイトルである『LUXE』にも込められていますが、何を信じるのか、信じたものに一番価値があるということは、僕自身、一度現役を引退して、また現役に復帰するときに、自分はフィギュアスケートというものに軸をもってやっていきたいし、これからできるだけ長い間そうしていきたいという思いがあったんです。いろいろな経験もさせていただく中で、やはり自分の信じるものがひとつないと、次にも進めないですし、何を選択したらいいかもわからない、いろいろな評価に押しつぶされそうにもなる。そういったところで、僕自身はやっと信じるものを見つけて前に進むことができた。『LUXE』には“贅沢”という意味がありますが、自分が今、生活している中で何が大切か、何が自分の心を豊かにしてくれるかということを自分自身感じながら日々過ごせているので、すごくタイムリーな演目だなと思っています。そのあたり、自分自身のそのままの気持ちで挑めばきっとお客様に伝わるんだろうなと思いますし、僕のそういった気持ちを見抜いてこういう演目を作ってくださっているところにすごく感謝しています。原田さんは前2回の公演も観に来て下さっていて、<氷艶>がどういうものなのかご存知な上で今回参加されている。宝塚での経験をどうプラスアルファして<氷艶>を変えていってくださるのか、楽しみです。一回目は松本幸四郎さん(当時は市川染五郎)が参加されていて、歌舞伎のよさが取り入れられた作品でしたし、前回は宮本亜門さんの演出でまたおもしろいものができた。毎回全然カラーが違うので、今回、原田さんがどう料理してくれるのか、すごく楽しみです。
稽古の様子
ーー他ジャンルの方々とのコラボレーションを通じて、ご自身の表現への影響を何か感じるところは?
実際、どれがどうプラスになっているかということを僕自身で感じるのはすごく難しいんですが、ただ、これまで経験してきたことは絶対プラスにはなっていると思います。一回目は歌舞伎の世界を見せていただいて、歌舞伎の形、歌舞伎役者さんのあの迫力といったものがすばらしいなと、一緒にやらせていただく中で感じて。幸四郎さんは本当に忙しい方で、舞台をやりながら深夜にこちらの稽古に来られて、次の日はまた舞台に立たれて。その体力のすごさに、疲れたとか言っていられないなって。エンターテインメントに人生をかけている姿勢のすばらしさに感動しました。前回は初めて歌とセリフに挑戦したんですが、自分自身、芝居をしてみてどう感じるのかそれまでわからなかったのが、挑戦してみて、やはり、お芝居することがすごく好きなんだということに気づいて。できるかできないか、上手い下手は別ですよ(笑)。けれど、自分はやはりこういうエンターテインメントの世界を目指していきたいんだなということに改めて気づかせてもらえた。そうやっていろいろなものを吸収してきて、今回のレビュー仕立てのアイスショーも、またひとつ何か自分にとっての気づきを与えてくれる作品になるんだろうなと思っています。
ーー現役の選手として活動する傍ら、アイスショーでも精力的に活躍されていらっしゃいます。
僕はまだアイスダンスの初心者で、去年初めて大会に参加しました。いよいよオリンピック・シーズンに入っていきますし、正直、時間がない中で、今回、この作品をやらせていただきますが、ただ、練習することだけが常に大事だとは思ってはいなくて。もちろん練習は非常に大事なんですが、今回のような経験がどこでどう活きてくるかわからない。すぐに活きてくるかもしれないですし、そうではないかもしれない。けれど、これからフィギュアスケートを続けていく上で絶対プラスになると思っています。この作品を全力でやった後、自分がどう変化するのか、すごく楽しみでもあります。大変ではありますが、そこのプラスと言ったものが見えるので、両立させる上で不安やしんどさはあまり感じていないかなと思います。将来的にできるだけ長くパフォーマンスをしていきたいという思いがありますし、試合もアイスショーもすべて同じくくりだと考えているので。
稽古の様子
ーーご自身、シングルからアイスダンスに転向されましたが、アイスダンスで組んで踊るのと、シングル経験者同士で組むのとでは、また違う組み方になってくるのでは?
僕もアイスダンスをやってみて初めて気づいたことなんですが、人と組んでパフォーマンスするって本当に難しいことなんだと、今、体感していて。ずっとシングルでやってきた方々は、経験したことがないのでそこに気づくのはなかなか難しいと思うんですけれど、実際に経験している僕なら、今回、対応力という部分で、サポートしながら動けるのではないかなと思っていて。シングル同士で組むのだと、アイスダンスとはまた別の見せ方があると思いますし、同じ組むにしても、同調性であったりとか、逆に反発性であったり、いろいろな表現ができるのではないかなと思っています。
ーー歌にもチャレンジされますし、いろいろと楽しみな場面が多そうですね。
“光の王子”の衣裳をフィッティングする様子
僕は王子なんですが、次の王はお前だと言われて、でも、僕自身は王にはなりたくない、いろいろなものを見て、自分の将来、自分の行きたい道は自分で決めたいというところから旅がスタートしていくんです。だから、わくわくの中で話が進んでいく感じです。柚希さんの黒燕尾服の場面もすごくかっこいいという評判なので楽しみにしていますし、平原さんの歌を毎日聴けるんだなと思うと、それも楽しみで。前回もそうだったんですが、舞台裏で一観客として聴いていたり、演じながら歌で感動して自分自身も泣いてしまうくらいで、それを今回また感じられるのがうれしいなと。福士誠治さんと波岡一喜さんは前回は敵同士だったんですが、今回は従者、西岡德馬さんに王子を追えと言われてずっとついてくるという役どころで、普段から仲のいい方々なので、仲のいい二人を見られるのも楽しみです。今回、ステファン(・ランビエール)とユリア(・リプニツカヤ)が来られなかったので、ステファンの代わりに現役選手の田中刑事くんが出演してくれますが、二人でのシーンもあるんです。今までこういうストーリー仕立てのアイスショーを刑事と一緒にやったことがないので、どんな演技をするのか、すごく新鮮で楽しみです。
ーーご自身では、どんな瞬間に滑る楽しさ、幸せを感じていらっしゃるのでしょうか。
楽しくないですよ(笑)。
ーー楽しくないんですか?!
しんどいですよ、めちゃくちゃ(笑)。でも、やはり、本番、お客様の前で、観ていただける中で演技をして、その反応が返ってきたときの喜びはすごく中毒性があって、それがあるからこそ続けているんだろうなと思います。僕のパフォーマンスを見て、お客様が幸せになっている空気感を感じることが喜びなんだろうなと思います。
リモートインタビューより 
ーー『LUXE』はアイスショーは初めてという方から、フィギュアスケート好きの方まで、幅広く楽しめる作品になりそうですね。
スケートを生で実際に観られていない方には、スピード感というのはテレビでは伝わらないですし、あとは、ジャンプを跳ぶときや降りたときの音であったり、迫力といったものは画面越しより絶対楽しめると思います。それと、寒い空気というのが、ストーリー、物語を見せるときにすごくプラスアルファでいい効果になっているんじゃないかなと。例えば、美しい悲しい曲に、冷たい空気がすごく合ったりするんです。音楽とスケートはすごく融合性があるので、スピード感の中で音楽を表現するというのは、観ていてすごくおもしろいものなのではないかなと思います。それにスケートに加えて、僕たちが歌ったりいろいろチャレンジしているので、こんなこともできるんだなと、そんなおもしろさも持ち合わせていると思います。フィギュアスケートを好きな方々には、本当に、通常のアイスショーとは違うものになっているので。ストーリー仕立てのアイスショーは、海外ではありますが、日本ではなかなかないので、ファンの方々にとっても、フィギュアスケートの可能性というものを感じられる作品になっていると思います。
取材・文=藤本真由(舞台評論家)

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