FEATURE / 4s4ki – FAIRYTALE feat
. Zheani グローバルなコラボと共に
メジャー・シーンに異質な風を送り込
む4s4ki。加速し続ける彼女の変化／
進化を紐解く

Spincoaster

2021年05月01日 18:00

Text by Takazumi Hosaka

4s4kiがメジャー1stシングル「FAIRYTALE feat. Zheani」を4月14日（水）にリリースした。

作詞・作曲から歌唱、編曲、トラックメイクまで自身で行うアーティスト、4s4kiはこれまでも作品毎に音楽性を変化させ、着実なステップアップを続けてきた。しかし、その変化／進化のスピードは、ここにきて激的に加速しているようにも思える。昨年から配信限定含むアルバム2作――『おまえのドリームランド』、『超怒猫仔/Hyper Angry Cat』、そして配信限定EP2作――『遺影にイェーイ』、『UNDEAD CYBORG』を立て続けに発表。最近ではSpotifyのプレイリストに端を発する、昨年から話題の新たな潮流“hyperpop”との共鳴が指摘されることも多いが、以前Spincoasterで行ったインタビュー(https://spincoaster.com/interview-4s4ki) やルーツ・ミュージックを挙げてもらう企画「Rootscoatser」(https://spincoaster.com/rootscoaster-vol-170-4s4ki) を読んでもらえば、決して流行りのムーブメントに安直に乗っかたわけではなく、自身のバックグラウンドにも紐付いたアプローチであること、そしてポップ・ミュージックの世界では往々にして起きる距離や言語の壁を超えた同時多発的なアクションであることがわかるはずだ。

EDMやフューチャー・ベース、フェスティバル・トラップ以降の過剰な躁状態を演出するエレクトロニック・ミュージック、そしてダウナーでささくれ立ったグランジ〜オルタナティブ・ロックなど、元より4s4kiの中にあったであろう音楽性が上手く溶け合い始めたのは〈TREKKIE TRAX〉のMasayoshi Iimoriが全曲プロデュースを手がけた『遺影にイェーイ』辺りからだろうか。

今年3月にリリースされたばかりのセルフ・プロデュース作品『UNDEAD CYBORG』ではそこからさらに進化し、レイヴィーで享楽的な音色や、ポップ・ミュージックの構造から逸脱するかのようなカオティックな展開、性急な構成を全面に押し出した作風に。先述のSpotifyによるプレイリスト『hyperpop』にもピックアップされた「Sugar Junky」を始め、ビルドアップからの怒涛の展開に圧倒される「☆メガジョッキ☆」も秀逸だが、同EPにピアノ弾き語り曲「ずっとお前を殺したかった」が収録されている点も見逃せない。彼女の懐の広さと、ソングライティングと歌唱力の高さを感じさせる1曲だ。

自身の誕生日に行った初のワンマン・ライブにて、メジャー・デビューと3ヶ月連続シングルのリリースを発表した4s4ki。その第1弾として、“FAIRY TRAP”と称されるサウンドで注目を集めるオーストラリアのアーティスト、Zheaniを迎えたシングルが「FAIRYTALE」だ。

SNSで繋がり、相思相愛の関係であったことから実現したという今回のコラボでは、4s4kiのキッチュなボーカルとZheaniのゴスな世界観、そしてスクリーモ的なボーカルが融合した強烈なオリジナリティを放つ1曲。プロデュースは再びMasayoshi Iimoriが担当し、重心の低いビートとレイヴィーな上音を基調としながらも、絶妙に軽いスネアの音色などが“hyperpop”的質感を演出している。サウンドは享楽的でありながらも、リリックでは“異世界転生モノ”を皮肉ったかのような陰りのある世界観を歌うあたりも、実に4s4kiらしいポイントだと言えるだろう。

Zheani

4s4kiは今後も〈Monstercat〉からのリリースでも知られるNY拠点のアーティスト／プロデューサー・Puppetとのコラボ作「gemstone」を5月に。LA拠点、名門〈Epitaph Records〉からのリリース歴も有するMikeSkwarkによるプロジェクト、Smrtdeathをフィーチャーした「ALICE」を6月にリリース予定。さらに、夏には待望のニュー・アルバムのリリースも控えているという。

3月には米LGBTQインフルエンサー・Chester LockhartのTwitchイベントへ出演するなど、グローバルな展開も目立つ。また、8月には『FUJI ROCK FESTIVAL’21』への出演も決定。個人的には“hyperpop”に多大な影響を及ぼしているSOPHIEを始め、数々の先鋭的なエレクトロニック〜ベース・ミュージックのアーティストも出演してきた「RED MARQUEE」でのパフォーマンスが観たいところ。刺激的な作品を驚くような速度感で発表し続ける4s4ki。今後も日本のメジャー・シーンに異質な風を送り込んでくれることを願うばかりだ。まずはその手始めとして、夏までの連続リリースに期待したい。

【リリース情報】