恐竜8頭が渋谷に上陸! 噛まれませ
んように…… 大迫力の『DINO SAFA
RI 2021 特別編』ゲネプロレポート

恐竜たちが、2年ぶりに渋谷ヒカリエへと帰ってきた! 4月24日(土)より開催された『DINO SAFARI 2021 特別編(以下、ディノサファリ)』。この記事では、初日に先駆けてお披露目されたゲネプロの様子をレポートする。
※新型コロナウイルス感染症の拡大による政府の緊急事態宣言発令を受けまして、『恐竜ライブ ディノサファリ2021 特別編』は4月26日(月)までの実施、4月28日(水)以降の公演を中止とさせていただくことにしました。
DINO SAFARI(ディノサファリ)とは?
ディノサファリは、“生きた恐竜との出会い”を演出するプロジェクト「DINO-A-LIVE」(ディノアライブ)による、体験型ライブエンターテインメントだ。精巧な恐竜型メカニカルスーツをキャストが操演することで、博物館の骨格標本だけでは捉えきれない、生物としての恐竜像を体感できるというもので、この試みはエデュケーション(教育)とエンターテインメント(娯楽)を組み合わせた、“エデュテインメント”という造語で表現されている。
株式会社ON-ART代表取締役 金丸賀也氏(写真=オフィシャル提供)
ゲネプロ前の挨拶に立った株式会社ON-ARTの金丸賀也社長は、端的に「生き物ってスゴイ、と感じてもらいたいんです」と趣旨を語った。自身が大の恐竜好きとのことで、顔をほころばせながら「恐竜をきっかけに、生き物にもっともっと興味を持ってもらえたら」と言葉を結んだ。
かぶりつく恐竜を、かぶりつきで観る
さて、舞台は3面をスクリーンに囲まれたフラットな空間だ。前方の「芝生シート」はグループごとに距離をとって座れるように工夫されている。芝生風のクッションに座ると視線が低くなり、さらに恐竜を仰ぎ見る格好になるのもいい。
会場風景
まだ開演前だというのに、親子連れグループのチビッコたちから軽い悲鳴が。指差している先には……。
KEEO OUTのテープの向こうに
死んだ恐竜と思しきものが横たわっている。舞台用語でいう「板付き」である。
そして定刻を迎え、夜の闇に包まれる会場内……。てっきり「みなさーん、こんにちはー!」といったMCからスタートするのかと思いきや、恐竜の気配に緊張感が走る。
夜に駆けるユタラプトル
は、速い! 駆けてくるユタラプトルのスピード感にびっくり。さすが、ライブエンターテインメント。動きっぷりがエキシビジョンではなくガチである。
さっそく弱肉強食の世界の洗礼を受ける。響く咀嚼音がなかなかに生々しい
月明かりの下、ユタラプトル2頭のお食事シーンから冒険の幕が開く。「皆さん、静かに……!」見つからないようにそっと観察するよう指示される観客たち。先ほどのチビッコたちは大丈夫だろうか、と心配になってチラッと見てみると、保護者の方につかまりながら固唾を飲んで様子を見守っていた。
皆さんは私たちが守ります!
キャストMC:アンナ役の中村麻里子(写真=オフィシャル提供)
ゲネプロでキャストMCを務めたのは、元AKB48でフリータレントの中村麻里子。ほか、山際海斗、山口森広の計3名がステージごとに入れ替わり、ディノサファリでの一夜をナビゲートしてくれる。
中村は明るくはつらつとしたトークで会場を盛り上げるのはもちろん、専門的な情報を含めたセリフにもしっかり感情を乗せて話してくれるのが印象的だった。内容への深い理解がうかがえる進行に拍手を送りたい。
キャストMCとレンジャーによるクイズのコーナー
イベント中には、会場の一体感を演出する、恐竜クイズのコーナーも用意されていた。つなぎを着ているのは、冒険を各方面でサポートしてくれる「レンジャー」と呼ばれるスタッフたちだ。彼らの緊迫感漂う恐竜の誘導ぶりにも注目だ。
続々と現れる恐竜たち
今回のディノサファリでは、史上最多となる8頭の恐竜たちが登場する。個性豊かな彼らの姿を見てみよう。
なんともワルそうな顔をしているアロサウルス(ごめんね)。眼の上の突起が特徴的だ
アロサウルスは、「DINO-A-LIVE」の恐竜たちの中でも活躍の機会が多い看板俳優的存在だ。モデルも数世代にわたり進化・改良を重ねており、リアルな見た目と派手に立ち回る機動力を併せ持っている。そんなアロサウルスが早速ロックオンしたのが……
ステゴサウルス
今回が初登場となる、ステゴサウルスだ! 植物食の恐竜らしく、近くで見ても穏やかで可愛い。色鮮やかな背中の板状突起や、つぶらな瞳がチャームポイントだ。正面から見ると意外なほど身幅が薄いことがわかるが、それは樹々の間をすり抜けて行動するためだったのだとか。
ステゴサウルスVSアロサウルス
おっとりしたステゴサウルスでも、獰猛なアロサウルス相手に、やるときはやる。ちょっと意外な攻撃方法は、ぜひ次の機会に見て欲しい。
スコミムスは身体が長いので登場がたいへん
月をバックに登場するのは、全長約9mというメンバー中で最大の大きさを誇るスコミムス。星空を愛でる風流なキャラとして本作では描かれている。もちろん創作だが、ひょっとしたら中には本当に月や星が好きな恐竜もいたかもしれない? そう考えると、恐竜という生き物のイメージがさらに豊かに膨らみそうだ。
スコミムス
「DINO-A-LIVE」を開発・運営する株式会社ON-ARTで特筆すべきなのは、恐竜スーツの開発だけではなく、音響・照明・シナリオに至るまで、極力自社で手掛けようという姿勢だ。愛する恐竜たちを総合的に演出し、描くエデュテインメントの姿に近づこうという熱い温度感が伝わってくる。見ていて分かりやすいのは、音へのこだわりだろう。大型恐竜が一歩踏み出すたび、動きに合わせて「ズゥン……」と重々しい効果音が鳴る。シーンが盛り上がっても、音楽は盛り上がりすぎず、代わりに恐竜たちの鳴き声が重なり合いヒートアップする。たとえMCが喋っていようと、恐竜が鳴くべきタイミングでは遠慮なく爆音で鳴く。徹底した恐竜ファーストである。
あっぱれ白亜紀歌舞伎
そしていよいよショーは最大の見どころへ。豪雨の中、地面が揺れるような足音とともに……。出たー! 圧倒的なニュートン数(噛む力)を誇る、肉食恐竜の王者ティラノサウルス! 前足は不要とばかり異様に小さく、対して顎の発達ぶりがメチャクチャである。
生態系の頂点、ティラノサウルス
ティラノサウルスは群れからはぐれたトリケラトプスの子どもに狙いを定め、会場中を追いかけ回す。ああっ、危ない逃げて、もしや冒頭のようなお食事シーン再び……?
「ウチの子に何すんのー!」の決定的瞬間
と、そこへ飛び出してくる親のトリケラトプスに、やんやと沸く会場。「いよっ待ってましたっ!」「たっぷりと!」との心の声が聞こえてきそうだ(声を発してのリアクションはNGなので、興奮は拍手とスマホのシャッターで表現しよう)。もはや歌舞伎である。
こどもトリケラトプスの鳴き声がとにかく可愛い
親トリケラトプスのピンチに、意を決してティラノサウルスに突っ込んでいく、こどもトリケラトプス。この子役(?)がとてもいい演技をしていて、健気な姿にキュンとしてしまった。動物の動きを学び、がっつり“役作り”したキャストがメカニカルスーツ「ディノテクニ」に命を吹き込む様は、この企画の大きな見どころだ。
トリケラトプスの親子
無事にティラノサウルスを撃退し、仲良く身を寄せ合う親子。成体と違って幼体のツノは上向きになっているところを見比べてみてほしい。これは自分よりも大きな敵に向かっていくためなのだという。今さっきの物語と合わせて、心に残る知識となった。
食べて、守って、生きていく
いよいよ夜明けが近づき、冒険もおしまい……というところへ、突如現れるユタラプトル2頭。激しく興奮し、鑑賞者に今にも襲いかからんとする2頭の意識の先には、どうやら豪雨で流されて来たらしいタマゴが。
キャストMCに襲いかかろうとするユタラプトル。絶体絶命のピンチだ
追い詰められるキャストMCの思いは、ユタラプトルに通じるのか。この後に続くクライマックスのシーンはネタバレになるので控えるが、命を奪うだけではない、育むものとしての恐竜の横顔を実感できるだろう。
色々あった夜でした
ディノサファリの長い夜が明けて朝日が昇る。冒頭で死体が横たわっていた場所では、新たな命の象徴であるタマゴが輝く。連綿と続いていく生命の鎖を思わせるような、美しいシーンだ。
充実のショッピング&写真スポット
ショップ風景
ショーエリアの隣にある、大規模な公式グッズショップ『DINOバザール』では、この会場の限定グッズや「DINO-A-LIVE」オリジナル商品、本物の化石などがズラリと並ぶ。
フォトスポット風景
さらに奥には、フォトスポット『ディノサファリのミニ恐竜たち展』も。全長8.0mのティラノサウルス、全長6.4mのアロサウルス、全長4.8mのユタラプトルが展示され、一緒に写真を撮ることができる。ここでは恐竜たちは動かないので、安心してお気に入りの一枚を残せる。
また好きになってしまいました
怯えながらもちょっと噛まれてみたい、複雑な乙女心
ああ、面白かった! と大きな声で言えるライブエンターテインメントだった。しかもそれでいて、生き物のパワフルさや命を繋ぐことへの尊敬の念のようなものは確かに心に残る。恐竜がもし生きて目の前にいたら、こんな感じなのだろうか? いや、もしいたら、観察するより先に我々が胃袋に入ってしまっている可能性が高いから、恐竜が月を見上げたり家族を慈しんでいたりする姿を眺められるのは、ディノサファリならではの贅沢なのかもしれない。

文・写真=小杉美香 写真(一部)=オフィシャル提供

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