清塚信也インタビュー~ディズニー公
式ピアノ・アルバム『BE BRAVE』をリ
リース

時には慰め、時には眠りをサポートし、時には涙を誘い、そして時には勇気づける。清塚信也ディズニー公式ピアノ・アルバム『BE BRAVE』が2021年4月28日(水)に発売された。発売に先駆け行われた清塚信也のオフィシャルインタビューが到着した。
清塚信也「BE BRAVE」限定盤ジャケット (c) Disney

——『BE BRAVE』は清塚さんにとって初のディズニー公式アルバムですが、最初にこの企画のオファーを受けたときは、どのように感じましたか?
私にとっては念願の企画でした。実は以前から、自分のコンサートでたびたびディズニーの曲を演奏していたんです。それが公式アルバムにつながるとは思っていなかったので、うれしかったです。
——名曲ぞろいのディズニー楽曲のなかから、どのような基準で選曲したのですか?
まず、自分のオリジナリティをどうやって出すか。私もディズニーのファンの1人ですが、ファンからすれば、原曲の世界観は壊して欲しくない。かといって、どこにでもありそうなものにはしたくない。そこが難しいところでしたね。そのなかで、“自分らしさ”と“ピアノらしさ”、ピアノ・アレンジで魅力を発揮できる曲はどれだろうかと考えました。また、アルバムにメッセージ性を持たせたかったので、今回は“BE BRAVE”をテーマに、勇気を与え、鼓舞してくれるような曲を選びました。
——『BE BRAVE』という言葉に込めた思いは?
コロナ禍の新生活で、孤独やストレスを抱えている人も多いなか、音楽でみなさんを後押しし、勇気を出してもらえたら……という思いで、『BE BRAVE』というアルバムタイトルを付けました。「がんばれ」という言葉をかけても、かえってプレッシャーになったりしますよね。ですから歌詞のないピアノの音楽で、言葉の代わりに「大丈夫だよ」とそっと伝えたい。それぞれの人がかけて欲しい言葉を、音楽のなかに見つけてもらえたらいいなと思います。
——10曲の収録曲のうち4曲がアラン・メンケンの作品です。日本でも絶大な人気を誇る作曲家ですが、彼が作る音楽の魅力はどこにあると思いますか?
どの楽曲もエレガントで、シンプルで口ずさみやすい。それだけでなく、音楽が作品やシーンやキャラクターにしっかり寄り添っているところがすごいなと思いました。しかもメンケンは、音楽のロジック(理論)をきちんと押さえているんです。
——というと?
たとえば、映画『ヘラクレス』の「ゴー・ザ・ディスタンス」には、クラシック音楽のロジックが使われています。クラシック音楽には、神々しい宗教的な雰囲気を出すのに使われる和音の並べ方があるんですよ。それを、メンケンが「ゴー・ザ・ディスタンス」に取り入れているんです。『ヘラクレス』はオリンポスの神々の物語なので、音楽的にもちゃんと神々しさが付加されているのがステキですよね。私もこの曲に関しては、クラシック・アレンジをしました。
清塚信也
——アルバム収録曲のなかで、とくにアレンジにこだわった曲を教えてください。
「コンパス・オブ・ユア・ハート」は、東京ディズニーシー®(®は下付け)のアトラクション「シンドバッド・ストーリーブック・ヴォヤッジ」の曲ですが、これを聴くためにパークに行きたくなるほど大好きな曲です。原曲が本当にすばらしいので、余計なアレンジをせず、「この曲いいよね!」という気持ちを前面に押し出しました。あとは曲の持つ壮大さと、波乱に満ちた冒険のワクワク感を、ところどころにミステリアスな音を散りばめながら表現しています。アトラクション自体もそうですが、音にもアラビアの雰囲気があるので、それを活かしつつアレンジしました。
『ピーター・パン』の「きみもとべるよ!」は、意外なアレンジだと思われる方がいるかもしれません。子どもたちが空を飛ぶシーンの曲で、映画のなかではテンポよく描かれていますが、私は“ネバーランド”や“妖精の粉”といったファンタジーの部分を助長して、表現してみました。テンポよく弾くと面白くて楽しい曲ですが、ファンタジックな弾き方をすると、とても幻想的で繊細な曲になるんですよ。
「リメンバー・ミー」は、実際にアレンジしてみて、曲の持つ美しさと切なさの融合に気づきました。音楽には、大きく分けて明るい和音と暗い和音の2種類がありますが、この曲はそれが交互に使われているんです。美しくなったり、切なくなったりをくり返しながら、その上にメロディがのっているので、とても複雑な気分になる。それがこの曲独特の魅力だと思います。それでいてラテンミュージックの力強さもあり、悲しいことも全て消化してくれるようなパワーを感じました。
『ピノキオ』の「星に願いを」は、言わずと知れたスタンダードナンバー。これを入れるからには、それなりのアレンジをしないと。オリジナリティを出したいけれど、ディズニーの世界観を守るためにも、あまり過激なアレンジはできないので、和音の使い方にこだわりました。玉虫色のように表情を変える繊細な和音になっているので、ぜひ聴いてみてください。
『パイレーツ・オブ・カリビアン』の「彼こそが海賊」も、大好きな曲のひとつ。今回は盟友である高井羅人と一緒に、2台のピアノで演奏しています。ピアノは弦楽器であると同時に打楽器でもあるので、この曲では打楽器的な要素を強く出しました。『パイレーツ・オブ・カリビアン』のスピード感や混沌とした雰囲気を、2台のピアノで演奏することで表現できたのではないかと思います。
——共演相手に高井羅人さんを選んだ理由は?
長年つき合いのある相棒ですし、『BE BRAVE』には“仲間との絆”というテーマもあるんです。私にとって、ピアノ仲間といえば高井羅人。仲間と一緒に作り上げたいという思いがあったので、彼に参加してもらいました。
——今作のジャケットには、ソファーでくつろぎながら音楽を聞くミッキーマウスのイラストが使われています。清塚さんがディレクションされたそうですが、このジャケットには、どんな思いが込められているのですか?
こんなふうに音楽を楽しんで欲しい、という願いを込めました。何かの合間に、5分でもいいからソファーに寝転んで、このアルバムを聴いてもらえたら、ひとときディズニーの世界観に浸ることができると思います。それにピアノは、そっと寄り添うのが得意な楽器。オーケストラなどに比べて楽に聴けるので、このイラストのミッキーのように、リラックスしながらお洒落な時間を過ごしてもらえたらと思っています。
——ディズニー音楽(全般)の魅力は?
単なる劇伴ではないところですね。一般的なドラマや映画では、音楽がセリフや物語に干渉しないようにするのですが、ディズニーの音楽はつねに主役であり、同時に劇伴の役割も果たしています。ディズニーだからこそできることで、音楽家にとっても憧れです。
——ファンの方へメッセージをお願いします。
ディズニーが好きな方も、ピアノが好きな方も、満足できるアルバムになっていると思います。ぜひ生活の一部にしていただけたらうれしいです。
清塚信也「BE BRAVE」通常盤ジャケット (c) Disney
インタビュー:浮田久子
スタイリスト:JOE [JOE TOKYO/TRAVOLTA]
ヘアメイク:Atsushi Sasaki [GLUECHU]

【プロフィール】
清塚信也(キヨヅカシンヤ)
1982年生まれ、東京都出身のピアニスト。5歳よりクラシックピアノの英才教育を受け、中村紘子、加藤伸佳、セルゲイ・ドレンスキーに師事。桐朋女子高等学校音楽科を首席で卒業後、モスクワ音楽院に留学する。学生時代には国内外のコンクールで数々の賞を受賞。テレビドラマ「のだめカンタービレ」、映画「神童」では吹き替え演奏を担当して脚光を浴びる。2013年には映画「さよならドビュッシー」で俳優デビュー。2015年はTBS系ドラマ「コウノドリ」のピアノテーマおよび監修を担当した。このほかテレビ朝日系「関ジャム 完全燃SHOW」やフジテレビ系「人志松本のすべらない話」といったバラエティ番組に出演するなどマルチに活躍。2021年4月にNHK Eテレでスタートした音楽番組「クラシックTV」の司会を務めるほか、5月9日まで上演中のミュージカル「ゴヤ -GOYA-」の作曲と音楽監督を担当している。

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