「ミュージカルクリエイタープロジェ
クト」より新作ミュージカルが誕生 
鈴木瑛美子、加藤和樹らキャスト総出
のレコーディング現場をレポート

ホリプロ発の企画「ミュージカルクリエイタープロジェクト」第一弾が、佳境を迎えた。
これからの日本のミュージカル界になくてはならない、才能溢れるクリエイターを発掘するために生まれた本プロジェクト。2020年6月から脚本・音楽部門でそれぞれ作品を募り、半年以上かけてSTEP3までの審査が終了した。各部門1名ずつ選ばれたクリエイターは、2021年3月31日(水)に公開のオリジナル作品の制作に携わることになった。

『PARTY』収録風景

脚本部門では、最終審査を勝ち抜いた横山清崇の脚本・詞を元に『PARTY』と名付けられた新作ミュージカルのパイロット版を制作。将来的には劇場で上演することも視野に入れ、今回は物語全編をレコーディングする形となった。音楽はブロードウェイの作曲家ジェイソン・ハウランド、演出は元吉庸泰、音楽監督は竹内聡が務める。キャストは鈴木瑛美子、加藤和樹伊礼彼方、石川 禅、樋口麻美、廣瀬友祐、May’ n、小野田龍之介、髙橋颯、東山光明、五十嵐可絵、山﨑玲奈ら、個性豊かな12名の役者陣が顔を揃えた。
『PARTY』
2021年3月某日、『PARTY』のレコーディング現場にZoom越しで参加することができた。最初から最後までノンストップで行われた白熱のレコーディングは、まるで1本のミュージカル作品を観たような高揚感があった。
広いスタジオの録音ブースに、12名分のマイクと椅子が2列で等間隔に配置されていた。前列左からMay’ n、伊礼、加藤、鈴木、石川、樋口、後列左から髙橋、廣瀬、山﨑、五十嵐、小野田、東山の姿が確認できる。
『PARTY』収録風景

本番収録開始の約1時間前、スタジオでは念入りな音チェックが行われていた。セリフの掛け合いから曲へ入るタイミングなどを繰り返し確認している。どうやら歌唱部分のみならず、作中の全てのセリフも含めてレコーディングされるようだ。鈴木がある曲の歌の入り方に心配そうな表情を見せる場面もあったが、周りのキャストたちが「本番になってしまえば大丈夫だよ」と明るく励ましていた。決してピリピリとしたムードではなく、これから始まる新作の誕生にワクワクしている様子がZoom越しでも伝わってくる。
加藤和樹
鈴木瑛美子
音チェック終了後、短い休憩を挟んでから本番のレコーディングとなった。本番直前には台本確認、発声練習、ストレッチなど、各々自由に過ごしてリラックスしている様子だ。本番開始時刻にスタッフが「ではみなさん、通しで参りましょう!」と声を掛けると、録音ブースにいるキャスト陣は拍手で応えた。
『PARTY』収録風景

(上段左)樋口麻美、(下段左)May’n、(右)鈴木瑛美子
「では、開演時刻となりました。ニューヨークの雑踏のSEが入ります。ホテルのエントランスを入り、エレベーターに乗り込みます。エレベーターが上がっていきます。到着音。オープン」
舞台は21世紀のニューヨーク。ビジネスの成功者たちはみな着飾り、夜な夜な華やかなパーティへと出かけていく。主人公のユリ(鈴木)もその一人。彼女はニューヨークの投資銀行で働くキャリアウーマンで高い年収を手にしているが、心が満たされない日々を送っていた。ユリがとあるパーティに参加したある晩、パーティ会場で予期せぬ出来事が起こるーー
物語を導いてくれるのは、加藤演じるドクトル・アンダーウッド。“マエストロ・オブ・ザ・パーティ”と呼ばれる謎めいた人物で、ユリに本来のパーティのあるべき姿を説く。加藤の落ち着いた語り口は安定感があり、聴く者を物語の世界へと誘ってくれる。鈴木が演じるユリは、気持ちの振れ幅が大きい役どころ。次々と起こる出来事に翻弄されつつも、パーティで出会う人々との出会いを通して変化していく。その過程を、持ち前のパワフルな歌唱力で見事に表現していた。少女時代のユリを演じたのは「ホリプロタレントスカウトキャラバン」でグランプリを受賞した山﨑。錚々たるメンバーに囲まれながらも、臆せず堂々としたパフォーマンスを披露していた。
(左から)加藤和樹、鈴木瑛美子
ドクトルに連れられてユリが足を踏み入れた屋敷にいたのは、女主人のグランマ(五十嵐)、執事のロバート(伊礼)、庭師のエリック(髙橋)だ。五十嵐は、誰からも慕われ愛されるグランマを慈愛に満ちた歌声で表現していた。伊礼は執事役を色気のある低音ヴォイスで好演。本来セリフがない場面で突如立ち上がって笑い声を加えるなど、サービス精神もたっぷりだ。髙橋演じるエリックはどこか憂いのある役どころ。物語後半、切なくも芯のある歌声を響かせていた。

伊礼彼方
(左から)髙橋颯、鈴木瑛美子
ユリと同じく、この屋敷に招かれたパーティ客たちを紹介しよう。石川演じるボス・ジャックと樋口演じるマダム・ランコムの夫婦は、抜群のコンビネーションを見せてくれた。レコーディングとはいえ身振り手振りをしっかりつけ、二人で目配せしながら歌い合う姿は実に微笑ましい。映画スターのオーランドを演じる廣瀬と歌手のブリトニーを演じるMay’ nのコンビも負けていない。世間から注目される芸能人ならではの苦悩を、二人でユーモアたっぷりに歌い上げていた。さらに、人気ユーチューバーMr.D・Dをノリノリで演じる小野田や、クールなFBI捜査官トムを演じる東山など、個性豊かな登場人物がパーティを盛り上げてくれる。
『PARTY』収録風景
台本の最後のセリフを言い終えた直後、スタジオ内は拍手の音と歓喜の声に包まれた。その場にいたキャストとスタッフの笑顔が、この作品の成功を物語っているようでもあった。

『PARTY』は、2021年3月31日(水)よりSwipeVideoで、またカット割り編集版が4月23日(金)よりYoutubeで視聴可能だ。今回はパイロット版として作品が公開されたが、近い将来、日本発の新作ミュージカルとして劇場で上演される日を楽しみに待ちたい。
『PARTY』出演者集合写真
取材・文=松村 蘭(らんねえ)

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