表も裏も大忙し! ミュージカル『ダ
ブル・トラブル』原田優一&太田基裕
による<ブロードウェイチーム>稽古
場レポート

ボブ&ジムのウォルトン兄弟によって書かれた抱腹絶倒のミュージカルコメディ、ミュージカル『ダブル・トラブル』。出演者2名とピアノだけで、兄弟や映画会社の社長、秘書、司会者、スター女優……と約10名を演じ分ける作品だ。
2021年5月に上演される、この日本初上陸の作品に挑むのは、福田悠太(ふぉ〜ゆ〜)&辰巳雄大(ふぉ〜ゆ〜)の<ハリウッドチーム>と原田優一&太田基裕の<ブロードウェイチーム>。異なる劇場で同じ作品を同時期に上演するという意欲的なダブルチーム制となっている。
今回は、ブロードウェイチームの稽古場を取材した。

<あらすじ>
作詞家のボビー・マーティン、作曲家のジミー・マーティンという2人の兄弟。
彼らはミュージカル映画の曲を書くという大チャンスを掴み、ブロードウェイからハリウッドへとやってきた。
しかし、曲作りのために与えられた時間はほんの数時間。
しかも、作った楽曲を気に入ってもらえなければ即クビ!
2人の仕事場であるリハーサルスタジオのバンガローには、社長秘書のミリー、年老いた音響技師ビックス、インターンのシーモア、エージェントのクイックリー、セクシーな美女レベッカなど個性豊かな人物たちが入れ替わり立ち替わりやってくる。
ときに協力し、ときに喧嘩して、仕事に恋に奔走するマーティン兄弟。
2人は無事に成功をおさめることができるのか...!?
稽古場で行われていたのは、二幕冒頭のとあるシーン。
まず目を引くのは、ヴィンテージを思わせるモダンなセットと小物、作中で登場する多彩な小道具だ。ハリウッドらしさを演出するゴージャスなものからキャラクターたちの個性を引き立てるアイテム、ストーリーのキーになるものまで様々なものが散りばめられており、お洒落な雰囲気。まだ衣装は一部しかついていなかったが、帽子やジャケットもアメリカンレトロな印象でかわいらしい。劇場では、ステージ上に雑然としながらも洗練されたハリウッドのスタジオが現れるだろうことが予想され、舞台美術やビジュアルにも期待が高まる。
物語の主軸となるマーティン兄弟に加え、次々に現れる登場人物たちを2人だけで演じるこの作品。セリフが多い上にキャラクターの入れ替わりも早く、シーンが目まぐるしく変わるため、ジェットコースターのようなスピード感だ。さらに本作はミュージカル。各々が何役もの演技をこなすとともにキャラクターに合わせた歌唱をしなければならず、台本を読むだけで目が回りそうになる。
原田優一
しかし、そこは子役時代から数々の作品に出演してきた原田と、幅広いジャンルの作品で活躍する太田の実力派コンビ。個性的なハリウッドの人々に振り回される兄弟、堂々としたエージェントやキュートな秘書、空気の読めない助手、クセの強い監督、兄弟を翻弄する恋の相手etc……全く違う個性と特徴を持つ人物を、表情や声、ちょっとした動きで見事に演じ分ける。
もちろん、演技として慌ただしく見せていたり、メタな台詞で立ち回りの忙しさをアピールしていたりはする。だが、「ここはこうした方がいいんじゃないですか?」「このシーンはこういう流れで移動するから……」と主体的に動く姿はスマートで、焦りや必死さは見受けられない。まだ稽古の段階ながら貫禄が感じられた。2人の丁寧な芝居のおかげで、スピード感がありながらも置いてけぼりにされることなく気楽に観ることができるはずだ。
重要になるのがキャストとピアノ、裏方として支えるスタッフのチームワーク。ちょっとしたズレが全体に響くこともあり、演出のウォーリー木下やスタッフとともに立ち位置や動き、小物の使い方、台詞やSEのタイミングなどを細かくチェックし、繊細・丁寧に練り上げていく。ソーシャルディスタンスに充分注意を払いつつ、2人芝居のこじんまりしたイメージからは想像できないほどの多くのスタッフがセットの裏や袖に控え、スムーズな入れ替わりや演出上の工夫を手際よくサポートしている様子が印象的だった。それでいて、実際にシーンを通すと、緻密な計算やキャスト・裏方の頑張りを感じさせないから驚いてしまう。台本かアドリブか分からなくなるほど自然でのびのびとした演技や絶妙な間の取り方は、さすがとしか言いようがない。
太田基裕
また、小道具による視線誘導、扉やガラスの活用により、キャラクターが瞬時に入れ替わっても違和感を抱かせない演出が楽しい。あちこちからキャラクターが登場するため、キャストが2人しかいないのを忘れそうになるほどだ。
あるアイテムを使って原田が繰り広げたコミカルな芝居では、稽古場が笑いの渦に包まれる場面も。真正面で原田の芝居を見た太田が「マジでやばいって(笑)!(ビジュアルも演技も)ずるい!」と苦情を出し、演じてた本人も笑い出してしまうほどの熱演に、スタッフからも拍手が起きていた。
そして、言葉遊びや英語のイントネーションによって生まれる面白さ、コミカルな動き、タップなど、原作に見られる魅力は日本版でも健在。コントのような掛け合い、間の外し方、所々に見られるシュールでブラックな笑いなど、海外発のコメディらしい軽妙でメリハリのついたやり取りがばっちり決まると、スタッフから思わず笑い声が。原田と太田も、時折苦戦する様子を見せつつイキイキと楽しそうに演じていた。
ミュージカル『ダブル・トラブル』<ブロードウェイチーム>
今回の取材においてはタップのシーンは見られなかったが、隣の稽古場からは福田悠太・辰巳雄大によるハリウッドチームがタップを練習する軽やかな音や別シーンの台詞が聞こえてきた。こちらも音だけで分かるほど熱量たっぷり。ブロードウェイチームとはまた違う個性が感じられ、ワクワクが掻き立てられる。スタッフを含めたチーム一丸となって挑む様子から、本番では素晴らしい作品を見られるだろうという確信が得られ、両チームへの期待がグッと高まる稽古場取材だった。
笑いあり、兄弟愛あり、ロマンスあり、意外な展開ありと盛り沢山で、各キャストの様々な演技を存分に堪能できる本作。たった2人だからこそ生まれる化学反応や、たくさんのキャラクターを演じ分ける中で見える役者としての新たな一面もあるはずだ。抱腹絶倒のコメディと両チームの奮闘を、ぜひその目で見届けてほしい。
取材・文=吉田沙奈 撮影=岡千里

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