「これが新しいI ROCKSのはじまりで
す」――2年分の想いを込めたLACCO
TOWER主催フェス「I ROCKS 20&21」
全13組を完全レポート!

LACCO TOWERが地元群馬で恒例の主催ライブ「I ROCKS 20&21」を開催した。
新型コロナの影響により、開催を断念した2020年の分も取り戻すべく、今年は4月9、10、11日の前半戦と、5月1、2日の後半戦で、トータル5日間開催という史上初の試みだ。例年であれば、会場には地元の名産品を楽しめる飲食ブースでお客さんを出迎えるが、今年は残念ながら、取りやめ。その代わり、終演後や、感染対策を施した専用のスペースで食べることのできるお弁当が用意されたりと、いまできるかたちでI ROCKSを楽しめる工夫が施されていた。また、会場内では、密を避けるための空席の確保、移動時の動線の整理、転換を兼ねた45分間の換気タイムなど、コロナ対策も徹底。いま多くの音楽イベントが自粛を与儀なくされるなか、それでも開催するからには、絶対にこの現場からクラスターを出してはいけない。大きな責任を背負って開催された7度目のI ROCKS前半戦は、この時代のエンターテイメントの在り方に新たな可能性を見出だし、まだまだロックバンドは戦い続けることができるという大きな確信を得る3日間になった。
以下のテキストでは、4月9、10、11日におこなわれた前半戦のライブをレポートする。
DAY 1- 4月8日(金)-新しいI ROCKSのはじまりを伝えた、初日LACCO TOWERワンマン
LACCO TOWER
「2年ぶりに言わせてください。おかえりなさい。今日までよくがんばりました。俺も、みんなも。よっしゃ、楽しもう!」。塩﨑啓示(Ba)の開会宣言には例年以上の重みがあった。今年のI ROCKSの幕開けは、LACCO TOWERのワンマンライブだ。「星空」を基調にしたSEにメンバーがステージに登場。I ROCKSの文字を刻んだのぼりが両サイドに揺れる。この場所に集まったお客さんを盛大に出迎えるような「喝采」を皮切りに、続く「灯源」ではイントロと同時に細川大介(Gt)と塩﨑が勢いよくステージの際まで飛び出した。重田雅俊(Dr)が立ち上がり、激しくも怪しげな世界が花開いた「純情狂騒曲」から、真一ジェット(Key)の艶やかなピアノソロからつないだ「葉桜」へ。静寂のなか秒針のように淡々とリズムを刻んだ「永遠」では、塩﨑のベースが歌うようにメロディに寄り添った。その1曲1曲で細川のギターが華やかに色をつける。全員がステージ上の主役をはれる唯一無二の個性を持ち、その総合力で作り上げる五重奏。その真ん中に立つ松川ケイスケ(Vo)は大きな身振りで歌を届けていく。前半のハイライトは、コロナ禍に感じた想いを綴ったという「無戦無敗」だった。“負けるのも忘れて 戦え”と、疾走するバンドサウンドのなかで歌い上げる勇ましい歌には、いまI ROCKS開催に踏み切ったバンドの強い想いがストレートに表れていた。
LACCO TOWER
 10分間の換気タイムを挟んだ後半戦。声を出せないライブでも、お客さんと一緒にひとつの空間を作り上げることができることを証明するようにライブは進んだ。普段はシンガロングを起こす「鼓動」は大きく腕を振る動きに変え、「共鳴」では全力のハンドクラップを要求する。「できないことを悔しがるよりも、できることを探していきたいと思います」と、松川。ライブハウスの新しいルールのもとでも、お客さん参加型のライブはできる。それがLACCO TOWERが出した答えだった。最後のMCでは、客席を見渡した松川が、2014年に初めて群馬音楽センターでI ROCKSを開催したことを思い出した、と語りかけた。「空席だらけだった。今日と同じです。そのときに、“これがいまのI ROCKSです。ここからはじまります”と言いました。当たり前が当たり前じゃなくなって、ライブに行くことが悪になって、新しい普通が生まれて。これがいまのI ROCKSです。これがはじまりです。いま、あのときと同じだと思えたら、すごく希望が湧いてきました。ここから上げていけばいいんやから」と。それは、この困難な時代にも、決してギブアップだけはしないというLACCO TOWERの決意のような言葉だった。そして、ラストソング「若者」へ。美しい光が降り注ぐなか、両手で強くマイクを握りしめ、渾身の歌を届けた松川は、最後に「I ROCKSをI ROCKSでいさせてくれて、ありがとう」と、感謝を伝えた。
DAY 2 - 4月9日(土)-地元・群馬県沼田市の4ピースバンドThe Gentle Flower.が2日目をキックオフ
The Gentle Flower.
「2年分の想いを胸に爆音を鳴らしにきました!」。金子大伸(Vo/Gt)の気合い十分の絶叫からスタートした2日目のトップバッターは、地元・群県沼田市の4ピースバンド、The Gentle Flower.だ。ここ数年のI ROCKSは、LACCO TOWERが推す地元の若手バンドが先陣を切る。生きるとは何か?を自問自答する「ALIVE」を筆頭に、彼らが鳴らす疾走感あふれるバンドサウンドは、音源で聴く以上に骨太だ。「“開催”ということの重みを知れた1年でした。俺からも言わせてください。ただいま!……ああ、泣きそう」と、MCでは感極まったように言葉を詰まらせた金子。群馬のバンドとして、I ROCKSに出ることは目標であり、「ここが新しいスタート地点です」と、決意を口にする。全6曲。最後に披露した「また明日」には、“ロックスターになってさ 君のところに迎えにゆくから”というフレーズがあった。上手で激しいプレイを見せていた森下祥伍(Gt)のギターの弦が切れたまま、がむしゃらに完走したこの日のステージは、これから続いてゆくであろうThe Gentle Flower.の“ロックスター”への物語の、大切な1ページとして刻まれるはずだ。
■泣き笑いのDJタイムで会場を踊らせた、ガッツいわせ with スベリー・マーキュリー
ガッツいわせ with スベリー・マーキュリー
続いては、I ROCKS名物、ガッツいわせ with スベリー・マーキュリーのDJタイムだ。「外に出たら忘れちゃうような時間かもしれないけど、楽しんでいきましょう!」。群馬在住芸人ガッツいわせの言葉を合図に、嵐の「Troublemaker」が会場に流れはじまると、クイーンのフレディ・マーキュリーに扮したスベリー杉田ことスベリー・マーキュリーがステージに登場。ポップな振り付けで会場を一体にする。BRADIO「スパイシーマドンナ」から、パスピエ「わたし開花したわ」、PENGUIN RESEARCH「千載一遇きたりて好機」へ。いつもはステージを降り、フロアを暴れまわる芸風だが、いまは難しい。そのぶんステージの上で全開のパフォーマンスを見せる。終盤、サンボマスター「ロックンロール イズ ノット デッド」の曲中には、復活を遂げたI ROCKSの勇気を讃えるように「I ROCKS イズ ノット デッド」の文字を掲げたスベリー。「よくみなさん生きて帰ってきました。昨年はライブハウスも、ロックバンドも、我々芸人も苦しい1年でした。また、この場所に帰ってこられるように生きていこうぜ!」といういわせの言葉には不覚にも胸が熱くなった。最後は、井上陽水風のサングラスをかけた重田を迎えたLACCO TOWER「一夜」でフィニッシュ。いつになくエモい、泣き笑いのDJステージだった。
WOMCADOLE、荒ぶる激情と惜しみない愛をその心へ
WOMCADOLE
サウンドチェック中から、「欲張りで申し訳ないんですけど、あらかじめ立っといてもらっていいですか?」と、樋口侑希(Vo/Gt)が客席に呼びかけた。初出演のWOMCADOLEだ。開演前に「ライター」を演奏したあと、そのまま本番へとなだれ込む。「俺たちから最大級の愛とロックを込めて。つまり、愛ロックスをやらせてもらいます」。イベント名に想いを寄せた樋口の粋な言い回しをあいさつ代わりに、「応答セヨ」からライブはスタート。両翼のマツムラユウスケ(Gt/Cho) と黒野滉大(Ba)がいきなりステージ前方へと飛び出し、安田吉希(Dr)が金髪を振り乱して、力いっぱいビートを叩きつける。巻き舌気味に言葉をぶつける樋口のボーカルには、対峙するお客さんの心に自分たちの歌をぶちこまんとする強い意志が宿っている。「僕らは旅の途中。その途中に帰れる家があることを誇りに思います」と、アカペラで歌い出したのは新曲「ペングイン」。メジャーデビューを果たして以降も、地元・滋賀を大切に活動する彼らにとって、同じように故郷に居場所を守り続けるLACCO TOWERの存在は、ひとつの理想でもあるのかもしれない。樋口がマイクスタンドをステージ際まで移動して歌った「綴り」から「アルク」まで。その荒ぶるステージには激情だけでなく、惜しみない愛が溢れていた。
■I ROCKSの歴史と共に歩んできたIvy to Fraudulent Game 「負ける気がしねえ」
Ivy to Fraudulent Game
「俺らの街へようこそ」。I ROCKS皆勤賞となるIvy to Fraudulent Gameは、寺口宣明 (Gt/Vo)の第一声ではじまった。1曲目は「旅人」。大島知起(Gt)とカワイリョウタロウ(Ba)がやや体を中央に向け、スタジオセッションのように奏でられた演奏。迷いを断ち切り、光のほうへと歩みを進めるようなその歌は、“まだ行けるさ”と繰り返す。「超幸せ。でも、言いたいことは幸せだけじゃない」。寺口の言葉のとおり、この日のアイビーは、不安も、怒りも、悔しさも、すべての感情をぶつけるステージ。「ラッコよりもかっこいいライブをしようと思ってきました。あえて言う、負ける気がしねえ!」。寺口の宣戦布告で突入した「青写真」の爆発力はすさまじかった。思えば、この日のI ROCKSは、2年ぶりの開催ということもあり、あたたかな「ただいま」と「おかえり」が飛び交う、例年以上にアットホームな空間ができあがっていた。そんななか、唯一同郷の先輩LACCO TOWERに(リスペクトを込めて)真っ向勝負を挑んだアイビーらしい姿勢は、とても健全なロックバンドの下剋上精神を思い出させてくれる瞬間でもあった。最後に、静かな熱を湛え、絶望と希望を歌い上げた「青二才」で聴かせた寺口のボーカルは圧巻。やはりI ROCKSにアイビーは欠かせない存在だ。
■「遊ぼうや」を合言葉に、ブレずにエールソングを届けたRhythmic Toy World
Rhythmic Toy World
内田直孝(Vo/Gt)が「フレフレ」を歌い出し、メンバーが高く腕を上げると、客席のお客さんも一斉に手を突き上げた。「ただいま、I ROCKS」。2015年以降、6回目の出演となるRhythmic Toy Worldが今年もI ROCKSに帰ってきた。5月に磯村貴宏(Dr)の脱退が決定している彼らは、現体制によるライブは残りわずかだ。そんな一抹の寂しさなど吹き飛ばすように、「ライブハウス」に突入する直前、内田が磯村に「重田さんの“今日は”ってやつやって」と無茶ぶりをする場面も。磯村が渾身の「今日は今日しかねえからな!」で会場を湧かせる。その瞬間の思いつきで楽しいを追い求める彼らのライブは「遊ぼうや」が合言葉だ。
Rhythmic Toy World
「挑戦するって大事なことだと、LACCO TOWERの背中を見て、学ばせてもらっています」。そう伝えた内田が伸びやかな歌唱で愛と感謝を歌い上げたバラード「犀日」から、激しく曲調を変えながら短いソロセッションを挟む「かくれんぼ」へ。声を出せず、マスクで顔の半分が隠れる状況であっても、彼らは客席のお客さんの表情をしっかり確認しながら、歌い、演奏をしていた。ラストは“がんばれ 生きる人”とストレートに歌う「僕の声」。同じ時代を生きる仲間と肩を組み、一緒に歩みを進めるようなエールソングはRhythmic Toy Worldの真骨頂だ。ライブハウスの役割を理解し、それを全力で引き受ける彼らの姿勢はいまも1ミリもブレていなかった。
■トリ前、貫禄のステージで生きている証を刻んだTHE BACK HORN
THE BACK HORN
ここまで若いバンドの出演が続いた2日目のI ROCKSだったが、トリ前のステージに登場したのは、LACCO TOWERが熱いリスペクトを寄せ続けるTHE BACK HORNだ。1曲目は「心臓が止まるまでは」。松田晋二(Dr)が叩き出す、脈打つような重々しいリズムを背負い、前のめりでマイクを握る山田将司(Vo)。“全身全霊生きたがって叫ぼうぜ”と投げかける歌は、まさにバンドの存在意義そのものを表すようだった。メロディを食う勢いで菅波栄純 (Gt)のギターが暴れた「シンフォニア」に続き、優しいミディアムバラード「ソーダ水の泡沫」では、薄明りのなか、岡峰光舟(Ba)のベースのフレットに仕込んだ赤いLEDが光った。
THE BACK HORN
MCでは、「LACCO TOWERが見せてくれる姿勢がバンドマンとして勇気づけられます」と、山田。その言葉には、先輩後輩という関係を越えて、LACCO TOWERに対するひとりの人間としての敬意が滲む。ひと際大きなリアクションが湧いた「コバルトブルー」から「刃」へ。メンバーだけのシンガロングに合わせて、客席からは力強くこぶしが突きあがる。ステージの上と下とで、人間対人間が本気でぶつかり合うような交感がTHE BACK HORNのライブ。そこには命の炎が熱く燃え上がっていた。
■「やってよかった」ひとつの手応えを胸に、LACCO TOWERが2日目を締めくくる
LACCO TOWER
 「我々の友だちはいかがでしたか?最高でしょ?」(松川)。全6組がつないだバトンを受け取った大トリのLACCO TOWERは、SEも(この日は「狂想序曲」だった)、衣装も、1日目とはガラリと変えてきた。セットリストは3日間とおしてかぶりは1曲もない。重田が叩くドラムのなかで、松川が「メンバーが生まれ育った故郷、伊勢崎に帰ってきました!」と叫んだ「未来前夜」から、細川がひざでスライディングを決めた「林檎」では、塩﨑もステージの上手から下手へと全力ダッシュ。
LACCO TOWER
自身の企画イベントで仲間たちが最高のライブを繰り広げたあとだからこそ、昨日のワンマンとはまた違う熱の入り方をしているのが伝わってくる。性急で緻密な、LACCO TOWERの真骨頂とも言えるアンサンブルが炸裂した「非幸福論」では、“僕ら暗闇にいるからこそ知る光”というフレーズで、パッとステージの照明が明るくなった。そんな演出にも胸が高鳴る。MCでは、「今日は完璧じゃなくてもいい。ものごとが変わったら、愛し方を変えればいい」と、松川。さらに、「やってよかった。今日は来てくれてありがとう」と感謝を伝え、本編のラストを飾ったのは「相思相逢」。軽やかなドラムと瑞々しいピアノにのせて、“誰か”と進む明日を晴れやかに思うその歌は、仲間とお客さんの存在によって、自分たちの決断が間違ってなかったことを確信できた1日の終わりにとてもふさわしい歌だった。
LACCO TOWER
Day 3 -4月11日(日)-群馬県・渋川市出身のoldflame、情感豊かなラブソングで3日目を幕開け
oldflame
折り返し地点となったこの日も、最初のアクトが出演する前に、塩﨑による開会宣言からはじまった。「どうにか成功させて、次につなげればと思います。みんなで一緒に作っていきましょう」。その言葉に賛同するように会場は大きな拍手で包まれる。この日、地元の若手バンド枠でオープニングを飾ったのは群馬県渋川市出身のスリーピースバンドoldflameだ。「この30分で2年間の空白を一緒に埋めていこう」と、狩野太祐(Vo/Gt)が意気込みを伝える。歌のみではじまり、ドラマチックに加わるリズム隊が疾走感を加速させた「春になれば」、狩野の熱を帯びたボーカルが胸を打つバラード曲「呼吸が止まる」へ。身を切るようなラブソングの数々を情感豊かに届けていく。MCでは、「I ROCKSは世界でいちばん大好きなフェスです」「(LACCO TOWERは)プレッシャーしかかけてこない。“やれよ”しか言いません(笑)。そんな先輩が大好きです!」と、地元の先輩バンドに対する想いを嬉しそうに語った狩野。「俺らから最高の応援歌を」と、食い気味に歌い出した「切れ端から」に続けて、ポップなメロディが弾けたラストソング「グッバイ、グッナイ」まで、全5曲。ロックバンドだけが起こすことのできる奇跡を全力で信じるそのステージは、眩しいほどにフレッシュだった。
■初出演のLAMP IN TERRENが届けた、自分自身を愛するための剥き出しの歌
LAMP IN TERREN
続いても、初登場。サウンドチェック中に「New Clothes」「地球儀」、さらに「オーバーフロー」を披露して、本番前から会場を温めたLAMP IN TERRENだ。4人が向き合い、「ウォイ!」と気合いを込めると、「BABY STEP」からライブがはじまった。ゆったりと、だが確実に歩みを進めるように刻む川口大喜(Dr)の力強いドラム。自分を好きになった瞬間こそ偉大な一歩である。そんな想いを込めた歌の一部を、松本大(Vo)はマイクを通さずに生声で歌った。大屋真太郎のギター、中原健仁のベースが重々しくユニゾンした「ほむらの果て」では、松本の絶唱に会場は呆然となる。「群馬は寒いですね……でも、あんまり盛り上がれる曲は用意してないので、胸の奥から熱くなるようにしたいと思います」と、松本。胸に渦巻く感情をそのまま音楽にするようなテレンのライブは、年を重ねるごとに生々しく、人間性が剥き出しになる。最後の1曲を残して、「ライブがしづらい時代なので、こういうイベントはありがたいです」と、LACCO TOWERへの感謝を伝えたあと、松本が鍵盤を弾き、体を震わせながら歌った「EYE」で、終演。“僕も 愛し愛されよう”と、自問自答の果てに見出した答えを綴った歌は、あまりにも切実だった。
■群馬音楽センターからやってきたcinema staff、演奏で説得する圧巻のステージ
cinema staff
ギターの辻友貴(Gt)がセンターに立ち、ボーカル飯田瑞規(Vo/Gt)が上手という変則的なポジション。と言えば、cinema staffの時間だ。I ROCKSには2018年以来の出演になる。1曲目は「新世界」。多用される変拍子のうえを4人の個性的な演奏がぶつかり合うステージは、派手な演出など一切なくとも、目を逸らせない、呑み込まれるような凄みがある。2015年の作品でありながら、コロナ禍のいまの心境に強く寄り添うことにハッとさせられた「シャドウ」。続く、「great escape」では、轟音が渦巻くイントロ一発で会場がひときわ大きく湧いた。このライブの翌週(4月17、18日)には、自身も地元・岐阜県で主催ライブ「OOPARTS」が控えていたこともあり、「(LACCO TOWERの)やるっていう決断はいろいろな人にとって励みになる」と、飯田。さらに、「今日は気合いが入りすぎて、(2019年までの会場だった)群馬音楽センターのほうに行ってしまいました。スタッフのミスで(笑)。一礼して、トレイを借りて、こっちにきました」という、まさかのエピソードに、会場は温かい拍手で包まれた。声を出せないお客さんの代わりに、メンバーが全力のウォーウォーを響かせた「HYPER CHANT」まで、高い緊張感を保ったまま駆け抜けた全6曲。その演奏だけでロックのかっこよさを証明できるバンド、それがcinema staffだ。
ラックライフ、豪快な笑顔で会場を明るい色に染め上げる
ラックライフ
「LACCO TOWERが俺らを誘ってくれるたびに、自分を強く信じることができます」。4曲目に届けた「朝が来る前に」の曲中に、PON(Vo/Gt)が届けた言葉だった。2016年以降毎年I ROCKSに出演しているラックライフは大きな喜びを胸にステージに立っていた。彼らによく似合うカラフルな照明が彩ったダンサブルなロックナンバー「リフレイン」を皮切りに、ポップで心踊る楽曲たちが会場の空気を一気に明るくする。Ikoma(Gt)の穏やかなギターから壮大にバンドの演奏が加わった「朝が来る前に」では、身振りを交えた熱い歌唱で歌い切ったものの、アウトロで「むせってしまった!」と、PON。「いいよ、そんな一面もあって(笑)」(Ikoma)というやりとりを経て、Ikomaが即興でアウトロを締め直す場面も。彼らのライブに予定調和はない。「音楽で救ってあげたいと作った曲だけど、そうやって歌うことで自分が救われてるって気づきました」と伝えた「ハルカヒカリ」まで終えたあと、4人は長いこと深く頭を下げて、会場からの大きな拍手を受け止めていた。弱さを曝け出し、楽しいことには豪快に笑う。ラックライフのライブはどこまでも等身大だった。
■禰豆子に扮した細川もサプライズ出演!忘れらんねえよは我が道をゆく
忘れらんねえよ
SEは、『鬼滅の刃』で大ヒットしたLiSAの「紅蓮華」。柴田隆浩(Vo/Gt)は、竈門炭治郎風の緑と黒の市松模様のベストを着こみ、流行りのネタでお客さんの心を掴んだ忘れらんねえよ。コロナで引きこもり気味だった人に捧げるダンスロック「踊れ引きこもり」では、オメでたい頭でなによりの赤飯が参加している女性ボーカル部分に、禰豆子の衣装を“本気で”身に着けた細川が参戦するも、竹を咥えているため歌えない、というオチで会場を湧かせる。
忘れらんねえよ
「本当に忙しいのに、こんな茶番につき合ってくれる。そういうところが好きです」。細川退場後に語った言葉は、柴田らしいLACCO TOWERへのラブコールだ。感動的だったのはスマホをサイリウム代わりに会場を照らした「忘れらんねえよ」。普段は演奏を止めてシンガロングするところで、無音の時間を作った。いまはみんなで歌えない。その事実を改めて突きつけられた瞬間、「戦ってんなぁ……」と呟いた柴田。そして、「こっからも戦っていこうぜ!」と呼びかけたシーンには、何かこみあげるものがあった。これまでも、情けなさややるせなさを丸ごと肯定してきた忘れらんねえよの歌は、こんなときこそ私たちの勇気になる。
■「大好きなお兄ちゃんにバトンを渡す」 対バンでこそ燃えるバンド、SUPER BEAVER
SUPER BEAVER
「運がいいな。I ROCKSの俺たちがいちばんかっこいいんだぜ」。渋谷龍太(Ve/Gt)の不敵な宣言どおり、この日のSUPER BEAVERはギラついていた。どんな場所でも、「あなた」に音楽を届けることを最大の目的とする彼らのライブはそもそもアベレージが高いが、自らがかっこいいと認める相手との対バンのときこそ、とんでもないちからを発揮する。藤原”32才”広明(Dr)がスティックを高く突き上げて口火を切った「青い春」から、柳沢亮太(Gt)と上杉研太(Dr)が噛みつき合うように演奏をした「閃光」へ。ハンドマイクで身を乗り出し、その歌で会場を完全に掌握する渋谷は、いまどんな気持ちでステージに立つのか、それを誤解なく伝えるために言葉を尽くす。
SUPER BEAVER
「大好きだから手を抜きません。嫌いなイベントには出ません。(LACCO TOWERは)お兄ちゃんだと思ってます。ようやくまわってきたバトン。俺たちの役割は、(バトンを)重たくして、大好きな兄ちゃんに渡すこと」。そう渋谷が言い切って、最後に届けたのは、最新アルバムのリード曲「アイラヴユー」だった。渋谷のボーカルとメンバーの合唱で、“アイラヴユーが歌いたい”と繰り返すその歌は、SUPER BEAVERが歌う意味そのものを綴った楽曲だ。結成から17年の歩みのなかで多くの仲間に愛されてきた歴史が、彼らを愛情深く、義理堅いバンドへと進化させたように思う。その歴史にはきっとLACCO TOWERの存在も小さくはないはずだ。
■LACCO TOWER
LACCO TOWER
ロックバンドとしての強靭で激しい一面が浮き彫りになった2日目に比べると、3日目のLACCO TOWERは、この場所で鳴らされる意味の重さに胸を打つ歌の連続だったように思う。
LACCO TOWER
「みんなの音楽には春がやってきたかい?」と問いかけた 「薄紅」にはじまり、「さっきのビーバーはそんなもんだったかい!?」と、すでに端から端までオールスタンディングで盛り上がる客席をさらに焚きつけた「火花」。続く「傷年傷女」では、真一がショルキーをスタンバイしたところで、トラブルが発生するも、すかさず細川がギターで場をつなぐチームプレイでも湧かせた。
LACCO TOWER
繊細なピアノのイントロから、歩み続けることの尊さを優しく訴える最新のロックバラード「歩調」のあと、「袖からライブを見るのも、見てもらうのも久しぶりでした」「こうやって場所を作ることが大事なんやなって気づきました」と、久々の対バンの喜びと手応えを伝えた松川。「最後は笑って帰りましょう」と言いつつ、感極まったように声を詰まらせるような姿も見せる。本編のラストを、優しく聴き手の涙を拭う「夕立」で締めくくり、アンコールでは、I ROCKSのテーマソングとして歌い続けてきた「星空」を届けて、I ROCKS 20&21の前半戦の幕を閉じたLACCO TOWER。最後に松川は、「変わっていくライブハウスに、変わらなきゃいけないバンドたちに、変わらなきゃいけないあなたたちに大きな拍手を!」と叫んだ。ロックバンドに限らず、いま社会のルールが大きく変わっていくなかで、私たち一人ひとりがいかに生きるかを問われている。I ROCKS 20&21前半戦は、そんな激変の時代にメッセージを投げかけているような気がした。
I ROCKS 20&21の後半戦は、5月1,2日に、引き続き伊勢崎市文化会館で開催される。
取材・文=秦理絵

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