【米倉千尋 インタビュー】
『ガンダム』じゃなかったら
25年も続けてこられなかった
何があるか分からないけど
恐れず進んでいきたい
あと、注目はTeam.ねこかん[猫]との楽曲、奥井雅美さんとのユニットであるr.o.r/sの楽曲ですね。
Team.ねこかん[猫]さんとはアニメ『よんでますよ、アザゼルさん。』でご一緒させていただいたのですが、私は彼らとのコラボで覚醒した感がありまして。自分のヴォーカルが磨き上げられたと言いますか。
その「ぱんでみっく!!」はいろんな声で歌っていますよね。
はい。天使と悪魔の声を使い分けているんですけど、どうせやるならとことんまで楽しんでしまおうと。おどろおどろしいところはビブラートをつけて迫力を出し、Bメロは普通っぽく、そしてサビは可愛いらしくと、一曲の中で3つの声色で歌っています。そういう表現をしたのが初めてだったので、とても勉強になりました。Team.ねこかん[猫]のみなさんとの出会いが、私をヴォーカリストとして1ランクどころか10ランクくらい成長させてくれたので、そういう意味で「ぱんでみっく!!」は私の転換点になった曲です。
r.o.r/sはどういうきっかけで誕生したのですか?
奥井さんは同じレコード会社の先輩で、当時のプロデューサーの発案から、奥井さんと私のふたりがユニットを組んだらもっと楽しいことができるんじゃないかと。それまでは他のアーティストの方と接点がなく、誰かと一緒に歌うということ自体が初めてで。知らないことをたくさん教えていただいたり、いろんなお話をさせていただいて、とても楽しかった思い出がありますね。奥井さんとのユニットということで、カッコ良くてスタイリッシュな私を聴いていただけると思います。
そして、今作の目玉となるのが、書き下ろしの新曲「私という物語」。
万が一ここで人生が終わったとしても、ちゃんと自分の想いを伝えられている…くらい気持ちを込めたいと思って書きました。歌っている時の自分の想いや、ステージに立っている時の気持ちを含めて、“ずっとあなたの側に私はいるよ”というメッセージを込めています。
今回のベストを出すにあたっては、今の気持ちを込めた新曲を収録したいと最初から考えていたのですか?
私も思っていたんですけど、それ以上にスタッフが“絶対入れたほうがいいです!”と言ってくれていて、みんなの気持ちが自然とそうなっていましたね。
作曲と編曲は尾澤拓実さんですね。
自分で作ろうと思ったのですが、尾澤さんの楽曲を聴いた時に“この曲を歌いたい!”と思ったんです。今の私の気持ちを乗せて運んでくれるのはこの曲だと思った…ひと目惚れならぬひと聴き惚れしましたね。
歌詞には《歌い続けるよ》や《「ありがとう」》といったフレーズがあって、25年の感謝とこれからへの誓いの歌という印象がありました。
まさしくそうです。《夢よりも遠い その先が見たい》というフレーズが出てくるのですが、自分が想像して夢見ていた10年後よりもさらに遠いところまで今は来ていて、これから先も何があるか分からないけど、恐れないで進んでいきたいという想いでいます。
サビの後半で《wow wow》と歌っているところは、きっとライブではみんなで歌うんだなと想像できました。そして、これまでの25年は決してひとりじゃなく、みんなと一緒だったということも表れているんだなって。
汲み取っていただけで嬉しいです。この曲を選んだ理由のひとつは、《wow wow》というパートがあったからなんです。曲を選んだ時は《wow wow》という歌詞はついてなかったんですけど、“こう来てこう来たか”と胸をグッと掴まれた感覚で、決め手のひとつになりましたね。尾澤さんもライヴで《wow wow》と歌うことをイメージして作ってくださっていたそうで、それに続く《この空の下》も《wow wow》になると思っていたらしく、“まさかそこに歌詞を入れてくるとは思わなかった”とおっしゃっていました(笑)。でも、私のイメージとしては、みんなに《wow wow》と歌ってもらって、それに対して私のメッセージを伝えるとイメージが出来上がっていたので。
25年経ってもそういうエピソードや発見があるんですね。
人との出会いはすごいですよね。出会うことで思いもよらないことができたり、自分ひとりでは考えつかなかったことのきっかけを与えてもらったり。先ほどTeam.ねこかん【猫】さんとの話をしましたけど、『9-nine-』の楽曲との出会いも私のヴォーカルステージをさらにアップさせてくれているんです。それまで多用してこなかったファルセットなど、苦手としていた技術を使わなければ表現できない曲がたくさんあったんです。音域のレンジもそれまで以上に広かったし。だから、声楽を習いに行ったんですよ。そうやって自分の声を突き詰めて行った結果、いろいろな表現で歌えるようになって。そういう成長を経て歌った最新のものが「私という物語」なので、もっとも理想に近い歌声を聴いてもらえると思います。
米倉さんが理想とする歌声というのは?
何かひとつの理想に向かっているのではなくて、“こう歌いたいのにできない”」とか“もっとできるはずなのに”とか、何か悔しい思いをするたびにヴォイストレーニングに通ったり、体を鍛えたりいろいろ試行錯誤しながら、その都度その時に目標とした歌声をクリアーしてきたという感じです。だから、このアルバムを通して聴くと、そういう私の成長の変遷も聴いてもらえると思います。常に勉強しながら、“どうやったらその曲をより良く表現できるか?”ということを追い求め続けてきた25年という感じですね。
取材:榑林史章