サンタナのデビューアルバム
『サンタナ』
本作『サンタナ』について
アルバムに収録されているのは全部で9曲、そのうち4曲がインストという内容だ。サンタナの魅力は、何と言ってもライヴ時に見られるような圧倒的なノリである。複数のパーカッションと20歳になったばかりのマイケル・シュリーヴの流麗なドラミングから生み出される複雑なコンビネーションは、それまでのロックには見られなかったラテンのグルーブに彩られており、1曲目の「ウェイティング」から身体が自然に動き出すほど。リズムセクションに加えて、グレッグ・ローリーのダイナミックなオルガンプレイとカルロス・サンタナの熱気を帯びたギターソロが煽るのだから、アドレナリンの流出はどうにも止まらない。
美しいメロディーを持つ「イヴィル・ウェイズ」(全米9位)や祭囃子のような「ジンゴー」など、当時中学生だった僕は聴くたびに鳥肌ものだったが、それが今聴いても変わらないのだからすごい音楽だと思う。最高潮に盛り上がるのが最後の「ソウル・サクリファイス」で、聴き終わった時にはライヴを観に行ったような感覚になるのである。本作がこれだけ“生演奏”的なのは、彼らがステージと同じようなスタンスでレコーディングに臨んだからではないかと思う。
このデビュー作で、すでにサンタナのラテンロックは完成している。これは彼らがフィルモアをはじめ、数多くのライヴ活動を通して、自分たちの音楽を作り上げていったからであろう。結局、ウッドストック効果もあってか、本作はデビュー作ながら全米チャート4位まで上昇するわけだが、それは純粋に内容が素晴らしいからで、何年経とうが古臭くならない名盤だと思う。
もし、サンタナの音楽を経験したことがないのなら、これを機会にぜひ聴いてみてほしい。きっと、今まで味わったことのない新しい世界が広がるはずだ。
TEXT:河崎直人