降幡愛 初の7インチアナログシングル
を語る 「愛はAXIOMという歌詞はわた
しの本音」

降幡 愛が4月18日の神奈川・KT Zepp Yokohama公演を皮切りに全国4会場を回るライブツアー「降幡 愛 1st Live Tour APOLLO」を開催。さらにその各会場では完全数量生産限定盤の7インチシングルレコード『AXIOM』が販売される。
すでに各音楽配信サイトではその音源が発表されている『AXIOM』だが、これまでの降幡愛サウンドと地続きながらも、確実に進化。表題曲では、シティポップを指向していた彼女が盟友・本間昭光とともに、昨今のシティポップリバイバルムードまでも包括する極上のダンスミュージックを作り上げている。また、これまでいわゆるトレンディドラマ的な悲恋を半ば戯画的に描いていた彼女のリリックもまた別アプローチのものに。自明の理を意味する「AXIOM」をキーワードに現在やリスナーのありようを涼しげに、でも力強く肯定するメッセージソングを書き上げている。
初のライブツアー開催、初の7インチシングルリリースを前に彼女の胸中に期するものとは。じっくり聞いた。

――降幡さんインタビュー定番の質問になっている感もあるんですけど、最近、どんなアナログ盤を買いました?
菊池桃子さんの『ADVENTURE』(1986年リリースの3rdアルバム)ですね。それまでも菊池さんのアルバムは買っていたので、その流れで。
――降幡さんが物心ついたときにはもう菊池桃子さんって……。
タレントさん・女優さんでした。父が大ファンだったから小さいころに聴かされてはいたらしいんですけど、その当時聴いていたアイドルさんと菊池さんが結び付いてはいなかった。「Say Yes!」(1986年リリースの9thシングル曲)なんかはもちろん知っていたんですけど、テレビで菊池さんをお見かけしても「ホントにこの人が『Say Yes!』の人なのかな?」という感じでした。アイドルとしての菊池さんを認識したのは本当に大人になってからですね。
――では、アイドル・菊池桃子との出会いのきっかけは?
林哲司さんの書かれる楽曲と売野雅勇さんの歌詞がすごく好きで、おふたりの仕事を掘っていって菊池さんに出会った感じですね。実は売野さんは『ADVENTURE』には参加なさってないんですけど、やっぱり素晴らしかったです。
――そして今回降幡さんがリリースなさったシングル『AXIOM』の表題曲なんですけど、ある種当時の菊池さんのサウンドと通底しているというか。菊池桃子名義のものにもそういう傾向があったし、得に彼女が組んだラ・ムーって踊れてアーバンなサウンドにアイドルボイスが乗るバンドだったじゃないですか。
おー!「AXIOM」は確かにそういう感じかもしれないです。
――あれっ? 他人事?
「AXIOM」は今回の1stライブツアーのテーマソングという位置付けで。まず「APOLLO」というツアータイトルを決めて、そのあと「なので、そのテーマ曲になる楽曲はちょっと宇宙感があるもの。スペイシーでギャラクシーな感じで」と、本当に抽象的なことだけを本間(昭光)さんにお伝えしたら「Daft Punkの中でも80年代サウンドをフィーチャーした楽曲をイメージして作ってみる」とおっしゃっていて。実際にできあがった曲が「カッコいい!」という感じだったので、今回はこういうサウンドになりました。
――今、すごく腑に落ちました。「AXIOM」を聴いたとき、基本的には4つ打ちのテクノポップで、イントロには〈Please enter your USER NAME〉なんてマシンボイスのナレーションが入るからレトロフューチャーなテイストを狙っているんだろうな、とは思った一方で、ちゃんと踊れる。イマドキのクラブでも全然通用するよな、と思っていたので。
それはDaft Punkだからなんです(笑)。で、あのイントロ中の英語のナレーションはレコーディングのときに本間さんが思い付いたアイデアで。「ライブのオープニング曲らしく」ということで、なにかが始まる感じをプラスしてくださったんです。
――降幡さんが抽象的なイメージを伝えれば、本間さんがそれに120%の力で応えて音として具現化させ、さらにまた降幡さんがその音に素晴らしいボーカルを乗せる。この降幡 愛&本間昭光がもたらすシナジー効果ってなんなんですかね?
本間さんが気さくに私の話を聴いてくださる。それだけのことだと思います。あとはなんでなんだろうな……。いっつもレコーディングは長時間に及んで、最終的にはみんなで深夜まで作業をしているからテンションがおかしくなってるんですかね(笑)。
――「降幡 愛 meets Daft Punk」という画期的な発明は深夜テンションがもたらしたもの?(笑)
かもしれない(笑)。
『Ai Furihata “Trip to BIRTH”』より
――一方、降幡さんが手がけた歌詞なんですけど、こちらも新機軸。これまで降幡さんは「RUIMIKO」さんや「SIDE B」の女といった、波瀾万丈の恋愛模様を送る人の姿を物語調に描いてきました。
全然私と共通点のない人の歌を作ってるな、と思っています(笑)。
――「私の人生が曲の主人公みたいだったら大変ですよ」とおっしゃってましたしね(笑)。ところが「AXIOM」はものすごくストレートで正しいメッセージソングに仕上がっています。
最近母から「もっと万人ウケする歌を作りなさい」と言われたもので……(笑)。
――あはははは(笑)。〈今は、君は、愛はAXIOM〉という力強いメッセージが生まれたのは、お母さまに叱られたから?
それもちょっとありますね(笑)。ただ、世の中が去年からまったくいい方向に好転せずに2021年を迎えちゃったことへの思いもあって。とはいえ、私自身を振り返ってみると、大変だった一方で、今回のツアーもそうですし、去年末のライブもそうなんですけど、ちゃんとステージに上がれるタイミングというものは作っていただけたんです。だからこそ「みなさんに明るい未来をお見せできたらな」「みなさんと盛り上がれる曲を作れたらな」と思って。「宇宙 カッコいい」で検索したら「AXIOM」という単語がヒットしたので、本間さんからいただいた曲と同じく「カッコいいじゃん!」ということでタイトルとサビに使ってみました(笑)。
――「AXIOM」って“自明の理”という意味ですよね? ホントに「宇宙 カッコいい」でググって出てきました?
出てきますよ。しかも「A」から始まる単語だからけっこう早く見つけられます(笑)。
――ホントかなあ(笑)。で、繰り返しになるんですけど、降幡さんはこれまで自分ではない誰かの人生を描く物語を描いてきている。そういう方が〈愛はAXIOM〉、「愛という存在は自明のものなんだよ」と正面切って書ききること、歌いきることってけっこう大変だったんじゃないかしら? とも思ったんですけど……。
Bメロにかんしてはちょっと迷ったりもしたんですけど、1コーラス目のAメロ冒頭の〈生まれ育った 出逢いに理由はあるのか〉というフレーズは早くから思い付いていたし、その言葉が見つかってからは、そこから始まる物語を考えることに集中できたから、あまりためらいはなかったですね。それに確かに今までと違って、実際の私たちのことを歌ってはいるんですけど、舞台は宇宙。宇宙人と私たちの出会いという、なんなら自分には想像もできない世界の物語を書きたかったから、これまでの作詞と同じく楽しく書けました。
■変わらず月のような存在でありたいと思う
――となると「AXIOM」をテーマソングに擁するツアーのことをうかがわないといけないですね。なぜタイトルを「APOLLO」にしようと?
デビューミニアルバム『Moonrise』(2020年リリース)のタイトルは自分で付けたんですけど、私は支えてくださるファンの方、スタッフさんから光やエネルギーをいただくことで輝けるアーティストでありたいな、と思っていたから、こういう名前にしたんです。そしてそういう存在である私のライブを観に来てくれることってある意味月旅行なんじゃないかな? と思って、ツアータイトルを「APOLLO」にして「AXIOM」の作詞を始めました。
――確かに「AXIOM」の中でも〈LOVE BEAM FROM MOON〉、〈燃える太陽 邪魔はさせない〉と歌っているし、降幡さんにとって「月」は音楽活動をする上でのキーアイテムのひとつになっている。
私を象徴する存在のひとつだと思っています。光り輝く月はもちろんキレイなんだけど、マイナスに捉えられることもあるじゃないですか。
――太陽は明朗で、月は暗いみたいなイメージってありますね。
でも確かに私自身にもそういう面はあるから、変わらず月のような存在でありたいな、と思っているんです。
――そしてリスナーに〈LOVE BEAM〉=愛の光線を注げる人でありたい?
そうですね。ただ、このフレーズにはちょっとした元ネタがあって。本間さんがプロデュースを手がけているポルノグラフィティさんの「アポロ」(1999年リリースの1stシングル曲)からインスパイアされたんです(笑)。それと〈燃える太陽 邪魔はさせない〉は「太陽って周りが“コロナ”で覆われているんだよな」ということで「コロナに私たちのライブの邪魔はさせない」という意味で書いてみました。
――デビュー曲「CITY」の段階でかなり完成されていたとは思っていたんですけど、本当に高値安定型の作詞家というか。しかも横ばいではなく、徐々に徐々に値上がり・スキルアップしていますね。
ホントですか!?
――〈今〉や〈君〉や〈愛〉のかけがえのなさや存在意義をエモーショナルに歌っているだけなのかと思ったら、実は制作陣の別のワークスにかんするフレーズや流行語をさりげなく盛り込んでいる、ものすごくクレバーな詞になっているわけですから。
トンチとかが好きだからこういうことができるのかなあ……。
――もはやトンチなんてノンキなたとえじゃ追いつかない表現を獲得している気がします(笑)。
でも作詞の最中「こうしよう」「ああしよう」と考えることはあるけど、「作詞のためにお勉強をしなきゃ!」という自覚はないんです。なので「なんで書けるんですか?」って聞かれても……。
――「トンチが好きだから」としか答えようがない?
以前からお話していることではあるんですけど、一応80年代シティポップ的な単語を思い付いたり、見かけたりしたらそれをスマホにメモしておく癖はつけていて。「なにか勉強や訓練をしているか?」と言われれば、それを見返しながら作詞することくらいなんですよね。
――〈Don't think feel!〉というブルース・リーからの引用も?
「サビ前にキメゼリフがほしいな」と思い付いたからですね。で「キメゼリフなんだからみんなが絶対に聞き覚えがある英語がいいな」「聴いているみんながブルース・リーを思い出すだろうから、きっと歌詞も頭に残るだろうな」ということで引用してみました。
――と言いつつ、〈Don't think feel!〉は、ウィスパーボイスにしているところもしゃれてますよね。
それは本間さんのアイデアですね。あと、コーラスやハーモニーについてはレコーディング中に本間さんがアイデアを出して、音源やライブにいつもコーラスとして入ってくれている会原実希ちゃんがそれを耳で聴いて歌ってっていう感じで付けています。だから私は「その場でコーラスのアイデアを思い付く本間さんも、その思い付きをその場で歌える実希ちゃんもすごいなー」と思いながら眺めてます(笑)。
『Ai Furihata “Trip to BIRTH”』より
――ただ、降幡さんはかねてから「音楽活動においてはやりたいことしかやらない」「やりたくないことにはちゃんとノーを言う」をモットーとしています。
「やれ」って言われるととたんにやりたくなくなるし、できないタイプなので(笑)。
――でも本間さんと会原さんのコーラスワークにダメ出ししたことは……。
そういえばないっ!(笑) おふたりとも斜め上のアイデアや声を聴かせてくれるので、毎回すごいなーと思いながら聴いてますね。
――ズレているという意味ではなく、降幡さんの思いも寄らなかった、でもカッコいいボールを斜め上から放ってくれる感じ?
そうですね。それはほかのプレイヤーさんもそうですし、本間さんはまさにそうで。『Moonrise』に入っていた「プールサイドカクテル」という曲も全然私のイメージしていた音とは違ったデモが届いたんですけど、それもすごく面白かったですから。
――以前降幡さんは「すっぴんの私の気持ちなんて歌えない」と言っていましたけど、〈愛はAXIOM〉なことは……。
本音ですね。
――そのすっぴんの気持ちを歌うことについてご苦労は?
なかったです。去年の秋に「Ai Furihata "Trip to ORIGIN"」というライブを無事できた。とにかくライブを楽しんでいる私の姿をちゃんとイメージできていたので、今回のツアーのテーマ曲である「AXIOM」もライブで歌っている私をイメージしながら歌えたし、その「ライブ楽しい!」っていう思いが全面に出ている感じすらあります。
――ライブってお好きですか?
「Trip to ORIGIN」を終えてみて気付いたことなんですけど、好きみたいです。始まるまではイヤでしかたなかったのに(笑)。
――それもちょっと意外というか。詞・曲・アレンジ・演奏・ボーカルのいずれにおいても、ものすごく完成度の高い録音物を作る人だからパフォーマーというよりはレコーディングアーティスト。実演よりはスタジオワークにこだわる方なのかな? と思ってました。
バンドセットでライブをできているからかもしれないですね。みなさん、全然楽譜にないことをシャンシャン、ベインベインなさるので(笑)。みなさんのそういうアドリブから生まれるグルーヴを肌で感じていると「マジ最高!」ってなるし、それを聴いてくださるお客さんも「うおぉー!」ってなってくれているのは、本当にうれしいですから。確かにCDや配信や今回のアナログ7インチの音源作りにはすごくこだわりたいんですけど、ライブはそこから派生したものとして楽しみたいんだと思います。
■夜の公園でひとり呑みするような女性の姿を美しいと思う
――そして文字どおりアナログ盤B面のナンバーは「うしろ髪引かれて」。まずタイトルについて確認したいんですけど、これは工藤静香さん、生稲晃子さん、斉藤満喜子さんが元ネタでいいんですよね?
はい。おニャン子クラブさんから取りました(笑)。
――でも菊池桃子さん同様、降幡さんが知っている工藤静香さんって……。
木村拓哉さんの奥様としてですね。
――となると、彼女たちのグループ・うしろ髪引かれ隊やおニャン子クラブとの出会いのきっかけは?
アニメ版の『ハイスクール!奇面組』ですね。うしろ髪ひかれ隊とうしろ指さされ組がオープニングテーマとエンディングテーマを担当なさっていたので。
――それまでにも存在していた常套句ではあるものの、確かに当時も彼女たちの登場によって「うしろ髪引かれる」という言葉にあらためてスポットライトが当たったイメージがあります。
だから私もやっぱり気になってタイトルにしてみました。
――そして降幡さんはタイトル先行で作詞するんですよね?
はい。スタッフさんは「春にリリースするシングルの曲なんだから明るくてほっこりした曲を……」とイメージしていたみたいなんですけど……。
――すごく失礼ながら、今「この人なにを言ってるんだろう?」と思いました(笑)。
ですよね。最初は私もそういう方向で歌詞を書くつもりだったのに、できあがってみたら、結局、元カレにうしろ髪を引かれてました(笑)。ほっこりできなかったなあ……。
――ただ、ほっこりこそできなかったものの、この詞がまたすごくて。ヒロインの感情を示す形容詞がひとつも使われていないんですよね。
私も今、言われて気付きました(笑)。
――マニキュアに彩られている指で夜の公園のブランコを漕ぎながら、ひとりで缶ビールをひっかけている。この状況説明だけで、今さっきまでデートをしていたはずなんだけど、そのカレシとはお別れしちゃって寂しくて悲しい彼女の気持ちを言い当てています。
自分でも「AXIOM」とは真逆の歌詞になったな、と思っています。
――具体的な気持ちを描いていないですからね。でも「AXIOM」同様、ちゃんと歌の登場人物の感情を浮き彫りにしている。
各コーラスのサビの最後に〈Bye bye・・・〉って歌いたかったから、それ以上、この子の感情は書かなくても伝わるだろうな、とは思っていました。
――では夜の公園で缶ビールを引っかけながらブランコを漕いでいる女の子というモチーフはどこから? 実際にそんな子って見たことは……。
ないですね(笑)。
――でも、お別れしたばかりの女の子の様子をそこにリアリティをもって現出してみせている。だから降幡さんには世界がどう映ってるんだろう? ってすごく気になって……。
ちゃんとみなさんと同じように見えてますよ(笑)。昼の桜よりも夜桜……しかもライトアップされたものじゃなくて、小さな公園にポツンと立っている桜の木のほうが好きだな、というところからイメージを膨らませていった感じですね。
――じゃあ〈ハート形の花びらは 夜のとばりに溶け込んでく〉なんかは……。
実際に目にしたもので、そこから物語を作っています。
『Ai Furihata “Trip to BIRTH”』より
――ちょっと話が前後しちゃうんですけど、なぜほっこりとした歌詞は書けないんでしょう?
なんでなんでしょう(笑)。ただ、このあいだマネージャーと話していて気付いたことなんですけど、私は女の人の知っている女の人の姿が好きなんだろうな、とは思っていて。恋愛対象として見ている女の人よりも、私の知っている女の人って雑なんです。タバコを吸っていたり、それこそ夜の公園でひとり呑みをしてみたり。
――確かに女性を恋愛対象としている人の場合、その女性を憧れという名の先入観のもと、常にかわいくてキレイなものとしちゃいそうですね。
そうですそうです。そして私はその期待を裏切りたいんです(笑)。
――意地悪だなあ(笑)。
デートだからマニキュアをしたり、かわいくあろうという、みんなから求められている女性らしさは持ち合わせつつも、悲しいことがあったら、周りの目なんか気にせずに夜の公園でひとり呑みをしちゃう。そういう姿のほうがより人間らしいし、美しいと思っているんです。
――確かに四六時中キレイで居続けられる人って、ちょっとウソくさいし、あり得ないですよね。ところでご自身ってひとり呑みはなさるんですか?
まったく。呑むんだったらみんなでワイワイ呑みたいし、悲しいことや落ち込むことがあってもお酒には手を伸ばさないですね。
――じゃあ「うしろ髪引かれて」のヒロインみたいな女性は……。
大好きなタイプです。そういう“暗さ”みたいなものもちゃんと明け透けにできる子は友だちにほしいです。で、この子に別れたカレシの愚痴を聞く飲み会を開きたい(笑)。
――あと、この曲で描かれている時代背景がすごく気になったんです。〈デスクに貼った ハニカム写真〉とあるから、舞台はまだ写真をプリントしていたころですよね?
そうですね。今だったら恋人の写真はスマホの壁紙にするんでしょうけど、まだそれのない時代。80〜90年代のイメージです。
――そして〈ハニカム〉はなぜカタカナに?
ちょうどこの歌詞を書いているとき「ハンサム」という単語が頭を渦巻いていたからですね。いつか「ハンサムな人」とか「ハンサムな彼女」という感じで歌詞の中に使いたいなあ、と思っていたのに引っ張られて〈ハニカム〉になっちゃいました(笑)。
――「ハンサム」と「イケメン」って別の種類。降幡 愛楽曲的な美男子は確かに「ハンサム」な気がします。
いやらしくない程度に時代感を出せる言葉は常に探してます。
――この曲でもそうですもんね。今だったらヤケ酒のおともは〈缶ビール〉じゃなくてストロングゼロだろうし、〈ハイヒールと一緒に離れる気持ち〉とあるけど、イマドキの女の子ってそんなにかかとの高いクツを履いているイメージがないし、〈イヤリング〉よりは……。
ピアスをしてますよね。あと〈マニキュア〉じゃなくてジェルネイルをしてるだろうし。
――だから「缶ビール」「マニキュア」というたったの5文字で聴き手を当時にタイムスリップさせてくれるんですよ。
ありがとうございます。わざとらしくなく、でもおしゃれに当時のことを描こうとは思っています。
――対するメロディやアレンジについては本間さんになんとリクエストを?
今回は特に「こういう曲のイメージで」という発注はしていないですね。春の曲、悲しい感じとしかお伝えしていません。
――そしてイントロを抜けるところで楽器隊が一瞬全員ブレイクしたり、サビ前にやたらなオーケストラルヒットの連打こそあるものの、基本的には打ち込み主体のオーソドックスな8ビートのロックナンバーが届いた。
実は私自身は最初にデモをいただいたとき「なるほどー。こういう感じかー」くらいの印象しかなかったんですけど、どんどん聴いていくたびに「実はこの曲『CITY』くらいパンチのある曲だな」と気付いて。歌詞もメロディもアレンジも、それからレコーディングエンジニアの山内("Dr." 隆義)さんのミックス……この方がその音をバツッと切るアイデアを出してくださったんですけど……そういういろんな要素がすごくキレイに、でもカッコよくハマった1曲だな、と思ってます。ライブでやったらまた映えるだろうな、って。
――熱いギターソロは入るし、ライブで観たい1曲ですよね。……あっ、そもそもの話を聞くのを忘れてました。アナログマニアである降幡さんにとってご自身名義の7インチシングル、いわゆるドーナツ盤をリリースすることって……。
夢でしたし、まさかこんなに早く叶うとは思わなかったです。
――『Moonrise』のときににも12インチもリリースしていますけど、ドーナツ盤はまた趣が違う?
はい。しかも『Moonrise』はCDでもリリースしたんですけど、『AXIOM』は配信はしているけど、ツアー会場で限定販売されるこの7インチシングルしか“モノ”はないので。ちょっとしたレアアイテムになってくれたら楽しいな、とも思っています(笑)。
――ツアーに行く方には当然チェックしてほしいし、遊びには行けない方にも配信で楽しんでほしい、本当に強い2曲ができあがりましたしね。
確かに配信でもぜひチェックしてみてもらいたいです。私自身、やっていることは70〜90年代のシティポップという、言ってしまえばちょっと古いサウンドなんですけど、今ならそれを配信サービスやSNSやYouTubeを使っていろんな世代の人に爆発的な勢いで届けることができると思っているし、そうやって時代のアイテムやサービスをうまく使いながら、降幡愛を知らない人にも聴いてもらえる機会を作りたいな、と思っています。
インタビュー・文=成松哲

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