【畠中 祐 インタビュー】
ウィリアムとホームズ、
どちらの視点かで解釈が変わる
もらったバトンを
後輩に語り継ぐことも僕らの役目
そして、カップリングには「Moment For Life」と「風を作る」の2曲が収録されていますが、こちらについてもお願いします。
今まではプロデューサーさんが手がけてくださっていたのですが、今回は初めてA&Rの方にプロデュースしていただきました。なので、これまでとはテイストが違うものになりましたね。
両曲とも畠中さんらしいダンスチューンですけど、「風を作る」はもっとJ-POPっぽさがありますよね。
すごくJ-POPです。作曲のめんまさんは私立恵比寿中学さんやEMPiREさんなど、アイドルにかかわることが多いらしく、そういう方だけに非常にキャッチーだし、春らしいさわやかさがある楽曲になりました。僕、春ソングを歌うのが初めてなんですよ。
新生活を始める人の背中を押せる前向きな楽曲ですね。“風を作る”というタイトルも風を待つのではなく、自分で作っていくという感じで前向きさがあります。
そうですね。特に今の時代は自分から掴みに行かないと掴めないことが多いと思うんですよ。外になかなか出られない状況で、どうSNSを利用して発信していくのかをみんな考えていて…例えば、昨年はYouTubeを始めた声優がすごく多いんですね。ライヴやイベントが開催できない代わりに、自分で発信する場を作ってて。そういう意味では、自分で何かを掴みに行く感覚は、今の時代を象徴していると思います。
歌詞に《渡されたバトンを繋いで》と出てきますが、ここはどんなふうに思いますか?
以前は、達央さんにご飯に連れて行ってもらって、お芝居の話を聞かせてもらったりしていたんですけど、コロナ禍に入ってどんどんそういう機会がなくなってしまって。そもそも声優業界では現場が終わってもみんなで食事に行く機会もほとんどなないので、そういう意味では“お前、頑張れよ”ってバトンを渡される機会がない時代ですよね。でも、個人的にはお酒を酌み交わしながら先輩の話を聞くのが好きで…気は張るけど、何かに気づけるきっかけをもらうことが多いんですよね。だから、もっと先輩の話を聞きたいって思いますよ。もっと先輩と話がしたい。そこでもらったバトンを後輩に語り継いでいくことも、きっと僕らの役目だと思うので。ただワイワイ騒いでるだけの食事会だったら後輩もついてこないと思うし。
もう一曲の「Moment For Life」はエレクトリックなダンスチューンで、こちらも雰囲気が独特ですね。
すごく新鮮でした。仮歌を聴いた段階で、自分が歌う想像がつかなかったです。サビがトリッキーなんですけど、実際に歌うとすごくしっくりくる感じがあって、仮歌段階では気づかなかった遊びの部分があるんですよ。ライヴでアレンジし甲斐があると思ったので、ライヴで披露する機会が楽しみです。
「Moment For Life」の歌詞には“New Age”という言葉が出てきます。畠中さんを筆頭に20代の男性声優の活躍が目立ってますが、“自分たちの世代が新しくシーンを作っていくんだ!”という意気込みもあったりしますか?
そうですね。同世代と絡む作品も本当に多いです。特に小林千晃は同い年だし、家も近所なので、よく会っていろいろ話しますね。自分たちの世代についてとか話をするんですけど、結局お互い答えが出ないんですよ。そこに達央さんみたいな先輩がいて、ひと言バシッ!と答えをくれたりしたらいいんですけど、ずっと答えが出ない話を続けているのも楽しいし、考えるきっかけにもなるんです。
同世代が活躍しているのを見ると悔しかったり?
もう意識しまくりですよ!(笑) “これは俺にはできないな”って相手を認める瞬間もいっぱいあるし、本当に刺激を受けています。それに同世代でアーティストデビューしている人が多いんですけど、みんな色が違うのが面白いですね。その中で、ここまでマニアックにダンスミュージックで攻めている人は、僕の他にはいないんじゃないかって思っていますけどね。
取材:榑林史章