【畠中 祐 インタビュー】
ウィリアムとホームズ、
どちらの視点かで解釈が変わる
7thシングルの表題曲「TWISTED HEARTS」はTVアニメ『憂国のモリアーティ』2クール目のオープニング主題歌で、カップリングには今までとは違ったテイストの2曲のダンスチューンを収録。初の春ソングで新たな表情を見せてくれている畠中 祐を直撃!
ウィリアムとホームズの
一騎打ちを想像させるバトル感
「TWISTED HEARTS」はTVアニメ『憂国のモリアーティ』2クール目のオープニング主題歌ですが、1クール目はすごく面白かったですね。
列車でシャーロックとウィリアムが推理対決するというところで終わったのは意外でしたけどね。でも、2クール目に向けていい布石になったと思います。
ノアティック号事件も良かったです。ホームズが出てきて以降、また違った面白さになったので。
僕は声優目線になっちゃうんですけど、ブリッツ・エンダースを演じた鈴木達央さんの死にっぷりがすごかったです! 迫力があって、“自分にこの引き出しはあるかな?”って考えながら観ちゃってて…なかなか純粋には観られないですね。
“もし『憂国のモリアーティ』に出ていたら…”とか考えました?
あっ、それはないです。原作を読んで自分の声がする作品としない作品があって、『憂国のモリアーティ』を読んだ時は自分の声がしなかったんですよ。よく想像でキャスティングしてみるんですけど、言葉では語らない深いところでの駆け引きがあるとか、自分より年齢が上の人がいいとか、もっと渋さが出せる人がいいとかを考えていった結果、自分で想像しているのに自分がキャスティングされなかったという(笑)。ただ、歌というかたちで携わらせていただけるとは思っていなかったので、それには自分でもびっくりしましたね。
1クール目に引き続いてですけど。
アニメチームのほうから続投してほしいと言っていただけたので、すごく驚いたし、すごく光栄だと思いました。
1クール目のオープニング主題歌「DYING WISH」(2020年10月発表)は今まで歌ったことのないテイストにチャレンジしていたので、それが評価してもらえたのは嬉しいですよね。
嬉しいです。楽曲が流れるオープニングの映像もいい感じで作ってくださって、自分でもカッコ良いと思っていたので、映像を作ってくださったみなさんに感謝です。それに楽曲としても、自分が今までやってきたダンスミュージックを封印するだけではなく、別のアプローチで新しい引き出しを開けてもらえた思い入れの強い曲で…でも、だからこそ今回の2クール目はどうしようかと考えましたね。
今回の「TWISTED HEARTS」は「DYING WISH」の時よりも自分のほうに少し寄せた感じがありますよね。
そうなんですよ。前回はアニメの世界観に寄せるという引き出しを開けたんですけど、今回はアニメの世界観と僕の持ち味をかけ合わせるといった手法を取りました。『憂国のモリアーティ』の世界に沿いながら、自分が今までやってきたダンスミュージックを足してみた感じです。楽曲的にもウィリアムとシャーロックの一騎打ちを想像させるようなバトル感があります。
ダンスミュージックという部分で、MVでもダンスを披露されていて。
はい。今回は通常のダンスに加えて、ステッキや赤と青のリボンのようなものを使ってパフォーマンスをしています。振りの随所にシャーロック視点の動きがあって、指で照準を作るポーズは証拠にズームするような意味があるんです。
楽曲もシャーロック視点ですか?
それが、そういうわけではなくて。歌詞を読んでも思うんですけど、ウィリアムとシャーロックはすごく表裏一体で。だからこそ、どちらの視点なのか迷う言葉が多く、どちらの視点で考えるかによって歌詞の意味合いもすごく変わるし、その先を想像させる余白もあるから、それぞれで想像して楽しんでいただけたら嬉しいですね。
この歌詞自体にも謎解きのようなものがあると。
ミステリーが詰まっています! 僕もすごく考えました。
実際に歌った時は、自分の中で“ここはシャーロックだな”とか“これはモリアーティだ”とか決めて歌ったんですか?
どういうふうに歌うかは僕に一任してもらっていたのですが、最初に決めてからレコーディングに臨んだわけではなく、歌いながら“こっちに寄せたほうが歌いやすいかな?”とか、なんとなく自分の中で定まっていった感じですね。レコーディングに関しては、英語のディレクションでFrance AUDONさんという方が監修で入ってくださったんです。
フランスさん?
はい。フランス人のFranceさんが英語の監修をしてくれました(笑)。英語の発音は結構大変でしたね。というのも、『憂国のモリアーティ』は海外でも人気が高い作品なので、海外の人が聴いてもしっかり伝わるようにしようと。ただ、発音が本当に大変で、何回録り直してもうまく発音できないところがあったりしたのですが、Franceさんがすごく粘ってディレクションしてくださり、僕としてもかなりこだわった一曲になりました。
歌詞で一番自信のある英語の言葉は?
《I don’ t feel your love》とか《But I can give you love》は何度も録り直したので、ぜひ聴いてほしいです。いかにつなげて発音し、かつ細かい“ッ”を逃さない…みたいな。やっているうちに混乱しちゃって、本当に大変な作業でした(笑)。
フランスさんは作詞作曲編曲のKOHTA YAMAMOTOさんとともに、作詞に共作でクレジットされていますね。
はい。日本語の歌詞はいつもディレクションしていただいている福森さんで、どうせなら日本語も英語も完璧にしたいと思って、福森さんとフランスさんのふたり体制でディレクションしていただきました。どちらかに集中するともう片方がおろそかになってしまって、両方というのがなかなか大変でした。
モリアーティとシャーロックは敵同士だけど引き寄せ合っていて似ている部分も多いわけですが、“TWISTED HEARTS”というタイトルには、そのことがすごく表現されていますね。
はい。ふたりとも“より良い社会のために”という同じような信念を持っているのに、それを実現するためのアプローチがまったく違ってしまっているんです。信念という部分で濃密につながっているからこそ、“逮捕されるならお前がいい”“殺されるならお前がいい”とお互いに思ってて。そんなふたりの気持ちがねじれ合っていることを表すのに、これ以上のタイトルはありません! 2本のロープがねじり合わさっているイメージで、もしもどちらかが切れてしまったら、もう片方はどうなってしまうのかと思いますね。