【8bitBRAIN インタビュー】
最後はやっぱり人と人が
助け合う世の中になってほしい
壊れちゃうことに
美しさを感じている
「Black Sabbath」は3つのタイプのCDがあって、それぞれ3曲目が異なっていますので、その楽曲にも触れていきましょう。まずは「Why fight?」。
Koyoka
私が作詞したんですけど、今の5人になる前からできていた曲で、プロデューサーからは“ボーダレス社会”がテーマだと言われてて。広いテーマだったから“これはどうしようかな?”と思ったんですけど、逆に狭い範囲を狙って、そこから広げていくような感じで書こうと思い、Wi-Fiをテーマに書いたんですね。Wi-Fiを恋人のような感じで《そばに居てくれれば他には何も要らない》って擬人化しつつ、恋人のように大事にしつつ…という歌詞なんですけど、それを3rdシングルで出すことになったので、5Gの今はもうポケットタイプのWi-Fiって誰も持たなくなるんじゃないかと思ってるんです(苦笑)。これってここ2、3年の話なんで、それはそれで歴史を感じられていいのかなって私の中では落としてます(笑)。“ポケベル”まではいかないですけど、懐かしさを感じてくれるような曲になっていたらいいなって。
「Why fight?」は今回の楽曲の中ではやや古めなんですね。イントロがチャイナ風で、過去曲にもチャイナ風のメロディーがありましたので、やや古めというのは納得です。サウンド的に言うと、いろんなセクションがあって、ミクスチャーというよりも、コラージュに近い手法に近い面白さがありました。
Koyoka
サウンドで遊ぼうと思ったんです。途中でシャウトとラップのパートもあるんですけど、それ以外が単調なので、メリハリをつけられたらいいなと思って、サビはインパクトがあってずっと韻を踏んでいる感じで、デスヴォイスもそれに合わせて入ってくるので、いろいろと楽しみつつ、いつの間にか終わっちゃった…みたいな感じがあると思います。
あと、やや古い曲だと言いつつも、サビでの掛け合いとか、デスヴォイスの収まりもいい感じだと思います。今回の5曲はどれもデスヴォイスの融合感が増した印象がありますが、「Why fight?」もそうでしょうね。それでは、続いて「I'd like」について訊きましょうか。イントロがファミコンっぽいサウンドでハチブレらしいところですが、これはどなたの作詞ですか?
アンズ
私が書きました。初めて聴いた時、ニコニコ動画が流行っていた頃のボカロみたいな感じだと思ったんです。ピコピコな感じもそうですし、浮かんだ風景が完全にニコニコ動画だったんで。その当時のボカロの曲って病んだ曲が多かったというか、精神に訴えるような曲が多かったし、あとは物語調のものが多かったと思って、物語を書いてみたんです。最初は…自殺しちゃう女の子とそれを後悔している友達の子というふたりの登場人物で書いたんですけど、さすがにプロデューサーに“重すぎてダメ”って言われて(笑)。プロデューサーはAIをテーマで書いてほしかったらしいんですけど、私はそれを知らないで自殺をテーマにして書いたからボツになり、それで書き直したらこうなりました。ボツになったのが癪だったので、隠すようにして最初の歌詞を結構残してます(笑)。
そうしますと、「I'd like」はアンズさんの中にはっきりとした物語があって、それを反映させた歌詞なんですね?
アンズ
そうですね。完全に小説を書いている気分で書きました。でも、デスヴォイスのところはハチブレっぽく韻を踏んでみたりもしているんですけど、今はもうAIと人間が共存している社会じゃないですか。それこそSiriとかもあったりして身近にAIがいるので、AIが人間になりたいと思う日もきっとくるだろうと。でも、最後にAIの子は死んじゃうというか、人間になりたいと思ったがためにエラーを起こしちゃって、壊されちゃうというお話なんですね。私、お話を作るのが好きでいろいろとやっているんですけど、なぜか私の物語って主人公が死んじゃうんですよね(苦笑)。
破滅志向なんですかね?
アンズ
自分の中に破滅願望があるのかもしれないですけど(苦笑)、私は壊れちゃうことに美しさを感じていて、なりたいものになりたくて頑張るんだけど、それに憧れちゃったがために壊れちゃった…みたいな。それってアイドルをやっている自分自身にも重なっていて、絶対にもっと楽な人生があったと思う…もう12年くらい音楽をやっていて、やっとここまで来たんですけど、そっちに行っていたら今の自分はなくて、きっと自分の中で“やりたいことがやれなくて、つまんない人生だったな”と思って死んでいくんだろうと思うんですよ。
“あり得たかもしれない、もうひとりの自分”という感じですね。それは哲学的というか、古今東西、多くのアーティストが題材にしていることですよ。
アンズ
だから、“自分をうまく重ねてみれば?”みたいな感じはあります。ただ、簡単に汲み取れなくしているところもあって。いっぱい噛み砕いてほしかったので、分かりやすそうで分からないという。
作詞のテクニックを使ったわけですね。
アンズ
テクニックというか、意地悪なんですよ(笑)。あんまりストレートに分かってほしくないところがあるので。昔から“アンズってこういうところがあるよね?”って言われるのがすごい嫌いで、“お前に何が分かるんだ!?”みたいなところがずっとあったから。そういうところが根っこにあるんで、意地悪さが歌詞にも出てしまうんじゃないかと。
あと、「I'd like」に関して個人的に大きなポイントだと思うのは、最後のウイスパーヴォイスで。これはグループにとって新機軸になるんじゃないですかね。
アンズ
あれはプロデューサーもドヤ顔してました、“新しいことを盛り込んだぞ”って(笑)。私、サビとかをあんまり気持ちのいい音だとは思えなくて…。明るくもなく暗くもなくて、どういうテンションで持っていけばいいのか分かんない曲だと思ったんですけど、最後のウイスパーが入った時に“これは普通の曲じゃない!”と思ったんです。“今までみたいに身近にあるものを反映していく歌詞じゃダメなんだぞ”と言われていると思って、絶対に悲しい感じで終わらせてやろうと(笑)。
このウイスパーはアンズさんの声ですか? すごくいいですね。
アンズ
でも、すごい録り直しました。私もそうだし、プロデューサーもこだわりが強かったので、“もうちょい明るく”とか“もうちょっと悲しく”とか微調整で何度もやりました。1stのカップリングの「KI-RI-SA-KI PRAYER」でもウイスパーがあったんですけど、あれとは全然違うものにしたかったので闘いましたね。
過去、ウイスパーで終わる曲ってアイドルソングにはありますし、それでやられたファンって多いと思うですよ。