L→R Toshi(Support Ba)、佐藤達哉(Support Key)、森重樹一(Vo)、CHARGEEEEEE...(Support Dr)、カトウタロウ(Support Gu)

L→R Toshi(Support Ba)、佐藤達哉(Support Key)、森重樹一(Vo)、CHARGEEEEEE...(Support Dr)、カトウタロウ(Support Gu)

【ZIGGY インタビュー】
機械じゃ出せないスウィング感や
ドライブ感を人間の力で出す

自分は自分のやるべきことを
やり続けるだけ

分かりました(笑)。私、この取材の冒頭で“手放しに“分かりやすいアルバム”と言い切っていいのだろうか”と申し上げましたよね? 端的に言って、1曲目が「CHAOS'70」で、ラストが「パラドクスの庭で」であることで、そんなふうに感じるのかなと。基本的にはポジティブなロックンロールアルバムではあるんですけど、最後が「パラドクスの庭で」であることで、やはり若干聴き応えが重い気がするんです。

「パラドクスの庭で」はですね、随分前にこの言葉が浮かんだんですよ。要は、自分が生きている世界そのものが“パラドクスの庭”だという感覚ですね。この曲に関してはサウンドのほうがちょっと強いと思うところがあって…

ちょっとプログレっぽいですね。

あえてそうしたんです。実は一昨年くらいから、The Pretty Recklessのテイラー・モンセンの歌を聴いてぶっ飛んで、すっげぇ好きになったんですよね。今回、ロックンロールに回帰したくなったのも彼女の自由奔放な歌を聴いたからなんです。アルバム『Light Me Up』の1曲目に「My Medicine」という曲があって、歌い出す前に咳払いして始まるんですけど、薄いオケの上で彼女がハスキーな声で歌うと、そのビート感、自由さ…何て言うかな? そうしたひな型に、僕が今まで経験してきた音楽を一回ハメてみたいと思って、あの冒頭の部分を自分なりに再現したかったのが、「パラドクスの庭で」の歌い始める部分で。ただ、彼女たちのオケはもっとガレージっぽいけれども、僕がそこでやりたいのは自分が聴いてきたものであって、「パラドクスの庭で」という抽象的な表現に一番相応しいオケはプログレッシブなものじゃないかと、そしてビート感的にはハードロック的な大きなグルーブで…だけど、そのままやるのもつまらないから、あちこちに仕かけだけは作っておいたという。ギターソロに関して僕がカトウタロウに言ったのは“オジー・オズボーンの「Mr. Crowley」みたいなのを弾いてくれ”ってことで(笑)。いくらロックンロールを謳歌しようと思って生きても、この世界は矛盾に満ちていて、解決を求められないものがたくさんある。その中で、そういう現実を昇華してくれているのがカトウタロウのギターソロなんです! 僕は彼と知り合って10年近く経ちますけど、今までのタロウのソロの中のベスト・オブ・ベストだと思ってます。あのメロディーの構築はタロウの音楽的バックボーンがなければできないし、メンバー全員がそれを理解できて、その表現スキルも持っている。

ロックンロールは決してシンプルなものだけでなく、バンドアンサンブルを複雑に構築していくものもあって、それは今のZIGGYであれば確実にできると。それを示すためには「パラドクスの庭で」のようなナンバーも必要だったということになるでしょうか。

そうですね。

置き所としては、やはりラストが相応しい感じでしたか?

これね、置く所がなくて(苦笑)。ただ、音楽でいろんなシーンを見せることができるかなと。この曲に関して言えば、言葉がしっかりと残るところもあるから、ロック的なバランス…サウンドと言葉のバランスに終始したかったんですね。あと、あえてオープニングを「CHAOS'70」というインストで始めて、もっともインストルメンタルパートの多い曲を最後に持ってくることで、バンドなんだということをアピールしたかったところもあったと思いますね。

了解です。もうひとつうかがいたいのは「馬鹿につける薬はどこに」。こういうユーモアとシニカルさもロックンロールには欠かせないものかなと。

そうですね。

サウンドは若干サイケデリックですが、メロディーは子供でも歌えそうな感じで。そんなところも皮肉が効いていて面白く聴きましたよ。

この曲がレコーディングで一番トラックを使ったんですよね。ポップスになっちゃうのは嫌だけど、ポップであることはいいと思うんですよ。そのポップであるものに一番欠けちゃいけないのは毒っ気とお茶目さだと思っていて、それは常に必要なものだと自分は感じてるんですね。「パラドクスの庭で」の側面だけ見せるとちょっと重いほうに傾くけど、この意図的、作為的な軽薄さは、サウンドも含めて、おそらくアルバムのへそみたいなものになってくれるんじゃないかという気もしますね。

あと、今作はロックンロールアルバムではあるものの、決して回顧的ではなく、ギターを筆頭に、音はしっかりと現代のものになっているところも良くて。

それは良かった(笑)。とにかくメンバーが楽しくやってくれて、このアルバムを作れたことを喜んで、とてもいい体験だったと感じてくれたことを、オーディエンスにも感じてもらえれば、そのオーディエンスのリアクションから僕らはまたインスパイアされる…ツアーの間に曲を作ることの素晴らしさって、そのオーディエンスのリアクションが自分に何かを与えてくれることなんですよね。いつもそうなんですよ。それをなくして、自分はロックンロールを書くことはできないと思うんです。だから、こうして自分が発信するものに対して、自分自身も認識したいし、“なぜ自分はそこに突き動かされているんだろう?”っていうことをちゃんと理解した上でやる…タロウともそういう話をしょっちゅうしてるんですよ。彼はものすごく語彙も豊富だし、僕の言わんとすることの行間まで汲み取ってくれるので、ZIGGYは今、本当に音楽をクリエイトするのに素晴らしい状態にあるんです。このご時勢であっても、我々がこの作品を世に残せることが誇らしいし、もう感謝しかないですね。

分かりました。そして、『SDR』発売前にツアーが始まりますね。

今回は若い頃みたいに機材車での移動もあって(笑)。でも、それがやれるというのは、すごく貴重な体験なんじゃないかと思いますね。もし、このコロナ禍という状況でなければ、日本の音楽業界は全然違う方向へ行っていたのかもしれないと思うけれども、この出来事があったことで大きな変化が起こるんじゃないかな? “俺はなぜこの歳まで音楽で飯を食ってこれたんだろう?”って考えましたし、自分は自分のやるべきことをやり続けるだけ…それしかないと思いましたね。そういう意味では勘太郎さんにはすごい感謝です。大切なキーワードを投げかけてくれたので。

関西の重鎮はやはり重鎮だったという。いや、関西どころじゃないですね。憂歌団のメンバーは日本の音楽シーンの…

宝ですよ! この間、甲本ヒロトさんと一緒にやられているブギ連のライヴを観に行かせていただいたんですけど、ふたりとも少年のようで、嬉々として音楽と戯れるというか、その素晴らしさに感動しましたよ。

そういう森重さんもさまざまな洋楽の話もしてくださったように、少年の気持ちは持ち続けていらっしゃると思いましたよ(笑)。

あははは。カッコ良いものを見ると、やっぱり“カッコ良いよな!”って思うんですよ。何年か前にスティーヴン・タイラーのソロ公演を武道館で観た時に、“俺も70歳くらいになったら絶対にこういうふうに歌いてぇ!”って思ったし。何人もの素敵なミュージシャンたちと一緒にプレイさせてもらってるけど、まだまだ“あいつとも一緒にやりてぇ”というミュージシャンがいるし。作為的に方向性を狭めたユニットじゃなくて、ほんとに“森重樹一オーケストラ”にして、いろんなアーティストに参加してもらって、いろんなアンサンブルで音楽を楽しくプレイすることをできる場所があるとしたら、それを70歳くらいでやれたら本望だなって思ってますから。

取材:帆苅智之

アルバム『SDR』2021年4月21日発売 KILLER TUNE
    • 【通常盤】
    • WAGE-12001
    • ¥3,300(税込)
    • 【DVD付限定盤】
    • WAGE-12002
    • ¥5,500(税込)

ライヴ情報

『ZIGGY TOUR2021「SDR」』
4/24(土) 石川・金沢GOLD CREEK
4/25(日) 大阪・OSAKA MUSE
4/30(金) 福岡・博多DRUM LOGOS
5/01(土) 大分・DRUM Be-0
5/04(火) 神奈川・新横浜NEW SIDE BEACH!!
5/09(日) 北海道・札幌PENNY LANE24
5/22(土) 東京・大手町三井ホール

『森重樹一アコースティックライヴツアー』
5/08(土) 北海道・札幌SPiCE
5/23(日) 神奈川・新横浜strage

ZIGGY プロフィール

ジギー:1984年に森重樹一を中心に結成。1987年10月にアルバム『ZIGGY~IN WITH THE TIME~』でメジャーデビュー。88年5月発表の2ndアルバム『HOT LIPS』収録曲「GLORIA」がフジテレビ系ドラマ『同・級・生』の主題歌となり大ヒット。84年の結成以来、メンバーの脱退・加入・復帰、活動休止を繰り返し、08年2月に無期限の活動休止を発表。30周年イヤーとなる17年に約10年振りのシングル「CELEBRATION DAY」とアルバム『2017』をリリース。TVの音楽番組やバラエティー番組への出演機会も増え、ネット上でも注目が集まる中、ライヴは世代を超えた多くのファンが詰めかけ、ソールドアウト続出。まさに再ブレイク中!ZIGGY Official Website

森重樹一 プロフィール

モリシゲジュイチ:日本最高のR&Rバンド、ZIGGYのリーダー&ヴォーカリスト。 「GLORIA」「I’M GETTIN’BLUE」「STAY GOLD」「Jealousy 〜ジェラシー〜」など、ZIGGYのビッグヒット曲はほとんど彼の手によるものであり、ソングライターとしての評価も非常に高い。類稀なるその歌唱力は日本のみならず海外でも高く評価されている。ZIGGYの活動と並行して、ソロワークでも通算16枚のアルバムを発表。森重樹一オフィシャルHP

『SDR』Official Trailer
& MUSIC VIDEO short ver.

OKMusic編集部

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