東京・春・音楽祭2021 ムーティ来日
、新たに「ネット席」設定しコロナ時
代の音楽祭開催に向けて前進

2021年3月19日から開催されている「東京・春・音楽祭2021」の記者会見が、このほど東京文化会館で開催され、同音楽祭鈴木幸一実行委員長、芦田尚子事務局長が登壇。さらに来日が決定し、都内で隔離待機中のリッカルド・ムーティがリモートで参加した。昨年はほとんどの公演が中止となる中で、今年もまた約50公演のうち3分の1ほどが中止を余儀なくされているというが、それでも全プログラムのライブストリーミング配信を行うなど、「一人でも多くの聴衆に音楽を届ける」努力がなされている。(文章中敬称略)
■中止続く中でライブストリーミング配信による「ネット席」を追加
記者会見では鈴木実行委員長が「人の移動が難しくなるという想定外の時代のなか、インターネットを利用したライブストリーミングによる配信といった、新たな取り組みも行われている」と挨拶。依然海外からのアーティストらの来日が困難な状況にある中で、今回は来日の叶わなかったバイロイト音楽祭総監督のカタリナ・ワーグナーが、バイロイト音楽祭との提携による「子どものためのワーグナー《パルジファル》」をリモートで演出。5回の公演を行ったが、「結果的に非常に好評で、バイロイト側も満足のいく出来栄えだった。今後の時代のためにも、新しい可能性を追求しながら、芸術を世界と共有できるきっかを模索していきたい」と話す。
鈴木幸一実行委員長
また芦田事務局長は、今回全演目をライブストリーミングで配信することについては「S、A、B席に加えネット席ができたという位置付け。こうしたコロナ禍の状況の中、会場に来ることを躊躇しているお客様もいる。なるべく多くの方々に音楽を届けたいと思っている」と実行委員会の考えを示したうえで、「日本からの配信だけでなく、IIJや配信技術の高いベルリン・フィルハーモニーと協力し、海外から、ベルリン・フィルハーモニーとズービン・メータ指揮による演奏の無料配信を行う」と発表。時差の関係でライブ配信は叶わないが、現地で収録したものを1回のみ配信する。

芦田尚子事務局長
■「ヴェルディの真髄を伝えたい」イタリア・オペラ・アカデミー in 東京 vol.2開催
今回の会見では会見当時にまだ隔離中であったムーティもリモートで参加。「音楽家は一つのミッション。音楽はただの文化というだけでなく、これからの若者の将来のため、彼らを成長させるために大変重要な芸術であると考えている」という、今年ウィーンフィルハーモニー管弦楽団とのニューイヤーコンサートで語った言葉を再び引用したうえで、「このような時に(音楽祭を)開催するということは賞賛される」と語った。さらに、ライフワークの一つとして非常に情熱を注いでいる「リッカルド・ムーティ イタリア・オペラ・アカデミー in 東京 vol.2」の開催について「私もこの機会に若い指揮者、日本のオーケストラ、合唱団の人たちと共演することで《マクベス》の真髄を説明できることをうれしく思っている。ヴェルディという作曲家がいかに今まで裏切られてきたか(正しく理解されていなかったか)、ということを深く追求していきたい」と語った。
ムーティによる「イタリア・オペラ・アカデミー in 東京 vol.2」は「アカデミー聴講プログラム/リハーサル」が無料配信されるほか、聴講生たちがムーティからの指導を披露する「若い音楽家による《マクベス》(抜粋/演奏会形式/字幕付)」、演奏会形式による《マクベス》上演も行われる予定だ。
■海外招聘は依然手探りの状態。音楽祭継続に向け今後も努力を
今回は鈴木実行委員長が「ギリギリでマエストロ・ムーティの来日が実現した」と語った通り、バイロイト音楽祭総監督のカタリナ・ワーグナーのように時間切れにより、来日できない関係者も多かった。これについて芦田事務局長は「緊急事態宣言の様子を見ながら約2カ月間、文化庁を通じて手探りでやってきた」と話す。事務局長によると、事務局がコンタクトを取った、いわば窓口となったのは文化庁のみで、そこから法務省、厚生労働省、外務省など関係省庁との調整が行われた形。「明確なルールなどはなく、本当に手探りの状態。今後のための指針作りという話もあった」という。現在、東京・春・音楽祭のほかにも海外からの招聘に動いている団体はいくつかあるという。ガイドライン策定等の整備も含め、演奏家らアーティストたちの健康に十分配慮した形での安心、安全な来日再開が待たれるところだ。
予期せぬコロナ禍の影響を今年も受けながら、しかし関係者らの尽力で開催された東京・春・音楽祭2021。鈴木実行委員長は「海外の演奏家を呼ぶことは、(音楽祭を)海外と同等レベルのクオリティで続けていくことにつながるし、同時に日本の演奏家の海外発信にもなる。続けることが一番難しいと考えているが、続けなければグローバルな音楽祭にはならない」と力強く語る。
今年の音楽祭は4月23日まで。ムーティの来日による「イタリア・オペラ・アカデミー in 東京 vol.2」やベルリン・フィルハーモニーによる演奏など、新たに加わったプログラムもチェックしていただきたい。
取材・文=西原朋未

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