『NEO CYBER CITY -ネオサイバーシティ-』@Zepp Haneda photo by 笹森健一、小坂茂雄

『NEO CYBER CITY -ネオサイバーシティ-』@Zepp Haneda photo by  笹森健一、小坂茂雄

SUPER★DRAGON、
495日ぶりの有観客ライブで覚悟表明

ヘヴィロックを基軸にラップやヒューマンビートボックス、さらにダイナミックなフォーメーションダンスを融合させたミクスチャースタイルの9人組ユニット・SUPER★DRAGONが、実に495日ぶりとなる有観客ライブ『NEO CYBER CITY -ネオサイバーシティ-』を4月9・10日にZepp Hanedaで行った。その間は4度もの配信ライブを行い、廃工場を舞台にオープニングから車で乗りつけたり、廊下からトイレまでライブハウスを丸ごとステージにしたりと、オンライン公演ならではの仕掛けで楽しませてくれたSUPER★DRAGON(通称・スパドラ)。2日間で3公演が行われた今回のライブは、事前に公式YouTubeにて公開されていたボイスドラマの結末編に位置づけられ、荒廃した近未来を舞台に謎のシェルターで共同生活を営む9人が、“外の世界”への脱出を試みるというストーリー仕立てで展開された。彼ら特有のエモーショナルなパフォーマンスに、ドラマの登場人物たちのモノローグや心情をシンクロさせつつ、衝撃的な結末に全オーディエンスが驚愕。単なるエンターテイメントに留まらず、現在の世界情勢や“人間”というものに対する根源的な問いを込めたスパドラらしいステージの最後には夏の東名阪公演の告知もされて、すべてのファンに夢の続きを約束した。

開演前にはボイスドラマが改めて流され、シェルターでの暮らしに最初に疑問を持った田中洸希の「みんなで行くぞ!」という号令から、ステージにはスモークが噴出。その中から階段上にメンバーが現れ、一人ずつ上段へと上ると火花がスパークするというド派手なオープニングから、灼熱のヘヴィロック曲「Untouchable MAX」でライブの幕は開いた。495日もの間、溜めに溜めてきたエモーションをぶつける彼らの勢いと熱さは、歌詞の通り“近づいたら火傷する”勢い。弾丸のように撃ち込まれるラップと激情滲むボーカル、マシンガンの構えで観る者を射抜くようなダンスに、満員のオーディエンスはあっという間にノックダウンだ。

「俺たちと一緒に踊ってください!」というジャン海渡の煽りで、グループカラーの蒼いライトスティックが規則正しく降られるジャングルテラー曲「LRL -Left Right Left-」、情熱的なラップとダンスで翻弄しながら、場内をクラップで満たすラテンチューン「La Vida Loca」と、躍動的なナンバーで序盤から摑みは万全。真っ青に染まった客席に、初日公演では「青一色に染まった会場を見て感動してる」(飯島颯)、「俺が見たかったスパドラブルーが見れた」(柴崎楽)とメンバーも笑みを見せる。また、十八番の車内アナウンスを披露した伊藤壮吾は「いつも家の風呂でやっても無反応なんで、反応が返ってくるのが嬉しい」と最終公演で思わず漏らして、「風呂でもやってるの!?」と周りを驚愕させた。

再会の喜びを確かめ合ったところで、しかし、シェルターの秘密を知るらしい伊藤のモノローグからは物語の核心へ。囚われの現状を歌うダークな「BLACK BOX」には“当たり前、疑おう”“誰かの正当は 誰かの不当”など、謎を解くカギとなるワードが散りばめられ、ココから逃れようと踊るメンバーたちをジッと見つめる伊藤の佇まいも意味深だ。一転、夏の匂いのする「My Playlist」は“君”と街を歩くチルでオシャレなナンバーだが、続いて「シェルターの中しか知らない自分は、なぜ繁華街を歩く夢を見るのか?」という古川毅のモノローグにピタリと符合する。警報音が鳴り響くような危機感たっぷりのヘヴィなダンストラックに、「Burning in the nights」で夜明けを待ちわびる想いを提示したところで始まったのは「Distance」。LEDモニターに映る自然の風景やネオンきらめく街並みは、彼らが焦がれる“外の世界”であり、それが我々にとっては何気ない日常である――いや、今となっては“あった”ことを考えると、ヒリヒリとした感傷を抱かざるを得ない。真っ白なシャツを着て、ステージ上でいつになく愛らしく、穏やかに歌い踊る彼らの無垢な様子と、心のままに紡がれる美しいフェイクが、そんな心の痛みをいっそう際立たせるのだ。

「自分たちは果たして何者なのか?」「真実を知りたい」と渇望する彼らの心の葛藤を表すように、ここからはスパドラの多彩色な音楽世界が繰り広げられていった。初の全英詞曲「BLOODY LOVE」で池田彪馬の濃密なボーカルが妖しさをまき散らすと、「Set It Off」では紅蓮色のライトを浴びて、ジャン海渡と松村和哉がステージ上段から治安悪さ全開でラップを投下。コミカルな“サムライダンス”が話題となった「SAMURAI」では、ステージにカメラが上がってメンバーへと間近に迫り、接写も交えて追ってゆく。中でも、トンネルのような階段裏へと潜った面々を映し出す映像は、カラフルに点滅するライトとの相乗効果で、まさしくサイバーシティな趣き。こんなエンタメ性豊かなワンカメショーも、間違いなく昨年の配信ライブで培われたものだろう。

しかし、曲が終わるとメンバーたちは階段に倒れ込んで機能停止。そして背後のLED上に浮かんだ扉から田中洸希のインナースペースへと入り込み、彼と“殺された過去の自分”との会話を聞くことになる。いわく、誰もが自分を殺して生きており、拙悪だった部分は削ぎ落されて廃棄される。そうして、より優秀なクローンのみが生き残るのだと。それでも外に出ることを諦めない彼の意志に沿って、蛍光色の衣装をまとい再開したステージでは、次々にソロで踊り繋ぐワイルドなダンストラックと、続くセルフタイトル曲「SUPER★DRAGON」から“自我”を追求。アッパーなビートに乗せて、“俺達が時代を変える”と宣言し、最後まで全員ピタリと揃えて見せる勇ましいダンスパフォーマンスは、背筋が震えるほどに美しかった。さらに「拳掲げて、心の中で魂込めて歌ってくれ!」と贈られた「Mada' Mada'」の間奏では、獣の咆哮が鳴り響くような野性味あふれるソロダンスリレーを披露。志村玲於はメンバーを発射台にステージ端ギリギリまで跳躍し、揺れる客席にジャン海渡は「お前ら最高だよ」と呟いて、そこから雪崩れ込んだ「BADASS」では松村和哉が社会への怒りをデスボイスに乗せて叫びあげる。自らが立つ場所と自分自身に真っ直ぐ向き合う勇気と、その結果あふれ出すエモーションーーそれこそがSUPER★DRAGONのアイデンティティではないのか? そんなふうに想いを馳せたところで、「俺は諦めない。絶対に外に出る!」という田中のモノローグが流れ、本編を締めくくったのは甘いスクリーモチューン「SWEET DEVIL」だ。スモークと火花が盛大に噴き上がるなか、いつもより長尺のアレンジで“牙をむけ”“爪たてろ”と繰り返し、惜しみなくパワーを放出する様は、歌詞にある“君を連れていくまでがMy Story”への期待を膨らませるに十二分だった。

LED上の扉が開き、ついに“外の世界”へと出てゆくメンバーたち。しかし一瞬の暗転の後、ただ一人壇上に残った人間ーー彼らをシェルターに閉じ込めた黒幕が、この世界の謎を解き明かしてゆく。彼らは人の手によって作り出されたクローンであり、人間と同等のアイデンティティを持つまでアップデートを繰り返されてきたこと。その中で拙悪な個体は廃棄されてしまうこと。そして、その仕組みに気づき始めてしまった彼らもまた、憧れの“外の世界”で廃棄される運命なのだと。つまり、クローンたちにとって外の世界へ出ることは“死”を意味し、シェルターの中こそが楽園だった――それは閉塞感の強い生活を送っている2021年の人類にとって、ゾッとするような結末でもある。それ以前に、心を持つ存在を人間が創り出すことの是非は長く論争されてきたこと。自我のある命を創り出すことの罪深さに斬り込んだ深遠な物語を、ライブで表現するという画期的な試みに挑んだ彼らの勇敢さには、全く頭が下がる。ちなみに、この黒幕メンバーは初日と2日目の2公演目を飯島颯、2日目の1公演目を柴崎楽が務め、それぞれ本編のパフォーマンス中も随所で他メンバーと違う動きをして伏線を張っていたという念の入れよう。誰も気づかないかもしれない細部まで、妥協なくこだわり抜く姿勢もまた、スパドラチームの一つのアイデンティティだろう。

アンコールは3公演それぞれにメニューが異なり、タフなパワーソング、日常の愛おしさを噛み締めるポップチューン、絆を確かめ合う感動ソングなどをバランスよくドロップ。急性咽頭炎のため本編のパフォーマンスに参加できなかった田中洸希は、自分が所属するグループのライブを観るという一生に一度の経験に、「カッコ良かった! 箱推しです!」と照れてみせた。初日のMCでは495日の間、自分に何ができるのか? なぜこの9人で活動しているのか?を考え、試行錯誤を繰り返し、ライブができてファンと会える“当たり前”の大切さを実感したと口々に語っていたが、それは自らのアイデンティティに惑い、行動を起こしたドラマの登場人物たちと驚くほどにシンクロしている。もちろんスパドラ9人の自我は自らの選択によるもので、他人にプログラミングされたものではないが、たとえそうであっても彼らならば自らの意志に塗り替えてくれるのではないかと思わせてくれたのが、配信もされていた最終公演だ。

「最終日、ただじゃ帰れません!」とジャン海渡が口火を切って、ファンクラブ会員限定の東名阪ライブハウスツアー『18 EYES』が7月に開催されることを発表すると、堪えきれない歓声と大きな拍手が湧く。タイトルは9人の瞳の数を表しており、「9人と目が合うくらいの距離感ということ。夏、またスパドラと一緒に楽しみましょう」と古川毅は約束してくれた。ようやく東京以外の都市へ行けることを池田彪馬も喜び、「他のことは何も考えず、一緒にライブを楽しんでいるという純粋な記憶を共有できるのが何よりの幸せ。これからお互い支え合って、もっともっと高みを目指していきたい」と明言。松村和哉も「ステージに立つことが、僕たちがSUPER★DRAGON である意味。ライブをして、目と目を合わせて心で会話することって当たり前じゃない。特別なものだけれど、それを当たり前にしていきたい」と決意を語る。さらに古川は「傷だらけだったんですよ、この1年間」とさらけ出し、共に苦しみを分かち合ったスタッフたちと支え合いながら今日まで辿り着いたことを伝え、こう続けた。

「でも、最後にピースを埋めてくれるのは貴方たちなんですよ。貴方たちがいないと活動していく意味は無い。やりたいこと、表現したいこと、上がりたいステージ、まだまだたくさんあります。このライヴを経て、絶対に先に進める未来が見えました。最後に、この会場にいる全員との絆の歌です。声は出さなくても一緒に歌いましょう」

『NEO CIBER CITY』のフィナーレに選ばれたのは、初期からSUPER★DRAGONを支え続けてきた「BROTHERHOOD」。ジャン海渡と田中洸希がラップとヒューマンビートボックスを掛け合う姿に“これぞスパドラ!”と胸が高鳴れば、全員が横一列に肩を組むクライマックスを目にして、得も言われぬ感慨が湧き上がる。ようやくここまで辿り着いた――メンバーの目が潤んでいるように見えたのも、そんな想いがあふれていたからだろう。「また何が起こるかわからないけど、一緒に乗り越えよう。俺らがいるから、みんなにも俺らがいるから。また一緒に思い出作ろう!」と古川が伝え、9人全員で深々と一礼すると、名残惜しそうにステージを去った。

「SUPER★DRAGON、この1年で本当に強くなりました」と初日のアンコールで古川が告げたように、現代社会と密接に結びついた物語と共に展開された彼らのパフォーマンスは、歌もダンスも進境著しいものだった。曲が終わるたびに湧き起こる割れんばかりの拍手がそれを証明し、歌とラップの両方を担当する田中洸希が本編を欠席するアクシデントにも、他4人のボーカル&ラッパーが彼の担当パートを適材適所でサポート。中でも松村和哉の奮闘は際立ち、限界突破したテンションで“絶体絶命は 絶好の機会”という「BLACK BOX」の歌詞を証明していた。思えば、彼らが結成初期から作るMVには“脱出”をテーマにするものが非常に多い。追い詰められてからが、スパドラの本領発揮なのだ。

誰もが自分を殺して生きている――それは、ある意味で真実だろう。本当の自分を押し殺すこともあれば、より良い自分へと生まれ変わるために過去の自分を消すこともある。言い換えるなら“進化”とは、過去の自分に対する絶え間ない抹殺行為なのかもしれない。だが、さらなる高みを目指すためならば、この9人は過去の自分を殺すことも、未来の自分に廃棄されることも厭わないだろう。きっと今回の『NEO CIBER CITY』は、そんな彼らの覚悟表明だったのだ。

photo by 笹森健一、小坂茂雄
text by 清水素子

【セットリスト】
M1. Untouchable MAX
M2. LRL -Left Right Left-
M3. La Vida Loca
M4. BLACK BOX
M5. My Playlist
M6. Burning in the nights
M7. Distance
M8. BLOODY LOVE
M9. Set It Off
M10. SAMURAI
M11. SUPER★DRAGON
M12. Mada’ Mada’
M13. BADASS
M14. SWEET DEVIL

<ENCORE>
・1部:4月9日
EN1. PAYAPAYA
EN2. +IKUZE+
EN3. What a day
・2部:4月10日【1部】
EN1. 雨ノチ晴レ
EN2. Strike Up The Band
EN3. SOUL FLAG
・3部:4月10日【1部】
EN1. Dragonfly
EN2. SHOPPING TIME
EN3. BROTERHOOD

【公演情報】

『SUPER★DRAGON AREA SD会員限定 ONEMAN LIVE 「18 EYES」』
7月26日(月) 大阪府BIGCAT
7月27日(火) 愛知県DIAMOND HALL
7月29日(木) 神奈川県CLUB CITTA’
『NEO CYBER CITY -ネオサイバーシティ-』@Zepp Haneda photo by  笹森健一、小坂茂雄
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OKMusic編集部

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